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2008年11月21日 (金)

冬シーズン始まり!

発表会以外では久々のバレエ鑑賞、私にとっては冬シーズン(そんなに大げさなものではないけど‥)の幕開けとなる新国立劇場のデヴィッド・ビントレー振付の「アラジン」を見てきました。Imgp6592

デヴィッド・ビントレー氏は現バーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督で、新国立劇場には2005年に「カルミナ・ブラーナ」を振り付けていて、次期新国の芸術監督に就任することになっている人だそうです。今年1月に彼の作品であるバーミンガム・ロイヤル・バレエの「美女と野獣」を見て、メチャメチャ感動しました。物語の構成といい、舞台転換の妙といい、バレエというより映画かミュージカルを見るような感覚で、とても新鮮でした。それで、ビントレー氏が「アラジン」を新国立劇場に振り付けると聞いたときから、ぜひ見たいと思っていたのです。

今回はゲストなしで、全日程新国のソリストが主役を務めるもの。私は今活躍する新国のダンサーはよく知らないので、9月にチャリティガラで見てよかった芳賀望さんの日を選んでみました。プリンセス役は8月にNHKで放映された「ラ・バヤデール」でガムザッティを踊っていた湯川麻美子さん。そしてランプの精ジーンは、私が唯一昔から見て知ってる吉本泰久さんでした。新作ということで目新しかったし、久々のバレエの舞台はとても楽しかったです。やっぱりバレエはいいなあ~夢の世界だし、きれいだしね~。

1幕を見た時は本当に豪華で楽しくて、うわ~これってもしかして私の切望?する「スーパー歌舞伎的バレエ」かな~と思って、すごく興奮してしまいました。1幕の手の込んだセット、パネルが動いて居所変わりする早い展開など、本当にわくわくしました。だけど、2幕以降を見ると‥な~んだ、やっぱり新作ものによくあるシンプル路線か‥‥とちょっとがっかり。何だか1幕に頑張りすぎてあとの予算がなくなってしまったみたいな感じがします。

大体、街の市場のセットがあれだけ重厚なのに、それよりずっと豪華であるはずの宮殿が何であんなに抽象的で質素なんだろう??悪者にさらわれたお姫様が幽閉されているところもホントにただの檻の中みたいな感じでした。あれだって魔法に任せて思いっきり豪華な場所にしたっていいんだしね~。

構成も、1幕に一番の見せ場が集中して、2幕3幕が尻すぼみ。そう思えるほど1幕の洞窟の中で繰り広げられる宝石の踊りは見どころ満載で楽しいものでした。新国ダンサー総出演の華麗さ、さまざまなスタイルの踊り、衣装もみんな素敵だったし。でも、この物語を考えるとクライマックスはやっぱりさらわれたプリンセスを奪回しに行く冒険の部分だと思うのです。それからプリンセスを助け出して魔法の絨毯で世界をめぐりながら帰ってくるところ。ディズニーのアニメならここで「ホール・ニュー・ワールド」を歌ってがーっと盛り上がるんだよね~見~せてあげよう~輝く世界~‥‥なのに、1幕の盛りだくさんさに比べ、そこがほとんど筋を追っているだけだったのが残念でした。

「アラジン」というと目に浮かぶのは、私はやっぱりディズニーより子供のころうちにあった「アラジンと魔法のランプ」の絵本です。本来アラジンは子供。怪しい男に洞窟に連れて行かれ、ランプを取ってこいと命じられるのも、入口が狭くて大人では入れないから。マンホールの穴のようなところから地下に下りていくと、もうまわりじゅうが金銀宝石の目にもまばゆい世界なんだよね~。それが子供心に一番印象に残る絵でした。だからここに一番の踊りの山場を持ってきたのはわからなくもないのです。アラジンは夢中で宝石をポケットに詰め込む。その宝石の世界をあれだけのディベルティスマンにつくりあげているのは素晴らしいことだけれど、お話としてはあそこはほんのプロローグでしょ。

ビントレーさんは私と同じような絵本を見て育っている?のか、あの洞窟の階段を上ったところの丸い出口なんかはへえ~っと思いました。絵本では丸いマンホールのようなところから見下ろす悪者が「先にランプを渡せ」というの。手を出してまず自分を引っ張り上げてくれなきゃ出られないのに、目的のランプだけ渡せというから不安になってアラジンは渡さないのです。それで怒って入口の重い石のふたを閉めちゃう。(短気だなあ)ここは子供心にすごく不安な場面でしたが‥‥ここでは不安もそこそこにあっという間にランプの精が出てきて「今の何?」と思っているうちに次の場面へ。

初演ということもあって、休憩時間に聞こえてくる周りの人の話だと、ストーリーが全然わからないらしい人が意外に多そうだったけれど、中でも「え~?あの人がアラジンのお母さんだったの?」という声があったのにはちょっと頷けました。1幕の最後でお母さんが心配そうにしているところへアラジンが突然ランプと一緒に戻ってくるんだけれど、その場面のお母さんがまるっきり中国風で貧相なんですよ。中国のお母さんのイメージってこんな終戦直後、いや文革時代みたいな感じなの??(あとで王様と仲良くしてるのも貧相なだけにすごく変!)

