バレエ大好き2008後半

2008年12月30日 (火)

新国立劇場「シンデレラ」 2

いまさら書くのも‥‥と思うほど遅くなってしまいました。いろいろ年末で忙しかったので。それでも、昨年はまだ29日と30日にダンチェンコとレニ国の「白鳥の湖」に行ったんですよね。

去年から怒涛のようにバレエを見始めて、2年目が終わろうとしています。ことしもいろんな舞台を見ることができ、充実した1年になりました。(家族のヒンシュクは別ですけど)数えてみたら去年が30公演、今年は29公演でした。すごいバレエファンの方は40公演以上は普通に行っているでしょうから、大したことはないのですが‥‥‥。

その一方で、ことしは「ヤマトタケル」で新橋演舞場デビューをして、歌舞伎座とあわせて11回も歌舞伎を見てしまったのです。この歌舞伎をバレエとあわせるとちょうど40公演。我ながらちょっとあきれるくらい散財してしまいましたね

さて、「シンデレラ」ですが、レジュニナ(レジニナ)は本当に残念でしたが、代役のさいとう美帆さんもなかなかよかったです。さいとうさんといえば、チャリティガラのときの「薔薇の精」。確かあのとき、最初からお目々ぱっちり、満面の笑みだったんだよね。あの演目でそれはありえないでしょう!と思ったけれど、相手があのコルサコフだったから仕方がなかったのかもね~。あんなべいびぃな薔薇の精が突然現れたら、私だって驚いてお目々ぱっちりになるわ。

さいとうさんにはそんな、ちょっと大根なイメージがあったので、最初は、何?この発表会みたいなメイク!などと突っ込んでいましたが、だんだん突っ込むのも忘れて見入っていました。

シンデレラの演技でよかったのは、箒を相手に踊るところ。1幕ではまだ見ぬ華やかな世界を想像して踊っているんだよね。だから一瞬我にかえって、ちっとも反応してくれない箒にやつ当りしたりする。でも、舞踏会から帰ってからの3幕では、箒は単に箒じゃない。さっき夢の中で会ったばかりの素敵な王子様そのもの。だから大切なものにでも触れるように、決して邪険に扱ったりはしない。そして、ポケットの中にガラスの靴を発見してからは、箒はまたただの箒になるのです。だって、あれは夢じゃなくて現実だったとわかったのだから。そんな演じ分けがよく伝わってきました。

また、脇を固める人もよかった。私はイギリス流のユーモアというのと、悪ふざけというのの区別がよくわからなくて嫌いだった、あのお姉さんたちのどたばたも、ばかばかしいけど笑ってしまいました。マシモ・アクリのお姉さんは、オペラグラスで見るとこれ以上はないというほど怪獣みたいなひどいメイク!ここまでやるかと思ったら、かえって好感を持ちましたね。対する井口さんのお姉さんも、こちらはちょっとかわいらしい感じもあって、その対比が面白かったです。舞踏会で小柄な男性をばかにしているような演技は、やっぱりいやですけど。

仙女の川村さんがすごくきれいで、存在感がありました。ほんとに光の粉を振りまく妖精のように輝いていたと思います。彼女が主役になるなら見てみたいなと思ったくらい。(2月の「ライモンダ」に出るんですよね~)今後がとても楽しみです。

四季の妖精は春の小野さんがイメージぴったりの元気さでかわいかった。夏の西川さんは、こういう役でここまでやるか~?みたいなねっちり濃い表現?そういう人なの?あの中では異色な感じがしました。冬の寺島ひろみさんは音に遅れ気味なのが気になったかな。

あと、吉本さんのダンス教師は、30年ぐらい前のオバサンのようなカツラとおちょぼ口の真っ赤な口紅が異様!あんなオカマっぽい変な役だったっけ?「アラジン」のときも変な化粧だったよね‥‥。もう少し何とかならなかったのか。道化の八幡さん、今となってはそんなに印象に残ってないのですが、この人が「アラジン」で、吉本さんと日替わりでジーン役を演じた人か~と思ったので、よく踊っていたのではないでしょうか。

そしてコボー王子は、前回書いたとおり意外に素敵でした。意外というのは‥‥。私、コボーさんって知らないうちに何回か見てるんですよね。以前、スターダンサーズバレエ団が好きでよく見ていた頃、吉田都さんとともにピーターライト版の「くるみ割り人形」や「ジゼル」にゲストで出演していたと思います。ほとんど印象に残っていないんだけど、どうしてかな~。特別顔もスタイルもよくないし、踊りもゲストならこれくらいは普通だろうみたいな感じだった?そういえばことし見たロイヤルの「眠り」がコボー王子だったっけ。ごめんなさい、忘れてた。

今までそんな、特に強い印象というのはなかったのですが、この「シンデレラ」の王子では、本当に自然な王子としての気品と、あたたかく優しい内面が感じられて、とても素朴で素敵でしたやっぱり、コジョカルで見たかったわね~。

そんな感じでシンデレラは代役の代役だったけれど、他の人たちがよくそれを盛りたてて、素敵な舞台にまとまっていました。年末に、夢を与えてくれるこんな演目はいいな~と幸せな気分で今年最後の鑑賞を締めくくることができました。バレエって、ほんとにいいものですね~。それではまた、来年も楽しみましょう

来年早々にはレニ国がやってきます。またコールプが見られるのがとっても楽しみ 特に「海賊」のアリはどんなすごい俺様アリになるのか?はたまた、芸監の演技を受け継いで、意外にも美しくせつないアリを演じてくれるのか?‥‥ってほど期待はしてないんですけど。スタイルいいし踊りも抜群なのに、あの顔でしょう。せめて泥棒メイクだけはやめてほしいと思うのですが。

