エトワール・ガラBプロ(30日)
大阪で見た歌舞伎の余韻もまだあるのに、あわただしく今度はバレエです
暑くて、バテバテで、ほとんど外に出たくない状態なのですが、Bプロだけはもう前からチケット買っていたので行きました。ネット検索などはしていないのですが、Aプロは面白かったのでしょうか?
今回の「エトワール・ガラ」は、バレエ公演にしては前宣伝がすごくて、マチュー・ガニオが「徹子の部屋」に出たり、いろんなチラシに出たり。彼はイケメンだから目立つでしょう。それにしては一般的なプログラムではなく、かなりマニアックな‥と言ったらいいのか、上級者向けというか何というか。私も今回はBプロのみでしたが、7月にどっぷり見た「バレエの神髄」やキエフ・バレエに比べたら、かなり洗練されたヨーロッパ的な雰囲気がありました。私にはクラシック中心の初心者向けのほうが楽しめるけど、たまにはこういうのもよかったです。
「コッペリア」第2幕より
ドロテ・ジルベール&ジョシュア・オファルト
最初はおなじみのクラシックの演目です。2幕の最後にスワニルダとフランツが踊るグラン・パ・ド・ドゥ。といってもギヨーム・バール振付のこれは日本では初演なのだとか。それでもちゃんとクラッシックで、しかもとてもエレガントで素敵でした。
もう~しょっぱなから何てきれいなの!?同じクラシックでも「洗練」という言葉がぴったりというか。全身白の二人ですが、ドロテは白のレースが2段になったスカートで、回転すると裾が少しすぼまって丸く膨らんでかわいい~。また、二人の踊りもまぶしいほど美しい。一番感心したのは、ガラでありながら全幕の物語の一部だということを感じさせるものだったこと。二人のアイコンタクトはもちろん、一人がヴァリエーションを踊るときも、二人の間でやりとりがあって、それがいかにも生き生きとした若い恋人同士という感じでかわいかったし、特にドロテは時折客席に向ける目線が魅力的でした。(あの「神髄」での、一切目線を交わさない、ただ踊ればいいというような古色蒼然?のローズアダージョに比べたら雲泥の差!)
この二人は、お話では町娘と町の青年なのですが、お姫さまほどとりすましてはいないものの、すごくエレガント。同じクラシックバレエでもこれがヨーロピアン・スタイルなのかなと、まるで田舎者のように感心してしまいました。オファルトの踊りは、ヴァリエーションの最初の空中でアラスゴンドで回転するところでまず、え~っ!という感じ。まるでコマのように同じ高さで一つの「面」をつくって回転する美しさ。脚がとにかくきれいだし、スタイルはいいし。申し分なくノーブルな踊りでした。
そしてドロテも、エレガントな中にも芝居っ気たっぷりで本当にチャーミング。振付がかなり難しいのだけれど、笑顔でこともなげにこなしていました。時折長いバランスを見せるし、彼女はジャンプもきれいですね。しょっぱなからちょっと打ちのめされました。
「ロミオとジュリエット」よりバルコニーのシーン
エフゲーニャ・オフラスツォーワ&マチュー・ガニオ
これが、実は一番期待していたのです。どうせならマクミラン版でないほうがよかったけれど。(ヌレエフ版は嫌ですが‥)オブラスツォーワはマリインスキーで一番好きなバレリーナだし、マチュー・ガニオのロミオもすごく合っているかなと思って。でも、ロミジュリのこの場面は、いつもラストの悲劇より泣けてしまうのに‥‥全然泣けなかったのはどういうわけか。
マチューは、白いルーズな衣装の胸がはだけて、胸毛があらわに‥
いや、胸毛自体は別にいいんですが、私にはロミオに胸毛というのが絶対受け付けない代物だったんですよね‥‥それが、少年のようなきれいな顔をしていながらかなり立派な胸毛ですよ![]()
もうそれだけで拒否反応というか‥‥‥ごめん、オペラグラスなんかで見なければよかったですね。オブラスツォーワもマリインスキーきっての「女優」バレリーナということでしたが、最初の場面こそとてもかわいらしいのだけれど、もう最初から身を任せきっている雰囲気が好きじゃなかった。
