バレエ大好き2007

2008年1月 2日 (水)

レニングラード国立バレエ「白鳥の湖」

013 年内に感想を書こうと思っていたのに、とうとう年が明けてしまいましたね。12月28日(金)レニングラード国立バレエの「白鳥の湖」の感想です。

ダンチェンコの「白鳥の湖」を見た翌日。あんなに手の込んだドラマチックな舞台を見てしまったあとでレニ国の「白鳥」なんて見て大丈夫かなあ‥‥なんて少々失礼なことを考えながら上野に向かいました。だって、ルジマトフも出ないし、悲劇ですものね~。

前に書いたように、この日は特に見ようと思って取ったチケットではなかったのです。何となく間違えてポチッと押しちゃったら取れちゃった。。。それもあとで確認したら東京文化会館の1階の右側の三角のところじゃないですか。両側の三角の部分は、舞台の端がかなり見えなくなるので嫌なのです。「ジゼル」は左側だと墓が見えないし、特に「白鳥」の右側はロットバルトが見えないから、取ってはいけない席だったよね~。でも意外に舞台に近く、優待ならお得な席だったかな~とも思いました。

幕が開くと明るい紅葉の森。あ~そうだった、これがレニ国の1幕でしたね。1年ぶりに見て、何だかとても懐かしいような気がするのはどうしてでしょうね。ダンチェンコは全体的に舞台照明が暗めで、こんなに明るい場面はなかったように思います。あれ~、衣装もこんなにきれいだったっけ?村娘の衣装は変わってないと思うのですが、明るい照明に映えているのでしょうか。貴族たちの赤い衣装もなぜかとても豪華に見えました。

王子様の登場!え?誰?プパチョフですよね?何とカツラ装着!ちょっと驚きました。プパチョフは昨年の「ルジマトフのすべて」で黒鳥のグラン・パを披露し、その伸びやかでノーブルな踊りに唸らされました。踊りだけ見ると全く天性の「王子様の踊り」なのです。だけど、まだ20代なのにかなり額が目立っていて、ちょっとかわいそ~と思っていました。それにしても、もうちょっと自然にできなかったのでしょうかね~。まるで「眠り」とかの舞台用カツラの普通版、みたいな感じで、はえぎわが不自然になでつけられていて、あれではバレバレで外は歩けないでしょう‥‥。う~ん、でも遠目には素敵な王子様です。よかったのか、悪かったのか‥‥。

始まってすぐにわかったことは、私はこの版の細かいところを何一つ見てなかったんじゃないかということです。昨年2回この「白鳥」を見ているのですが、どちらもルジマトフ主演でした。私は、ルジマトフが舞台上にいるときは多分ルジマトフばっかり見ていて、他はうわのそらで適当にしか見ていなかったんだと思います。そのせいか何だかまるで初見のように新鮮な気持ちで見てしまいました。

椅子を使って高低を出すとか、メイポールみたいな小道具を使うとか、華やかに見せる工夫があったのですね。道化がいない分、今回はなぜかパ・ド・トロワの娘たちと家庭教師がからんで、ちょっとおどけた場面も入っていました。確かあんなに軽い感じの家庭教師ではなかったと思うのですが、配役も変わっているようですね。

パ・ド・トロワが何とぺレンとステパノワ、そしてルダチェンコでした!主役級のソリストが踊る(というよりペレンはプリマですよね~!)何て豪華なパ・ド・トロワなんでしょう。ぺレンはさすがにきれい。ちょっと意外ですが、コミカルな感じも出していました。ステパノワは伸び伸びとした大きな踊り。大柄な人かと思っていたら、ペレンと並んでもそんなに身長は変わらないみたい。大きく見えるのは持っている雰囲気がダイナミックだからでしょうね。

ルダチェンコは、夏の公演でものすごく印象に残っちゃった人でした。どうしてこの人が「海賊」のアリを踊ったり、王子を踊ったりできるんだろう?そんなに寛容なバレエ団なのか、それとも彼以上に踊れる人がここにはいないのだろうか??と不思議に思ったくらいな(ゴメン!)人だったのですが、良くなったじゃないですか。少なくとも「浮浪者」じゃありませんでした。ちゃんとにこやかに貴族の青年してましたし、ペレンやステパノワとも互角に?踊っていました。ソロは、着地をもう少し優雅にできんかい!みたいなところもあるけれど、長い手足をちゃんと使えてますね。相当しごかれたのでしょうか?でも、最後のほうはやっぱり体力ないのか?へなへななザンレールでした。。。ルダちゃん、もう少しだねぇ。

去年の冬、夏と見ているせいか、おなじみの人が出てくるとうれしいし、それなりに目が行ってしまいます。パ・ド・トロワでこんなに真剣に見入っていたことなんかなかったので、自分でも驚きました。やっぱり豪華ソリスト達が踊るパ・ド・トロワは見ごたえがありました。会場のお客さんも皆よく見ている人たちばかりなのでしょうね。拍手がとても暖かいのを感じました。

カツラ装着でそれなりに意気込みは感じたプパチョフなのですが、残念ながらあまり印象に残ってないのです。踊りだすと目を見張るほど素敵なのですが、やっぱり立っているだけで王子様♡というのはルジマトフだけですね~。それから演技面でも前日のスミレフスキの細やかな感情表現に目が離せない状態だったので、比べてしまったらただの普通の優雅な王子様というだけになっちゃって、ちょっとお気の毒。まあ、通常はそれで十分なのでしょうけれど。

友人たちが帰ったあと、一人残された王子は森へ向かいます。このときの場面のつなぎ方が好き。やっぱり休憩なしのほうが、見ているほうも気持ちがつながっていきますよね。森の木々を描いた中間の幕が下り、その前を王子が一人横切って森の中に入っていくのです。木々の間は紗幕になっていて、その裏側を白鳥たちが通り過ぎるのが見えます。変な白鳥のつくりものを舞台奥のほうで移動させるより、ずっといいじゃないですか。本当に湖に白鳥たちが舞い降りているような雰囲気です。王子は白鳥に気付いてさらに湖のほとりに向かっていきます。(去年、一人憂いを帯びて踊るルジマトフにうっとりしたシーンです♡)

オデットの登場!ここでとても残念~!拍手が起こったからオデットが登場したのでしょうが、私の例の三角の席からは見えないのです。くやし~!それから、前かがみにポワントで進んできて、大きくジュッテして王子の目の前に現われる。ここが最初の見せ場なのですよ。5ヶ月ぶりに見たシェスタコワはやっぱりきれいでした~!何だか不自然なほど真っ赤な口紅のメイクがちょっと気になったけれど、あ~やっぱりシェスタコワはいいわ~と思いました。

1幕2場全体はオーソドックスですが、先日書いたように白鳥たちの上げた手の向きが逆になってる!というか、今までが逆だったので、世間一般風になったというか。夏公演のときは確かに内向きでした。プログラムの写真も内向きになっているし、解説にも「白鳥たちはひとところに集まって、腕の翼で身を隠す。これは相手をさえぎるように腕を伸ばした手のひらを外に向けたポーズより、心理的には正しい」などと書かれているのです。こんなに特徴的なことがいきなり変わったのはやはり芸術監督の意向だと思うのですが。どんなものでしょうか。

グランアダージョはとてもきれいでした。純粋に踊りを見るなら、優雅な物腰のプパチョフと、強烈な個性はないけれど、ていねいに情感を歌い上げることができるシェスタコワの組み合わせはとても合っていて、素敵だったと思います。ただ、この1幕2場全体の流れから見ると、なぜかその美しいアダージョだけが浮いていたような。プパチョフ王子はとてもおっとりした王子様で、突如目の前に現われた美しいオデットに対して、君は誰?もっと近くで見たい、話をしたい、つかまえたい!という、そんな性急な情熱が感じられなくて、あとで群れの中からオデットを探し出すときの、はらはらどきどきもなかったのです。別れるときのせつなさももうちょっとあったらよかったのに。

シェスタコワはもしかすると、相手の入り込みの深さに応じて、役に入っていくような人ではないかと思ったりしました。昨年の冬公演で「海賊」「白鳥の湖」「ジゼル」「バヤデルカ」と、ルジマトフの出演する全演目で、ルジマトフのパートナーとしてその可憐な姿を見せてくれたシェスタコワ。特に「ジゼル」のすばらしさは忘れられません。ルジマトフ演ずるアルブレヒトの深い悲しみと懺悔の心を受けて、純粋でひたむきな赦しの世界を見せてくれました。違っているかもしれないけれど、ルジマトフが彼女を好んでパートナーに選んだというのは、踊りの相性がいいというより、表現するところが近いからではないのかなあ~と少し思いました。湖畔のシーンで見る限り、プパチョフの演じるところと、シェスタコワのそれとちょっとかみ合っていないような気がしました。

2幕も、やっぱり照明が明るめなので衣装もセットもきれいに見えますね。花嫁候補どうしが仲良く組んで踊ったりするのはどう考えてもおかしいと思っていたけど、組んで踊るところはなくなりましたね!あと衣装も少しすっきりしたような‥‥。配役表にはなかったけど、花嫁候補の中にヴィジェニナがいました?くっきりした目立つ顔立ちは、「ルジマトフのすべて」のときにプパチョフと黒鳥を踊った(というか、夏公演でルダちゃんと黒鳥を踊らされた)ヴェジェニナだと思うのですが。あと、最後の幕が下りるとき、倒れそうになった王妃を花嫁候補たちが扇でパタパタ扇ぐのもとっても変!と思っていましたが、これは変わっていませんでしたね~。

シェスタコワのオディールは、すごく輝いていました。今までオディールのほうはちょっと弱いかなと思っていましたが、そんなことない!自信と気品に満ちた美しい悪魔の娘。ことさらだまそうとしなくても、ちょっと笑いかければお育ちのよさそうなプパ王子なんてイチコロかも。迫力というより、その輝きで圧倒していましたね。テクニックも安定していて、すばらしかったです。

プパチョフも、ヴァリエーションでは本領発揮。何やかやいっても踊りだすと全く誰よりも王子様ですね!相変わらずジャンプの伸びやかなこと。ふわっとした優雅なジャンプは見ていて気持ちがいいくらいです。拍手喝采でした。そのあとのだまされたことを悟るお芝居は、こちらは結構頑張っていたようです。いや、ここでしっかり芝居しなくてどうするのだ?

3幕。長身のシュミウノフのロットバルトは見ごたえがありました。こんなに踊るシーンがあったっけ?最後、二人が湖に沈む場面では中央で派手にぐるぐる回っていましたよ。その場面の直前に左に王子、右にオデットがやっぱりくるくる回っていて、こんな振り付けだったかなあと‥‥‥。まあ私の記憶はいい加減なので、そうだったかもしれません。

改めてシェスタコワは全幕で本領を発揮するタイプだと思いました。夏公演では印象今ひとつだったので、あの輝きはルジマトフというパートナーあってのものだったのかなあとさえ思ってしまいましたが、踊った演目が向いてなかったかもしれないし、やっぱり物語の中でこそ一層輝きを放つことができるバレリーナなんでしょうね。ただし今回は、踊りは美しかったけれど、プパチョフ王子との愛がもう一つ感じられなくて、その点では物語の深みというよりも、顔見世興行的に終わってしまったようで、少し残念でした。多分本国でも共演の回数は多くないのでしょう。これから共演の機会がふえればお互いの表現するところが近づいてくるのだろうと思います。

全体的に感じたのは会場のお客さんの反応がすごく良いこと。ほんとにこのバレエ団が来るのを待っていたような人たちばかりだったような気がします。そのうえレニ国きってのプリマと、期待の王子様の組み合わせ。ゲストではなく、はえぬきのプリンシパルですからなおさらです。さらに脇を固める豪華キャスト。会場はいやがおうにも盛り上がりました。「ごひいきのバレエ団」という感じなんでしょうね。もうその雰囲気に酔わせてもらいました。そういう意味でとてもよい公演だったと思います。やっぱり毎年来てくれるレニングラード国立バレエはいいなあ~。

それから、私は生オケでもテープでも、今まであまり音は気にならないほうだったのですが、(といってもあまりに録音の悪いテープは、普通にひどい!と思いますけど)レニ国はオーケストラが違う!去年の最初のバレエ鑑賞、「海賊」のとき、音楽が迫力あるなあと思いました。特に打楽器系。同じ会場でそれより1ヵ月前に見たマリインスキーの「海賊」のときは、全然音のことなんて意識しなかったのですけどね。それからいろいろ見てきて、1年ぶりにレニ国(夏公演はテープでした)のオーケストラを聞いて、やっぱり迫力が違うと思いました。とくに打楽器とブラス系が舞台をガンガン盛り上げることといったら!いいですね~こういうの大好き。

