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2008年7月14日 (月)

歌舞伎座7月昼の部

Img 玉三郎と海老蔵出演の7月大歌舞伎「義経千本桜」は、海老蔵の宙乗りもあって、早々にチケットが完売になったほどの大人気だそうですが、その公演に行ってきました。

実は私は海老&玉よりも「鳥居前」で義経を演じる段治郎さんと、静役の春猿さん目当てだったのですが‥。まあいいじゃないですか、こんな人がいても。

「義経千本桜」は古典中の古典でありながら、私が歌舞伎を身近に感じたきっかけとなった作品、というか、これで「荒事」とか「ケレン」の味を覚え、歌舞伎の古臭いイメージが壮大なスペクタクルというものに変わっていったのです。だからけっこう好きで、思い入れのある演目でした。

3月に「ヤマトタケル」を3回も見て、大ファンになった段治郎さんですが、4ヵ月のロングランを終えたばかりなのにもう歌舞伎座にご出演です。8月に予定されていた「新・水滸伝」を膝の治療のため休演ということですが、「ヤマトタケル」であんなに激しい動きを続けてきて、大丈夫だったんでしょうかね~。今回の(夜の部は知りませんが)昼の部の義経はほとんど動きがないので、膝に負担はかからないと思いますが。それでまた9月は赤坂ACTシアターにご出演と聞き、驚いています。9月も見に行きたいです。。

その「鳥居前」の場です。
わ~、4ヵ月ぶりの段治郎さんだわなんて、歌舞伎に対してもこんなにミーハーになってしまってどうしましょう。
段治郎さんの義経は涼やかでまさに貴公子。平家を滅亡させた勇猛な武将、というよりも、兄頼朝に疎まれ、都を落ちてきた悲劇の御曹司の様相です。内に哀愁を帯びて節目がちなのもまた素敵。。でも、義経ってあまり出番ないのよね。もっとあの高貴でりりしい姿を見ていたかった‥!

春猿さんの静御前も、かわいらしくて一途な感じで素敵でした。姿だけでなく声もきれいですしね。この義経と静の並びは本当に美しかったです。

義経は都を落ちるときに、静御前に何も言わずに出て来てしまったのです。静は義経に追いつき、連れて行ってくれと頼みますが、落ちのびる先に何があるかもわからず、とても愛する人を連れて行ける情況ではありません。(この辺が「ヤマトタケル」とは違うのね~)別れるつもりで都を出たものの、追いかけてこられると心が動いてしまいます。郎党に諌められ、心を鬼にして、法皇から授かった大事な鼓を静に託し、すがる静をうち捨てて鳥居の内に入っていく義経。

あとを追ってこないように一人、梅の木に縛り付けられた(ひどいことをするものだ!)静のところに、変な追手の一団がやってきます。早見藤太とその家来たち。ここのチャリ場が、私の関わっている農村歌舞伎などではとても長いのですが、ここでは余計なことをせず、ごく古典的なノリの部分だけをさらっとやっていました。かなり間延びがしてる感じはしましたが、家来たちがよく揃っていて、それなりに面白かったです。さて、藤太一味に取り囲まれて静ピンチ!のそのとき。

「やあやあ~しばらく待て~!」と忠信が登場するのですが、揚幕の中での影台詞が結構長く、何を言ってるのかわかりませんでした。隈取を華やかに描いた海老蔵の忠信は、勇ましくてすごくカッコいい。やっぱりメチャメチャ華のある人ですね。そこでひとしきり立ち回りがあって藤太一味を追い払うのですが、時々狐の妖術を使います。(もうちょっと妖気漂う感じでもよかったけどな~)とにかく若々しくて力強く、よかったです。ただ、一言台詞が出てびっくり。こんなに甲高いすっとんきょうな声を出す人だっけ??そうかと思うと時々(団十郎さんのような)こもったような声になったり、声のトーンが変わるのが気になりました。ビジュアル的には申し分ないけど、声は好みじゃないわ。。

そこへ再び義経一行。故郷に帰っていた忠信が突如現われて、静を助けてくれたことを喜んだ義経は、愛用の鎧と源九郎義経という姓名まで与えて、静の守護を命じて再び落ちびていきます。静に思いをのこす義経を弁慶が間に入って促し、すがる静を押し戻す忠信。ここで静、忠信、弁慶、義経と並んだところは本当に絵のようにきれいでした。何だか久々にご高齢の方々じゃない、ビジュアル的にも満足のいく一幕でした。