踊り自体は美しかったですよ。でも先月のロイヤルバレエ公演で胸が締め付けられるほど愛くるしいコジョカルを見てしまったし、「マラーホフの贈り物」でアイシュヴァルトが踊ったクランコ版のジュリエットも息をするのを忘れるほど素晴らしかった。どこがどう、というわけではないのです。違いはただ泣けるか泣けないか。つまり、その世界に引き込むパワーがあるかないか‥‥胸毛が邪魔をしてしまったかしら(爆!) 何か、さっき出会って恋に落ちたばかりというこの物語も、これから先に待つ悲劇も、今この時花開いた二人の命の輝きも、何だかよくわからないまま終わってしまいました。残念。
「フラジル・ヴェッセル」
シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ、イリ・ブベニチェク
まるでヒーリング・ミュージックのような、どこか懐かしいラフマニノフのピアノ協奏曲の旋律にのって、白いユニタード姿の女性と、上半身裸で白いスパッツ姿の男性二人が踊るネオ・クラシカル(プログラムより)な作品。
体型も顔もオジサンなプベニチェクと、それに比べればちょっとはスリムで若そうなリアブコ、小柄で華奢なアッツォーニという組み合わせ。最初は3人が手をつないだままゆっくりと絡み合ったりする場面が続いていたと思ったら、だんだんと3人の関係があらわになってきます。アッツォーニはリアブコと下手後方で静かに踊り、ブベニチェクはひたすら激しく攻撃的なソロを踊る。そして、リアブコの腕から女を奪ったとたん、女は苦しげな表情になるのです。どちらも愛しているけれど、やっぱり横暴なこの人とはダメ‥‥という感じ?よくわからないけれど、何もないシンプルすぎる舞台なのに、音楽の美しさがまた何かの物語を連想させるようで面白かったです。
「プルースト~失われた時を求めて」より囚われの女
エレオノラ・アバニャート&バンジャマン・ペッシュ
プルーストの同名小説をもとにローラン・プティが振り付けた全2幕の作品の一部。舞台中央に天井から吊り下げた白い布が縦に長くかかっていて、その前で一人の女が眠っています。男は女に近づき、じっと見て、そして手を触れ抱き起こす。女は踊り始めるけれど、これは眠っている状態の夢の中という感じでしょうか。
白にストライプの入ったパンツに白シャツ、ネクタイをしたペッシュ。白いキャミソールに膝丈ぐらいのスカートの付いた衣装のアバニャート。前にも見たことがあったけれど、アバニャートってこんなにチャーミングだったかしら。夢の中にいる女は決して男と目を合わすことはないけれど、何を思っているのか、幸せそうな表情だったり、官能的な表情だったり。男はそれが自分に向けられたものでないことを疑い、次第に苛立って乱暴になってくる‥?逃れようとする女。でも逃れられない。眠っているときも自分のことを思っていてほしい男の独占欲?
満たされないまま男は諦めて、彼女を元の場所に横たえ、去っていく。(だったよね?)最後に、彼女の後ろにかかっていた白い布がさわさわと落ちてくる‥‥幕。
「ディーヴァ」
マリ=アニエス・ジロ
プログラムではマリア・カラスの歌声‥‥と書いてあったけれど、何か張り詰めた、ほとんど叫びのようなソプラノをバックに舞台中央から黒づくめの女が現れる。女はまず帽子をとり、それから長いベストを脱ぎ、最後にひきつったような動作で神経質に、黒い長手袋を脱ぎ捨てます。
ジロは、今年3月のパリ・オペラ座の「シンデレラ」で見たけれど、あんなにたくましい大女とは知りませんでした。いろんなものを脱ぎ捨てて、首にひもが掛かっただけの、肩の出た、サイドに深くスリットの入ったタイトな黒のロングドレス姿は、スタイリッシュではあるけれど、めちゃめちゃ強そうで筋肉ムキムキで、それでもって首が太くて、黒い服なのに膨張して見えるのはジロぐらいじゃないかと思うくらい立派な体格なんですよね‥