私自身、いろいろあって、しばらくレニ国(というよりほとんどバレエそのもの)を見ていない時期があったのですが、2002年から一昨年までの4年ぐらい、本当にもったいなかったと思っています。その間、円熟期のルジマトフのすばらしい公演の数々があっただろうし、若手プリマたちの成長もあっただろうし、今考えると「何てことをしたの!?私のバカバカ!」というくらい後悔しています。でも、新芸術監督のもと、さらに新しい面を見せてくれるに違いないので、その行く末をこれからたっぷり見させてもらおうと思っています。

悲劇で終わる版なのに、年末になぜか心温まった「白鳥の湖」でした。間違えてチケットとっちゃったことも、結果はすごく楽しめました。さて、ことしの私のレニ国鑑賞は6日のエフセーエワとルダちゃんの「眠りの森の美女」からスタートします。ちょっと心配ですが?楽しみです。

| | コメント (0)

2007年12月31日 (月)

ブルメイステル版「白鳥の湖」

モスクワ音楽劇場バレエ「白鳥の湖」12月27日Photo

なぜかチェルノブロキナの名前だけは前から知っていました。モスクワ音楽劇場バレエ(ダンチェンコ)が2000年に来日したときは「白鳥の湖」と「ロミオとジュリエット」で、そのときにこのチェルノブロキナの「白鳥」は絶対見たほうがいい!と言われたけど、私はまだ見たことがなかった「ロミ&ジュリ」のほうを選んだのです。

当時は子どもが小さかったので、そんなに頻繁に家をあけることもできなかったから、仕方なかったですね。オーケストラの人たちまで衣装を着て舞台に上がるワシーリエフ版(思い出した!)「ロミオとジュリエット」もとても珍しくて印象に残りましたが、この「白鳥の湖」こそ、もし当時見ていたらきっとびっくりしたでしょうね。そのあとどんな「白鳥の湖」を見ても、物足りなく思っただろうと思います。ただ、あのときどこまで理解できたかと考えると、これを今初めて見たことは何か意味があるような気がしました。

というわけで、ずっと見たいと思っていたチェルノブロキナでした。幕が開くと、いきなり薄いジュリエットみたいなドレス姿の姫が花を摘んでいます。それがチェルノブロキナ。もうかなりのベテランだと思うけど、とても可憐な美しさに、まずびっくりしました岩の上には悪魔ロットバルト!たちまち黒い大きな翼で姫を捕まえてしまいます。かわいそうな姫はのろいで白鳥に変えられてしまったのでした。

場面は変わって背景に城が見える庭園のようなところ。王子の友人たちが集まってきて、乾杯をしています。王子は「くるみ割り」のときと同じスミレフスキ。細身で長身の、やさしい雰囲気の王子様です。花籠を持った村娘たちが一人、二人とやってきて、楽しい踊りが始まり、ひとときの楽しみに浸ります。でも、王子の心の中は晴れない様子。

王妃様が登場すると、村娘達はあわてて王子の友人たちの後ろに隠れてしまいます。王妃様は「あなたはこれからこの国を治めていかなくてはいけないのですよ。もうそろそろ、このようなお遊びはおやめなさい。」などとたしなめます。村娘たちは決まり悪そうに帰っていきますが、このとき王妃のおとり巻きの女官たちがみんなそっぽを向いているのが面白い。

王妃様が帰ると、残った貴族の女性たちと、王子の友人たちがまた踊りだします。パ・ド・トロワはここでは4人で踊られるパ・ド・カトルになっています。注目したのは男性二人。一瞬女性かと思った甘い顔立ちのセルゲイ・クジミン、金髪サラサラのさわやかなドミトリー・ハムジン、絶対この二人が次期王子様だわ~♡などとオバサンの目の付け所はそんなところか~。男性バリエーションは弓を持って同じ振りで踊るもの。男性の踊りはスピード感もあるし、ジャンプの高さや回転のタイミングなど個性もあるので、あわせるのはとても難しいと思うのですが、ぴったり息が合っていましたね、拍手!

それからここで、通常オディールとのアダージョに使われるあの曲で、王子のソロが入ります。最初弓を持って楽しげに踊っているのですが、続いて道化に押されて王子の前に出てきた貴族の娘?とのパ・ド・ドゥになります。スミレフスキは長い手足を存分に使ったきれいな踊り、若い子たちのほうが容姿はよかったけど、やっぱり王子としての風格は違いますね。ペルシェンコーワという人もとてもきれいでした。だけどどうしてもこの曲、オディールがねちっこく王子に流し目を送ったりする場面を連想してしまうので、美しい貴族の娘と踊っている雰囲気ではないなあ~。こちらのほうが原典に忠実なのだそうですが。

なぜかこちらはうっとりと美しいアダージョに酔っているのに、王子はふと白鳥が飛んでいくのを目にし、心はそちらのほうに奪われていきます。そのあとは踊りもうつろになり(おい、どうしたんだ!)踊りが終わるや否や、王子はみんなを残し一人飛び出していってしまいます。相手の女の子かわいそ~!道化に慰められていました。この道化の人もよく回りよく飛ぶ人でしたね。ただのおどけ役ではなく、ちょこまかと立ち回ってその場をコーディネイト?しているような役回りでした。

1幕は王子不在のまま道化を中心にみんなで踊って終わります。え?ここで幕?ふつうはここで半分幕を閉めたりして、大体1幕2場へと続きますよね。ここで休憩は少し早すぎる気がしました。で、何と全4幕ということで休憩が3回もあったのです!20分、20分、15分ということでしたが、時計を見てなかったけどもっと長かったような‥‥‥。休憩だけでゆうに1時間はありました。

外国なら劇場が社交場になっているからいいのかもしれませんが、一人で来ている人も多いし、今回特にプログラム以外何も売っていないし(本とかビデオとか、Tシャツでも売ってくれればいいのに!)コーヒーもそんなに何回も飲めないから、休憩は2回が限度でしたね。3回目は座席でじーっと待っていて、隣の人は何回も「は~っ」とため息をついているし、反対側の人は上着をかぶって寝ているし、ちょっと苦痛でした。

これはあとで聞いたのですが、日本の会場はどこも多目的にできていて、バレエやオペラ専用ではないので、バトンの数が足りなかったり、どうしてもセットの入れ替えに時間がかかるということでした。そのとおりの豪華なセットでしたね。特に3幕はバルコニーのついた立派な宮殿、天井からは豪華なシャンデリアが幾つも下がり、これだけでも裏方さんは大変だろうな~と思いました。「くるみ割り人形」のシンプルでモダンな舞台セット・衣装に対し、こちらはクラシカルで重厚!そのよさを伝えたくての苦渋の選択?だったそうです。

2幕は大体普通どおりの進行でした。白鳥を追って湖にやってきた王子がオデットに出会う場面。登場の瞬間から、美しく儚げなオデット。王子に気付き、驚き逃げる姿。それを見失うまいと必死で追う王子。つかまえられて、しばし見つめ合うところ。このあたりの高まりというか緊張感が、何度見てもどきどきします。2幕全体はとても見入ってしまい、あっという間でした。

普通なら白鳥のコールドはどうだとか、4羽はどう、3羽はなどと思うのですが、それが全部すっ飛んでる。ただ、本当に王子の心の動きに沿って、悪魔に引き裂かれ、白鳥の群れの中でどきどきしながらオデットを探し、やっとまた見つけ、悲しい身の上を聞き(マイムはほとんどありませんでした)と、そんな調子でぐいぐいと引き込まれていってしまいました。

チェルノブロキナは、何と言ったらいいんだろう、とてもていねいで細やかな踊りなのですが、そんなことより、途中からまるでオデットそのものに見えてきて。憑いてる、といったら変だけど、もう最後の王子に倒れ掛かるところなどは完全にいっちゃってました!それから王子の陶酔感!見かけはちょっとオジサン入ってる王子なんだけど、本当に初めての恋に陶酔する若者でした。その姿に胸キュン!やがてまたオデットは白鳥の姿になって去っていく。オデットの残していった羽を拾い上げて誓う王子。

3幕、豪華な宮廷セットの中、道化の子分たちが登場し、踊ったりでんぐり返しをしたりして楽しく始まるはずの舞踏会。美しい王妃様が登場。そして王子は最初から浮かない顔。白鳥の羽をいつまでも見つめています。花嫁候補たちが美しい踊りを披露しても、普通は儀礼的に一緒に踊ったりするけど、それもせず、ただ羽を眺めている王子はまるで痴呆ですな~。完全に魂を奪われている感じです。何の反応もない王子に困っている王妃。

そこへファンファーレとともにロットバルトとオディールが、スペインだけでなく、民族舞踊軍団全員を引き連れての登場です!何と派手な登場!衣装がまた豪華!その国の踊りらしい衣装、というより、全部がロットバルトの衣装と同じ雰囲気のデザインで、ものすごく濃い!そしてロットバルトのマントから現れたオディールは、意外にも気品をたたえたかわいらしい小悪魔でした。あっと驚く王子。しかし、すぐにスペインの踊りが始まってオディールは姿を消してしまいます。

このあとの民族舞踊はどれも振り付けがかっこよく、とても見ごたえがありました。ロットバルトとお揃いっぽい衣装といい、その踊りの意図はただ一つ、王子をだますこと。踊り手は観客に向けてではなく、王子ただ一人に向けて踊っているのです!おまけに踊りの途中で不意にオディールが現れては消え、そのたびに王子の心はぐらぐら。このあたりがすごくドラマチック!

だけどだまされる当の王子は王妃にべったりで、何だかこの辺がよくわからなかったけれど、ここの場面だけ異様にマザコンっぽい王子でした。パリ・オペラ座のビデオでは、王妃は露骨にこのうさんくさい一団を嫌がる常識人間なのですが、こちらの王妃は「あなたがそんなにいうのなら」みたいな甘いお母様でしたね。

いよいよグラン・パ・ド・ドゥです。おなじみの曲じゃなくて、あれ?どこかで聞いたような。でも思い出せない。(チャイ・パドの曲だそうです。ついでにオディールのヴァリはニーナが好んで踊る?あの曲でした♡)オディールは口角をきゅっと上げたキュートな表情で王子を魅了します。かわいいよ~。王子でなくても参ってしまいそう。すごく魅力的なオディール!それがまたこれでもか、これでもかというほど王子をじらし、ひきつけ、また突き放す。手練手管というのはこういうことでしょうか。王子はかわいそうに、もうすっかり手玉に取られて心がちぎれちゃいそうだわ。

それが、愛を確信した後半になると、もうなんという表情でしょう!幸福の絶頂といわんばかりの、この上ない幸福感に満ちた踊り!本当に言葉のないバレエの世界で、どうしてここまでの自在な表現ができてしまうのだろうというほど。「くるみ」のときはただの優しい王子様だったけれど、このスミレフスキという人がこんな激しい表現をする人だったなんて、知りませんでした。あるいはこれがスタニスラフスキー・メソッドの成果なのか、それともドラマ性を重視するブルメイステル版の効果なのか、他のキャストを見ていないのでわからないのがもどかしいのですが、これがスミレフスキの独自の技量だとしたら、私は完全に彼に参りましたね~。

王妃を説得し、有頂天でオディールに求婚する王子。王子はオディールに誓いの羽を渡してしまいます。そして通常の版の、誓いのポーズをするまでもなく、王子は窓の外にオデットの姿を見つけ、だまされていたことを悟るのです。城全体がざわめき、ロットバルト軍団はあざけりながら大きく渦を描いて嵐のように去っていく。嘆く王子。うかうかとだまされてしまった自分へのどうしようもない怒り。王妃へ別れを告げ、打ちひしがれるように走り去る、もうここまで手に汗握るというか、すごかったです。

ここの休憩が15分のはずなのに、とても長かった。やっぱりあの豪華な宮廷セットを入れ替えるのは15分じゃ足りないかも、ですが、見ているほうとしては、ここまでドラマチックに盛り上げておいて、もう間髪入れずに次が見たいじゃないですか!ほんと、この休憩は長かったわ~。

