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2008年7月18日 (金)

ABT初日「オールスター・ガラ」

超満員の東京文化会館でした。休憩中のホワイエは人があふれていました。そして皆様のお目当ては何といってもニーナ・アナニアシヴィリだと思います。1部の最後のドン・キホーテのグランパ・ド・ドゥはもう満員の会場が割れんばかりの拍手。1年ぶりのニーナの姿を見ただけで感動しちゃって、もう涙出ちゃいました。本当に見られて幸せ!ニーナ、本当に来てくれてありがとう!踊ってくれてありがとう!

いきなり興奮しちゃいましたが、昨日のアメリカン・バレエ・シアターの初日「オールスター・ガラ」よかったです。ロイヤルを見たあとで見ると、ABTのダンサーたちはなんて細身で手足が長くてスタイルよいんでしょう!ほんとに脚太い人なんて一人もいませんでしたよ~!加治屋百合子さんも唯一の日本人(東洋人は何人かいるようですが)ダンサーとして頑張っていました。彼女もほかの面々と引けをとらないスリムさでしたね。ほんの数日のうちに(両方とも1公演しか見ていない私が言うのもおこがましいけど)イギリスのバレエとアメリカのバレエの対比を見たような気がします。

「ラ・バヤデール」第1幕のパ・ダクシオン
何かと思ったらソロルとガムザッティの華やかな婚約式の場面でした。好きなシーンです。舞台セットはないものの、後ろにはコールド(オウムじゃなくて団扇を持っている)の人々が椅子に座って並んでいます。オリエンタルな衣装の男性も数人後ろに控えているし、4人×2のソリストたちも入ってそれなりに華やか。

ソロルはデイヴィッド・ホールバーグでガムザッティはミシェル・ワイズ。両方とも初めて見る人です。婚約式なんだからもうちょっとうれしそうにしてもいいはずなのに、ワイズはず~っとおすまし顔でにこりともしません。高貴な姫君だからでしょうか?それがちょっと不思議でした。ホールバーグのほうはソロル役ですから、ニキヤという恋人がいながら藩主の命に逆らえずにガムザッティと婚約したわけですし、これから悲劇が待っているのですから、ここでにこにこしてたら変ですよね。(でも、今年のレニ国のコールプは何をたくらんでいるんだ~!?というくらい満面の笑みでしたが‥)ときどき後ろめたそうな、不安そうな表情やしぐさがあり、「バヤデール」の一場面を見るようでした。

ワイズはほとんど感情というものが表に出ないし、表情も硬いけど、まあきれいなお姫様。ホールバーグも金髪サラサラの貴公子という感じ。最初からいきなり眼福です。振り付けはオーソドックスなマカロワ版で、あの足技バタバタのロイヤルを見たあとだと、何とも優雅でほっとします。(散々な言い方!)でも、衣装もバックも違うけど、バヤデールというとやっぱりルジ様を連想してしまうのが悲しい‥‥。あの表面は幸せそうにつくろいながら、いつニキヤが現われるかと、指先までピリピリしたような緊張感のある戦士ソロルはもう見られないと思うと‥‥ごめんなさい、超・蛇足でした。

「マノン」第1幕のパ・ド・ドゥ
寝室のパ・ド・ドゥといったっけ?去年フェリが踊って、そのリフトの多彩さ、流れるような優美さ、感情表現=身体表現の妙に目から鱗ものだった演目です。すぐそれを思い出したのは、上手の小さな机に向かって書き物をしているゴメスが、あのときのボッレにそっくりだったから。顔、似てません?どうでもいいけど ^ ^ ;

ュリー・ケントも素敵でした。相変わらず鶏ガラのように細い‥‥(失礼!)彼女の場合は顔だけ見るともっとゴージャスなボディ(叶姉妹みたいな??)を想像するし、首から鎖骨にかけての筋の出方が痛々しい感じがしちゃって。「海賊」のビデオを見て、あんな胸ぺタンコで栄養失調みたいな女、何の魅力もないわと(デブのひがみ)思っていたけれど、実際舞台で見るとこれが夢見るように美しいんですよね。バレエというのは現実の世界と違って、ある意味夢の中の世界だから、彼女の輝くような美貌と華奢な体のミスマッチは絶妙なんだと思います。

その華奢な身体が壊れそうなほど、次から次へといろんな形でリフトされ、振り回され、愛に生きる歓びを表現していく、こんなバレエもあるんだわ~。何だか見入っている間にあっという間に終わってしまって、もっと見ていたかった。

