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2008年8月11日 (月)

発表会「ジゼル」無事終了。

一昨日、発表会が終了しました。それで昨日は一日呆けていました。娘はまだテンション高く、「終わった~!」とばかりに友達とアニメの映画なんかを見に行きましたが、帰ってからやっぱりダウン。ここ1ヶ月ほど、親子で本当に大変でした。特に親の私は当日、朝9時から夜9時まで会場に缶詰めで、ヘア・メイクの手伝いや、受付、衣装の返却などに走り回って、まる1日あっという間でした。そんなこんなでとても疲れたのに、翌日の朝起きて、ああもうリハーサルとか見に行くこともないんだと思ったら、淋しかったですね。

娘にとっては発表会ですが、私にとっては李波さんと酒井はなさんの出演する「ジゼル」の公演でした。去年、このお話を聞いたときから、娘が出る出ないにかかわらず、とても楽しみにしていたのです。李波さんのアルブレヒトはスタ・ダンのピーターライト版や、下村友里恵さんと踊った公演などを見ていますが、1幕のジゼルを気遣う優しく幸せそうな表情と、2幕のやりきれない後悔と哀しみにくれる姿がとても印象に残っていて、あれがまた見られるなんて本当に楽しみでした。

本番は期待にたがわず、とても素敵な「ジゼル」でした。はなさんのジゼルがとても可憐で思わず感情移入してしまい、裏切られたと思って死んでしまうところは悲しくて、発表会ながら涙が出てしまいました。当日のゲネプロまでは娘のことをちゃんとやっているか、チラチラと見ていましたが、本番はもう回りは見ていませんでしたね。

実はこの全然見られてない「その他大勢」の役がとても大変だったのです。村娘の踊りは娘が普段教わっているT先生の振付でバレエ協会仕込み。これはビデオで見る東京バレエ団やキーロフなどのものよりずっと複雑で体力も要ります。そして演出と演技指導は東京シティバレエ団の先生だったので、とてもお芝居が細やかで、見ているほうにはわかりやすいけれど、演じるほうはメチャクチャ大変。一瞬でも壁の花で突っ立っているだけだったりするとすぐに怒られます。舞台にいる間は全部演技だって、当たり前のことなんですけどね。中学生にはそれがとても難しかったのです。

東京シティバレエ団の「ジゼル」は、ずっと前に1回だけ見たことがありますが、演技がはっきりしていて、ジゼルが死に至る経緯がとてもわかりやすかったのと、ミルタやウイリーたちがとても怖い存在だったのを覚えています。今回もそのとおり、ヒラリオンやジゼルの母親、アルブレヒトの従者などの役割や性格付けがはっきりしていて、細かい芝居などもあり、物語としてとても緻密につくられていました。母親役はT先生で、現役時代はキャラクターなど演じたことがなく(子育て中のブランクの後、弟さんのスタジオの発表会などで王妃を演じたりしていましたが)今回初めて本格的なお芝居に挑戦。最初はハラハラ(ごめんなさい!)したけれど、だんだん堂に入ってきて、本番は立派に演じきりました。

2幕はもう、それこそ去年の暮れから振りが入って練習してきました。それでも前日の舞台稽古では、今までやっていた教室やリハーサル室と勝手が違うので、全然揃いませんでした。縦の列はまだリノリウムの継ぎ目があったり、前にライトが等間隔で並んでいたりするのでとりやすいのですが、横の列は幕など目標物があっても、人間の目は横にはついていないのでとても難しいようでした。斜め一列になるところに至っては、なかなかまっすぐにならずに、とうとう舞台監督がテープを持ってきて、床に斜めに貼ってくれました。インチキみたいだけどテープの効果は絶大!おかげで本番では見事に揃いました。(ミラノスカラ座のザハロワ&ボッレの映像でも、はっきり斜めに線が引いてあるのがわかります!)

そんなこんなで踊りも難しかったけれど、1幕はお芝居、2幕は整然とそろえて踊るという二つの課題が常にあって、それを両方とも何とかクリアできたのは、とてもいい勉強になったと思います。もちろん、酒井はなさんという日本のトッププリマと接することができたのが一番いい経験になりました。

男性のゲストは当たり前ですが、女性のゲストって普通あまりないじゃないですか。お稽古事のバレエは圧倒的に女の子が多いので、主役はとりあえずその教室のトップの子とかにやらせますよね。それか、プロでもその教室出身の人が来るのが普通です。私の知る限りでは、こんなふうに教室出身者でもない、現役で活躍されている有名な方をわざわざゲストにお迎えする発表会って、ほとんどないと思います。でも、これが一緒に舞台に立った誰にとっても本当に勉強になったと思うのです。

素人のうまい子と、プロと、決定的に違うのは意識の面ですよね。お金をいただいて見に来てもらっているという意識。それはミルタを踊った東京シティバレエ団の斉藤さんも全く同じでした。それと、素直さ、謙虚さ、明るさ、かな。それがその時々で違うメンバーの中に入って、みんなで舞台をつくっていくのに一番大切なことだと思いました。