また、今回新国の「シンデレラ」を見たので、ぜひともスターダンサーズ・バレエ団の「シンデレラ」も見たいのですが、すでに「海賊」もコルプガラもチケット買っているので、1月17、18という日にちがどうしても厳しい!去年も、ちょうど「スーパー歌舞伎」に入れあげていた時期だったので見逃してしまいました。

スターダンサーズ・バレエ団といえば、去年80歳の記念公演をした創始者の太刀川瑠璃子さんが、19日に亡くなられたそうですね。ことし1月にはバーミンガム・ロイヤル・バレエの公演で、「美女と野獣」のときも、「コッペリア」のときも、姪御さんたちとともに客席でお元気な姿をお見かけしていたので、訃報を聞いて驚きました。公演の時はいつも、入口すぐのほんとの「もぎり」のところで、来るお客様全員を笑顔で迎えられていた姿は、私なんてほんの一時期のファンでしたが忘れることはありません。ご冥福をお祈りいたします。

というわけで、ことしもバレエ三昧(プラス歌舞伎)の1年でした。大好きなルジマトフ氏は、去年の今頃はやきもきしてしまったけれど、ことしは無事「ルジすべ」も見れたし、本国でも頻繁に舞台に姿を見せているようで一安心。クラシックはもう踊らないと言っているのはとても残念だけれど、来年早々、また見ることができるのはとても幸せです

こんな拙いブログですが、ことしも(そんなに多くはないと思うけれど)いろんな方に見に来ていただいて、とてもうれしく思っています。どうもありがとうございました。また来年もよろしくお付き合いのほど、お願いいたします。では、どうぞ、よいお年を

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2008年12月28日 (日)

新しい王子様(またまたミーハー注意)

普段リビングルームワーカーで、家族のいないときだけのんびりやっている仕事なのですが、ことしは休日の関係で仕事納めが早く、クリスマス返上でやることになってしまいました。それでも昨日、無事今年の仕事を終ることができ、まずは一安心。

それで、延び延びになっていた「シンデレラ」の続きを書こうとしたのだけれど、もう忘れてしまったかも?いや、あとでまた無理やり思い出します!

その前に。このブログの左下に来訪者の週間検索ワードランキングというのが出るようになったのですが、それを見ていると、このところなぜか「グダーノフ」というのが多いんですよ。何かそれ、ちょっとうれしいのです。というのは、ここのところボリショイのドミトリー・グダーノフがちょっとしたマイ・ブームになっているんですよ。

そんなに期待しなくて行った「白鳥の湖」で、完璧なクラシックの白王子姿を見せてくれたグダさん(何か、変な呼び方!)が素敵で、その後ずっと心に残っていたのですが、最近彼のオフィシャルHPを発見!そこの美しい写真などを見ていたら、You tube にも動画がいっぱいアップされているのに気が付きました。それで、去年のマリインスキー・ボリショイ合同ガラの録画もまた引っ張り出して見たりして、ここのところ実はグダさん三昧なんです「トシちゃん25歳」じゃなくて、「グダちゃん33歳」‥‥!(こんなギャグ、もはやわかる人はいないか?)

私の一番好きなダンサーは、依然あのお方ですが、芸術監督になられてから事実上引退というか、クラシックを踊らなくなってしまって本当に残念なのです。それに代わる存在というのも実際あり得ないのですが、やはり私もミーハーですのでいろいろマークはしています

ことし目をつけた人はほかに、バーミンガム・ロイヤルバレエのツァオ・チー、ABTのデヴィッド・ホールバーグ、そしてシュツットガルト・バレエのアレクサンドル・ザイツェフなど。ホールバーグは超かっこいいけど、少し好みとはずれているので別として、バーミンガムも、シュツットガルトもそんなに頻繁に日本には来てくれません。それにそこのダンサーの情報というのもほとんど入らないので、夢中になりようもありません(しょうもないミーハー根性…)だけど、そこはさすがに天下のボリショイのプリンシパル。グダーノフはDVDなどは出ていないようですが、ちゃんとネットで映像も画像も見ることができるのです(以下、勝手にリンクを張ってしまいましたが‥もし万が一、すご~くお暇な場合のみご覧ください)

ほんとに、グダさまはお手本のような白い王子様。私の好みではもっと影があるミステリアスな王子のほうがいいんだけれど、それでも「ジゼル」のこの柔らかくて美しい着地、スピード感があってきれいなプリゼとか、ためいきものです。You tube の映像はちゃんと見どころだけ編集されていて、「眠れる森の美女」なんかは、あれっ?女性ヴァリエーションは?‥見事にカットされてるんですけど、それってあの偉大なるファン御用達DVD「ルジマトフ5大傑作選」のやり方と同じでございますね

中でもこの「シンデレラ」の砂糖菓子のように甘くてチャーミングな王子様はどうでしょう!階段の手すりを滑り降りてきたお茶目な登場の瞬間から、ご尊顔を拝した淑女方が次々失神してしまうほどの麗しさ。ボリショイの「シンデレラ」って見たことないけれど、こんなにコミカルで現代的だったんだ~。次のシーンは「靴探し」のところかな?舞踏会の夜に消えた謎の女性を探し疲れて、バタッと倒れちゃうひ弱な王子様に激萌え それから、やっと探し求めていた人に巡り合えた最後のパ・ド・ドゥは「マラーホフの贈り物」でアレクサンドロワとフィーリンが踊ったものと同じ?

