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2008年11月18日 (火)

フレッシュな「先代萩」

Simgp6563_2 新橋演舞場の花形歌舞伎を見てきました。

その前に、歌舞伎座の前を通りかかると、夕刻になってうっすらとライトに浮かび上がった歌舞伎座のきれいなこと。ちょっと前まではチンケな建物だと思っていたけれど、いや、なかなか重厚で味があっていいものです。思わず立ち止まって写真を撮ってしまいました。これがあと1年半で見られなくなると思うと本当に残念です。

今週半ばの新国の「アラジン」から、いよいよ楽しみにしていた私の冬のバレエシーズン(?)が始まるのですが、今月は歌舞伎で見たいものがたくさんあって困りました。

この間見た歌舞伎座の昼の部の「盟三五大切」はすごく面白かったし、浅草では平成中村座の「法界坊」、国立劇場では江戸川乱歩の「人間豹」の江戸時代版?を上演していて、本当にどれを見ようか迷ってしまいます。これからバレエが始まるからそんなに見れないのが悲しい‥Simgp6560_2

新橋演舞場では昼の「伊勢音頭」も見たかったけれど、やっぱり夜の部の「伽羅先代萩」にしました。というのも、一昨年に歌舞伎座で見た「伽羅先代萩」は團十郎の仁木弾正、菊五郎の政岡。それが、今回のは海老蔵の仁木弾正に菊之助の政岡なのです。ほかもみな若手揃いで、初役の人ばかり。一昨年の「先代萩」と上演する場面は同じだけれど、配役が一世代下ということで、興味を持って見に行きました。

こちらは新橋演舞場。上のほうは何になっているかわからないけれど、歌舞伎座もそのうちこんなそっけない複合施設のビルになってしまうのでしょうか?何だか淋しい気がします。Simgp6566_2

予想通りとてもフレッシュな舞台でした。観客も海老蔵目当て?か若い女性が多くてびっくり。歌舞伎って、ひどい時には周りを見渡すとじいさんばあさん(いや、おしゃれなおばさま方とか)ばっかりで、もしかしてこの席あたりでは私が一番若い?なんてこともあるけれど、今回の花形歌舞伎はぐっと観客の年齢層が下がってましたね。私の両隣りはどちらも母子連れでした。親子で歌舞伎なんてうらやましいです。

序幕(鎌倉花水橋の場)
お家騒動の渦中にある殿様でありながら、伽羅でつくった下駄をはき、豪華ないでたちで廓通いする頼兼公。賊に襲われ駕籠かきはみな逃げてしまっても、恐れることなく扇子一本で優雅に賊をあしらいます。刺客たちのコミカルな動きも見もの。そこへお抱え力士の絹川谷蔵が現れ、素手でばったばったとやっつける気持ちの良いたちまわり。全体のストーリーには関係なさそうだけれど、この、ここだけしか出てこない廓通いの殿様が物語のそもそもの原因なのです。

この殿様が遊び呆けて幕府に隠居を命じられている一方で、奥向きでは家督を継いだ若君を守ろうと必死の攻防が繰り広げられ、はたまたお家を乗っ取りから守るため一身を投げ打って幕府に訴え出た忠臣の物語があり‥‥だけど当の殿様はそんなのどこ吹く風で、こんなふうにひたすら鷹揚なのでございました。

絹川谷蔵もここしか出てこないキャラ。力士ということで手足に肉を着てるんだけど、それがしわしわなのが気になりました。いまどきストレッチ素材だってあるだろうに‥‥これはリアルさなどを追及しないのだろうか‥‥‥?歌舞伎ってリアルなところは馬鹿リアルで、様式的なところは変に様式的で、基準がよくわからない??