プログラムによると、西洋ではアラジンは中国人という設定になっているらしいのです。アラビアのお話なのに中国人?というのはよくわからないけれど、西欧圏の人々にとっては中国もアラブも一緒くたで全然平気なんでしょうかね~。そういえばランプの精ジーンは変な辮髪頭(でも衣装はアラビア風)だし、お祝いのシーンでは獅子や龍が登場しちゃうし、何よりアラビア風?の街で、アラジン親子だけが中国人っていうのはおかしいよね。西洋人にはどうでもいいただのエキゾチック趣味かもしれないけれど、東洋人にはかなり違和感があると思います。

それに~。みんな一緒に踊るときの「いかにもアラビア」「いかにも中国」風の振りはまるで盆踊り並みで勘弁してほしかった。これが西洋人ビントレーさんのイメージする「東洋」なのかと思うとちょっと悲しい

本来西洋のものであるバレエを日本人が踊ることへの違和感というのは、私は大昔、高校の芸術鑑賞会か何かで松山バレエ団を見たとき以来のものがあったけれど、最近では日本にも身体的技術的に全然引けを取らないバレリーナたちが多数出てきていますよね。この新国の舞台を見ても、レベルは全然外国のバレエ団に劣ることはないと思います。

でもやっぱり今後日本のバレエ団が世界に出ていくときには、同じ「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」で勝負するよりは、こういった東洋的な作品が代表的な演目として求められていくのかなと思います。そういう意味ではこの「アラジン」も、新国立劇場の代表作としても恥ずかしくないような充実を今後図っていってほしい、かな?(偉そうにこんなこと書いてすみません脱線しましたが、それがとりあえずの印象です。

芳賀さんは期待どおり元気なやんちゃ坊主みたいで、動きも軽やかで群を抜いていました。演技もコミカルで何だかかわいい 芳賀さんの日にしてよかった~。ただ、プリンセスとの間にもっと「愛」がほしいよね~。何かその辺が残念。こういうところの表現はきっと山本さんがよかったのではないかと思います。

湯川さんは踊りはしっかりしているし、姫としての威厳や優雅さもあるんだけれど、この場合アラジンが子供みたいだから、どうしても年上っぽく見えちゃうんだよね。市場でのぞき見られても、入浴シーンに乱入されても、「無礼者!」って言わずにお茶目な好奇心でアラジンに惹かれていくようなあどけないお姫様のはずなのに、そんな感じは(すみません)しませんでした。このお姫様、何でガキ臭いアラジンのことなんか好きになったの??やっぱりちょっと「愛」が足りなかった。

それと、ジャファーじゃなかった(それはディズニー)、ここでは魔術師マグリブ人というのだけれど、そいつにさらわれて、飲み物にしびれ薬を入れたりするところも、何でもっとセクシーに、いかにもマグリブ人を惑わすようにやってくれないのか。あの場面の衣装は「シェヘラザード」風セクシー路線の衣装だったから、もっと濃厚な演技をしてくれるのかと思ったけれど、意外なあっさり目。相手の超濃厚なマイレンと、ここはたっぷり見せ場をつくってほしかったような‥‥。そもそも振り付け自体があっさりで、何もなかったから仕方ないですね。そういうところのメリハリがなくてただのきれいなお姫様だったのがちょっと不満。

ランプの精ジーンの吉本さんはベテランの域ながらシャープでエネルギッシュでもう見せる見せる!うれしくなってしまいました。ただ‥‥あのいでたちが何ともひどい。顔も体も青黒くてつるっぱげの辮髪。でっかいイヤリング。そしてメイクがまたもうちょっと何とかならなかったのか。眉毛が細くて上がりすぎで赤いおちょぼ口も変!眉や口が細く薄いのは冷徹な感じがするものです。無表情な怖い顔にしか見えませんでした。もっと鷹揚で包容力のあるキャラクターとしての味を出してもよかったのではないかと思います。ただただ超人的なだけで、物語の中の存在としてはつまらなかった。踊りが最高だっただけに残念です。

仕掛けもいろいろあったけれど、突然ジーンが現れても、歌舞伎を見ている人にはちっともすごくないありふれた仕掛け。最も盛り上がるはずの空飛ぶ絨毯のところもショボさに泣けてきました。猿之助ならここで確実に宙乗りいくだろうなあ~。二人で馬に乗って宙乗りなんていうのもお手のものの猿之助歌舞伎なら、絨毯に乗った宙乗りだって絶対いけるよね。盛り上がるだろうな~なんてありもしない話は置いておいて。ジーンが空を飛ぶワイヤーアクションはあったけれど、「飛ぶ」んじゃなくて「上下する」だけで。。東京バレエ団の「シルフィード」とかのように派手に飛ばせばいいものを。

欲を言えば最後にジーンの見せ場がほしかった。こんなに幸せなんだからもう魔法の力はいらないよとばかりに、アラジンがジーンにランプを返すシーン。もうランプの中に押し込められなくてもいい。誰の奴隷でもなくなった自由。そんな自由の喜びを思いっきりの魔法で最後に見せてくれたら大いに盛り上がったんだけどなあ~なんて、私って妄想癖がひどいですね。

何だか文句ばかりになってしまいましたが、それだけ久々のバレエを堪能したというわけですそういう意味ではとても面白かった。やっぱり細やかな感情表現とかを期待する作品ではなく、「海賊」みたいにスリルとサスペンス、華やかで盛りだくさんの踊り、多彩なダンサーたちを見せるタイプのバレエなんですよね。それはそれで楽しくてよかったと思います。

でも、「美女と野獣」で、バレエシーンらしいバレエシーンがないままお芝居的に淡々と進んで、最後の最後で爆発的なほど愛にあふれる美しいパ・ド・ドゥを見せてくれた涙ちょちょぎれるほどの感動に比べたら、踊り満載で華やかではあるけれど、やっぱり「感動」というのとは違う、視覚的な楽しさ面白さ珍しさ。そういう作品だったと思います。

あとで、子供が小さいときに買ったディズニーのビデオがあったので、ちょっと見てみました。(何てヒマ人なんだ‥)確認したら、「ホールニューワールド」を歌いながら世界各地を巡るところはプリンセスがさらわれる前でしたこのバレエでは絨毯に乗るのは帰ってくるときですけど。いい加減なことを書いてどうもすみませんでした。

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