あの時は、「シンデレラ」という題名だけれど、シンデレラと王子にしてはずいぶん衣装が質素だなあと思っていました。でも、全体がこんな感じの作品ということがわかって改めて納得です。プロコフィエフの音楽に、こんな感じの衣装で、こういう踊りだと「ロミオとジュリエット」を連想してしまうけれど、悲劇のロミジュリと違って、最後は幸せに包まれて終わる「シンデレラ」、何だがこのYou tube の小さな画面を見ても、じ~んときてしまいます。「シンデレラ」っていい演目ですよね。

そこで、新国の「シンデレラ」に戻りますが、予定通り登場のヨハン・コボーの王子さま。こちらはあのグダさまの絶品白王子を見てしまうとちと厳しい‥‥。身長もスタイルも日本人並みで、見事に新国のほかの皆さんと同化されています (ほんとに最初っから全く違和感なくとけこまれていますね~。)でも、だんだん見ていくうちにやっぱり違う。演技がとても自然で、何気ないしぐさにちゃんと心がこもっているのです。

見つめあううちに、ふとシンデレラの髪に手を触れようとして、我にかえってその手を引っ込める。そんな演技ともいえないような自然な、内からにじみ出る雰囲気がとても優しくて、素敵で、見ている私までぼーっとなりました。これも仙女の魔法だったのでしょうかね~?見ている人まで幸せの魔法がかけてもらえる「シンデレラ」‥‥やっぱりこんな年末にふさわしい素敵な演目だと思いました。

仕事も終わり、あとは主婦の年末の家事戦争‥‥その合間に、何とか新国の感想‥‥書きたいな~。

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2008年12月24日 (水)

新国立劇場「シンデレラ」 1

いきなりの主役降板ですごく腰が重かったけれど、一昨日(22日)新国立劇場に行ってきました。息子がもう冬休みでゴロゴロしていたので、「仕事忙しいから私の代わりに行かない?」と言ったら「男一人でバレエ見に行く奴なんていないから嫌だ」と言うので、「とんでもない!今は高校生ぐらいの男の子もいっぱい来てるんだから。みんないかにもバレエやってます風の、長身でイケメンの子ばっかりだけどね~」半分冗談ですけど、そんなことを言ったら激しく拒否されてしまいました。小学生の頃は彼もバレエをやっていたし、親のおつきあいで結構公演も見に行っていたのにね。(いつも寝てばっかりでチケットの無駄だったけど )

新国立劇場に着いたら、赤じゅうたんの階段の上でサンタさんが迎えてくれました。お小姓の扮装をした人もいて、通りかかる人にガラスの靴を試すようすすめていました。子供でも履けそうになかったですけど親子連れがたくさん来ていて、写真を撮ったりして楽しそうな雰囲気中に入るとさらに大きなクリスマスツリーがあり、シンデレラや仙女の衣装も飾ってありました。しまった!カメラを持ってくればよかった。と思ったら、ケータイも充電器に乗せたまま忘れてきちゃった 私ったら、一体どれだけテンション下がっていたのかしら‥‥‥。

ほんと、ゲストの公演でも値段は一緒だから文句は言えないんだけれど、レジニナが見られるのをあんなに楽しみにしていたのに‥‥やっぱりちゃんとゲストに見合う格の人を連れてきてほしいよね!(都さんとかさ~)レジニナの怪我も気になっていたけれど、そんなことをブツブツ心の中でつぶやきながら会場に入ると、「え~?代役の代役?」などという声が聞こえてきたので、会場に来て知った人もいたんですね。それでも、別に怒っているふうな人もなく、何だか周りは家族連れも多くて、別に主役は誰でもかまわないみたいな雰囲気だったので、逆に拍子抜けしてしまいました。

そうだよね~。レジニナを知っている人、今では少ないかもね。もしかしてすご~く楽しみにしていたのは私ぐらいかな??と思ったら、わざわざ遠いオランダからやって来て、初日の半分しか踊れなかったレジニナが気の毒になってしまいました お怪我、大丈夫かしら。彼女ももう結構ベテランのはずなので、今後もう見る機会はないかもしれません。ほんと、またとない機会だったのに残念でした。永遠の幻のバレリーナになっちゃったかな?

公演自体はとてもよかったです。私は9年前(99年)に一度見ているのですが、その時は全体的にすすけたように暗い感じで、セットも衣装もそんなに特別きれいだとは思いませんでした。だけど、今回見てみると、何だか衣装がみんなとてもかわいいの。男性が演じるいじわるお姉さんたちの衣装まで、ピンクハウスみたいなフリフリでかわいかった。あはは‥‥昔こんな感じに柄ものばっかり、ふくら雀みたいにゴテゴテ重ね着してた人もいたな~(自分も一時…)なんて思ったりして。

それから仙女がおばあさんから変身するときも、まるで一瞬妖精の粉がキラキラ飛び散ったように思えるほど(キラキラの紙吹雪もあった)光が目に飛び込んできました。妖精たちも、2幕の貴族たちも、みんなラインストーンをたくさん使った衣装で、ライトを浴びで本当にキラキラ光っているのです。妖精たちのシーンは淡い色合いで、舞踏会のほうは濃い色だけれどどれもソフトなトーンで、その色使いがいかにもロイヤルバレエという感じ。それでみんなキラキラ後ろに座っているだけの人の衣装まで、とてもかわいくて素敵でした。