めちゃめちゃじらされて、やっと3幕。静かにオデットの帰りを待つ白鳥たちのもとに、悲嘆にくれたオデットが戻ってくる。何て哀しいの。。もうロットバルトの呪いは解けることがないという絶望。悪魔に翻弄され苦しむ白鳥たち。そこへ王子の登場!ここの音楽は大好きだし、「正義の見方登場!」みたいな感じでいつもわくわくするのだけれど、ちょっと様子がちがうんですよ。王子は白鳥の群れの前でひざまずき、ひたすら許しを請うのですが、白鳥たちは王子を許そうとはしない。一同揃って拒絶のポーズ。えっ?何だかこれって「ジゼル」みたい。そして白鳥たちは斜め2列に整列して静かに去っていく。悲嘆に崩れ落ちる王子。オデットは何度も王子のもとに行こうとするけれど、白鳥たちはそれを抑えて列に戻そうとする。まるでオデットの葬送のような、白鳥たちの列。

その列がほとんど上手に入りきったとき、オデットは制止を振り切って王子のもとへ。やっとまた会えたのに‥‥リフトから始まる短いパ・ド・ドゥは連打するティンパニの音に従ってどんどん悲しみが深まっていくような悲痛なパ・ド・ドゥでした。それでもオデットの深い赦しと愛を感じ、せつない~。決然と王子に背中を向けて去っていくところは、何かを心に決めたかのようにも見えました。

そのあとは岩の上にロットバルトが現れ(あんなでっかい翼じゃ、地上バトルはムリだわな~)王子を苦しめる。なんて弱っちい王子なんじゃ!いつのまにか舞台は湖の中へ。王子の足元に波が現れ(歌舞伎でもやる、布の下に空気を送ってバタバタというあれです)のまれてしまう、というそのとき、岩の上にオデットの姿が現れます。ああもうロットバルトにやられちゃう!と思ったとき、王子が岩の上に手を差し伸べ、オデットをリフト。暗転。

どういうマジックなのか、その後ライトに浮かび上がったのは、最初のドレス姿の姫をリフトした王子。ロットバルトは滅び、魔法は解け、元の姿に戻ったことを喜び合う二人。緊張感でなかなか泣けなかったけど、最後の最後で緊張が緩んで涙が出ました。幸せな涙でよかった~。

多分この版では、ドラマチックに展開する3幕が一番の見せ場なのでしょうが、私はこの4幕が一番感動しました。白鳥たちが王子を許さないのは当然で、王子を愛したオデットだけが命をかけて決然と王子を救ったように思えます。(ホントは違うのかもしれませんが)ラストでは元に戻れたことを無邪気に喜び、静かな幸福感につつまれて終わるのも、感動でした。

ホントによかったんです。カーテンコールで立ち上がりたいくらいでした。でも、会場の反応はそうでもなかったので、ちょっと申しわけないような気持ちになりました。こんなにすばらしいものを見せてくれたのに。私は一生懸命拍手しましたが、みんな長いので疲れてしまったのかな‥‥。

チェルノブロキナはもちろんですが、意外にも王子役のスミレフスキがすばらしかったこと。私が今年の1月に、ルジマトフの演じるジークフリート王子にショックを受けて以来、この物語は王子が主人公だったのだと思ってきましたが、もうそのとおり!ルジマトフ以上に王子の心の中の不安、情熱、幸福の絶頂、憤り、後悔、懺悔、そんなものを全部見せてくれたような気がします。(ルジ様がこのブルメイステル版を踊ったら‥‥なんて考えてしまいますよ。。)←(余計なことを!)

終わったのは10時過ぎ。しかも山手線がなかなか来なくて‥‥。かなり疲れましたが、よい舞台を見た満足感を持って帰ることができました。

| | コメント (0)

2007年12月29日 (土)

モスクワとレニングラード、「白鳥の湖」

27日にモスクワ音楽劇場バレエの「白鳥の湖」チェルノブロキナ主演を見てきました。それから昨日、28日はレニングラード国立バレエの「白鳥の湖」とたて続けに見て、これで今年のバレエ鑑賞は終わりました。感想はこれから暇をみつけて書いていこうと思いますが、なにせ主婦は年末、大掃除にお正月の準備で大変!掃除も普段ろくにやっていないダメ主婦なもので‥‥‥。年賀状もまだ手付かずで、残されたあと数日でひたすら頑張るっきゃないか。

思えばことしの年明け早々、1月7日に国際フォーラムでルジマトフの「白鳥の湖」を見て以来、私のバレエに対する見方がすっかり変わってしまったのです。7日の前に5日の「海賊」も見ていたのですが、そのときはこんなに夢中になるとは思いもしませんでした。数年のブランクを経て、また見始めたバレエの世界はとても新鮮で、世代交代あり、新たな発見ありでとても楽しませてもらいました。「白鳥の湖」で開けて「白鳥の湖」で終わる、記念すべき?1年だったと思います。

先日友達にKバレエの「くるみ」のDVDを見せてもらいました。2年前の映像で、熊川哲也主演。セットも雰囲気もそのまんま。そうだよね~、このスチュアート・キャシディがいいんだよね~などと思って見ていたら、あれっ?こんなだったっけ?と思うところもちらほら。天使は子役だったからここは変えたんだなと思うけれど、私もずいぶん忘れたり思い違いをしていたり、いい加減なんだなあと反省しました。やっぱりどうせ見るなら2回ぐらい見ないと正確ではないかもしれませんね。(見たいものばかりの中でそれは難しいと思うのですが)印象はそのとおりですが、細部の記憶が余りにいい加減で、愕然としてしまいました。

モスクワ音楽劇場バレエのブルメイステル版「白鳥の湖」は、その反省から、予習として同じブルメイステル版のパリ・オペラ座のビデオをざっと見てから出かけました。今新しく出ているルテステュのではなく、一世代前のピエトラガラ&デュポンのほうです。デュポンって知らないけれど、こうやって見ると決して体型的に恵まれてるわけじゃないのに、すごくチャーミングで魅力ある人だったんですね~。

モスクワ音楽劇場のほうは、同じブルメイステル版でも、多少物語の解釈が違っていて、その辺が面白いなとか、そんなこともわかるので予習って大事かなと思いました。何でも先入観なく楽しみたいというのはあるのですが、そのKバレエのように結構印象に残っていたにもかかわらず、あとでDVD見たりすると記憶はあいまいだし、見るべきところをはずしていたかも?だったので‥‥。

チェルノブロキナは最高!まるでオデットがのりうつっているような2幕、これでもか、これでもかと王子を攻めてくる迫力のある3幕。たおやかでとても美しいのに、こんなにもドラマチックに言葉のないバレエの世界が展開するのかと、しばしため息、でした。

一方王子役のスミレフスキーは、おっとりした「くるみ」のときの印象と違って、激しい演技派の一面を見せて、本当に1月7日にルジマトフの王子を見たときぐらいに驚きました。物語の展開にしたがって、王子の心の動きをこんなにはっきり多彩に見せてくれた人はありません。容姿的にはちょっと好みではないのですが、それでもものすごく感情移入してしまい、王子とともに喜び、悲しみ、感動のラストに涙した怒濤の3時間でした。この感想はあとでまた改めて書きたいと思います。

それから昨日のレニ国の「白鳥」ですが、これは実は見るつもりではなかったんですね。私が最初から買っていたチケットは、ルジマトフが出るだろうと予測していた「バヤデルカ」と「ドン・キホーテ」だけで、しかもキャスト発表されるとその日はシェスタコワの日ではありませんでした。先シーズン、ルジマトフのパートナーとしてあんなに見たシェスタコワを1回も見ないなんて‥‥‥。と思っていたら、タイミングよく優待チケットが出たのです。それで、どのあたりの席があるんだろう、と見ようとして、なぜか信じられないけど間違えて、席も確認せず「購入する」をクリックしちゃった!それで仕方なく(ゴメン!)見に行ったのです。

シェスタコワの「白鳥」は、コールプの日とどっちにしようかと迷っていたけど、これじゃ迷う必要もありませんでしたね~。(笑)でもノーブルなプパチョフとの相性はとてもよいようで、1年ぶりのレニ国の「白鳥の湖」を堪能しました。シェスタコワはやっぱり圧倒的なプリマの輝きがありますね!踊りも緩急のつけ方とか、しっとりとしたタメとか、ますます磨きがかかったように思いました。今までなかった組み合わせということでしたが、プパチョフもこれからのバレエ団を背負って立つプリンシパルとして、このバレエ団のトップどうしのペアにファンの拍手もとても熱かったです。

劇場の体制が変わったので、何かと好みではなかったボヤルチコフ版もこれで見納めかと思いましたが、衣装もところどころ新しくなったようで、きれいでしたよ。道化が出てこなくても、悲劇バージョンでも、それなりによいような気がしてきました。振り付けもマイナーチェンジしたような。白鳥たちの手の向きが世間一般のものと同じ外向きになったのにはびっくり!これは芸術監督様の御意向でしょうか?内向きの手が羽で身を隠す動作として正しいというのは、このバレエ団のポリシーだと思っていたけれど、もしかして日和(ひよ)った?

たまたま連日だったので、どうしても比較してしまうのですが、モスクワのほうはすばらしかったにも関わらず、お客さんの入りも、反応もいまいちでした。普段そんなにバレエを見たことがない人が多いのかしら?と思ったけれど、そうでもないような気もするし。舞台上であんなにすごい世界が展開したのに、この熱気のない拍手は何だか申し訳ないなという気持ちさえしてしまいました。

一方、レニ国のほうは会場全体の暖かさを感じました。私が得チケで見れたように、それなりに空席もあったのですが、いつも応援している人たちばかりという感じで、本当にこのバレエ団が、団員の一人一人が愛されているなと感じた公演でした。とにかくお客さんの拍手が熱い!そこが毎年夏と冬の2回来日して、日本全国を公演して回っているバレエ団と、7年ぶりに来たバレエ団との違いかなと思ってしまいました。

レニ国のプログラムも買いました。毎年何演目も行って、それらが1冊にまとめられたプログラム、これが2,000円なんて本当に安い!モスクワ音楽劇場のほうは同じ2,000円で「くるみ」と「白鳥」だったけど、ろくな舞台写真載ってないし、文章も全然読みごたえないし、第一団員の紹介が意味不明。何年入団、何々公演に出演、だけではその人がどんなダンサーなのかさっぱりわからないじゃない!レニ国の団員紹介を見なさい!シェスタコワは「安定した技術と豊かな表現力を持つ。愛らしく、その動きは音楽を感じさせる」なんて、これだけでどんなダンサーかわかるよね。プパチョフは「身のこなしはエレガントで、テクニックも確か」うんうん‥そのとおり!レニ国が2,000円ならモスクワは1,000円だって高いよ!(Kバレエの「くるみ」だけで2,500円は論外!)

だけど、先シーズンのプログラムがまるで「ルジマトフ写真集」のようで、私はかっこいい写真あちこちに付箋を貼って、持ち歩いて、もらったサインなどを友達みんなに見せていたことを考えると、とっても淋し~い!おまけに芸術監督としてのルジ様の写真は、まるで浦島太郎が玉手箱を開けて一気に何十歳も年取ってしまったみたいにオジサンで、超悲しい!!(同年代だけに。。)あんなくたびれはてたオジサンの顔写真を載せて、「もう古典を踊ることは難しいでしょう」なんて書かれると「そうなのか~」とあきらめざるを得ないような気になってしまいます。

何でたった1年でこうも変わってしまったんだろう。先シーズン、あんなに美しく輝くような姿と、役に対する深い洞察力を見せてくれたルジマトフは一体どこへ行ってしまったの?(涙!)もしかして、死ぬまで踊らせるウイリーよろしく、日本のオバサンたちに踊り殺されることが恐ろしくて、わざわざあきらめさせるためにこんな写真を出した?

そんなの許さない!死ぬまで踊りなさい!

芸術監督という仕事が大変で、やりがいのあるのもわかる。プログラムには(レニ国のH・Pの「芸術監督の一日」というのと同じ?)「アーティストは自分のことだけを考えていればいいけど、芸術監督は人のことばかり考えている(笑)」とあったけど、ファンにとっては「笑ってる場合じゃないだろう!」ですよ!