「白鳥の湖」第2幕のグラン・アダージオ
今年の冬の「マラーホフの贈り物」で、見事なパートナーシップで魅せてくれたイリーナ・ドヴォロヴェンコとマキシム・ベロセルコフスキー(相変わらず舌噛みそうだ)ご夫妻。このお二人は身長のバランスがベストで、チラシにあった「白鳥の湖」の写真の二人の姿の美しいこと。ポワントで立ったイリーナが背中をそらせてマキシムの肩にもたれかかり、上を向いた二人の横顔の位置がぴったりと決まる。そういうバランスの美しさをアダージョの随所に感じました。

私は特に夫君のマキシム様が(入力が大変なので名前で呼ばせて!)とっても好みということに気がつきました。スタイルはバレエダンサーとしてはそんなによいほうではないし、顔だってちょっと渋くてオジサンくさいと思うけど、もう、冬に見た「くるみ」と「黒鳥」のグラン・パのあの笑顔だけでメロメロになりました。残念ながらこの演目では素敵な笑顔というわけにはいきませんね~。それに、王子はほとんど支える以外何もしないんですよね  でも、やっぱり全身でオデットへの愛を表現しているような、そのひたむきな感じが素敵でしたよ~。

しかし、ここの場面のコールドって意味あった?初日で間尺がわからないのか、何だか揃ってないしフォーメーションが変わるときももたついていて、気になって集中できないので最後のほうはもう見ないようにしてました 「白鳥の湖」の本公演のほうは大丈夫ですよね?この二人の全幕も見たかったけれど‥‥(違う日にしてしまいました)ここでアダージョだけでも見られてうれしかったです。

「シナトラ組曲」
プログラムによるとバリシニコフの人気演目だったそうです。黒のバックには星が輝き、都会の夜の街角のような雰囲気。黒のスーツ姿のマルセロ・ゴメスと、黒のキャミソールドレスにハイヒールのルチアーナ・パリス。社交ダンスのようでいて、難しいリフトも満載の粋な演目でした。どこかで聞いたことがあるような(曲名は「マイ・ウェイ」ぐらいしかわからなかったけれど)フランク・シナトラの歌(懐メロ?)に乗って、ノンストップで踊り続ける二人はそれなりにカッコいい。ABTならではの演目だったと思います。

「ドン・キホーテ」第3幕のパ・ド・ドゥ
歌舞伎だったら「待ってました!」と掛け声がかかるところですね。もう、ニーナの登場の瞬間から、今まで見たものを全部忘れちゃうくらいの興奮。その大輪の花のようなオーラは少しも変わっていないうれしさ。それに、オペラグラスで見ていたら何ていう表情でしょう!相手役のホセ・カレーニョに対し、ものすごいいたずらっ子のような目つきで笑いかけ、「さあ!いくわよっ!」てな感じ。早くも丁々発止の展開が予測され、この瞬間からもうニーナに釘付け!

ニーナに関しては踊りの細かいところがどうこうじゃないですね。表現力なんて言葉もなし。だって彼女がキトリそのものだから。もう何百回もこの演目を踊っていることでしょう。その中で自然に役の中に溶け込んでいった、そういうものだと思います。緩急のつけ方が絶妙。魅せ方を熟知しています。バランスは今回短かったけれど微動だにせず。伸び伸びとした肢体が踊りにおおらかさを与え、相変わらずの美しさでした。

本来はアンヘル・コレーラと踊るはずでしたが、コレーラの怪我で急遽ホセ・カレーニョになりました。コレーラの「ドン・キ」は見たことがなかったので、楽しみにしていましたが、カレーニョもすごくよかったです。

去年フェリ引退公演でパロマ・へレーラと「ドン・キ」を踊ったのを見ましたが、本当に自然体で何も気負いがない感じなのに、すごくさまになっていて驚いたものです。この超絶技巧といわれる演目は、スペインらしさを出すために、動作の一つ一つをメリハリよく決めようとしたり、カッコつけて見得をきったりする人が多いのですが、カレーニョにはそんな力みは全然なく、軽~くそのまんまで踊っているようです。それが憎いな~。見た目重量ありそうなのに(!)本当に軽~いんですよね。

ニーナのグランフェッテは最初は両手を腰に当てて、次の8小節は左手でスカートを持って、半分以降は普通に回りました。ダブルも何も入っていないシンプルなものでしたし、DVDに残っているような全盛期の超高速回転のようなフェッテではありませんでしたが、きっちりと回りきりました。ちょっと会場から手拍子が出かかったけれど、ニーナだったら手拍子しちゃってもよかったな~と思ったりもしました。そのあとはルべランスなしで、間髪をいれずカレーニョの回転に続き、ニーナの高速シェネ、最後は走って飛び込むダイブも決まりました。もう最高!