新国立劇場はお子様用に15センチ厚ぐらいのクッションを貸してくれるのです。うちの娘も9年前はまだ小学生になったかならないかの頃だったので、親切だな~と思ったのですが、3階の最前列でそのクッションに座らせると、前につんのめって落ちちゃいそうでとても怖かったのを覚えています。友人と一緒のダブル子連れだったので、3階席が精一杯の贅沢でしたが、子連れはやっぱり大変で、気持ち的にバレエを楽しむというレベルではなかったのでしょう。

その時の主演は酒井はなさんと小嶋直也さんでした。あのとき初めて見た新国立劇場のプリマと、3階席から落っこちそうだった娘が、ことしは発表会で同じ舞台に立っていたなんて、何だか感無量です。

会場で、その発表会にも来て下さった、はなさんファンのmakoさんにばったりお会いしました。昔見たのとずいぶん印象が違うので、初演の時から衣装変わってる?と聞いたら、衣装は変わってないそうです。見る位置のせいなのか、心の余裕なのか、それともそのあとに何度も見たロイヤルバレエの古臭い映像の印象が強くなってしまっていたのか、この「シンデレラ」自体何かあまりいい印象ではなかったのです。振付けも、そのロイヤルのビデオを見ると、関連性のない動作をむやみにつなげているような、難易度は高いけど踊っててちっとも楽しくなさそうな、見た目もぎくしゃくしてて優雅でないような振付けで、アシュトン版は好きじゃないという固定観念ができてしまっていたのかな?

そのカクンカクンした変な振り付けを、さすがにこの作品をレパートリーに持って、この10年ほど繰り返し上演してきた「こなれ」もあるのでしょうか、皆さんとても自然になめらかに自分のものにしていました。妖精たちは人間じゃないので、あの奇妙なほどの細かいステップが刺激的で、人間離れしていることを表しているのだと思いました。実は最後のシーンでちょっと驚いたのですが、まるでぜんまい仕掛けの人形のように動いていた星の精(時の精)たちが、最後はこの物語の幸せな結末とともに、とても柔らかで優雅な動きに変わっていたのです。面白い、振り付けの妙とでもいうのでしょうか。

そんなわけで、ちょっとふてくされて会場に向かったのですが、今年最後のバレエ鑑賞を楽しむことができました。息子がかわりに行くと言わなくてよかった 代役のさいとうさんも頑張っていたし、コボーさんも意外に?素敵でしたよもう少し感想があるのですが、長くなったのでまたあとで。

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2008年12月21日 (日)

そんなあ~!

新国立劇場のサイトをみてびっくり。昨日の「シンデレラ」の初日に、舞台途中で主演のレジニナが怪我をして交代するというアクシデントがあったんですね。それで、その後の予定も全部、彼女が予定されていた日は代役のさいとう美帆さんが踊ることになったそうです。私も明日のソワレで、ビデオでしか見たことがないレジニナのシンデレラが見られるのをとても楽しみにしていたのでびっくりしました。

さいとう美帆さんって、私、見たことあったっけ?すぐには思い出せなかったけど‥‥確か9月の「チャリティガラ」で「薔薇の精」の少女を踊った人でしたね。あのときはキューピーちゃんみたいなコルサコフに目を奪われていてよくわかりませんでした。

ヨハン・コボーはそのままのようですが、私はもともとコジョカルを見たかったので、コボーさんはどうでもいいのよ。そう、最近ロイヤルの「ジゼル」のDVDを買いまして、コジョカルのかわいらしさを楽しんでいたのですが、その中のコボーのアルブレヒト、結構受けていました。王子な雰囲気‥‥というより、村人と同化したような1幕。(マラーホフやルジ様はとても村人には見えませんけどね。)それなりにジゼルに夢中でアブナイところもあるのですが、狂乱の場以降は世間知らずの金持ちの兄ちゃんの、「ああ、やべ~!俺、どうしたらいいんだ~」みたいな感じに見えてきて、演技が身近で面白いんです。どっちにしてもこちらの勝手な受け取り方ですけどね。

なので、明日の「シンデレラ」は何も期待するものがなくなって、純粋に舞台だけを見られそう(アシュトン版嫌いなんだけど)です。

それにしても、急遽降板というのは、見るほうにしてはちょっと意気消沈しますよね。それは、あんなに前からキャストが決まっていて、しかもバレエは肉体的にとてもハードな舞台芸術だから、こういうことがあるのもわかるのですけど。

去年、キエフバレエの「ライモンダ」を見に行って、会場に着いてからフィリピエワの降板を知って、その場にへなへなと座り込みたくなってしまいました。でも、あのとき急な代役にもかかわらず一生懸命踊ってくれた田北志のぶさんは、今でもとても印象に残っています。

ついこの間も、ボリショイの「ドン・キホーテ」の東京での最終公演で、ザハロワ&ウヴァーロフがオシポワ&ワシーリエフ組に交代するということがあったそうですね。「ドン・キ」でザハロワが踊る日はもう早くからチケットが完売していたと聞いています。ザハロワのファンはたくさんいるでしょうし、会場に行って知った人もいたでしょうから、本当にがっかりしたことでしょう。でも代役があの二人なら、まあザハロワファンだったら好みではないでしょうが、舞台の質としては十分充実したものになったことと思います。

でも、ちょっと知人の話を聞いて悲しく思ったのですが、ワシーリエフくんが飛んでも、オシポワちゃんが回っても、拍手が少なかったそうです。両隣りにいた人などは全く拍手をしなかったとか。代役の二人はザハロワを見にきたお客さんの前で踊るのだから、それは相当な重圧でしょう。いくら好みは人それぞれとはいえ、それはないよ~と思いませんか?

