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2008年5月14日 (水)

東海道四谷怪談

この間見た「團菊祭」の「白波五人男」の話を、歌舞伎をあまり知らない人にすると、やっぱり「何それ~?五人男、歳行き過ぎ!」「どうせ勢揃いするならもっと若い子がいいよね」という反応でした。歌舞伎のことをよく知っている人だったら「すごい顔ぶれね」とでもいうのでしょうが。それでもまあ歌舞伎座のお客さんの年齢層(70代~80代もけっこういらっしゃるようですし)からすれば、50代~60代はまだまだアイドル?なのかもしれませんね~(?!)050

バレエのほうは、特に見たいというものも7月までないので、今月は勉強で?歌舞伎を見ようと決めました。今度は新橋演舞場の五月大歌舞伎夜の部「東海道四谷怪談」です。私は今まで歌舞伎は好きだけど、そんなにいろんな演目は見ていなくて、見たものもかなり偏っていました。なので、この機会に有名なものはとりあえず見ておこうと思ったわけです。特に「通し狂言」なら歌舞伎入門にはちょうどよいですから。

「四谷怪談」は言わずと知れたお岩さんのお話です。だからお化けの話、「うらめしや~」の世界だと思っていました。映画なんかで見るとリアルで、怖くて、もうやめて~!という感じだったと思いますが、歌舞伎では周囲のいろんな人間模様が描かれ、ただ怖いだけでなく現代に通じるところもあり、とても興味深く見ることができました。特に忠臣蔵の裏話として書かれているところ、その対比(忠義と非道)も面白いと思いました。

初演は先日見た「白波五人男」の37年前、文政8年(1825年)。異国船打ち払い令が出た年です。江戸の爛熟した文化にも影が見え隠れしだし、そろそろ幕末にさしかかろうという時期。そのあとに天保の改革、大塩平八郎の乱と続くように、もうどうしようもなく世の中が行き詰り始めた時代だったのだと思います。悪者がかっこいいという歌舞伎の世界で、特に「四谷怪談」の民谷伊右衛門は「色悪」の代表と言われていますが‥‥現代人の目からはどうでしょうか。多分もう、こんなの信じられな~い!という主人公像だと思いますよ。

そもそも何で今、夏でもないのに「怪談」なのか。見てみると、実際とんでもない話です。突っ込みどころが多すぎて、笑っちゃうくらいなところもあります。そうやって茶化してしまえばそれまでなんですけど、何だろう?これってすごく今の時代を映し出しているような、そんな気がして一瞬ゾッとしてしまいました。

実際ここ数ヶ月間、ものすごく世の中は揺れています。後期高齢者医療制度、道路特定財源、物価上昇‥‥そして中・高生を狙った犯罪や、相次ぐ自殺。私は最近ほとんどワイドショーとかを見なくなったのですが、どんなことが騒がれているのかを考えるとますます見る気がしなくなります。何だかいよいよ世の中が行き詰って「幕末」のような様相を呈してきたという感じです。人々が欲得で動き、刹那的に罪を犯し、それを毎日伝えるマスメディア。常識的な価値観が崩れて、なんでもありの世界になっている。そんな今の時代そのものが「怪談」のような世界なのかもしれません。

そういう意味ではとても面白く、今月は歌舞伎座の「白波」より、演舞場の「怪談」に、わたし的には軍配を上げちゃいました。とはいうものの‥‥‥。

「東海道四谷怪談」はベースに赤穂浪士の話があり、登場人物もやたら多く、関係も複雑で、人物相関図を見てもついていけなくて前回のような幕ごとのあらすじはあと2回ぐらい見ないと書けそうにありません。なので気が付いたところだけを重点的に書くことにします。

序幕 第1場浅草観音堂の場~第4場裏田圃の場
お岩の父、四谷左門は塩谷判官(赤穂藩、浅野家)に仕えていた武士で、お家断絶のあとは浪人して日々の生活もままならない。妹のお袖は昼は小間物屋で働き、夜は地獄宿(今で言うマンション何とかか?)に出て客を取っている有様。お岩自身は同じ赤穂出身の民谷伊右衛門と夫婦になり、お腹に子供までいるのに、伊右衛門が御用金を横領して逐電した悪者ということで父左門に連れ戻され、離縁させられています。(それなのに最初に出てきたときは、ゴザを持ってまるで「夜鷹」?みたいでしたけど‥)