まだ延々とプログラムの話でごめんなさい。「ドン・キホーテ」のコールプの写真を見てのけぞりました。何だこれ?バジルですか?‥バジルは初役だそうで、わざわざプログラム用の写真を撮影してはめ込んであるのだけれど、わざわざ撮影して何でこんな盗賊のような写真なんだ!これではまるで、キトリを騙して駆け落ちして、あとでジプシーにでも売り飛ばそうとたくらんでいるような、とんでもないバジルだよ!まあ本人は、こんなふうに腹に一物ありそうなキャラというのが気に入っているふしもあるので、これで納得してるんでしょうが。粋で陽気な町の若者には絶対に見えません!コールプさんは大好きですが、今から「ドン・キ」を見るのが恐ろしくなりました。

そんなこんなで、まだあるのですが、長くなったのでまた次の機会に。次は真面目に二つの舞台の感想を書きたいと思います。

| | コメント (0)

2007年12月25日 (火)

モスクワ音楽劇場バレエ「くるみ割り人形」

Kバレエの印象を一気に書いて疲れたのか、忙しかったのか、22日に見たモスクワ音楽劇場の「くるみ」の感想が書けないままでした。でも、遅くなって多少忘れても、書き留めておくことは大切だなと思います。

念願のナタリア・クラピーヴィナを見ることができました。「念願の」というのは、ずいぶん前にロシアバレエの「ゴールデンガラ」という公演を見に行ったのですが、そのとき唯一印象に残った人だったのです。一緒に行く友人が急用で行けなくなって、その分のチケットをうちの娘にもらうかわりに、もともと行く予定だった友人の子どもを連れて行くことになりました。プログラムを買っていなかったし、二人のうるさい小学生の保護者として気が散っていたせいもあって、多分他にチェルノブロキナとか、ボリショイのルンキナとか、グラチョーワとか、そうそうたるメンバーだったと思うのですが、誰が何を踊ったのかさえ覚えていないのです。だから見たものは記録に残しておかないと、もったいないですよね!

ガリムーリンが真っ赤な唐辛子?のような衣装で「ゴパック」を踊ったのだけは覚えています。あとはクラピーヴィナの「幻の舞踏会」。ショパンの曲で踊る、静かで幻想的なパ・ド・ドゥだったと思います。薄い水色のふわっとしたロマンチックチュチュで、ゆったりとした低いリフトを繰り返す、まるで夢心地のような不思議な美しさは、ずっとあとになるまで印象に残っていました。そのクラピーヴィナですが、また見たいと思いつつ、今まで見る機会がありませんでした。

モスクワ音楽劇場バレエ団は今回7年ぶりの来日だそうです。その7年前は、上下2段の舞台をつくって、その間にオーケストラを置く独特の「ロミオとジュリエット」(これもプログラム買ってないから「何版」なのかわからない‥‥!)を見に行きました。このときのジュリエットはレドフスカヤ、ロミオは確かヴィクトル・デュクという人でした。(今回もレドフスカヤはプリマとして来日していますが、デュクさんはいませんね。)最後にあと少しというところで届かなかった二人の手を、指揮者の方がそっとつないであげる、とても心温まる演出が感動的でした。

020 つい前置きが長くなってしまいましたが、そんなわけで今回の公演をとても楽しみにしていました。その割にはチケット買うのが遅くて、しかも2階席の後ろまでS席(15,000円)というじゃないですか。頭にくるのでA席にしましたが、3階でした。国際フォーラムのホールCは、夏に「ルジマトフのすべて」で体験しましたが、1階席は傾斜があまりなく、見づらいホールです。3階席は正面なのでまあまあよく見えますが、何とエレベーターでしか行けないのです。2階まではエスカレーターがありますが、3階は階段もなく、混んだエレベーターを待つしかないのがとてもいやでした。もうここの3階はやめておこう!

まず、舞台美術がとてもシンプルです。プロローグで天井まで白い切り紙細工を並べたようなパネルで仕切ってあったのが印象的。そう、全体が白を基調にしているようです。マーシャ(クララ)の家の居間も、正面にクリスマスツリーと家の形のパネル?があるだけのシンプルさ。雪の場面は雪をモチーフにした切り紙のようなモビールがバックでくるくる回っている。お人形の国も、背景は金属のフレームと色とりどりの珠のモビール。モダンというか、抽象的というか。でも、夢の中の世界ですから、それでいいのでしょうね。とても意外でしたが、そのシンプルさでもチープな感じはしなくて、かえって都会的で洗練された印象を受けました。

1幕、衣装がとてもかわいらしい!大人も子どもも。ジュリエットの衣装のような、胸のところに切り替えのあるオフホワイトのドレスで、赤や黄色、緑などのお花のモチーフのポンポンがついている。それが、みんな雰囲気は同じなのだけれど、よく見ると少しずつデザインが違っていて、どれ一つとして同じものはないのです。それからおじいさん、おばあさんの衣装もかわいかったなあ~。

舞台上では、あちこちでいろんなことが同時進行しています。人形芝居をするドロッセルマイヤー、それを見ながら思い思いに歓声を上げる子どもたち。あいさつを交わす大人たち、ピアノを弾く人、プレゼントを持ってくる人‥‥。やっぱり3階からオペラグラスでは1部分しか見えないので、こういう場面を見るのはだめでしたね。マーシャ役のクラピーヴィナは、もうベテランの部類だと思うけれど、愛らしい外見は少女そのもの。くるみ割り人形をもらったときのうれしそうな表情。壊れちゃったときの泣きそうな顔。くるくる変わる表情がかわいい人でした。

物語は大体同じですが、夜にマーシャが部屋を抜け出してくるのではなく、もうそのまま居間のソファで寝ちゃうの。え~?そこからはマーシャの夢の中で、ネズミが現れて人形の兵隊たちとの戦い。なぜかドロッセルマイヤーのマントのうしろから、1匹、2匹と現れる。やっぱりネズミはドロッセルマイヤーの回し者?その辺がよくわかりません。そのネズミさんたちがまたとってもモダン!リアルな着ぐるみではなく、まるで消防服のようなメタリックな甲冑軍団。ネズミというよりは不気味なアルマジロですかね~。そして、兵隊さんたちは木馬に乗ったり?大奮闘するも、くるみ割り人形危うし!そこへマーシャがスリッパを投げるのは同じ。

ここでドロッセルマイヤーが魔法をかけ、くるみ割り人形は素敵な王子様に、マーシャは美しい大人の姿に変わっていました‥‥‥。と思ったのですが、実際マーシャの衣装はネズミとの戦いの時点で変わっていたんですよね。夢の中ではずっと白の長いスカートの衣装。グラン・パからフィナーレまでは白のクラシックチュチュでした。このあとの王子とマーシャのパ・ド・ドゥがとてもきれいで、本当に少女の夢の中の、恋に恋するような憧れの世界で、もう思い切り涙腺ゆるんでしまいました。以前は「くるみ」で泣けたことなんてなかったんですけどね~。

雪の衣装は、白いクラシックチュチュのスカートの部分に、例の切り紙細工の雪のモチーフがあしらわれた斬新な衣装。コールドもきれいでした。ここの場面を楽しむにはやっぱり3階がいいですね~。そう、「うっとり」できるというのがバレエのいいところだと思うのです。その点で言えば、先日のKバレエは「すごい~!」とは思っても、「うっとり」する場面はそんなになかったような気がします。

第2幕、ゴンドラならぬ丸い鳥かごのようなものに乗って、王子とマーシャはお人形の国へ。それからいきなり民族舞踊が始まるので、ちょっと唐突な感じもしないでもありません。何と2幕の衣装は、いかにもそれらしい民族衣装ではなく、やはり白をベースにしたもので統一されているのです。デザインはそれぞれですが、みんな踊りによって決まった色の大小のポンポンがついているかわいいもの。「何だよこれ、変!」と思う人もいるでしょうが、少女の夢の中の人々なのですから、そんなにリアルな民族衣装である必要はないわけで、私はファンタジックな雰囲気がよく出ていて、この物語にはふさわしいなと思いました。

スペインもよかったし、トレパックもよかった。でもアラビアのあのハンカチ振りは??ちょっと長くて退屈。12組(だった?)の男女のペアが踊る花のワルツはとてもよかったです。いつも結構長いので、私は飽きることが多いのですが、白いロマンチックチュチュと白いタキシードの男女で踊られるこのワルツは、色とりどりの華やかさはないけれど、清楚な感じできれいでした。

最後の、クラシックチュチュのマーシャと王子のグラン・パ・ド・ドゥ。王子役のスミレフスキーとはご夫婦なのだそうです。道理で、難しいダイブも、肩の上でシャチホコみたいになるリフトも、息がぴったりで安心して見ることができました。あ、そう、何だこりゃ?みたいな変なリフトもありましたが、平然とやっていたのであれはああいう振り付けだったのでしょうね~。

クラピーヴィナはポワントでのアラベスクとか、そういう一つ一つのポーズがよくキープできていて、伸びやかで、きれいな残像を残してくれる人ですね。スミレフスキーはどちらかというとノーブルというより、線が細目の印象で、ボーっとなるような超素敵な王子様♡というわけではなかったけれど、好感の持てる王子ぶりではありました。実直な方のようですね。そういうのって踊りにも出るんでしょうか。王子の衣装がずっとくるみ割り人形のままみたいな赤タイツで、お着替えなしでした。それだけはちょっと‥‥。でも、白と赤という対比で言えばよかったのかもしれません。他の人たちがみんな白ばかりですから。

フィナーレは民族舞踊人形も、白い花のワルツの人々も、全員総出の夢の締めくくり。マーシャはもとの部屋で目を覚まします。最初の白い写真のフレームのような仕切りがまた登場し、その間からくるみ割り人形を抱いたクララが顔を覗かせます。ひとときの、素敵な夢でしたね~。

シンプルな舞台美術と衣装のため、全体的にはあっさりした印象でした。それこそKバレエなどを日ごろ見慣れているような人には全然物足りないでしょうね。そうでなくても、宣伝チラシにあった「スタニスラフスキー・メソッド」とか、「ドラマチック・バレエ」だとかいう言葉につられて見に来ると(私もその一人!)ちょっとがっかりするかもしれません。もっと濃厚なものを(いかにもロシアという)期待していたのですが、意外にも都会的で淡白な、モダンな香りを持つ舞台だったのには驚いています。ちょっと裏切られた気もしないでもないけれど、これはこれでよかったと思いました。

今週末のブルメイステル版「白鳥の湖」はどうなのでしょうか。今度は伝説の(?)チェルのブロキナのオデット/オディールを見たいと思っています。

| | コメント (0)

2007年12月22日 (土)

初めて見たKバレエ。

004 昨日(20日)Kバレエ・カンパニーの「くるみ割り人形」を見てきました。私は感想書くのがとても遅いのですが、明日また別の「くるみ」を見る予定なので、頑張って今日中に‥‥できるかな~。

熊川哲也は、プティの「ボレロ」や「カルメン」、バレエ協会の「ジゼル」など、前に多少見たことがありました。でもその後のKバレエの公演は見たことがありません。今まで「とにかく面白いよ!」とは聞いていたけれど。別に食わず嫌いだったわけではなく、単にチケットが高いので見る気がしなかったというだけです。

なぜかKバレエにはまった人は、それ以後ずっと見続けるというか、他を見てもつまらなく感じるというか、そういう人が多くて、独特の吸引力を持ったものだと思っていました。でも、海外の有名バレエ団の引越し公演でもあるまいし、このチケット代はねぇ‥‥。熊川さんが怪我で出演しなくなってから値段が下がったのか、今回はS席15,000円だったけど、それでも高いでしょ!(少し安く譲っていただいたのでなければ、やっぱり行かなかったかも?)