会場は割れんばかりの拍手。まだ第1部なのに立ち上がっている人もいました。もう、このまま帰っちゃってもいいくらい、ほんの10分間のグラン・パなのに、こんなに観客を惹きつけるニーナ。とにかくニーナ自身がとても楽しそうに踊っていて、大満足でした。

「ラビット・アンド・ローグ」
休憩をはさんで、さきほどの「シナトラ組曲」と同じトワイラ・サープ振り付けの新作。衣装はノーマ・カマリだそうです。イーサン・スティーフィル扮する「ならず者」と、エルマン・コルネホの「紳士」はともに黒のユニタードに銀色のラインが入った衣装で、裏と表みたいな関係なのかしら。イーサンって、しばらく見ないうちにオジサンっぽくなったなあ。ちょっとバリシニコフに似た雰囲気を持っている人です。踊りのキレはコルネホのほうが上かも。

最初はこの二人と黒い衣装の人たちが踊りますが、ジリアン・マーフィーとデイヴィッド・ホールバーグのカップルが出てきたら、今度は白い衣装の人たち。そしてもう一組パロマ・へレーラとゲンナジー・サヴェリエフのカップルが出て、今度は銀色の人たち。あまり意味がわからないのだけれど、小粋でおしゃれな感じのダンスでした。

だけどこれ、45分は長かった~途中で何回か寝そうになりました。いや、数分、寝たかもしれません。加治屋百合子さんは「カルテット」という、二組のカップルのうちの一人で、黒のセパレーツになった衣装(細いのにすごい腹筋を見ちゃった)と、銀色の水着のような衣装の2種類の衣装で踊りました。踊りはきれいでしたが、眠気には勝てませんでした。ゴメンなさい!

最後に全員集合すると、結構な人数がいたのに驚きました。でも正直、終わってほっとしたくらい長かったです。

初日はとにかくニーナで楽しみました。本当にあの存在感、強烈な華は何ものにも変えがたいですね。来シーズンいっぱいでABTを退団するそうですが、引退ではなく、自らが芸術監督を務めるグルジア国立バレエの活動に専念するためだそうです。

同年代のフェリは引退し、ギエムもコンテンポラリー中心の活動になっている中、ニーナだけはクラシックで真っ向勝負していますね。クラシックを踊る身体を維持・調整するにはものすごい努力が必要だと思いますが、まだまだ踊ってくれそうですよ。プログラムの最後に広告が入っていたのですが、それを見てさらにびっくり!

2010年2月 ニーナ・アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエ
アナニアシヴィリが悲劇のヒロイン、ジュリエットを華麗に舞う!

だそうです。2010年っていつだ~!?「2010年宇宙の旅」という映画を見た頃はえらい未来だと思っていたけれど、もう再来年が2010年なんですね。だけど鬼が笑うどころじゃないわ。本当に頼もしい人ですね~。だからニーナ大好き 明日の「海賊」もとても楽しみです。

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コメント

お久しぶりです。
時々来てもROMばかりで申し訳ありませんでした。
こちらのブログはバレエのレビューなど衣装や
背景まで、細かく描写されているので、
とても参考になります。
そしてたくさんの公演をご覧になっていて羨ましいです。

ロシアとイギリスとアメリカ、で大分雰囲気も体型も違うんですね。
私もABTはいつか生で見てみたいです。

投稿: ゆるり | 2008年7月23日 (水) 21時26分

ゆるりさん、コメントありがとうございます。
そして時々見てくださっているとのこと、とてもうれしいです。

私も今までずいぶん偏った見方をしていたので、こんなにいろんなものを見るのは初めてなんです。
それで忘れないように今はただ、受けた印象を書いています。
ゆるりさんはご自分でも踊られるから、衣装などにも興味があるのですね。
ABTはものすごく個性的な人々の集団で、今回見てとても面白いと思いました。
ぜひ機会があったら見てくださいね。

投稿: 友香梨 | 2008年7月23日 (水) 23時46分

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