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2006年11月21日 (火)

歌舞伎座で「伽羅先代萩」を見ました。

11月の顔見世大歌舞伎、昼の部は10年ぶりになる「伽羅先代萩」の通し上演です。ことし私は裏方でしたが、「あきる野座」で「先代萩」の評定(対決)と刃傷の場に兆戦したこともあり、ぜひ見ておかなくちゃと思っていたものです。

でも、やっぱり予定が立たないため、前もってチケットを買うことができず、当日券かなと思っていたら、ちょうどいいタイミングでネットオークションで、しかも安くいい席を手に入れることができました。何と初めての桟敷席体験

歌舞伎座では舞台の左右に横向きの席があって、二席ずつ一つの扉から入るBOX席になっています。テーブルがあって、そこでお茶を飲んだりお弁当を食べたりしながら見ている人々がいつもちょっと気になっていました。和服を着ている人も多いので、歌舞伎通かお大尽かしらと思っていたら、さにあらず。私の左右の人たちはみんなイヤホンガイドを使っていたので、通ではないなという印象。よく見ると結構若い人とか、親子連れもいます。一等席より2,000円高いだけなので、お誕生日とか何かの記念日にちょっとだけ贅沢に、ゆったりした気分を味わおうといった感じでしょうか。それにしても数が少ないから、なかなか手に入らないですよね。席は掘りごたつ式になっていて、足が伸ばせます。座布団と座椅子がついていて、快適でした。テーブルにはポットのお湯と湯のみ茶碗、ティーバッグのお茶が用意されていて、お弁当、葛きりなどを注文できるお品書きも置いてありました。あとは下駄箱と靴べら、ゴミ箱、鏡などが装備。面白かったです。1階でもちょっと高いところから見下ろすようで、申し訳ない感じ?も。横向きですが、意外に見やすかったです。

出し物の「先代萩」は、江戸時代の伊達家のお家騒動を、登場人物を室町時代の人の名に変えて、フィクションにしたものです。猿之助の「伊達の十役」とか、いろんなバージョンがあるし、他のお家騒動ものともごっちゃになって何だかよくわからなかったけど、通しで見ることで、すっきりしました。

お家乗っ取りをたくらむ仁木弾正一味が、殿様を廓通いに夢中にさせて失脚させる。その廓通いの殿様は、敵の刺客に囲まれても風流にのんびりと鷹揚に扇子でかわし、(あんなんでどうしてやられないのか不思議!)その鷹揚な殿様らしさを見せるのが見せ場の「花水橋」の場。(普通のストーリーを追った演劇を見る感覚だと理解できないかも!)殿様の脱ぎ捨てた、伽羅(香木)で作った超贅沢な下駄を「なんていい香り」とばかりに嗅ぐ悪者がユーモラスでした。この下駄の伽羅と、もとは仙台伊達家のお話ということで「伽羅(めいぼく)先代萩」という題名なんですね。

続く「竹の間」と「御殿」の場は、隠居させられた殿様の跡目を継いで君主となるはずの若君をめぐるお話です。若君の乳母である政岡は女形における由良の介(忠臣蔵の)といわれるぐらいの大役。あの手この手でおとしいれようとする八汐のいじめにじ~っと耐え、若君を守り抜く「竹の間」と、自分の子供が若君の身代わりになって毒まんじゅうを食べて死ぬ「御殿」。ちょっと、菊五郎さんの政岡(若い母親のはず?)は年がいりすぎという感じだったけど、実の子の死にも動揺を見せず、若君を守るのを優先しなければならないところと、あとで母にかえって息子の死を悲しむ場面の対比がすごく、本当に泣けました。義太夫が入るのは退屈と思ってたけど、こういう泣き場の義太夫は感情表現が豊かでいいですね。

仁左衛門の八汐が怖かった。(眉毛のない白塗りにお歯黒で、表情も怖い!)でも、まるで見え見えの因縁のつけ方で、かえって表情の変化が面白くて憎めないようなところもありました。ホントは悪者に徹しなきゃいけないんじゃ?だけどああいう役って楽しいだろうな

女の世界から一転して、荒事を見せる「床下」。そして仁木弾正の登場。一言もせりふがないのに、その風格で見るものを圧倒する場面。これも通常の演劇を見る感覚だと、何のことかさっぱり分からないと思います。こういうところが歌舞伎独特、という世界なんでしょうね。去年の「絵本太功記」光秀役を降りて以来、病気療養の後1年ぶりの團十郎。妖気ただよう花道の引っ込みでした。

そして「あきる野座」でことし上演した、問注所対決の場。これは弾正一味の悪を訴え出た忠臣と、ピンチになった彼らを立て板に水の弁舌で救うヒーロー細川勝元のお話です。動きの変化のないせりふ劇で、しかも緊迫した場面。へたくそだとお客さんは寝ちゃう。こんな難しい出し物によくぞ挑戦したものです。(そんな私も「長々しき講釈」のところで一瞬寝てしまいましたが)さすがプロ!と感心したことは、つまらないことですが、このずーっと正座で座ってなきゃいけない場面。みんなちゃんと座っているではないか!「あきる野座」の人々は誰一人長い正座ができなくて、みんな“あいびき”(正座のとき足の間に入れてお尻を乗せる箱)を使っていたのに。