「吉野山」の場
変わって満開の桜、春爛漫の吉野山のセットがとても美しい場面。あれから時がたち、九州に逃れようとした義経は嵐で断念。吉野に身を寄せていることを聞いた静が、忠信を伴って尋ねていく場面です。でも、この場面はほとんど舞踊なので、大体ここでいつも眠くなるのですよね。バレエと違って日本舞踊は退屈だし。特に去年見た「吉野山」は65歳の忠信と80歳の静御前だったので、もう寝るっきゃないという感じ。だけど今回は玉三郎の静と海老蔵の忠信。「吉野山」で眠くならなかったのは初めてでした。それどころか、すごく幻想的で美しかった。

桜満開の吉野山に分け入って、忠信とはぐれてしまった静。でも、静が鼓を取り出して打ち始めると、どこからともなく陶酔したような忠信が現われます。「鳥居前」での豪傑の姿ではなく、すっきりとした優男ぶり。うう~やっぱりきれいです。玉三郎の静ももちろんきれい。美しい人が踊れば、退屈な吉野山もこんなに素敵な場面だったなんて

人気のない深山の桜の木の下に、忠信が義経から拝領した鎧を置き、その上に静が鼓を置いて義経に見立て、互いに義経を思いながら踊る踊りは、今まで寝ていてまともに見たことはなかったのですが、意外に面白かったんですね。二人で源平の合戦での出来事を踊りで語るところから、次第に義経恋しさの思いにつながっていく。恋人同士じゃなくて、主従なんだけど、かしずく忠信と視線を交わす静の間にさわやかな色っぽさがあって、ああ、バレエでいえば「海賊」のアリとメドーラだわ~なんて思ったりして一人悦に入っていました。

「川連法眼館」の場
川連法眼の屋敷にかくまわれている義経のもとに、奥州から帰ってきた本物の忠信が訪ねてきます。実は今までの忠信は、鼓の皮になった狐の子で、親の鼓恋しさに忠信に化けて静を守護して旅を続けていたのでした。そのあと静も到着し、再会のあと、またもう一人の忠信がやってきたとの知らせ。不審に思った義経は静に偽忠信の詮議を命じます。この場面の静(玉三郎)は本当にきりっとして素敵。門之助の
義経は見た目は‥‥だけど、愛情深い、優しい義経でした。

さて、一人残った静が鼓を打つと、どこからともなく、というか、いきなりすぐ近くに忠信が現われます。さすがに何回も(DVDも含め)見ているともう「出があるよ!」にはだまされませんね。階段のところから出てくる場面、ちょっともたついた感じがしましたが、鼓に聞き入りうっとりとしたような表情は、まさに狐忠信。だけどね~。きれいなんだけど、やっぱり声が、台詞が‥‥‥。

このあと静に見破られ、狐に早替わりして狐言葉になるのだけれど、時々変な調子になって会場からクスっと笑いが出るんですよ。確かに狐言葉はおかしなものだけど、今まで猿之助や右近の狐忠信を見ていても、ここで笑ったことはありません。何で笑いが出るの??それは時々狐じゃなくて素の海老蔵が出ちゃうからだと思う‥。姿に似合わずかわいい声が出るんでつい笑っちゃうけど、ここで笑われちゃホントはいけないですよね。狐そのものになっていなきゃいけないわけで。狐といっても、人間に化けて人間の言葉をしゃべっているのを見破られた狐、という複雑な情況ですからね。それが妙に甲高くてかわいかったりするので、変なのです。笑っちゃ悪いと思いながらところどころ笑っちゃいました。(そういえば「鳥居前」の大見得のカッカッカッと力むところでも笑いが‥

それと、やっぱり私の中では猿之助さんがスタンダードになっているので、違うんですよ。狐の本性が出て激しくクルクル回りだすところとか、ダイナミックだけど何か雑。若いから仕方ないのかな?親の鼓が恋しくて離れがたいことを切々と語るところなどは泣けたけど、それも門之助さんの暖かくて渋い演技があったこともあるし。鼓をもらったあとの喜びようもちょっとね~。宙乗りもきれいじゃなかったなあ。バタバタと動きすぎなのかも。姿はとても美しいのだけれど、すみません、この狐忠信はもうひとつ好みじゃなかったかなと。

というわけで、今回は珍しく「吉野山」の美しさに圧倒されました。そして、やっぱり歌舞伎だってビジュアル大事だよ~!と思った公演でした。歌舞伎も見始めるといろいろ見たくなります。夜の部の「夜叉ヶ池」にも段治郎&春猿がご出演なので見てみたいし、シネマ歌舞伎の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」も、ちょうど今月やっているのでこれも見たい!だけど、もう7月はバレエ鑑賞でいっぱいいっぱいでこれ以上は絶対無理!残念だけど‥‥。ともあれ今月、思い入れのある「義経千本桜」、完売御礼の人気公演を見ることができて満足でした。

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