変更といえば‥‥レニングラード国立バレエでも、大幅な変更が発表されています。ステパノワがおめでた。おめでとう~!(あの二人の赤ちゃんって、顔が想像できない‥‥)それはいいけれど、ロマンチェンコワとコチュビラは「劇場の都合」って何それ?毎年来日して、ソリストとしていろんな舞台で活躍し、日本のファンも多い二人を、しかも「新春特別バレエ」ではキャスト発表されていたのに。

おまけに、私、ボルチェンコ兄妹だか姉弟だか知らないけれど、彼らの「白鳥の湖」をひそかに楽しみにしていたのです。それが、主役に予定されていて突然退団なんて、どういうこと?怪我とか、ほかに移ったとか、退団の詳細を発表してくれないと納得がいきません。何か劇場の体制も変わって、今までのレニ国とは違ってきたのはわかりますが、いいほうにだけ変わってほしいというのはこちらの勝手な願いなのかしら。

私がチケットを買っていた公演ではないけれど、「白鳥の湖」と「眠れる森の美女」にコリパエフくんが登場しました!え~誰それ?だけれど、去年の夏の「バレエ祭り」で、踊りはいまいちだったけれど、そのルックスのよさだけでちょっと印象に残った子で、まだ二十歳そこそこだと思います。今年1月の「バヤデルカ」ではガムザッティの脚を持って二人で持ち上げる役、「ドン・キホーテ」では闘牛士の中にいました。こんなに早く主役に抜擢されるなんて、私の目の付けどころはよかったのかしらと思ったけれど、やっぱり、レニ国にはまだシヴァちゃんとかシャドルーヒンとかいるじゃないですか。

この間の東京バレエ団で、主要キャストはベテランばっか、若手公演は知らない人ばっかで中堅どころを大事にしないなんて!と思ったばかりなのに、レニ国もか。。。私は地方の公演は知らないので、シヴァコフやシャドルーヒンが今どの程度活躍しているのかわかりません。でも、東京公演ではとんとお目にかかれない。若手の抜擢より、彼らをという選択肢はなかったんですかね?

あ、私はここの芸術監督の大ファンですが、特にレニ国のファン(でも、とても親しみはあります)ではないのに勝手なことばかり書いてすみません。でもこういう決定権が芸監にあるとすれば、この最近のさまざまなことであの方がレニ国ファンの不興を買っているのではないかと、ちょっと心配しています。ルジマトフはどう見てもダンサーとしてのみ深みを極めた人で、最初からそんなに器用な人には見えなかったのですが。団の運営とか、人事とか、演目の選択とか、振り付け、衣装、舞台美術、そんなものにすべて目を光らせることはどう見てもできなさそう‥‥な気が今でもしています。ルジ様、大丈夫?

というわけで、めちゃくちゃになってしまったのでやめます明日の「シンデレラ」、ちょっと残念だけれど、新たな気持ちで見に行こうと思います。

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2008年12月17日 (水)

東京バレエ団「ザ・カブキ」

食わず嫌いのベジャール作品でしたけど、見てきました。12月14日は赤穂浪士討ち入りの日。そう思うとなかなかいいものですね。「くるみ割り人形」みたいに毎年恒例にすればいいのに、なんちゃって。

「討ち入りペアシート」で半額‥「歌舞伎ファンの方にもぜひ」というメールの宣伝文句がちょっと受けてしまい、歌舞伎ファンの目にはどういうふうに映るのか興味がありました。でも、私はやっぱりバレエ好きなので、バレエを見る目で見てしまいました。あとで歌舞伎好きの友人にプログラムを見せたら、やっぱり舞台が簡素で、照明も暗そうだし、くま取りやカツラがないのが物足りないと言っていました。表現方法はともかく、まずあの歌舞伎のぱあっと明るい舞台や、華やかな衣装、派手なカツラやくま取りが、歌舞伎の持つ重要な要素なのかもしれませんね。歌舞伎ファンにはそれがまず「ザ・歌舞伎」なわけですから。

大体、私は「仮名手本忠臣蔵」を全部は見ていません。それも、あっちの場面、こっちの場面と細切れには見たことがあっても、その間何年もたっているのでつながりもわからないし、ほかの「元禄忠臣蔵」や「十二刻忠臣蔵」、「松浦の太鼓」などが頭の中でごちゃごちゃになっています。おまけに大河ドラマだの、お正月の12時間時代劇だのが入ってくると、大体の筋はわかるけど、エピソードなどはどこのものだったかとても思い出せません。

ちょうど10月に平成中村座で通しを上演していましたよね。あれを見ていれば頭の中の整理がついたのでしょうが、あれは確かAプロからDプロまであって、いろんな組み合わせで見せていたので、どれを選んだらいいかわからず、ちょっと敬遠してしまったのです。2回ぐらいで全部を網羅できるようにしてくれていたら見たのに‥‥なんて、もう遅いですね。

その長く膨大な忠臣蔵の世界を2時間で駆け抜けるバレエ。86年に初演されて以来、海外15ヵ国、通産160回以上の上演を重ねている東京バレエ団の代表的な演目だそうですが、私は今まで見たことがありませんでした。何かうさんくさそうで敬遠してたけど、見てしまえばそれなりに面白かったです。ちゃんとストーリーがわかったし、ほとんど忠実に物語を再現していました。