最近はプログラムを買うことが多いのですが、2,500円?マジかよ~。でも、初めて見る記念に、仕方なく買いました。東京文化会館の初日ということですが、2階以上のサイドは空席が目立ちました。この間私がギエムを見た1階左右の三角の席は、壁側、ほとんど空いていました。(ここ、見えないものね~!)先月あたり、やたら熊川さんがテレビに出たりするので、チケット売れてないのかな~といらぬ勘繰りをしてしまいましたが、サイド以外は1階席、大体埋まっていましたね。

≪第1幕≫
Kバレエの「くるみ」は、ちょっとストーリーがこっています。通常の「金平糖の精」は人形の国の「マリー姫」。姫は人形の王子と結婚することになっていましたが、ネズミの王様に魔法をかけられて、姫はネズミに、王子はくるみ割り人形に変えられてしまいました。人形の国の他の人形たちも、不気味な姿になってしまい、世界一硬いくるみを割らなければ魔法は解けない‥‥‥。困った王様はドロッセルマイヤーを人間世界に派遣するのです。と、ここまでがプロローグの紗幕の奥で語られます。

紗幕が上がると、クララの家の外。いきなり現れた家のセットがすごい!時計を修理しているドロッセルマイヤーと、女主人とのやり取り、パーティに呼ばれた子どもたちが雪で遊んだりしている様子なと、これから始まる物語のわくわくするような導入になっています。

ドロッセルマイヤーの魔法?で、見事な場面転換があって、舞台はクララの家の中に。子どもたちは子役ではなく、大人が演じているのですが、男の子も女性ダンサーでなくて、男性が演じていました。ドロッセルマイヤーもパーティーに加わって、プレゼントを配ったり、踊ったり、まるでおもちゃ箱をひっくり返したよう!とでもいうのでしょうか。一体どこを見ていいのかわからないくらい、あちこちでいろんなことをやっていて、とてもにぎやか。舞台上の人物も画一的ではなく、おじいさん、おばあさんとか、客とか使用人とか、衣装もさまざまで見ているだけで楽しくなりました。

ドロッセルマイヤーは巨大くるみを割ることができる人物?を探すため、人形芝居で状況説明をします。人形芝居も通常のと違って、子役が演じるもの。(ビスクドールのような真っ白なメイクをした子役の子達は不気味だけど不思議にかわいい!)お芝居はマリー姫がネズミに変えられてしまったところで終わり。他の子どもたちはすぐ次に興味が移っていきますが、クララだけはこの結末に不満でドロッセルマイヤーに何か言っている様子。ドロッセルマイヤーはクララこそくるみを割ることができると確信し、くるみ割り人形をクララに渡します。ここまでほんとに物語の展開が早くて飽きさせません。普通はパーティで大人が踊るところとか、人形が踊るところが長くて飽きるのですが、真ん中で踊っている間も、周りではいろんなことが同時進行していて、見るのに忙しいくらい。

パーティが終わって、夜、クララがくるみ割り人形をとりに来ると、何とネズミがくるみ割り人形を誘拐!大時計の中に消えていきます。クララが勇気を出して時計の中に入ると、それは人形の国に通じる「どこでもドア」だった!突然時計や周りのものが巨大化するスペクタクル!大きくなった時計の扉が開いて、クララが外に出ると、くるみ割り人形はネズミとの戦いの真っ最中。くるみ割り人形は負傷して倒れてしまいます。ドロッセルマイヤーに泣きつくクララ。そしてくるみ割り人形がすてきな王子様に変身して、雪の世界へ。これで1幕終了。ひゃ~面白い!すごくスピーディーであっという間だけど、とても面白いです。

クララ役の小林絹恵さんが元気でお茶目なクララ。フリッツ役の安西健塁さんも元気な弟を演じて楽しかった!でも一番の秀逸は何と言ってもスチュアート・キャシディのドロッセルマイヤーでしょう。ドロッセルマイヤーがこんなに踊るのは見たことないし、物語の中心的な役割にふさわしい存在感と不気味さ!があって、わくわくしました。

それから、雪がすばらしかった。全体がロイヤルの版をベースにしているようで、雪の振りも似ているのかなあと思うけど、音を倍速にとるようなハイスピードで複雑なステップを、バタバタとうるさくならずにさらりとこなしてしまうコールドの質の高さ、とでもいうのでしょうか。20人がいっせいにグランジュテで交差するその高さや脚の開きが揃っていて、見事!というかびっくり!ここのコールドはきっととても大変でしょうね。速くて難易度の高いパをびしっと揃えて、笑顔で引っ込んだ舞台袖は、もう全員倒れこむような感じなのではないでしょうか。銀色のネットをかぶったような頭がいただけないけれど、全員が手を振りながらパドプレで移動するところなど、とてもきれいだったし、次々に変わるフォーメーションも圧巻でした。

≪第2幕≫
紗幕の奥では魔法をかけられた人形たちの不気味な踊り。みんな同じ灰色のボロ布をかぶって、のろわれた仮面をつけています。やがてクララが来て、またネズミとの戦いがあって(なぜかここでまた王子はくるみ割り人形の仮面に戻ってしまうの!)今度は勝ってネズミの王様を捕まえて、大きなフォークみたいなものでクララがくるみを割ると、中から光が出てきて魔法が解ける。何だかわけがわからなくなってきたけど、そんなストーリーです。

ドロッセルマイヤーは魔法が解けたマリー姫にクララを紹介します。マリー姫はクララにティアラを贈り、あとは華やかなディベルティスマンと、王子とマリー姫の結婚式。フィナーレのあと、王子とマリー姫はクララに別れを告げ、別れたくないというクララにドロッセルマイヤーが魔法をかけ、クララは眠りにつきます。ここでまた場面転換し、朝のクララの寝室へ。目を覚ますと外は雪景色。ベッドにはマリー姫と王子の人形が置かれていました。

とてもよくできたファンタジックなストーリーで、次から次へと観客を引き込んで飽きさせません。各国の人形たちの踊りも、一部??な衣装もあったけど、とても洗練されていたと思います。ここはロイヤルのと違って、クララは踊りには参加せず、見ているだけ。王子と一緒じゃないのがちょっと物足りないかな。なぜかドロッセルマイヤーととても親しげな感じ?キャシディのドロッセルマイヤーがすごく素敵な人だから違和感はなかったけれど。

ただ、やっぱりバレエとして見るならば、一番の盛り上がりはやっぱりグラン・パ・ド・ドゥでしょう。マリー姫の浅川紫織さんは怪我で降板の松岡梨絵さんの代わり。王子役の宮尾俊太郎さんとはとてもフレッシュなペアという感じでしたが(と、名前を書いているけれど、私は今まで誰一人として知りませんでした。)ちょっとサポート面でえっ、と思う場面も。同じ振りを二人でユニゾンするところも、角度や高さなどが合ってなくて、残念なところもありました。ストーリー性や、いろんな仕掛けを用意したスペクタクルということから見れば、どうっていうことはないのだけれど、やっぱり最後のグラン・パでびしっとしめてほしかったような気がします。

王子様は、ついこの間キエフ・バレエで、完璧に素敵♡なシドルスキー王子を見てしまったので、何か荒さが目立ってしまいました。宮尾さんは長身で手足も長く、見栄えもいいのだけれど、まだ発展途上の人なんでしょうね。踊りに硬さがあるような。だけど、こういう若手の人をどんどん重要な役に起用しているのはとてもいいことだと思います。「またかよ~」と思うようなベテランが主要な役を占めている日本の某バレエ団と違って、とてもフレッシュな、風通しのいいカンパニーの雰囲気を感じました。

マリインスキーにしても、レニ国にしても、入団したての若手をいきなり主役にしたりしますよね。ソーモワとか、初めて見たときはびっくりしましたよ!何でこんなやつが主役なんだよ~!って。(デビュー当時のエフセーエワも!)でも、そうやって場数を踏んで育っていくんですよね。年功序列的で上がつかえている某バレエ団はかわいそう‥‥!熊川さんの怪我もそれこそ怪我の功名で、日本でも若手がどんどん育っていくバレエ団があってもいいと思いました。

見に来ている人は普通のバレエ公演と違って、すごく年齢層が幅広く、客層も豊富でした。子供連れ、家族で見に来ているような人たちも多かったし、男性も、年配のご夫婦の方々もたくさんいました。確かにギンギンのバレエファンでなくても楽しめる内容で、見所も満載。すごく面白かったです。これを見たら、この間のキエフ・バレエなんかはとても地味に見えてしまうかもしれません。リピーターも多いのではないでしょうか。(チケットが宝塚なみに安かったらいいのに‥‥)

あるいは、Kバレエは今後いちバレエ団としてというよりも、例えば猿之助のスーパー歌舞伎みたいに、エンターテイメントの新たなジャンルとして発展していく可能性も見えるような、そんな感じがしました。日本ではバレエのお稽古事の人口は半端じゃないのに、ダンサーの活躍の場がとても少ないから、今後の日本のバレエのためにもがんばってほしいな~。

そんなことで、とても楽しませてもらいました。初めてだったけど、見に行ってよかったです。バレエを見たことのない人にもお勧めできると思います。ただ、私的にいえば、面白いけど感動は薄かったかな。あまりにも面白さというものが前面に出て、踊りから伝わるものが、視覚の華やかさだけに終わってしまった点で、少し残念でした。

この間のキエフ・バレエ。私は衣装がとんでもないだの、さんざん悪口を書きましたが、やっぱり踊りを通して、少女から大人の女性へ変わっていく、そういう微妙な時期のクララの心の成長を見るような、何かを大切に思う心って大切だよとか、愛ってこういうものだよとか、そういう胸が熱くなるような思いが伝わってきたのです。

Kバレエの「くるみ」はストーリーにこりすぎて、クララは元気だけど全然子どもっぽくて、マリー姫と王子の間には入っていけず、ああ、ただの夢だったのね、それで終わりの話になってしまっていたような気がします。

結局日付かわってしまいましたね。きょうはモスクワ音楽劇場のワイノーネン版の「くるみ割り人形」を見に行きます。

| | コメント (2)

2007年12月16日 (日)

また、次の発表会。

娘のバレエの発表会が一つ終わったと思ったら、今度はもう一つ、T先生が関わるK先生の教室の(複雑ですね~!)来年の発表会の振り付けが、早くも始まりました。8月に、酒井はなさんと李波さんをゲストに招いての「ジゼル」。こちらのほうは人数も、規模も大きく、2年に1度ですが本格的な全幕の発表ができる教室なのです。

T先生が振り付けの一部を担当する関係で、団地の集会所のような、鏡もバーもないようなところでやっているT先生の生徒たちも、この全幕の発表会に今まで2度ほど出演させてもらっています。特に去年は手ごろな身長の「4羽の白鳥」が足りないということで、4羽のうち3羽までT先生の生徒が踊りました。うちの娘もその一人です。今度は上手なお姉さんたちに混ざって、2幕のウイリーになる予定。ウイリーを24人、レベルも身長もそろえるのはけっこう大変ですよね~。「白鳥」や「シルフィード」は後ろのほうに小さい子が多少混じってもいいかもしれないけど、「ジゼル」のウイリーはびしっとそろってないと怖さがでませんから。

発表会の親の楽しみといえば、リハーサル時のゲストダンサー・ウオッチング。長年?でもないけど、ファンとして舞台を見ていた李波さんと、自分の娘が同じ舞台に上がるなんて、うれしいような複雑な気持ちでしたが、今度はさらに日本のトップバレリーナの一人、酒井はなさんとも同じ舞台にのることになります。だからとても楽しみ!娘は来年受験生ですが‥‥。まあ、夏休み前半に終わるし、兄と違ってやるべきことはきちんとやれる子なのでいい?と思っています。そう、こちらは娘が出たいというより、親の私が出したいの!ただ、来年の夏のバレエ鑑賞はできないかも‥‥。

先日の、娘の発表会の記事の後半に、T先生と、ゲストのM先生の再会の話を書きました。その後日談なのですが、あとでT先生から聞いて、不謹慎ながら大笑いしてしまいました。20年以上会ってないので「今見てもわからないわよ」と言っていたのに、楽屋前の廊下でM先生のほうから声をかけてきたそうです。それが開口一番言ったことが「○○ちゃん(T先生)!あのときはごめんね!」だったそうです。

20数年前、家が近所で、同じ教室に通っていて、幼なじみのようなこの二人がパ・ド・ドゥを踊ったときのこと。すでにT先生のほうはベテランの男性と何度も踊っていたそうですが、M先生は初めてのパ・ド・ドゥだったようです。それで、練習はうまくいっていたのに、本番でM先生のほうが間違えて失敗してしまい、今まで本番で失敗したことなんかなかったT先生は大ショック!謝るM先生を無視して怒って帰ってしまったそうです。

そのあとは、それぞれ違う道を歩み始めていたので、それっきり今まで会わずじまい!それが、自分が教えてたママバレエの生徒(私です。)の娘の、初めて踊るグラン・パの相手がそのM先生なんて、狭い世界といえばそうだけど、不思議な縁だったんですね~。20数年ぶりに会って、最初からいきなり「あのときはごめんね!」なんて、かわいいというか、何というか。

多分、ず~っとそのときのことが気になっていたんだろうなあ。「私もあのときは若かったから、かわいそうなことをしたわ~。」とT先生。でも、M先生もこれで長年の胸のつかえがとれて、すっきりしたんでしょうね。本番では会心の踊りを披露してくださいました。きっと晴れ晴れとした気分で、楽しく踊っていただけたんだな~と、うれしく思いました。小さな発表会の舞台裏に、こんなドラマがあったんですね。人生って面白い!