二幕(足利家竹の間の場)
若君の暗殺を恐れ、乳母の政岡は「若君は病気」と称し、男性と会うのを嫌い、食事もとらなということにしています。食事は御殿の中で政岡が自らつくっているのです。その病気見舞いのため仁木弾正の妹八汐と、沖の井、松島の三人がやってきます。

八汐は悪者というのが見え見え。医者を連れてきて脈をみせようとしたり、賊をわざと天井に潜ませて、それをつかまえて「政岡に頼まれた」などと言わせたり、その一寸の油断もならない状況にひたすら耐え続ける政岡。

この政岡役の菊之助さんがすごくきれいなの。とても大変な役だけれど、やっぱり若君の乳母なんだから30前ぐらいの歳のはずだよね~。政岡ってひたすら強いオバサンという感じがしてたけれど、本来はこんなふうに若さとけなげさ、必死さがみえてもいいのだと思います。きれいで、けなげで、一生懸命で、つい「がんばれ!」って応援したくなっちゃう。だから門之助さんの沖の井が正義の味方っぽくて、観客の気持ちを代弁しているようでとてもよかったです。

三幕(足利家御殿の場~床下の場)
やっとのことで奥に下がったら、今度は栄御前の来訪で息つく暇もない政岡。栄御前は菓子を持参し、なぜ食べないのかと責めるのですが、そこへ奥から政岡の子千松が走り出て、毒入りの菓子を食べて菓子折をひっくり返してしまいます。とたんに毒に苦しむ千松。そのとき、毒が入っていたと悟られないよう、八汐が千松を捕えていきなり短刀を突き立てます。なんてひどい奴!

苦しむ千松を見ても、若君を守護したまま動じない政岡を見て、栄御前はこれは若君と自分の子を取り換えているのだと早合点し、お家乗っ取りの一味と見て、連判状を政岡に預けていくのです。

一同が去ったあとの政岡は、死んだ千松に駆け寄って抱き上げ、最初は気丈に、毒入りの菓子を食べて若君を守った千松をほめているのだけれど、だんだんと子を亡くした若い母親の嘆きに変わっていくのが圧巻。すごく泣けました。

そのあと八汐が現れて政岡に斬りかかるけれど、逆に政岡に討たれてしまいます。このときネズミが現れ、連判状をくわえていってしまうのです。

御殿がせりあがって居所変わりで床下の場へ。床下では荒獅子男之助が守護していたところへ大ネズミが現れたので、男之助は鉄扇で打ちすえますが、これは妖術でネズミに化けた仁木弾正でした。ここの場面、荒獅子男之助というのはここにしか出てこない人物で、ひたすら見得を切って「荒事」を見せるだけなんですよね。やっと登場した仁木弾正も、ひと言もセリフをしゃべらないまま不気味に引っ込むだけなんです‥‥。よくわからないけれど、仁木弾正の大悪人ぶりを無言のまま強調したような場面なんでしょうか。

猿之助さんの「伊達の十役」では、ここで長裃をさばきながら宙乗りするんですよね~。それというのも、この場面の演技は「雲の上を行くように」ということなのだそうです。それをホントに宙乗りで表現してしまうなんて、猿之助さんらしい。

さて、海老蔵の仁木弾正、目玉が飛び出さんばかりに目をむいた見得など、迫力万点なのですが、やりすぎのような?でも、花道を引っ込む姿は、歩きながら物音もせず膝を使ってゆっくりと上下をくりかえし、本当に雲の上を行くような悠然とした姿でした。

四幕目(問注所対決の場)
2度目の休憩の後は、御殿の中からがらりと雰囲気が変わって裁判のお白州です。足利家国家老の渡辺外記左衛門は、お家乗っ取りの悪だくみをする一味を幕府に訴え出ますが、評定をするのは一味に加担している山名公なので、いろいろ証拠の手紙などを提出してもどうにもなりません。もうダメかと思ったときに救世主細川勝元公がさっそうと現れます。

外記役の男女蔵さんですが、顔にしわは描いているものの、何か顔が若くてちょっと無理が‥‥。こういうところこそ味のあるベテランの出番だと思うんですけどね。それと松緑の勝元公‥‥ええっ 松緑さんって丸顔で童顔だったんですね~。何だかさわやかな感じというより、お子ちゃまっぽくてギャグマンガ風。。。セリフも、ここって笑う場面だったっけ?というような‥‥「さあ、さあ」と追い詰めていく緊迫の場面も弁舌さわやかはいいんだけれど、軽かった。

