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2008年12月 7日 (日)

ボリショイ「ドン・キホーテ」

ボリショイの「ドン・キホーテ」を見てきました。

娘が小さいころ、娘のバレエ教室の発表会で「ドン・キホーテ」をやることになり、私と、大人バレエをやっていた友人とで1幕の後ろに立っているだけの役で出演しました。そのとき参考に見て研究していたのがテレビ放送を録画したボリショイの「ドン・キ」のビデオだったのです。ステパネンコのキトリ、ウヴァーロフのバジル。今その友達とは付き合いがないので、そのビデオ、もう見られません。あれはNHKだったのかな?ステパネンコの「ドン・キ」なんて、DVD出ていませんよね?あのときはバックで演技している人ばかり見ていて、肝心のステパネンコもウヴァーロフもよく見ていなかったのでできることならもう一度あのビデオが見たい~!

そんなわけで、ボリショイの「ドン・キホーテ」は結構思い入れがありました。ボリショイの生の舞台は昔、ニーナの「眠れる森の美女」で一度だけ見ましたが、バレエ初心者の頃はとても見方が偏っていて、オペラグラスの中のニーナしか見ていなくて、残念ながら他はほとんど覚えていないのです。だから今回は初めて見るようなものでした。

私が見たのは二日目のナターリヤ・オシポワとイワン・ワシーリエフ。去年のマリインスキー&ボリショイガラのプログラムには「オシーポワ」と書いてあり、今年のプログラムには「オーシポワ」と書いてあります!一体どっちなんじゃ!去年のガラのAプロ、このペアが踊った「パリの炎」は驚異的なスゴ技でとても盛り上がりましたよね~。とにかく二人ともジャンプが高い!たまたま娘が発表会で「パリの炎」を踊ったので、NHKで放送されたこの録画を何度も見ていました。それで、うちではいつしか「オシポワちゃん」と呼んでいたのです。だから私は「オシポワ」と書くことにします

初日のアレクサンドロワも見たかったので、どっちか一つを選ぶのは迷いました。でもフィーリンが出ないとなった時点でオシポワちゃんを見てみようということに!私はどちらかというとベテランが好きなのですが、たまにはフレッシュな元気ペアもいいよね~。

そのとおり二人とも登場の瞬間からとっても豪快に跳ねまくってました!席が遠かったのですが、小柄な二人が舞台狭しと跳ねまわっていたのがよくわかりました。でも、もっと近い席ならきっとその高さにも感動したでしょうね。私はどちらかというとダンサーの表情をよく見たいのです。でも、最近は舞台全体の雰囲気とか、脇で行われている小芝居とかも見逃したくない。ということはやっぱりいい席を取れということか~‥‥お金もかかるけれど、今回のように迷って出遅れていたのでは無理ですね。遠い席ではオペラグラスを上げ下げしているうちにどんどん先へ進んでしまいます。またものすごくテンポが速いから、今回、もたもたしているうちにいろんなこと(主にガマーシュやサンチョパンサのお芝居)を見逃してしまいました。残念

テンポが速いというのは、もう指揮者がタクトを下ろした瞬間から何?この早さ!それは幕が上がっても同じでした。去年のミラノスカラ座の、あの超間延びした「ドン・キ」は何だったんだ‥(あれと比べなくても十分速いけど)そのスピードにダンサーもよくついていって、みんな回転したまま吹っ飛びそうな勢いでした。

1幕は豪快で、スピード感あふれて面白かった。ちょっとしたジャンプも、この二人が飛ぶと「おおっ!」っと声を上げたくなってしまいます。踊るたびにいちいち「おおっ!」ですから、息つく暇もありません。とにかくワシーリエフ君がすごい。飛ぶ回るだけじゃなく、顔もとてもかわいいの ほんとにやんちゃで、とぼけてて、好感度抜群のバジルでした。くりんくりんの巻毛に負けん気の強そうな顔。だけど街の女にモテモテ‥‥というような色気はなくて、健康優良児的な、青春ドラマっぽいさわやかな感じとでもいうのかな。