プロのバレエ団の公演を鑑賞するのはとても楽しいけれど、こういうお稽古事のバレエも、親は(お手伝いも、衣装も、お金も大変だけど)けっこう楽しめるものです。自分で踊ればもっと楽しいって?いやいや‥‥そちらのほうは今、どっぷり冬眠中でございます。

| | コメント (0)

2007年12月13日 (木)

ギエムと、東京バレエ団セット。

シルビー・ギエム・オン・ステージ2007のBプロ(10日)に行ってきました。

075 Aプロは、用事もあったけど、うっかりしてたら完売で、どうしようもなかったのです。ギエムがほんの一部とはいえ、クラシックの「白鳥の湖」を踊るのを見る機会は、もうこの先ないかも?と思うのに、残念なことをしました。

私のバレエ鑑賞歴は、幼稚園児だったころの娘が自分からバレエをやりたいと言い始めたときからスタートします。’98年でした。それまではバレエを習っている友達がいたり、ジョルジュ・ドン命の友達がいたりしたけど、そういう人たちから間接的に知るだけだったのです。

まずは手近な、近所で行われている公演をぼちぼち見たりしていましたが、いろいろ知り始めると、どうもシルビー・ギエムという当代随一のバレリーナを見ないことには!ということになり、友人と頑張ってチケットをとって見に行ったのが2000年の世界バレエフェスティバルでした。当時とすれば目玉が飛び出るようなチケット代でした。本当にあの時はギエムを見たい!ただそれだけで行ったのです。

ところが、そこでいきなりフェリ、マラーホフ、ルグリ、ニコラ・ルリッシュ、オレリー・デュポン、ホセ・カレーニョ等々、世界の名立たるダンサーを一度に見て、一気にバレエの洗礼を受けてしまったのです。そのカルチャーショックったらありませんでした。(この間のフェリ引退公演でロベルト・ボッレを初めて見たと思ったけど、このとき出ていたのですね~。覚えてない‥‥。それにプログラムの写真がすっごく若い!)

確かに1度は見ておきたい伝説のバレリーナでした。実際見てみると、苦手なモダン系も、彼女が踊るともう目が離せない。まるで別物です!そのすさまじい集中力に、こちらもこめかみがキンキン痛くなるほど凝視してしまうのです。

ギエムは合計4回見ましたが、最初のバレエフェスのほかは全部東京バレエ団がセットで付いてきてたんですよね~。今回もだよ~!「ギエムと輝ける仲間たち」とか「ギエムの贈り物」とかじゃなくって、いつも東京バレエ団の全国ツアーにギエムが看板になる形なんですね。

だけど、そんなにたくさん東京バレエ団を見ているわけじゃないのに、なぜか今回のBプロの東京バレエ団の演目、「カルメン」も「シンフォニー・イン・D」も、前に見たことがあるものでした。よく覚えてないけど、「カルメン」は確か斉藤さんと高岸さんというところまで同じだったのでは‥‥。どうしてこうなるの!

≪カルメン≫
この版の「カルメン」は、確かプリセツカヤのためにつくられた作品だったと思います。前に何かのドキュメンタリー番組で、プリセツカヤがフィリピエワに「カルメン」の指導をしている場面を見ましたが、その存在感だけで、当時の若いフィリピエワをはるかにしのいで、もういいからあなたが踊って~!!と思ったことがありました。これは多分
主役カルメンの存在感だけで見せる作品なのです。

それが‥斉藤さんはどうしても生真面目さが勝り、顔ではコケティッシュな表情を作るも、なりきれず。カルメンってきれいなだけの女じゃない。何ものにも縛られない奔放さの一方で、ドロドロで、汚くて、自己チューで!でも夢中にならずにいられない、そんな憎らしいほどの魔力を持った女じゃないですか。

それに高岸さんのエスカミリオだってさ~。そんなカルメンに何も感じてないデク人形みたい。もっと色気出して身も心も虜になってやりなよ‥!と不満に思いつつ、いつしかホセ役の大嶋正樹さんに釘付けになりました。この人すごい!もう、見ているだけで切ない(涙)!顔だけでなく体の表情が、一途で、切なくて、もどかしくて、身を切られるよう!そういう感情を体で表現できる人なんだ‥。

あるいはこの振り付け自体がそういう感情の表現を最大限狙ってのものなのかもしれませんが。その対比として、ほかの登場人物は無機質に、感情を出さずに、機械のように動く振り付けになっているような気もします。あ~、でも一気にこの人のファンになってしまいました!もっとほかの演目でも見たい!プログラムのプロフィールを見ると、何とワガノワバレエ学校留学時、セリュツキー氏に師事だって。それってルジマトフの兄弟弟子ってことでしょ?こういう人に惹かれるって、何か因縁を感じますね~。

(と思ったら、今これを書いている時点で、思わぬニュースが入ってきました。この翌日の11日の舞台で、当の大嶋さんが怪我をされたというのです!状況はわからないのですが、とても心配!)

≪椿姫≫
これは、フェリの引退公演で、最後の最後に踊られた演目です。フェリが日本での最後にこの演目を踊ってくれたということに、とても意味を感じていました。もちろんものすごく感動しました。涙、涙でした。それと同じ演目をギエムが踊るとどうなるのか、とても楽しみだったのです。

あ‥と最初に思ったように、やっぱりあざやかに違っていましたね~。フェリの「椿姫」が、もう決して元には戻らない喪失感とか、愛する人から憎しみを受ける絶望感の中で、苦しみながら、振り絞るように、一時のめくるめくような愛の世界を垣間見せてくれたマルグリットであったなら、ギエムの「椿姫」はなぜかものすごくピュアなマルグリットでした。

悲しみの中、許しを請う中でも、だんだんに感情は昇華されていき、性急に黒いドレスを脱ぎ捨てると、もうまっさらな愛しか残っていない。ただひたすら悦びにひたる純粋無垢な魂だけの存在。乱れた髪が、乱暴なほどの抱擁が、逆に幸せな最後のきらめきを見せてくれるような‥‥‥。何だか書いていてわけがわからなくなっちゃったけど、すべてが昇華されたような、美しいラストでした。悲劇のはずなのに、とても幸せそうで、涙は出ませんでした。ただ、美しかった。

カーテンコールに立つニコラ・ルリッシュとギエム。ひぇ~、ニコラもいいおじさんになったものだな~。映画「オーロラ」の中で、ナイーブな画家の青年を演じていたけれど、こうやって見るとやっぱりね~。でも、物語の中と同様、彼もとても幸せそうでした。

≪シンフォニー・イン・D≫
見るのは2回目ですが、1回目同様、好きにはなれなかったです。元気で笑顔満開な東京バレエ団のダンサーたちが、体育会系のノリでスピード感たっぷりに繰り広げる演目。時折コミカルな場面もあって、会場に軽い笑いが出るのだけれど、ごめんなさい、正直これの何が楽しいのかわかりません。こういうのをバレエとして踊る意味って‥?美の具現者たらんと毎日厳しく精進しているであろうダンサーの皆さんが、ちょっとお気の毒に見えてしまうのは私がひねくれているからでしょうか?

≪Two≫
四角くスポットライトで区切られた、とても狭い檻のような空間に、背を丸めてかがんだギエムの姿。ゆがんだ背中に、くっきりと筋肉の動きが浮かび上がる。いきなり、何?これ!?深い洞窟の中のような、音楽もそうだけど、静寂の中にぴりぴりとした緊張感が伝わってくるような動き。

その動きが早くなってくると、今度はとても不思議なことが‥‥‥!四角いライトの回りの部分は特に一段明るくなっているのか、ギエムの手足がその境界線に触れるたびに閃光を放つようになったのです!というか、四角いライトを出てしまうと、真っ暗闇で、手先、足先が見えなくなってしまうのだけれど、その見えなくなるぎりぎりのところを、速いスピードでチラッとかすめるような、そんな動きで、境界線がチカチカと光って見え出して‥‥‥。すると何の錯覚か、手の動きの残像がボーっと見えるのです。こんな不思議な踊りは見たことがありません。あっけにとられているうちに終わってしまいました。

いや~、これはまた機会があったら見たいなあ‥‥!一体どうなっていたのでしょう?

≪Push≫
ラッセル・マリファントという、この「Push」と「Two」を振付けた人と二人でギエムが踊る演目。ギエムは膝にサポーターのようなものをつけた、シンプルなオフホワイトの衣装。赤毛のボブヘアになっています。マリファントは白のシャツとゆったり系のパンツ、スキンヘッドと、まるで武道者のようです。がっちりした体型ですが、ギエムと並んだ身長はそんなに高くないような感じ。

柔道の受身のように、背中合わせになったりしながら、不思議なリフトを繰り返す、ゆったりとしたよどみない動き。どうしてこんなに不自然な動きが、ごく自然に流れるようにできるのだろう??こんな不思議な振り付けを、カウントもないような抽象系の音楽で、どうやって間違えないようにできるのか?とっても謎!

次第に、押し合ったり引き合ったりの早い動きになっていきます。題名のPushは「押す」。何だかそれで太極拳の推手(トゥイ・ショウ)を連想してしまいました。マリファントという人は太極拳をやっているのかしら。

太極拳は套路(タオ・ルー)という、何種類もの技が連続した型を鍛錬する一方、推手という、二人一組で鍛錬する方法があります。一方が押そうとすると、その力の方向を皮膚感覚で察知して、違う方向に変えて受け流す。(単に受けるのではなく、それを瞬時に次の攻撃に変えるためですが)相手はその引く力を、また触れ合った皮膚のほんの一部の感覚で受け止めて、違う方向に力を変えてくる。押したら引く、引いたら押す、それが拮抗せずに連綿と連なった動きになるので、上級者の推手はまるで踊っているように見えるものです。

そんなことを想像しながら、演目としては相当長いのですが、ずっと集中して見入ってしまいました。ギエムとマリファントは、不思議に一体感のある動きなのですが、光と影でもないし、べったり一体化しているわけでもない。お互いに対等な個と個の触れ合い、まるでその皮膚感覚のように微妙な一体感だったように思います。すばらしかった~!

Photo ロビー(ホワイエというの?)には、東京バレエ団に縁の深い、モーリス・ベジャール氏の追悼のパネルがありました。みんなここで写真を撮っていたので、私もつられて‥‥。というか、このベジャールさんが掴んでいる子猫!これって、ソマリかアビシニアンでしょ?かわいい~!今はもういないうちの猫ちゃんたちを思い出してしまいました。

特に好きでも嫌いでもない東京バレエ団、というか、この間も「真夏の夜の夢」に「バレエ・インペリアル」がセットで付いてきたりで、無理やり見させられている感じがやっぱりちょっと苦手系?でしたが、この日、大嶋さんのファンになったばかりだったのに、すぐ翌日に怪我をされたということで、今後の東京バレエ団には目が離せないことに?なりそうです。

| | コメント (0)

2007年12月10日 (月)

キエフ・バレエの「くるみ割り人形」

063 「ライモンダ」を見た翌日、同じオーチャードホールに、今度は娘も連れて「くるみ割り人形」を見に行きました。優待チケットだったのですが、何だか10ヶ月以上前に買った席より見やすいのはなぜ‥‥?特にダンサーの顔を見る(前日は2列目でコールプさんの顔をまじまじと見てしまった♡首疲れたけど)のが目的でなければ、このホールは後ろのほうが段差があって見やすいことがわかりました。コールドのフォーメーションもよく見えたし。

去年は「くるみ割り人形」を見なかったので、「くるみ」という作品自体久しぶりでした。以前、子連れで見に行っていた時期は、それこそ国内のいろんなバレエ団が年に1度のこの演目を、さまざまに工夫を凝らして上演しているのを見るのが楽しみでした。料金ももっと安かったと思うし、「くるみ」だと子どもを連れて行きやすかったので。外国のバレエ団はレニングラード国立バレエのものしか見たことはなかったと思います。(主演はクチュルクでした。出向中?と聞いたけど、どうしているのかなあ)