伊右衛門は最初の場面でチンピラにからまれている左門を助け、お岩との復縁を願い出たりするのだけれど、悪事をなじられかっとなって左門を殺してしまいます。当の左門殺しの下手人のくせに、嘆くお岩に殊勝な顔をして「父の仇を討ってやるから」といって、二人はよりを戻します。

一方妹のほうは、やはり元赤穂の直助というもう一人の悪党に言い寄られています。お袖は相手にしないのですが、それならと、夜お袖が出ているという地獄宿にやってくる。わけがわからないのですが、地獄宿では客のダブルブッキングでトラブルになってしまいます。直助のほかに来た客というのが、最初暗くて顔が見えなくて、お袖は許婚者に操をたてるため客は取れないという(??)のだけれど、それがよく見ると許婚者の与茂七。お互いに「何でこんなところにいるんだ?」となってしまいます。(何で?とはこっちが聞きたいです。)直助のほうはお袖に振られたばかりか、与茂七にお袖との仲を見せ付けられ腹の虫が収まりません。直助は与茂七を殺そうとあとをつけていきます。

この与茂七は、商人に化けてはいるけれど、実は主君の仇を討とうと、高師直(吉良上野介)を狙っている一人なのです。この日も仲間と連絡を取るために町外れに行って仲間の庄三郎と落ち合うのですが、そこで気付かれないようにと庄三郎と着物を交換していきます。そこへやってきた直助は、与茂七と思いこんで庄三郎を殺し、証拠を消すため顔までつぶす残忍さ。よりによって伊右衛門に殺された左門と、直助に殺された与茂七(の着物を着た庄三郎)の死体が並んでいるところへお袖とお岩がやってきて、互いに泣き崩れるのです。

これだけで「そんなばかな~!」なんだけど、ここで仇を討ってやるとか何とか言いくるめられて、お岩と伊右衛門は復縁し、お袖は直助と仮の夫婦として暮らすことに。え~!?だよね。もっとよく調べなさい!って言いたいです。とっさにかっとなって、簡単に殺してしまうのは今もよくある殺人の動機。だけど当の下手人が、被害者家族をまんまと言いくるめて思い通りにしてしまうなんて、唖然です。

二幕目 第1場伊右衛門浪宅の場~第3場
伊右衛門とお岩が住むうらぶれた貧乏長屋。伊右衛門は浪人らしく傘貼りをしています。お岩は子どもを生んで、産後の肥立ちが悪くて臥せっている様子。離縁されているところをわざわざ親を殺してまた一緒になったのに、「面倒な餓鬼まで生んで」とはひどい言い草ですよね。どうやらお岩はあまり大事にされていないようです。

そこへ薬を盗んだといって小平が引っ張られてきたり、借金取りが来たり、いろいろ忙しいのだけれど、隣の伊藤家の使いも出産祝いを持ってやってきます。大体こんな超ボロい長屋と隣りあわせでお金持ちのお屋敷があるのも信じられないけど、そのお金持ちの家が、ただの浪人の伊右衛門に、酒や着物や産後の薬、お金まで出産祝いにくれるなんて、どう考えても変ですよね~。

伊右衛門はお岩に促されて隣の伊藤家にお礼を言いに行くことにします。このとき、粗末な着物では行けないと言うと、お岩は奥から羽織を出してきます。どんなに貧乏しても、何かあったときのためにこれだけは質に入れずにとっておいたというお岩。武士の女房としての心遣いがわかります。お岩は名前のとおりとても賢くて堅実な人なのです。それをまた伊右衛門はうっとおしく思っていたりするわけですが。

舞台が回って、隣の伊藤家の豪華なお屋敷。ほんとに貧乏長屋と背中合わせなんですね()実は伊藤家は高師直の家臣なので、伊右衛門に近づいたのも塩谷の浪人の動向をうかがうためかもしれませんが、一番の理由は、何と孫娘が、隣の伊右衛門に惚れてしまって、もうどうしようもないというのです。孫娘かわいさにお岩と別れて婿になってくれという伊藤喜兵衛。もうむちゃくちゃ!でも、こんな常識はずれの溺愛親ばか(爺ばか)って、現代でもありそうですね。

伊右衛門は悪いやつだけれど、一応「お岩がいるからそれはできない」と言うんですよ。おやおや、根っからとんでもないやつでもないみたい。でも、それを言うと孫娘のほうは「叶わないなら私は死にます」といってまたまた刃物を出す!またまた、というのはこの間の「白波五人男」にも同じようなシーンがあったから。全く歌舞伎に登場する若い娘というのは、みんなどうしようもないわがまま自己チュー娘ばっかりです!