思わず6月に見たトロカデロの身長2メートルのバレリーナを思い出してしまったくらい。顔はとても美しいのですが、髪をひっつめると顔がさらに小さくなって首が異様に太いのが目立ちます‥‥何だか、ほとんどそのすごい存在感の彼女を見ているだけで、どんな踊りだったのか、全くすっ飛んでしまいました![]()
「薔薇の精」
エフゲーニャ・オフラスツォーワ&マチアス・エイマン
オブラスツォーワは相変わらずかわいかったけれど、ここではやっぱりマチアス・エイマンですね。ジャンプも高く、踊りは素晴らしかったです。でも、このバラの精はすこぶる健康的で、ちっとも妖しいところがないの。
私の頭に残っているのはまずコールプの‥‥あのタコのようなワカメのような(と、私の友達が言って大笑いしてた
)クネクネした腕の動きに、何を考えているかわからない超怪しい目つきの、あの毒花のようなバラの精と、それから20年ほど前の「アナニアシヴィリと世界のスターたち1」というDVDに残っている、あの信じられないくらい野性的な色気にあふれたルジマトフのバラの精![]()
初めての舞踏会でちょっとドキドキな体験をした少女が、舞踏会の名残の一輪のバラを手に眠ってしまうと、そのバラの精が少女の夢に現れる‥‥というのだから、まあ健康的でも別にいいわけなんですが、あんまりにもそのままですよね。
バレエ・リュスの時代は、ヨーロッパの文化が爛熟して、退廃的な雰囲気もあったと思うので、やっぱりここは多少淫靡な雰囲気もあっていいのだと思うのです。たとえそれが「少女」の夢であっても。コールプのバラの精までいくとやりすぎかもしれませんが(面白いけど)初演のニジンスキーも多分、かなり妖しかった?のだと思いますよ。反対に、前に一度何かで見たマリインスキーのコルサコフだったっけ?あのキューピーちゃんのようなベイビー・キュートなバラの精にはまたびっくりしてしまいましたね。いろんなバラの精があるものです。このエイマンのバラの精は、ピンクのカツラがよく似合って(あんなもの、似合う奴がいたとは
)若々しくてフレッシュなバラの精でした。
「瀕死の白鳥」
マリ=アニエス・ジロ
幕が開き、誰もいない舞台にぽつんと一本足のテーブルがあり、シャンパングラスと、クリスタルの灰皿に吸いかけの煙草が一本。真っ暗な会場でしたが、ふと客席中央通路の右側のドアが開いて、一人の女が入ってきます。手にはグラスと煙草。中央通路に差し掛かった時、ライトに照らし出されたのは、大きく背中のあいた白いロングドレス姿のジロでした。舞台に上がると、酒場のようなざわめきの音が始まります。また‥‥恐るべき大女‥‥という感じですが(ごめん‥)ドレスは前半の「ディーヴァ」のときような、やはり横に深くスリットが入っているもので、「ディーヴァ」ではほとんど裸足(足の前半分だけのサンダルのようなものを履いていた)だったけれど、今度は10センチ以上ありそうなピンヒールの靴を履いているし。これでどうやって踊るの?
女がテーブルの上にグラスを置くと、いつのまにかざわめきが消えて、あのサンサーンスの音楽が流れてきます。不意に、何かにとり憑かれたように、いや、体の中に潜む別の何かがうごめき始めたように、女は変な格好を始めます。ひきつったような、体の片側だけ白鳥のように腕をくねらせたり、その動きを動かないようにもう一方の手で抑えたり。祟り神の血を浴びて何かが憑いてしまった(「もののけ姫」にそんなのあったよね?)という感じで‥‥。ジロの立派な外見といい、ちょっと怖かったです。
音楽が終わると、グラスのシャンパンを飲み干し、何事もなかったように去っていくジロ‥‥でした。
「牧神の午後」よりプレリュード
エレオノラ・アバニャート&バンジャマン・ペッシュ
迷彩柄のような、キャミソールと長めのスパッツが一体になったユニタード姿のアバニャートは、どうやらアバニャートのほうが「牧神」みたいです。黒っぽい水泳パンツのようなものを履いた上に、薄グリーンのメッシュ?のTシャツを着たペッシュが「ニンフ」?