日本のバレエ団では、ほとんど系列の教室の子どもたちをオーディションで選んで出演させているので、子どもがたくさん出てきてとてもにぎやかですが、レニ国も、このキエフも、大人のダンサーが子役になります。その辺はやっぱり、日本のバレエ団のほうが楽しいかな。兵隊やネズミまで子どもが演じるのでかわいいし!大人のネズミはグロテスクだよね~。だけど、やっぱり「くるみ」っていいですね。クリスマスのわくわくした雰囲気がそのまま伝わってくる演目ですから。

クララ役のナタリア・ドムラチョワは小柄でかわいらしくて、本当に少女のよう。キエフ・バレエのはクララがそのまま金平糖の精を踊るバージョンでした。ちょっと回転の軸がぐらつくのが気になったのですが、(X脚でもO脚でもなさそうなのに、シェネの膝が離れてるとか)それ以外は、大人が踊るバージョンならではの難しいリフトなども交えた、見ごたえのある踊りでした。はつらつとした元気なクララと、本当に砂糖菓子のようなスイートな金平糖の精でした。

ドロッセルマイヤーは、前日の「ライモンダ」で菅野英男さんとともに、ライモンダの友人役で踊っていた容姿端麗な方(ポジャルニツキー)でしたが、カツラのせいかその面影もわかりませんでしたね~。残念ながら存在感があまりなく、ほかのバレエ団で見るような、神秘的ななドロッセルマイヤーでも、やさしいおじさま的なドロッセルマイヤーでもありませんでした。ドロッセルマイヤーというのは、少女クララを夢の世界に誘い、成長させるという重要な役どころだと思うのですが。扱いが簡単なのがちょっと残念。

クララの家のクリスマスパーティーに大人や子どもが集まり、子どもたち、大人たちの踊りがあってにぎやかな夜。ドロッセルマイヤーが人形たちの踊りを披露したり、楽しい雰囲気の中物語は進みます。ちょっと驚くのは、クララがもらったくるみ割り人形が初めから等身大なんですよ。(レニ国のも確かそうだったっけ?)人形役は小柄な女性でかわいかったけど、(こんな大きなものもらってどうするんだ!と娘が突っこんでいましたが)それを弟のフリッツが壊してしまう。

お客さんが帰った深夜、部屋から抜け出してきたクララは心配そうにくるみ割り人形を覗き込む。すると、なぜかドロッセルマイヤーがネズミを操ってクララを驚かす??この辺がよくわからないけど、このドロッセルマイヤーって悪者なの?時計が12時を知らせて、クリスマスツリーが大きくなり、夢の中の世界へ。

そこでかぶりもののネズミ軍団と(首領だけはマントヒヒみたいなメイクなの!)くるみ割り人形率いる兵隊たちが戦いを繰り広げる。もう負けそう!というときに、クララが勇気をふりしぼってスリッパを投げつける。するとネズミたちは退散し、クララは横たわっているくるみ割り人形のもとへ駆け寄る。この場面がちょっと感動的でした。

正面の段の上で、魔法が解けたくるみ割り人形がゆっくりと起き上がります。最初顔を手で覆っているのですが、その手をとると‥‥くるみ割り人形はとても素敵な王子様に変身していたのです!

王子様は前日カッコよかったけど影が薄かった(髪も‥)ジャンを演じたシドルスキーでした。でも、このシドルスキー王子は本当に夢の中の王子様のようにキラキラ輝いて、クララのきれいな心がそのまま現れたような透明感ある王子様で、この登場の一瞬だけで本当に涙が出ちゃうくらい(最近、涙腺弱いんです)感動しました。私にも、少女のころ夢の中の王子様はいたなあ‥‥とかね~。

クララと王子は美しいパ・ド・ドゥを踊ります。子どもっぽいクララとかなり年の違いそうな王子(でも20代ですよね、シドルスキーさんは)がいきなり最初っからすっごくラブラブなのはちょっと違和感があったのですが‥‥。まあいいとするか。

前日もでしたが、シドルスキーはやっぱりほとんど足音がしないのです。踊りはとても大きくて伸びやかなのに、音がしない!夢の中の王子様がドタドタ飛んでいては幻滅じゃないですか。それだけでもこの人は本物のダンスール・ノーブルなんだな~と感心しました。顔がよく見える前方席からだと紛れもないのですが、遠目では薄毛も全然気になりませんね~。(しつこい‥!)とても優雅でやさしそうな王子様で、すてきでした。

雪の場面も、一昨年見たシャンブル・ウエストの公演では、けっこう激しい踊りなので元気よくバタバタと音が響いていましたが(吹雪だわ!)、ポワントだから多少音はしてしまうけど、かなり静かでした。ここの場面のコールドがとてもきれいで、感動しました。

ただ、休憩を挟んで2幕になると何だか??になってきて‥‥‥。クララと王子はゴンドラに乗ってお人形の世界へ行き、そこでいろんな国の踊りを見るのですが、どうも私は衣装に目が行ってしまうようで、それがどれも悲惨な衣装なのです。スペインは、まだそんなイメージなのでいいけれど、色が安っぽいなあ。

アラビアはこれシェエラザード?というような衣装。特に男性のはまるっきり金の奴隷じゃないですか。それなのに踊りはねちっこさも濃厚さもない全然別物なの‥‥。前日ライモンダ役で奮闘した田北志のぶさんが出ていましたが、全然セクシーじゃない!こういう衣装でなかったらセクシーさなんて求めないんでしょうけどね~。 

中国は大漁旗みたいで品がない!トレパックは男性の衣装はいいけれど、女性の衣装は観音様の光背のような頭飾りの裏に、とんでもなくでっかい真っ赤なリボン!一体どういう感覚しているんでしょうか。それにフラフープみたいなわっかをくっつけたボヨンボヨンした衣装はもう信じられない!あし笛に至ってはお花をちりばめたその色といい、絶句です。

民族舞踊のお人形が二人ずつしか出てこないので、華やかさに欠けるし、何よりも衣装がとんでもなくて、踊りを見るどころではありませんでした。バレエなんだから純粋に踊りを楽しめばいいのに、私もバカですね~。花のワルツも、うっ‥と思うほど趣味悪かったな~。あのカツラ軍団はどうにかならないのでしょうか。レニ国の衣装もかなり野暮ったかったけど、ここまでではなかったような‥。

衣装に関しては日本のバレエ団がこり過ぎなんでしょうか?この間の多摩シティバレエの「くるみ」に使われたという衣装を、夏に衣装屋さんの「新作展示会」というので見ましたが、どれも手が込んでいて、生地の風合いも色合いも、それだけで物語が想像できるほど素敵なものばかりでした。多摩シティバレエなんていうけれど、多摩市のお教室の連合組織ですよ。そういうところの公演でもあれだけの衣装を選ぶのに。感覚がちがうんですかね~。総合芸術なんだから、そしてバレエは夢の世界、おとぎの世界なんだから、衣装は大事だと思うけれど。

最後のグラン・パ・ド・ドゥはきれいでした。王子様すてき~♡このグラン・パって、こんなに派手なリフトがいっぱいあったっけ?金平糖の精(というより、ここでは成長したクララという設定)が小柄で、王子ががっちり体型なので、安心してみていられるけれど、普通見る振り付けに比べたらずいぶん派手でした。美しい大人の姿になったクララは、夢の王子様とひと時の輝く愛の世界を踊ります。夢は覚めたら消えてしまうから、より美しいのかもしれません。

夢から覚め、元のクリスマスツリーの下で、お人形に戻ってしまった王子様を抱きしめるクララ。大人になってもこの純粋な気持ちを忘れないでね。そんな暖かい気持ちにさせてくれたラストでした。2幕の衣装を除けば、全体的にはよい舞台だったと思います。素敵なシドルスキー王子が見られてよかった~。

追加公演ということもあるし、「くるみ」という演目ということもあると思うし、某銀行の招待?のお客様たちもたくさんいたようで、前日の「ライモンダ」とは全然客層が違う感じがしました。平日にもかかわらず子どもの姿もけっこうありましたね。拍手もブラボーの声も少ないのがちょっと残念だったかな。ともあれ、一足先にクリスマス気分を味わうことができました。

| | コメント (0)

2007年12月 8日 (土)

キエフバレエ「ライモンダ」を見てきました。

Photo ルジマトフがゲスト出演するということだったので、もう早々に(2月ごろ?)チケットを買って楽しみにしていたキエフバレエ。6月の「ルジマトフのすべて」の会場で渡されたチラシを見たときはびっくりしましたよ~。膝の手術のため出演できなくなり、アブデラフマン役はそのとき奇抜な踊りで度肝を抜いたイーゴリ・コールプにバトンタッチ。それでもコールプさんも好きなので、楽しみにしていた公演でした。

4日は娘の学校の保護者会で遅くなりそうなので、ほとんど押し売り状態でチケットを友人に譲り、5日に見てきました。4日はフィリピエワがすばらしかったそうですね!技術的な面が安定しているだけでなく、優雅さも威厳もあるライモンダだったそうです。

5日、入り口で渡されたキャスト表はフィリピエワでした。ところが、席に着く直前のアナウンスで、フィリピエワは腰を痛めたため、ライモンダ役は田北志のぶさんに!

え?それって誰??日本人の団員が何人かいるとは聞いていましたが、主役を務められるほどの人がいたなんて知りませんでした。フィリピエワが見られるのを楽しみにしていたので、そのときは本当にへなへなとその場に座り込みたくなってしまいましたよ。「か、帰ろうかな‥‥」いや、私はコールプさんを見に来たんだっけ。。と気を取り直し、ともかく席に着きました。

オーチャードホールは前のほう、ほとんど高低差がなくまっ平ら。嫌いなんですよ、このホール!しかもオーケストラボックスが入ると6列目が最前列だそうで、とんでもなく前でした。前の人の頭を右に左によけながら、しかも舞台を見上げる形になるので、すごく首が疲れました!肝心の足元が見えないし!でも、コールプさんの超怪しい表情を見るには最高の席?でしたね。

ところが、隣に座った人がけっこううるさくて‥‥。私の隣ということは、多分私と同様ルジマトフ目当ての先行販売で買った人に違いないと思うのですが、その二人連れのおばさま方の口の悪いこと!「何でこの人(田北さん)が代役なのよ!」などと言っているのがまる聞こえでした。フィリピエワでなくて最初はちょっとがっかりしていたけど、これを聞いて俄然応援モードになりました。

「ライモンダ」の全幕を見るのはこれが初めてです。田北さんのライモンダはとても可憐でかわいらしくて、特に1幕のピンクの、胸元に切り替えのある衣装がよく似合っていました。最初のヴァリエーションはすごくかわいい振り付けで、風に吹かれるように軽くさわやかでした。それと、コンクールなどでよく目にする、ゆったりとしたワルツの難しいヴァリエーションも、とてもきれいにこなしていました。急な代役で、きっとすごい重圧を耐えているんだなあと思いましたが、1幕で見る限りでは線は細いけれどしっかりとした踊りでした。

ジャン役のシドルスキーさんは、この役にふさわしいとてもノーブルなダンサーでしたね~。ちょっと左右のはえぎわがヤバそうだけど‥‥(いや、かなりヤバい!)レニ国のシャドルーヒンをそのまま大型にしたような雰囲気の方です。感心したのは高くジャンプしても足音がしない!踊りが優雅で大きい。99年キエフバレエ学校卒だからまだお若いんじゃないですか。(それなのにとても落ち着いて見えるのははえぎわのせい?ゴメン!)

そのことも隣のおばさま方は勝手にいろいろ言ってましたね~。「あれじゃかわいそうねぇ」とかなんとか。田北さんについても「どこかで見たことあると思ったら、オノ・ヨーコそっくりじゃない?!」ですって。ああ、もう耳栓でもしていましょうか。

婚約者同士の二人はお似合いのカップルで、皆に祝福されとても幸せそう。でも、ろくに別れも告げずにあっという間にジャンは華々しく遠征に旅立ってしまう。

そして留守を守る浮かない表情のライモンダの前にコールプのアブデラフマン登場!突然その場のクラシカルな空気が一変し、いきなり「アラジン」?か何かの世界へ!(いや、コールプさんはアラジンじゃなくてジャファーのほうですよ)待ってました!

何だこの人!?何という毒気! 

とにかく濃い!妖しい!

演技も踊りもうますぎて浮きまくり!