ところが、喜兵衛は「実はお宅の奥さんに、産後の薬だといって毒を盛ってしまった。今頃はその毒が効いて醜い姿になっているだろうよ」というの。驚いた爺さんです。あきれました。伊右衛門は覚悟を決めて娘の婿になるといいます。喜兵衛は喜んですぐに婚礼だといい、伊右衛門にお金を与え、仕官もさせてやろうといいます。貧乏浪人ゆえに金と仕官に目がくらんだ伊右衛門よりも、お岩に毒を盛って無理やり意を通そうとする喜兵衛のほうがずっと悪者だと思いませんか。

またまた年齢の話で申しわけないんだけれど、伊右衛門役の中村吉右衛門さんは63歳。何だかね~。いくら女房子持ちでも、隣の16の娘が死ぬほど惚れるくらいなんだから、どう考えても30以下の役だよね。吉右衛門さんはそれなりにかっこいいんだけれど、やっぱり年相応で、それほどまでの色男には私には見えないんだけどなあ。対するお岩役の福助さんはまだ40代なのにどうしてあんなに老けて見えるのかしら?産後すぐの若妻のはずなんだけどね~。(52歳のお袖役、芝雀さんのほうがずっと若く見える‥‥眉毛のせい?)まあビジュアル的にはいかんともしがたいので、もうそういうものとして純粋に「芸」を見るしかないですね。

伊右衛門の留守中に、お岩はもらった産後の薬を飲みます。私は実はこの薬を飲む場面に一番感動してしまいました。産後で具合が悪く、本当につらそうで痛々しいお岩の立ち居振る舞い。わらをもつかむ気持ちで、薬を押し頂き、ありがたがって、心底うれしそうに、感謝して飲むその姿はいじらしく、涙が出てしまいました。老けてるなんて書いちゃったけど、この場面は本当に福助さんが純粋無垢な少女のようで、かわいらしくすらありました。

ところが、薬を飲むとすぐにお岩は苦しみだします。この辺からがさらにすごいです。伊右衛門が家に戻り、お岩の変わりようにびっくりするのですが、悪に加担しているから、それは気付かないふりをしてるのです。もちろんお岩も自分の顔がひどくなったなんて気がついていません。変わり果てたお岩に、お前が死んだら若い妻を娶るんだとか何とかいって引導をわたし、さらに質草が必要だといってお岩や子どもの着物を剥ぎ取り、吊ってある蚊帳まで持って行ってしまう。蚊帳ばかりはと懇願するのは、弱い赤ん坊が蚊に刺されたら伝染病になったりするので、蚊帳は必需品だったのでしょうね。

お岩が泣くのも聞かず、蚊帳も奪い取ってしまいます。そのとき抵抗したお岩の爪がはがれて痛そう  かわいそう!本当に凄惨な場面です。伊右衛門はさっさと行ってしまいます。さっきあれだけお金をもらっておきながら、どうしてそんなにきれいじゃない着物や、ボロい蚊帳まで取りあげていくんでしょうね。大した金にもなりそうにないのに。まあ、そんなふうに突っ込んでも、歌舞伎はもう理屈じゃないんですね。そうやってどんどん悲惨な情況へと観客をいざなおうとしているのでしょう。だって、次の場面で鏡を見たりお歯黒をつけたりするんですよ。鏡や化粧道具のほうがよっぽど金目じゃないですか?だけど化粧道具を持って行かれちゃったらそのあとの話が成り立たないですからね

外へ出て入れ違いに戻って来た宅悦という按摩。別に目が不自由な人ではありませんが、民谷家に出入りして何かと世話をしているような人です。伊右衛門はこの宅悦に金を渡し、お岩に不義をもちかけてどこかへ連れて行けと脅します。全く、自分で始末をつけない卑怯な男です。困ったのは宅悦。先ほどひどい形相のお岩に驚き、油を買ってくるといって逃げ出したのに、今度はそのお岩をどこかに連れて行けなんて、ひどすぎる。宅悦はお岩の変わりように改めて驚き、不義をほのめかしてもはねのけられ、困り果ててお岩に本当のことを話してしまいます。

びっくりしたのはお岩ですよね。ありがたい薬と信じて、拝む気持ちで飲んだ薬が毒薬だったなんて。そして伊右衛門の裏切り、隣家のひどい仕打ち。鏡を見て2度「ひぃ~っ」と声を上げて驚いたお岩。ここからはもう目が据わっていました。宅悦の止めるのも聞かず、伊藤家へ礼を言いに行くのだというお岩。そこで「せめて女のみだしなみ」と、通常産後はやらないというお歯黒をつけ、髪をすくのです。ああ、それが何とも恐ろしい!