最初は「ザ・カブキ」なんて大仰なタイトルがいけすかなくて、「ザ・忠臣蔵」ぐらいにしておけばいいのになんて思っていたけれど、やっぱりそうじゃなかったですね。忠臣蔵のストーリーを借りてはいるけれど、表現するものは明らかにそこからはみ出しているのです。それは外国人から見た日本人のイメージかもしれないけれど、それを改めて日本人ダンサーによって見せられて、ドキッとしました。

一番の圧巻はやはり結末の集団自決シーンでしょう。歌舞伎では表現できてない「何か」があるとすればそこです。それは江戸時代ではなく、武士が滅びた後も(明治~戦時中)日本人の中に残っていた昇華された武士道のようなもの。戦時中に日本人はそこをいたずらに鼓舞され、間違った道に進んでしまいました。あれだけ集団ヒステリーのように国を挙げて破滅に突き進んだのも、人々の中にそういう精神が残っていたからだと思います。
(これは一般論ではなく、あくまでも私が感じただけのものです)

戦後、その部分は悪いものとしてまず進駐軍によって塗りつぶされ、その後の教育によっても長い間封印されてきました。特に被害を受けたアジアの国々からは今でも攻撃され続けているわけです。でも、全部あっけらかんと忘れてしまったような現代の日本人のDNAのどこかにも、武士道というか、忠誠心というか、そんな精神の記憶は残っているかもしれない。これは突然それを呼び起こされた若者たちの物語なのだと‥‥勝手に解釈しました。

最初の場面は現代の都会の大きなクラブか何か?たくさんのモニターにいろんな映像が映し出され、大音響の音楽でヒップホップのようなダンスに興じている若者もいれば、ただ無気力に群れる若者もいる。そのグループをまとめるリーダーが、ふとそこに一振りの日本刀を見つける。その刀に手を触れた瞬間、一瞬にして若者たちの頭脳に電撃が走り、さまざまな映像が流されていたモニターは、全部日の丸に変わっていた。何この演出?すごっ。右翼チック。

それはまるで眠っていたDNAのスイッチが入れられたように、現代の若者たちは室町時代か江戸時代か?架空の時代にタイムスリップしていったのでした。あとは忠臣蔵のストーリーが展開していきます。

兜改めで高師直が塩冶判官の奥方の顔世御前を見染め、言い寄るが相手にされない。怒った師直ははらいせに塩冶判官にねちねちと意地悪をする。判官はこらえるが、我慢しきれなくなり刃傷に及ぶ。そして切腹を命じられる。Imgp6643

前半で美しかったのはこの切腹シーン。どう見ても初日がファーストキャストだよね。首藤さんの判官、ちょっと見たかったかな。でも、東京バレエ団って何年たっても同じ人ばかり出ていて、何だかそんなに見ていない私でもいいかげん違う人も見たいって思うくらい!‥‥一体どうしてなんでしょうね。(だから初日は避けた)もし、この中に去年「カルメン」で一目惚れ?した大嶋さんでもいれば、今頃東京バレエ団通いをして、オペラグラスで大嶋さんを追っかけていたかもしれませんが‥‥そういう実力のある中堅どころの人が出番がなくて外に出て行ってしまう。そういうバレエ団ってちょっと淋しいと思います。

話がそれましたが…。顔世御前が能面のように無表情のまま、白装束で桜の枝を持ってすり足で通り過ぎるだけというのが、究極の悲しみの表現のようでちょっとじ~んときました。あとで登場する時はこの桜は散って、枯れ枝だけをずっと持ち続けているのがまた悲しかった。

判官は切腹の作法通り腹に刀を突き立てます。その瞬間、若者のリーダー(後藤晴雄)がかけつけ、なにやら遺言を耳うちされます。そして判官は刀を引きまわして果て(ここ、かっこよかった!)その刀を譲り受けた瞬間、若者は由良之助となります。

短い中におかる、勘平、そしてそれを見つめる現代のカップル、定九郎の話まで盛り込んであって(イノシシも出た!)びっくり。事件は家臣たちの人生も変えていく。そんな中で若者たちが集まり、盟約を結ぶ。この血判状を押すシーンも美しくて印象にのこる場面でした。巻紙を舞台端からぱーっと転がして広げ、そこに並んだ若者たちがウエーブのように血判を押していく‥‥こういう印象的なシーンをつくるアイデアがすごいなと思いました。

印象的なシーンといえば、あの突如現れた赤フン軍団は何だったんでしょうね~。途中ちょっと眠くなったりしたけれど、あれでとたんに目が覚めました。幕前にずらっと並んだフンドシ一丁の青年たち。あの~、一体何考えてるの?(壮観だけど!)それが、お手手つないで端からぐるぐる巻きにひと塊りになっていくのボリショイのイケメン軍団を見たばかりの目には、あの赤フン軍団はかなりイタかったそりゃ、ふだん鍛えているダンサーたちですから、一般の人よりはまあ許容範囲ですけど。何がやりたかったんでしょうね?