よほどこの役にはまったようで、見事エネルギッシュにはじけていましたね。こういう役は合っているし、本人も好きそう。楽しいんだろうな~。「サラセンの騎士」というより「盗賊の首領」みたいで、これじゃやり過ぎ!だけどライモンダをまっすぐに見つめる目が、獲物を狙う猛禽類のようで、
怖いけどめちゃめちゃカッコイイ!踊りはもちろんすごい!反り返りジャンプが決まる、決まる!疾風怒濤のように駆け抜けたアブデラフマン軍団にしびれました。(♡コールプさん!もうこれだけで私はあなたのとりこよ♡)

「白い貴婦人」はライモンダの夢の中で、まずジャンを引き合わせ、美しいパ・ド・ドゥを踊らせる。素敵だけど、申し分ない婚約者だけど、私このままこの人と結婚しちゃっていいのかしら‥‥?そして次にアブデラフマンが夢の中に現れ、強引に、情熱的に愛を訴えかけてくる。怖がり、戸惑いながらも次第に惹かれていくライモンダ‥‥。もうどうにも抗うことはできないかも‥‥。ええっ?こんなお話でしたっけ?

夢から覚め、ジャンから贈られた白いスカーフと、アブデラフマンの赤いスカーフの間でゆれるライモンダの心。1幕はそんな感じだったかな~。ビデオで見たボリショイの「ライモンダ」はとても聡明で貞淑な女性のようだったので、こんなに素直で可憐に揺れるライモンダは想像していませんでした。それもまたよかったです。

でも、2幕になると‥‥本当にこのライモンダって、とても大変な役ですね!一体一人で幾つのヴァリエーションを踊るんだろう?幾つのパ・ド・ドゥを踊るんだろう?ライモンダ役はスタミナ勝負みたいな演目だったんですね。しかも後半ポワントで立ちっぱなしの大変な踊りばかり。何回かコケてましたね。仕方ないわ。足首大丈夫だったかしら。

再びアブデラフマンが現れ、豪華な貢物を次々に差し出し、ライモンダをさらっていこうとする。もうどうにでもして~!(といっているのは私です♡)というところにジャンが帰還し、二人はライモンダの目の前で決闘を始めます。最初はアブデラフマンが優勢でしたが、途中で「白い貴婦人」が現れ、ジャンにパワーを送ると、とたんに強くなるなんて、何だか安っぽいヒーローものみたい!(アンパンマン、新しい顔よっ!)

アブデラフマンは敗れて倒れ伏す。助け起こそうとする家来を振り払って、もだえながら一直線にライモンダを見据え、倒れてもまた起き上がり、ライモンダのもとへ。この必死の形相が何だかとても切なくて‥‥!そう、この物語の根底にある、西欧社会のもともとの思想は(アブデラフマン=異教徒=悪者)なのですよ。だからライモンダがアブデラフマンに惹かれたとみるや「御家の大事」とばかりに「白い貴婦人」がジャンに味方する!もう、コールプの真に迫った演技もあるけれど、そのひたむきさがよけいに切なくて、まるでアブデラフマンが自分の目の前で息絶えたような気がして、泣けてしまいました!

ジャンはライモンダの手をとろうとするが、ライモンダはアブデラフマンを倒したジャンを素直に受け入れることができない。当然よね~。でも、ここでまたおせっかいな「白い貴婦人」が現れて、二人を白いスカーフで包むと、不思議や不思議、ライモンダは今までのことをすっかり忘れてしまったのでした。めでたし、めでたし。あっけにとられる私‥‥。こんなに共感できない物語もナイモンダ!

そのあとは結婚式の豪華なディベルティスマン、と思っていたけど、意外に短かったですね。省略したのかしら。それもすっきりしていていいけれど。ガラコンサートなどでよく踊られる民族舞踊風のグラン・パ・ド・ドゥは、クラシックチュチュでの踊り。ここが最大の見せ場のはずだけど、ここまでで田北さんはもういっぱいいっぱい。何とか気力で踊り続けているような感じだったのではないでしょうか。でも、さすがに気品とか威厳とまではいかなかったけれど、凛とした優雅さはありました。そこまでが可憐ではあったけれどあまりにも小娘のようだったので、その変化が鮮やかでした。ぴっと張り詰めた緊張感の中、最後まで優雅に踊りとおしました。

ジャン役のシドルスキーはノーブルですてきな王子様だと思うけど、やっぱりコールプの強烈な個性にはかなわなくて、影が(髪が?)薄かったです。ライモンダも何でこんな男を選ぶのさ~!(しつこい!)

無事大役を果たした田北さん。カーテンコールのときにはもうほとんど泣きそうな顔で、もりたててくれた周りのみんなに、感謝の声をかけていました。オーケストラの一人一人にもお礼の言葉を(聞こえないけど)かけていたようでした。プリマのフィリピエワの急な代役でこの大役を、しかも日本で踊ることになるなんて!きっとものすごいプレッシャーだったでしょうね。そして、無事踊り終えることができ、ほっとしたでしょうね。まあ、華がないとかなんとか言われるかもしれないでしょうが、こんな急場でよく頑張ったなあと、とにかく感動。

今回は代役に次ぐ代役、でも、めったにみられない貴重な舞台が見れたのではないでしょうか。田北さんもずっとロシアで活躍をしてきて、思いがけず日本でその成果を披露することができたのは、とてもよいチャンスをものにしたなと思います。

思ったのですが、ある意味ルジマトフでなくてよかったです。コールプさんでも(といったら失礼だけど)ここまで引き込まれたのに、もしあれがルジマトフだったらどうなっていたんでしょう?(あそこまでの濃い毒気はないよね~。)多分もっと研ぎ澄まされたナイフのようにシャープで、危うくて、触れられただけで意のままにさせられてしまいそうな魔性のアブデラフマンだったろうなあ~と思います。きっとどっぷり浸りきって、陶酔しきって、最後、死ぬ場面でもうノックアウト!号泣!悶絶してたかも。無事家に帰してくれたコールプさんはまだいい人だったのですよ。

終わってから立ち上がり際に隣のご婦人方いわく、「あなたと一緒でよかったわ~、言いたい放題言えて!」ですって。今回は一緒に悶絶できなくて残念でしたね。いつかレニングラード国立バレエでもやってくれないでしょうか。ぜひ、ルジ様のアブデラフマンで!

| | コメント (2)

2007年12月 4日 (火)

発表会無事終了。

062 「やらせててよかった」とかなんとか、去年も書いたような気がします。毎年恒例の娘のバレエの発表会。ことしは無謀な挑戦をしてしまったようだけど、何とか無事に終わり、ほっとしています。

去年は小さな会場で満席になってしまったので、ことしはまたいつものホールで行いました。でも、そのホールは交通の便が悪いせいか、お客さんが少なくていつも淋しいのです。前回満席でも、会場の広さが3倍だとお客さん密度(?)は3分の1だものね~。でも、娘の学校のお友達や、私のママバレエの友達など、またたくさん来ていただきました。

まずはパ・ド・ドゥの指導をしてくださったM先生に感謝!です。グラン・パ初めての中学生を何とか見れるまでに指導するというのは、さすがにプロの業ですよ。「いい仕事してますね~」とほめたたえたい、そんな感じでした。

結局「パリの炎」は回転+ジャンプのところが回転だけになったり、フェッテがフェアテ(連続のピルエット?)になったり、難しいところを簡単にしてもらったりしましたが、作品全体の持つ雰囲気はそのままの、発表会としてはとても満足のいく出来でした。(一応「なんちゃってバレエ」ではなかったです。)

内容はバレエコンサートと、それから「ラ・シルフィード」の1部分を上演しました。今回はM先生の東京バレエ団仕込みの「シルフィード」を1から指導してもらった感じでした。だけど、市のスポーツセンターを利用した、サークル的な小さい教室なので、そんなにたくさん「妖精」がいるわけでもなく、必然的にかなり小さい子も「シルフィード」達を踊ることになります。

これは娘から聞いた話で、見てないので実際どうかわかりませんが、大体の指示をM先生が出して、それに沿って教室のA先生が小さい子の振り付けをする。小さい子はすぐには覚えないから、まず大きな子が覚えて、それを小さい子に教える!そうしているうちに大きい子たちに対してもどんどん振り付けが進むから、あとでわからなくなって、それをお姉さんたちが東京バレエ団のビデオを見ながらああでもないこうでもない‥‥と、そんな状況だったそうです。でも、それも面白い経験だったと思います。

Photo すごくおチビのシルフィードまで、いっぱいわらわらと出てくるのですが、衣装がおそろいなのでそんなに違和感はありませんでした。びしっと斜め一直線になって、きれい~!と感心していたら、あとで娘が「あれはほんとに大変だったんだよ~!」と言うのです。小さい子は手が盆踊り、とか脚が逆!とか、列がちゃんとできないとか、そんなの日常茶飯事。それを根気よくうちの子やお姉さんたちが直していたというのです。

以前、うちの子が入ったばかりのころは、大きい子がそんなにいなくて、先生もお姉さんたちをみるのに手一杯で、小さい子は無理なく出来るようなものしかやらなかったような気がします。それが、ちょうど小学校高学年から中学生ぐらいの子が育ってきて、小さい子のお世話ができるようになったので、やれる範囲も広がってきたのです。本当に小さい子が物語の一部をまかされて必死で頑張っているのを見ると、かわいさでうるうるしちゃいますね~。(本当に必死だったのはお姉さんたちかもしれませんが)

M先生のジェームズとO先生のマッジはもうノリノリ!そこだけどっぷり東京バレエ団ワールドでした。O先生は去年の発表会で、創作作品の振り付けをしてくれた先生です。今回はマッジ役だけ、わざわざ友情出演?してくださいました。恐ろしい魔女のはずなのに、衣装を着たら何だかかわいらしくて、小さい子に異常に受けていましたね~。

シルフィード役の高校生のKちゃんは今回が初めての主役でした。夏からほとんど個人レッスンで取り組んできたせいか、本当に上手になりました。演技らしい演技は初めてのはずなのに、とても情感豊かな表現ができるようになってびっくり。魔女ののろいがかかったスカーフを巻かれて羽が抜け落ち、ジェームズの腕の中で息絶えるところは、とてもはかなげで涙が出ちゃいましたよ‥‥。最高の演技でした!

実はこの日、ちょっとしたドラマが生まれるはずでした。私のママさんバレエの先生で、娘も教えてもらっているT先生と、今回ゲストで指導してくれたM先生は、実家がご近所同士で幼なじみのような間柄。昔ペアを組んで踊ったこともあったそうですが、20歳ぐらいのころ以来、20年会っていないとか。

話が複雑になるので細かいことは省略しますが、要はお互いの言葉のニュアンスから、今のオジサン・オバサンになっている姿を見られたくないという印象を受けました。「あの時は私、体重が38キロしかなかったのよ。」とか、「え?来るの?来なくていいよ」(あの~、うちの娘を見に来てくれるんですけど‥。)とかね。

それで密かに、もし時間があったら無理やりにでも「ご対面」させちゃおうと思っていました。おせっかいだけど、面白いじゃないですか!

T先生はちょうどこの日、多摩シティ・バレエの「くるみ割り人形」の楽屋のお手伝いをするので、公演が終わってからだと「パリの炎」には間に合いそうにないということでした。「それでもM先生のジェームズは間に合うから」と言ったら、「出来るだけ行くようにする」ということでした。

ところが、1部が終わって私が「パリの炎」の衣装を着た娘の、背中の合わせ目を縫っているときに、T先生が楽屋に!「リハーサルでさんざん見たから、グラン・パが終わったら出てきちゃった」というではありませんか。李波さんの王子と酒井はなさんの金平糖の公演ですよ!(私も見たかった~!)そして何と「Mくんにも今、廊下で会ったわよ」ですって!え~っ?私が娘の衣装を縫いつけている間に、20年ぶりのご対面はあっけらかんと済んでしまっていたのでした。私もその場に立ちあいたかったな~。残念!

071124_1121002 せっかくの公演を途中で抜け出して見に来てくれたT先生。体重が38キロだったときもきれいだったと思うけど、今もとても素敵です。それから練習のとき「何で年寄りにこんな疲れる踊りをさせるんだよ~」などと冗談で言っていたらしいM先生も、そのあとの本番はとてもカッコイイ踊りを決めてくれました。本当に心に残る素敵な発表会でした。

| | コメント (2)

より以前の記事一覧