最初は悲しげなのですが、髪がごっそりと抜けるたびに驚き、だんだんすごい表情になっていくのです。(「みだしなみ」というならやらないほうがいいのに‥‥)次第にお化けの形相に変貌していく様は、痛ましくかわいそうだけれど、放心したような哀しみの表情と交互に見せる恐ろしい恨みの形相に、伊右衛門への愛情の裏返しのようなすごさが感じられました。

このときの宅悦役の歌六さんもすばらしかった。まだそんなお年ではないのに、なぜか老け役が多い方のようですね。この味のある役が決まるか決まらないかで、お岩の印象もかなり変わってきてしまうと思います。宅悦は「いい人」ではありませんが、根っからの悪者でもありません。どんどん恐ろしくなっていくお岩への怖がりようもさることながら、お岩に対しての哀れみや同情の気持ちも多く出ているのです。滑稽さと悲しさ。もう、その演技にうなってしまいました。

お岩は宅悦ともみあううち、柱に刺さった刀で喉を突いて絶命してしまいます。帰って来た伊右衛門は先ほど来、縛って押入れに押し込めていた??薬泥棒の小平を引き出し、(これが福助さんの早替わり)お岩殺しの罪をかぶせて殺し、二人の死骸を戸板に打ち付けて川に流してしまいます。あらまあ、ずいぶんお仕事が早いのね‥‥‥。

そこへ隣の喜兵衛と嫁の孫娘が来て、今夜はここで新枕だというのです。も~、あんな立派なお屋敷に住んでいる人が何でわざわざこの汚い貧乏長屋に来るのさ??それもたった今お岩が憤死し、小平を殺した流血の現場でよ!この倒錯した感覚が信じられません。過保護の喜兵衛は屏風を立ててここで寝るといい、伊右衛門と娘はさっきまでお岩が苦しんでいた奥の間に入っていきます。信じられな~い!

ところがそこへお岩の怨霊が出てきます。今度はお化けみたい、じゃなくて本物のお化けになって。おのれお岩、迷うたな!と刀を振り下ろす伊右衛門。ところが落ちた首を見ると、それは花嫁の首でした。驚いた伊右衛門が喜兵衛のところへ行くと、今度は屏風の影から殺された小平の亡霊が現れる。また夢中で首を斬り落とすと、それは何と喜兵衛の首!あなおそろしや~!このときの伊右衛門、もっと強い恐怖と狂気が見えてもよかったなと思ってしまいましたが、意外に平静な伊右衛門でしたね。いや~この幕、息をもつかせぬ緊張感で、本当に面白かったです。

三幕目 隠亡堀の場
父と娘を伊右衛門に殺害され、お家はお取潰し。屋敷も取り上げられた伊藤家の後家お弓は、乞食に身を落として隠亡堀のはたに住んでいます。(しかし、極端だな~!)やはり常識というものはいつの世でも必要なんでしょうね。たとえ窮乏してもお岩の父、四谷左門は常識の人でした。だから伊右衛門を悪者だと思ったら、一切娘を近づけなかった。一方、伊藤喜兵衛のほうは孫を溺愛する余り、隣の浪人の妻に毒を盛ってまで性悪男を婿にしようとしたのです。大体そいつが婿にふさわしいかどうかなんて、顔見りゃわかるでしょうが!こういう常識を逸した行動が、お家の滅亡につながるのよね!(なんて、私が怒ってもしょうがないけど)
現代もそうですよ。常識を持たない人が跋扈する世の中。恐ろしいですね。

ここで最初に出てきた直助と伊右衛門が再会するのだけれど、実は直助とお岩の妹お袖の話も1幕分ぐらいあって、今度の上演では割愛されているので、直助とのことは置いておきます。直助は名前を変えてうなぎ掻きになっているのですが、ここでうなぎをとっていると、髪の毛やら、お岩が使っていたべっ甲のくしなどがかかってきて、気味の悪さをかもし出しています。