小柄だけれどなぜかリフトはすごく高く見えるのです。かなりの力持ち?リフトしたまま舞台奥から手前に歩いてきて、何とルルベしたまま片足を45度ぐらいアラベスクしたんですよ。ひゃ~っと思わず声が出てしまいました。ウヴァちゃん(ウヴァーロフ)もリフトしたまま歩いてきたりしますが、長身のウヴァちゃんでなく、小柄でかわいい顔したワシーリエフくんが軽々やってしまうことに何だか感動。

オシポワちゃんも負けてはいません。カスタネットを持ったヴァリエーションもすごい勢いでした。小柄で、見た目の華やかさはそんなにない(顔はかわいい)けれど、とにかくそのキレのある動き、高いジャンプで何回りも大きく見せるタイプの人なんですね。キトリはとても合っていると思います。ブラボーでした

忘れてたけどエスパーダがかっこよかった!シュピレフスキーはうっとりするような長身・美形。でもあれが闘牛士かといえば??なのですが、闘牛士の踊りにしてはキメが甘くて、牛どころか街の踊り子やメルセデスなどの百戦錬磨の濃~いお姉さま方にも到底太刀打ちできないだろう!って、そんな線の細いエスパーダはミスキャストかも?でした。去年のガラではベートーベンの交響曲第7番をバックにモダンを踊って、お顔がとても美しかったので、あ~この人、パートナーを支えているだけじゃもったいない。ソロも見てみたいと思っていたけれど、踊りは、まあ普通にかっこよくマントをさばいていました。でもやっぱり牛にはかなわなそう‥ところどころスカ(決めのところをはずす)があって悲しかった。

1幕は楽しくてあっという間に過ぎたのですが、2幕がちょっと退屈してしまいました。普通は駆け落ちしてジプシーの野営地に逃げ込み、そこでドン・キホーテが風車に突っ込んで失神して夢の場になり、最後に酒場の場面で連れ戻されそうになり、自殺のふりしてハッピーエンド‥‥という展開だと思うけれど、まず酒場のシーンになって、早々と狂言自殺になるのでおやおや‥‥という感じ。酒場のシーンもちょっと退屈した。ずっと速いテンポで来たのにメルセデスの軟体のけぞりが長い~。主役たちはあっちを向いて酒を飲んで談笑中のまま延々と続くまったりとした踊り。。悪くないけれど、次のジプシーのところにも同じようなキャラクターダンスがあったしね。ボリショイはこういうの好きなのかしら。

先にバジルとキトリの結婚が許されちゃったので、このあとジプシーの芝居に興奮してドン・キホーテが風車に突っ込んでいくというのが唐突になって、何かどこにもつながらない感じ。ジプシーの場面にはバジルもキトリも出てこなくて、大体どうしてここにやってきたのかが不明。次の夢の場に持っていくだけの、取ってつけたような場面でした。

夢の場は1幕で興奮しすぎたのか、少し眠くなりました。そんな目で改めて冷静に見ると、このセットは幕だけ。それも骨董品か?というような古色蒼然としたもの。3幕も幕ばっかりのかなりチープな宮殿でした。そういえば1幕は見るのが忙しかったからよく見なかったけど、ごく簡単なつくりで、そんなにきれいじゃなかったと思います。そこいくと去年のミラノスカラ座は1幕のセットだけでもすごかったよね。舞台が狭くなるほどの豪華さの上、ほんとの街の雑踏みたいに乗りきれないほどのエキストラであふれかえっていたんだっけ。それからすればほとんど何もないぐらいの簡素さでした。(だけど、幕に描かれた街は古ぼけて重厚な味を出していた?)