歌舞伎では意外ですが素肌を見せることはそんなにないと思います。ばっと肌脱ぎになっても、下には彫りものなどを描いた「着肉」を着ているし、褌姿も奴(やっこ)とかが尻をからげたときに見える程度で、上に何も着てない素っ裸の褌姿って、私の乏しい鑑賞歴だと確か「椿説弓張月」の白縫姫にいたぶられる武藤太ぐらい。雪の中、体に釘を打たれ白い雪に赤い血がたら~三島ワールドですね。

そういえばこの作品にも白地に赤い血というのがたくさん出てきます。ベジャールは三島由紀夫を題材にした「M」という作品も残しているから、単にサムライ、ハラキリというイメージだけじゃなく、三島の世界に共鳴したところがかなりあるんでしょうね。薔薇族?風のフンドシ軍団からそんなことを連想してしまいました。Imgp6644

最後、討ち入りの場面はそれなりに圧巻でした。こんなに男性ダンサーばかりたくさん出演するバレエも珍しいのでは?日本にもこんなにたくさん、バレエやる男がいたんだ~。みたいな変なところで感動。師直の首を打ちとると、どこからともなく面をつけた判官の亡霊が現れ、首を受け取り無言で去っていく。ラストシーンは火事装束のだんだら羽織を脱いだ白装束で、朝日の登る中、47人はそろって切腹して果てる。。。とても早い展開でした。

踊りの面では最後の後藤さんのソロがとてもよかった。やはり由良之助役の後藤さんが踊りは一番よかったです。クラッシック中心の振り付けだったせいかな?ほかは、変な(将軍とか師直とか)ロボットみたいな動きでわけわからん。おかる、勘平も足がフレックスになった変な踊りだったし。それならそれで全部通すのならわかるけど、ときどきクラシックバレエの動きが出てきたりして‥‥。

女性の衣装も、動きやすいように帯がなく、うちかけ状になっていて、着物の裾を黒子が広げたり、衣装を脱いでレオタード姿で踊りだしたり、また黒子が衣装を着せたり、いろんな工夫がされていました。女性はポワントをはいていました。でもやっぱり、着物の下のレオタード姿は何も着ていないように見えてしまって、かなり違和感がありました。

初めて見たけれど、舞台としてはそれなりに面白かったところもありました。でも、やっぱりこの趣味ってどうよ、みたいな‥‥。外国では受けるかもしれないけれど、あくまでもベジャールの見た「ザ・ニッポン」の世界で、これを日本人のダンサーたちが演じ、日本人の私が見るにはちょっとの世界だったかも。

そして、私の一番の興味だった、歌舞伎ファンが見たらどう思うだろうということについては‥‥‥多分面食らったでしょうね!

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2008年12月13日 (土)

ボリショイの「明るい小川」

「ドン・キホーテ」「白鳥の湖」と見てきたボリショイの、三つ目の演目は「明るい小川」です。今まで聞いたこともありませんでしたが、これはソヴィエト時代に新しいバレエとして創作されたもので、プログラムによると何と初演は「レニングラード・マールイ劇場」と書いてあります。それってもしかしていまのレニ国?

半年後にボリショイでも上演されたけれど、すぐに共産党機関紙によって批判され、その後上演されなくなってしまいます。その「明るい小川」が2003年、現ボリショイバレエの芸術監督ラトマンスキーによって67年ぶりに再演され、現在のボリショイのレパートリーになったということです。開演前にラトマンスキー氏のプレ・トークがあったそうですが、残念ながら知らなかったので逃してしまいました。

幕が開くと、内側の白い幕に何やらロシア文字が書いてあります。これだけでつい引きそうになるかなり異様な雰囲気。鎌とハンマー?何かなと思ったら、旧ソ連の国章でした。周りに書かれていたのは「コルホーズの女性は偉大な力だ」などといういかにもなスローガンのほか、「バレエのまやかし」などと、かつて批判を受けた共産党機関紙の見出しなどが書かれていたそうですよ。

舞台は一面の黄金色。金色に実った麦畑(収穫のあとの麦束?)でしょうか?よく見ると野菜や果物も描かれています。序曲とともにミニチュアの飛行機が飛んだり、汽車が走っていったり。いきなり普通のバレエとは違った光景。プレ・トークでラトマンスキーさんは「登場するのは妖精や王子などではなく、皆さんと同じ普通の人間ですから、親しみを感じてもらえると思います。」というようなことをおっしゃっていたそうですが、バレエファンには飛行機や野菜より妖精のほうが身近なんですけど~

この登場人物いっぱいのごたごたストーリーをごく簡単に書きとめておくにはどうすればいいか?難しいですね。でも、まず中心になるのはこのコルホーズ「明るい小川」村の住人で、農業技師のピョートル(イワン・ワシーリエフ)とその妻ジーナ(アナスタシア・ゴリャーチェワ)の二人です。収穫を終えた村に、都会から収穫祭のための芸術慰問団(といっても3人だけなんだけど)がやってきます。ピョートルとジーナは他の村の人々と共に駅に出迎えにやってきたのです。

やがて汽車が着き、降りてきたのがバレリーナ(ナターリヤ・オシポワ)とそのパートナーのバレエダンサー(セルゲイ・フィーリン)、そして踊りの伴奏をするアコーディオン奏者(岩田守弘)の3人。ふと見るとそのバレリーナは何とジーナのバレエ学校時代の同級生でした。ジーナはピョートルと結婚してこの村で働いているけれど、もとはモスクワでバレエを学んでいたのです。そのことをピョートルは全く知りません。

収穫を祝う前夜祭、彼らの歓迎もかねて村人たちが踊り、バレリーナたちも踊りを披露します。このとき、何とピョートルはバレリーナにボーっとなり、さっそくナンパしている!ちょっとむかつくジーナ。一方、なぜかおかしな別荘住人という初老の夫婦がいるのだけれど(なぜ共産主義の農場にこんな変なプチ・ブル?っぽいキャラがいるのかわからない)その夫がバレリーナを、若づくりの妻がパートナーのダンサーを見染め、それぞれこっそりデートに誘ったりしている。