私も「絵本~」の十段目光秀の母役で、ず~っと座ってなきゃいけないのを(結構つらいです)やったことがありますが、あれは座布団の上だったからまだいいし、最後に死んで倒れこんで終わりなので、いくら足がしびれてもどうということはなかったのです。だけど、これは板間に正座で、長時間座ったあと最後に立って歩いて引っ込まなきゃいけない。これがみんな大変でした。現代人は長時間の正座が必要になることって、日常生活の中でそんなにないですからね。さすがプロの役者さん、と変なところで関心してしまいました。

が、山名公役の人、あまりせりふが入ってないようで、上手側の桟敷席からだと、屏風の陰のプロンプターがせりふを読んでるのが丸わかり!プロでもこういうことはあったんですね。

さいごの「刃傷」は立ち回りといい、弾正のかっこよさ(悪者がかっこいいという歌舞伎の不思議)はさすがでした。

今回、普段細切れで(ひとつひとつ独立してというべきか)上演されるものを通しで見て、このお家騒動のストーリーの全容がよくわかりました。でも、他のものもそうですが、歌舞伎ではどうして通しで上演されることが少ないのでしょうね。バレエだったらいやじゃないですか。白鳥の湖のオデットと王子の出会いのシーンのあとに、いきなり休憩はさんでドンキホーテのキトリとバジルの結婚式の場を見せられたら!あの話はどうなったのよ!って思いません?三幕構成で、ジゼル1幕と、くるみ割り人形2幕と、シンデレラの3幕なんて、そんなごちゃ混ぜ見たくないですよ。

今回も、このあとにまだ三津五郎の舞踊があったのですが、一体なぜ??通しでやるならこんな舞踊(失礼、でも内容のことじゃなく)入れないで、カットした「ままたき」の場面を入れたらよかったんじゃ??どうもよくわかりませんが、歌舞伎の世界って、筋を通すとか、筋をつなぐとか、そういうことは余り考えていない世界なんでしょうか。その時々の役者さんの華やかさとか、そういうものを中心に見せる世界で。でも、現代人向けに、もっと筋書きがよくわかるような通し上演をたくさんやってほしいと思いました。

ほんとに余談ですが、その前に息子の学校の芸術鑑賞会で、歌舞伎座に同じものを見に行っていたのです。「どうだった?みんな寝てなかった?」と聞いたら、イヤホンガイドのおかげで、みんな真剣に見ていたよとのことでした。「でもさすがに最後の舞踊は寝たでしょ」と言ったら、何と、その舞踊を一番真剣に見ていたというのです。それで、普段は使わないのですが、イヤホンガイドを久々に借りてみました。

聞いてびっくり!その舞踊の解説といったら、常磐津のちょっと色っぽい歌詞をそのまま現代語に訳してずーっとくそまじめに語っているのです。くるわ通いでなじみになった遊女との痴話げんかの内容とか、色事に身を滅ぼした男の身の上話で、14のときに隣の人妻から手ほどきを受け、それから裏のかみさんむこうのおばさんという遍歴の話。聞いていてふき出しそうになりました。子供たちにしたら、寝ているどころじゃなく、きっとびっくりして大きな目を開けて三津五郎さんの軽妙な踊りを見ていたんでしょうね。想像するとおかしくて仕方がありませんでした。先生方もきっと驚いたことでしょう。バレエでいえばロミオとジュリエット全幕のあとに、何かモダンのおちゃらけたやつを見せられたような感じで、もういいよってところですが、歌舞伎ではこういうのもありで、面白い世界なんでしょうか。

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コメント

お久しぶりです。桟敷席ですか、あそこは見るより見られるところですね。私も一回行ったことがあります。あそこでお弁当の出前を取って食べるのが夢(下らぬ夢!)でしたのでお寿司を注文しました。ところがのんびりしているうち幕が開いてちょうど勧進帳なので目の前の花道に山伏たちがこっちをむいて並ぶし舞台の長唄連中もよく知っている人たちなので見られているみたいだしとても食べられません。大失敗でした。孫娘が大きくなったら和服で一緒に行きたいというのが今度の夢です。

投稿: naojiro | 2006年11月26日 (日) 11時23分

naojiroさん、お久しぶりです。
たまに、naojiroさんの素敵な絵を拝見させていただいていました。
桟敷席も西側だと、花道にずらっと並ぶのを正面で見るのは圧巻でしょうね。
お弁当は食べにくいでしょうが。
私は東側だったので、そうでもなかったかな。
お孫さんと和服で観劇なんて、優雅な夢ですね!

投稿: 友香梨 | 2006年11月26日 (日) 23時29分

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