土手の上では喜兵衛殺しの下手人として追われている伊右衛門と、その母のやりとりがあります。何と母は、伊右衛門の名前を書いた卒塔婆を立て、世間に伊右衛門が死んだと思わせようとしているのです。ああ、ここにも一人常識を逸した親ばかがいましたね。母は昔、高家に奉公したことがあり、困ったときには頼ってくるようにという師直のお墨付を持っています。それを伊右衛門に渡し、これを持って行って仕官しろというのです。とんでもない親ばかですね。

このあとこの卒塔婆を見たお弓は、仇が既に死んでいたのかと悔しがりますが、すぐに伊右衛門に川に蹴落とされてしまいます。そのあと「首が飛んでも動いてみせるわ」の名台詞でしたが、どうなんでしょう。吉右衛門さんの伊右衛門はそこまで豪胆な極悪には見えませんでした。逃げたり、その場を取り繕ったりするために、成り行き的に人を殺してしまう、そんな感じでした。

そうこうするうち戸板が流れてきます。それを引き上げると(わざわざ引き上げるなよ~!)何とお岩の死骸が貼り付いていて「うらめしや~」と言います。驚いて裏返すと(裏返すなよ~!)今度は小平が「ソウキセイ(盗んだ薬)をください~」と言う。これが有名な「戸板返し」ですか。お岩と小平は早替わりです。一体どうなっていたのでしょうね。小平が消えると、今度は骸骨が現れて、それがばらばらになって川へ落ちて行きます。

このあとで直助、殺された小平の女房お花(福助早替わり)、与茂七がやってきて「だんまり」になります。この「だんまり」とか「蛇篭」の意味がよくわからないのだけれど、登場人物をスローモーションで見せるファンサービスと、手探りで戦ううち、必ず何かを取り違えるというのがお約束のようです。ここでは与茂七の持っていた廻文状と、直助のうなぎ掻きの棒がすりかわり、このあとのストーリーへと発展していくのですが、そこの部分は今回はカットされていました。

大詰 第1場蛇山庵室の場~第2場仇討ちの場
伊右衛門は、蛇山庵室に隠れ住み、お岩の亡霊に悩まされ、病の床についています。この場はただただお岩の亡霊が提灯抜けや仏壇返しなどをして、見るものを怖がらせるところですね。仕掛けが古典的すぎてそんなにコワイ!というものではないけれど、すっかり気弱になった伊右衛門がちょっとかわいそうな感じもします。因果は恐ろしい。

最後は錯乱した伊右衛門を捕り手が囲み、それを退けると今度は与茂七とお花が伊右衛門を捉え、見事仇を討つ、その手前のところで正座してごあいさつとなります。なぜかこういう終わり方もけっこうあるのですね。仇を討ったところで終わりにすると縁起が悪いからでしょうか??

この大詰のシーンは、お化けの話なので夏として上演されることが多いそうですが、本来は雪景色のシーンで、今回もラストは雪景色でした。なぜかというとこの大詰で悪人伊右衛門を討ったあとで、四十七士は高家(吉良家)へ討ち入りを果たすのです。非道の悪人の最期と、見事忠義の本懐を遂げた志士たちとの対比がすばらしい。やはりここは雪景色であるべきなのですね。

かなり長くなってしまいましたが、とても面白い演目でした。また意外にも外見老けてる(ごめん!)福助さんがすばらしい演技で堪能しました。何と、プログラムの上演記録を見ると福助さんのお岩は初めてだったんですね??とてもこなれていて、そんなふうには見えませんでした。

この上演記録というのが結構面白くて、今まで「四谷怪談」は数年置きに上演されていますが、一番多くお岩を演じたのは勘三郎さんで、伊右衛門は橋之助さんのようです。橋之助さんの伊右衛門はかっこいいだろうな~。それよりも、昭和58年に1度だけあったのが当時39歳の仁左衛門さんの伊右衛門と、当時33歳の玉三郎さんのお岩!これ、いい!すごく見たかったなあ。。きっと美しかったことでしょうね。こんなふうに若手が揃うのはあまりないことかもしれませんから。

今月は、いつも年1~2回しか行かない歌舞伎を2回も見に行ってしまいました。何だか見始めると楽しくてくせになりそうです。でも、スーパー歌舞伎にはまった!という感覚とは違います。やっぱりミーハーのエネルギーとは、どこか違うものがあるのでしょうね。ミーハーの私としては「ヤマトタケル」また見たい!来月の名古屋は、いつの間にか新幹線乗って見に行っているかも??です。そんな、恐ろしい‥‥‥。

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