音楽はドビュッシーの同じ音楽ですが、踊りはリフトがたくさんあるパ・ド・ドゥという感じで、同じようなのが続いて、アバニャートが小悪魔的でかわいかったということぐらいしか覚えてないかも
なぜアバニャートのほうが「牧神」かというと、最後にペッシュが脱ぎ捨てたシャツを、アバニャートは大事そうに拾い上げて頬ずりをするのです。汗で濡れてるんじゃ‥‥というのは余計なお世話ですかね。
「幻想~“白鳥の湖”のように」第1幕より
シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ
リアブコは蝶ネクタイに、つけヒゲに、そして変な髪型で、まるでサリーちゃんのパパみたいな感じ。アッツォーニは水色に細い縦縞が入ったドレスで、ウエストに同色のサテンのリボンがついた可愛らしい衣装。ノイマイヤーの表題作品は有名だけれど、かなり前に一度テレビで見たことがあったような、なかったような。プログラムには、この踊りは1幕で王の友人とその恋人が踊るものと書いてあり、普通の「白鳥の湖」で言えばパ・ド・トロワのように、ストーリーとは直接関係ないものなのかな?‥‥と思って見ていたけれど、どうも違うみたいです。
音楽はチャイコフスキーとあるけれど、これは「白鳥の湖」の中では聞いたことがないような音楽でした。最初にリアブコが現れ、地面に跪き、砂のようなものを手ですくい上げ、愛しそうにその匂いを嗅ぐ?ような動作をします。何かの思い出に浸るようなソロのあと、女が後ろから近づいてきます。短く挨拶を交わすけれど、すぐに男は背を向けて、舞台の右と左に別れてしまう。一緒に踊っても、時折女は後ろ向きに細かいパ・ド・プレで下がっていったり、楽しそうな表情をしてもどこか哀愁漂っているような感じがしたり。
狂王ルードヴィヒⅡ世がだんだんと現実を離れ、幻想の世界に入ってしまうというストーリーのようですが、このサリーちゃんのパパこそ、ルードヴィヒⅡ世だったのではないかしら?全幕が見てみたいです。
「プルースト~失われた時を求めて」よりモレルとサンルー
マチュー・ガニオ&ジョシュア・オファルト
ああ、これはルグリガラで見たあれですね。今回は最初にサンルー?(ガニオ)の長いソロがありました。そのあとモレル(ジョシュア・オファルト)が現れ、男性二人のパ・ド・ドゥとなります。これも‥‥前に見たイメージが邪魔をしてしまいます
あのときのデヴィッド・ホールバーグの悪魔的な美しさ、妖しさは全然なくて、やっぱり何か健康的なのよね。こういうものを健康的にやっちゃうのもどうかと思うけれど‥‥少なくとも今回は某少女漫画の世界は連想されませんでした。また胸毛が邪魔してしまったかな
マチュー・ガニオのアンバランスさはダメです‥私。。そこへいくとオファルトの整ったプロポーションの美しさは抜群!そこだけ見惚れてしまいました![]()
「アパルトマン」よりグラン・パ・ド・ドゥ
マリ=アニエス・ジロ&イリ・ブベニチェク
マッツ・エック振付。中央に1枚のドアがあるだけのセット。ジロは、前2回はスタイリッシュなロングドレスだったけれど、今度はいかにも野暮ったいグレーのダボダボしたワンピース?姿。それが、木靴?を脱ぎ捨てて、乱暴にドンドンとドアをたたくと、後ろから男の手が‥‥。
う~ん、何かこの人を食ったようなおかしな動きが苦手なのですが‥。女はこの狭い部屋から抜け出したいと思っているのか、男はここに女を閉じ込めておきたいと思っているのか、ちょっと乱暴で暴力的なところもあったりしたよね?いや、ちょうど眠気も襲って来たのです。最後は反対にジロが男をリフトしていたような?いや、寝ていたからよくわかりませんでした。
「スターズ・アンド・ストライプス」
ドロテ・ジルベール&マチアス・エイマン
バックには大きな星条旗が映し出され、元気のよいマーチに乗ってお人形の兵隊さんのような二人が登場します。バランシン振付。クラシック・バレエなのだけれど、ステップが複雑で、それをメリハリつけて歯切れよく踊ると、まるで人形が動いているようなコミカルな感じがします。女性は青、男性は赤、ともに金ボタンと金モールのついた軍服風の衣装がかわいい。そしてヴァリエーション、コーダとも華やかなテクニック満載で、今までで一番会場が沸きました。ドロテはやっぱり目線がとても魅力的。そしてマチアスは何て軽やかに飛ぶんでしょう。物語なんて関係なく、ショーアップされた中でテクニックだけを次々と見せつける。あ~これもまたバレエの醍醐味の一つだなあ~と思いました。楽しかったです。
ルベランスの後、幕は閉まらず、もう一度同じ曲が流れて、今までの出演者が次々と出てきました。ロシアバレエとは少し違う、洗練された技術と表現を持った若きエトワールたちのバレエを堪能しました。
| 固定リンク


コメント