ボリショイといえば豪華なイメージがしたけれど、セットや衣装はちっとも豪華じゃなく、何かソビエト時代を彷彿させるような感じで、あの色彩のマジックのような素晴らしいシュツットガルトの舞台美術を堪能した直後では、何とも言えない悲しさではありました。これでは「白鳥」のほうも思いやられる‥‥?でもその分速いテンポで踊りのスピード感、ダンサーたちの華やかさで見せているわけです。

森の女王はエカテリーナ・シプーリナ、キューピットはアナスタシア・スタシケーヴィチ。そしてオシポワちゃんのドルシネアと、3人並んだところはさすがに華やかでした。森の女王のヴァリはイタフェのないもの。アラベスクの繰り返しが映える、手足が長くて美しい人でした。キューピットはイメージ通りのかわいらしい子。小柄なダンサーが踊る役だけど、オシポワと身長が変わらないので、オシポワもかなり小柄なのでしょうね。姫としては、どうだろう。。ちょっと緊張がゆるんで、ぼーっとしか見ていなかったのか、よく覚えてないけど、 最後のグランジュテで横切るところはさすが!お見事でした。

2幕の終わりに、内側の幕が閉まってから、幕外で倒れているドン・キホーテのところに、サンチョパンサが貴族たちを連れてきて、ドン・キホーテを介抱し、館へ伴っていきます。

3幕はその貴族の館で、ドン・キホーテ一行が客として招かれ、キトリとバジルの結婚式が執り行われるのです。どうして?と思うけど、細かいこと突っ込まないで踊りを楽しむべしってことかな。ストーリーの流れなんてそんなに重要に扱われていないのです。

ヴァリエーションの二人がよかった。第1のクリサノワは勢いがあって元気な踊り、第2のコバヒーゼはなぜか強そうなバレリーナばかりのボリショイの中で、線が細くて優雅な雰囲気があってとても目立っています。顔もかわいい~。

そして、グラン・パは期待通り、すごいものを見せてくれました。アダージョは片手リフトが2回決まり!キトリのヴァリエーションは超高速の音楽にぴたりと合った超高速足技(あのエシャペとパッセを繰り返すところです)にびっくり!それからコーダも最初からやたらテンポが速い演奏なのですが、グランフェッテになってからさらにアクセル全開に!まるで全盛期のニーナのような超高速回転。それもダブルを入れるなんていうものじゃなく、ダブル入りっぱなしというか、もうぐるぐる回っててよくわからない。(だから手拍子なんてこれじゃ入れられないです)びっくりしました。

ワシーリエフくんも負けずに高速回転。ジュテで回るところはひねりが入ったあと、空中でぱっと手足が伸びる(何のこっちゃ?)のがもうすごくて!滞空時間が相当長くないとこんなことはできません。ホントにウルトラC(古っ!)の応酬に見るほうも興奮して熱くなりました。わ~、もう終わっちゃったの、というくらいすごく楽しかったです。

背景は古臭く、セットはボロボロ。ストーリー性も何もないんだけれど、何だか主役二人の金メダル級の技を堪能して満足でした。すごい技というのは、場を盛りあげ、気分を高揚させるものなんですね。カビ臭い舞台美術でも、話の意味わかんなくても全然関係ない!だけど‥一晩寝て起きると、何も残ってないような。シュツットガルトの「オネーギン」があれほど心に残り、そのあと何日も妄想をふくらませて2度おいしいどころか10倍ぐらい楽しんだのに比べると、まあそれだけって、そんなものでした。

ワシーリエフくんは2006年にバレエ学校卒業と書いてあるから、たぶん二十歳そこそこじゃないでしょうか?体型は熊川哲也似‥‥ということは体操選手並みに筋肉付いちゃってスタイルはそんなによくないんだけれど、驚異的な身体能力を見せるにはやっぱりああいう体型になっちゃうんだろうな‥。でも、笑顔がとってもチャーミング。持っている雰囲気がさわやか体育会系だよね~。カーテンコールには黄色い声援がいっぱい飛んでいました。既に親衛隊がいる?バレエ公演でこういうのは私は初めてでした。スター誕生ってところでしょうか。

帰りの楽屋口にもいつになく人が集まっていて‥‥ちょっと野次馬根性が動いたけれど、やっぱり‥‥ワシーリエフくんもオシポワちゃんも、うちの息子とそんなに歳が変わらないのよね。何か先ほど黄色い声援を上げていた子たちの親の年代で、出待ちなんてもう気恥かしくてできないかも。やっぱりニーナやルジマトフみたいな同年代だけにしておこうっと。そう思ったらちょっと淋しくなりました。

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