でもまあこのギャグ殿様のおかげで国を揺るがす大悪人が悪事を認め、一同めでたしめでたしなのでした。よく考えると仁木弾正って腹ばかりで外見はあまり見せどころがない役。印を押すところも緊迫の場面なんでしょうが、若手役者が演じるには地味ですよね。

大詰(刃傷の場)
罪人となったはずの弾正が、あろうことか隠し持っていた短刀で刃傷に及び、外記左衛門が花道を逃げてくるところから始まります。衝立のかげに隠れる外記左衛門。追ってくる弾正の形相がすごい。これがまた限度というものがあるような気がしますけどね。

このあと外記左衛門を見つけて立ち回りになるのですが、考えてみると外記左衛門は高齢でしかも手負いなんですよ。その上武器もなく扇で応戦してるだけ。それなのに、大悪人の弾正がすごい迫力で襲いかかりながらなかなかとどめが刺せない。(外記左衛門は相当の武道の達人に違いない!)弾正が死ぬところもすごい形相で大熱演だったけれど、あそこまで派手にやっちゃうと、かえって妖術まで使える大悪人が何でこんな老いぼれに簡単に殺されちゃうんだろうなんて、素朴な疑問がわいてきませんか?

また猿之助の「伊達の十役」ですが、あれはすご~く荒唐無稽に脚色しているけれど、ここの部分は納得できるんですよ。弾正は簡単に死ぬはずもなく、妖術を使って巨大ネズミに変身して大暴れ!‥‥だったと思います。(DVD持ってる)それで、その妖術を打ち負かすことができるのは子の年生まれの者の血を吸った刃物だけで、そこでそれを知っていた誰だかが腹を切って、その鎌で弾正をやっつける!そうだよね~。大悪人が簡単に死んだらつまらないもの。(あ~十役早替わりでなくてもいいから、猿之助チルドレンでこれを再演してくれないかなあ‥‥)

脱線しましたが、結構つっこみどころはあったけど、若手中心の華やかないい舞台でした。それでも、若手がやって映える役と、ベテランの渋い演技がほしい役があるのがよくわかりました。

このあと舞踊の「龍虎」がありましたが、やっぱり舞踊苦手。ただでさえ長い通し狂言に何でおまけのようにもれなく付いてくるんだろう?毛振りがあってけっこう激しい踊りですが、やっぱり私はバレエのような踊りが好きなので、体のラインが見えないと表現するものがよくわかりません。手先と足の運び、顔の角度などで表現するのでしょうけど、難しいです。(起きているのが

歌舞伎も見始めると面白くて、次々に見たくなります。今やっている国立劇場の「江戸宵闇~」もとても見てみたい 実は私、その昔「乱歩大好き少女」だったのです。怪人二十面相と少年探偵団シリーズは小学生の時に読みふけりました。もうかなり忘れていますが、乱歩の戦後の少年向けのものでも、ちょっとハイカラな戦前の「帝都東京」の雰囲気があって好きでした。作品にちりばめられた「古い洋館」や「洋行帰りの紳士」「西洋の美術品」「宝石」などのアイテムが、見たこともない妖美な世界をつくっていて、子供心にもドキドキしたものです。そういうちょっとレトロでバタ臭い雰囲気が乱歩もののよさなのに、江戸時代に置き換えちゃったらどうなんでしょうね?明智小五郎が隠密同心ですか??乱歩と聞いたらこいつぁ一番のらざあなるめえ‥‥と思うけど、もう今月はバレエもあるので無理

来年1月にはまた初春花形歌舞伎で、今度は澤潟屋の面々が勢ぞろいします。これも見たいけどバレエも見たいし‥娘受験生だし。。。でも、受験も終わって3月にはまた猿之助歌舞伎の「獨道中五十三驛」があるので、楽しみです

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