斉藤さんのミルタも素晴らしかったです。お稽古着姿のリハーサルは何回も見ていましたが、スモークが流れる本番の森のセットの中で、すう~っと空間を飛んでいくようにパドプレをしていったのを見たときは鳥肌が立ちました。すごい!ポワントで立った姿が空気の中に浮かんでいるようでした。斜めにジャンプして横切るところも、軽さとスピード感にあふれていたし、ウイリーの女王としての威厳も冷たさも備わって、最初の静かな長いソロのシーンもまったく飽きずに見入ってしまいました。

はなさんのジゼルは、1幕でも2幕でもほとんど足音がしません。上半身と腕、背中の使い方が柔らかで、1幕からちょっと人間離れしたはかない可憐さがありました。そうか、ジゼルはほかの村娘たちとは違ってもともと体が弱くて、農作業などに行かずに家で静かにしていなくてはいけない子だったんだ~という感じ。ヴァリエーションを踊ったときの思いっきりの幸福感も、あとの悲劇を思うと泣けてきちゃうような‥‥。

アルブレヒトに婚約者がいると知って、ショックのあまり錯乱していくところも、まるでだんだんとウイリーに近づいていくような、(あの‥‥たとえはとっても悪いんですが、四谷怪談のお岩が、伊右衛門の裏切りを知って、髪すきをしながらだんだんと、まだ生きているのにお化けに変身していくような‥‥ゴメン!例えが悪すぎ)脱線しました。最初に倒れて髪がばらけたあと、まだ生きているけれどもう心はこの世になくて、身体がどんどん透明になっていっちゃっているような、そんな2幕への連続性が感じられました。

よく1幕と2幕で全く違う世界を演じるのは大変だというのを聞きますが、はなさんの演じるジゼルは明らかに同じジゼルです。1幕で溌剌と踊って、激しく狂い死にして、それから2幕になって急に、聖女のようにアルブレヒトを許して守り抜く演技をするのは本当に難しそうですが、そんなことは全く感じられずに、ごく自然に2幕の世界へ続いていったのでした。

私の妹と両親(孫の発表会しかバレエは見たことがない)が客席で見ていたのですが、途中から孫の姿を追うのも忘れて、はなさんの踊りに見入ってしまったそうです。孫を見に来るだけで踊りについては何も言ったことのない私の親が、はなさんの踊りはすごかったと感動していました。あんなに軽く、まるで飛んでいるようにふわっと浮かび上がって、あんなことが踊りでできるのかと驚いたそうです。ほとんどバレエに興味のないじいちゃんばあちゃんまで物語の世界に引き込んで、しっかり感動させてしまったところがすごいですね。

コールドも見苦しくない程度に、いや結構きれいに揃っていて感動しました。ともあれこの静かな世界を邪魔することがなくてほっとしました。最後の鐘が鳴ってウイリーたちが墓に戻っていくところ、後ろにパドプレして引っ込むのがとても難しくて、(教室では幕やライトなどの障害物がなかったから)舞台稽古では何度もダメ出しされていました。そう、ここでコケたら最後の最後でぶち壊しですから。それが無事終わってほっとすると、涙があふれてきました。ウイリーたちが去ったあと、アルブレヒトを救えた安堵で、ジゼルは心なしか微笑んでいるような気がしたのです。

哀しい、せつない最後の別れなのに、墓の上からアルブレヒトに花をそっと手渡すジゼルに、何かあたたかい優しさを感じました。いいですね~「ジゼル」は。同じような内容なのに「バヤデール」は最後どうしてもドロドロとして釈然としない思いが残るのですが、愛と赦しが美しく昇華され、天に昇るジゼルに幸福感さえ感じられたりすることがあるのですね。哀しみにくれながらジゼルがくれた小さな花を抱きしめるアルブレヒト。彼の心の中でジゼルは永遠に生き続けるでしょう。そんな静かなラストシーンでした。

それでも私の妹とか、友達の娘さんとなどは、昔の素敵な素敵な李波さんを知らないので、「ジゼルはいいけど王子がね‥‥‥。」などと言っていたそうです。40代の李波さんは初めて見る人にはビジュアル的にちょっと‥‥かもしれなかったですね。私のような前からのファンにとっては、まだまだクラシックバレエに携わって、こうやって舞台で踊ってくれるのはとてもうれしいことだけれど。

それは多分最愛の(?!)ルジマトフにも言えることなのかな~。(どうも私は結局そこへいってしまう悪い癖がありますね)ファンとしてはまだまだクラシックを踊ってほしい!と切に願ってはいるけれど、もう多分クラシック全幕出演の気持ちがなさそうなのは、かえって潔いのかなと思ったりしてしまいます。ファンはファン目線で、ルジ様が踊るなら「眠り」の王子でも、「シルフィード」のジェームズでも、本当に何でも大歓迎だけれど、一般的な目線ではちょっときついのはご本人がわかっているんだなと。難しい問題だけれど、そういうこともありますね。

さて、舞台裏と舞台の感想とごちゃ混ぜでしたが無事書き終わり、本当に終了してしまいました。見に来ていただいた皆様、ありがとうございました。多分今回は舞台そのものの素晴らしさに満足して帰られただろうなとうれしく思っています。これから娘は受験体制、私はお手伝いしている歌舞伎保存会の秋の公演のほうに目を向けないといけなくなりますが、まだまだ半分残っている大変な夏休み。夏バテせず、頑張って過ごしたいと思います。

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