ジーナとバレリーナたちは一計を案じ、ジーナは仮面をつけてバレリーナになりすまし、バレリーナは男装してパートナーのダンサーになり、そのパートナーは何と女装してバレリーナになって浮ついた奴らを懲らしめてやろうという、つまりはドタバタコメディなんですね。

片や、アコーディオン奏者は、花束を持って出迎えてくれたかわいらしい女学生のガーリャ(クセーニャ・プチョールキナ)に本気で迫っています。ガーリャが不安そうに打ち明けると、トラクター運転手が犬の着ぐるみを着て一緒に行くことになって一件落着。

夜になり密会の場でそれぞれのコミカルなやり取りが繰り広げられ、浮気な人々がさんざんからかわれたあとに、収穫祭の賑やかな踊りが始まります。バレリーナと思って自分の妻を懸命に口説いていたピョートルはジーナに平謝りでハッピーエンド。まあ、かいつまんでいうとそんな他愛のないストーリーです。

だけど、これだけたくさんの登場人物の個性がぶつかり合い、それぞれが生き生きと輝いていて、まさに人間賛歌。それはみんな均一の労働力として歯車のように扱われていた共産主義への、明るく楽しい風刺劇だったのかもしれません。

ジーナ役のゴリャーチェワは小柄でかわいらしい人。「白鳥の湖」でもパ・ド・トロワを踊ったり、ナポリの王女役で鳴らないタンバリン持って踊っていて目につきました。本が好きでおとなしく控え目なジーナ役がとてもよく似合っています。

一方バレリーナは、復活初演のときはアレクサンドロワだったそうですが、そのアレクサンドロワのキャラクターそのものの元気で活発な役柄。オシポワもキャラとしてはぴったりですが、あとで男装したときは、ああアレクサンドロワの男装の麗人はかっこよかっただろうな~と思ってしまいました。男性のパを踊るので、もちろんオシポワはばっちりでしたが、迫力という面ではやっぱりアレクサンドロワのほうがはまっていたのだろうなあ。

でも、ジーナとバレリーナの仲良し二人がまるで双子のように同じパを並んで踊るところがたくさんあるんですよ。ゴリャーチェワとオシポワは体型も似ているし、ほんとにそこがぴったり息が合って一つの見せ場をつくっていました。おみごと!でした。アレクサンドロワだと対抗できる人がいないかも

ピョートル役のワシーリエフくんはおとぼけ役もうまくてかわいい相変わらず明るい青春オーラ満開です。バレリーナと思って自分の妻を誘惑するなんて、なんておバカな役。情熱的に踊ったあとは熱いキスでおやおや 帰りがけに話していた人の話(立ち聞き)では、前日のメルクリエフはここでキスなんかしていなかった‥とでも、思いがかなったあとに3回ぐらいガッツポーズを繰り返していたのが何ともかわいかった。私の好きなタイプとは違うけど、この子好きだわ~(あくまでも応援モードで。うちの息子と二つしか変わらないんだもの19歳だって…)

今回、ゲスト出演だったセルゲイ・フィーリンは、再演当初からの役。1幕ではバレリーナと素敵なパ・ド・ドゥを踊りますが、2幕では何とポワントを履いて、自転車の後ろに乗ったり、グランディーバ顔負けのコミカルな踊りを展開したりします。最初、回転の時にはドゥミで回っていたので、やっぱり本職?のグランディーバには勝てないかな?と思っていたら、最後の何回かは見事ポワントで立って回っていました。ちゃんと甲も出ていました。どちらかというとカマっ気はなく、男っぽいフィーリンのバレリーナ姿は逆の意味でおかしさ満点でしたね~。

そして岩田さん。前日テレビで放映された、その番組中で猛練習をしていた「アコーディオン奏者」の踊り。とび職のようなニッカーボッカー(というのか?)パンツで、ちょび髭‥‥テカテカリーゼント(というのか?)はまるで一昔前のヤンキーだわ‥‥それがコミカルだけれど真剣にねっちりと迫ってくるのが結構コワい。だけど肝心なところになると、着ぐるみの犬に追いかけられてびっくりして木に登る‥‥じゃなくてベンチに飛び乗る!そんな姿、かなり笑わせてもらいました。踊りは本当に音楽にコンマ1秒までピタッと吸いつくようで、あの難しいショスタコーヴィチのキラキラした音楽が完全に身体の中に叩き込まれているよう。超一流のアコーディオン奏者!ブラボーでした。

笑っていたらあっという間に終わってしまった楽しい舞台でした。あれだけどうでもいいストーリーでドタバタ劇が展開しているのに、一人一人のきっちりとした高い技術の上に成り立っているから、ちっとも厭味がなく下品にもならず、素直に楽しめるいい演目でした。だけどこれ、また見る機会ってあるのかな?ボリショイは3年に1回ぐらいは来るだろうけれど、まだまだ上演してほしいレパートリーはたくさんありますよね。どんなものかわからなかったので迷っていたけれど、やっぱり見てよかった。本当にもう多分日本では見られないとても貴重な機会、この演目、このキャスト、まさに一期一会だったと思います。

今回のボリショイ公演、本当に楽しかった~ 一昨年、マリインスキーも「海賊」「白鳥の湖」と見ましたが、同じロシアバレエでもマリインスキーの優雅さに比べ、ボリショイはエネルギッシュというのがよくわかりました。男性のイケメン率高し。一人一人の技術水準もすごいし、第一マリインスキーのようなトンデモプリマ(あの子、プリンシパルに昇格したそうですが)は一人もいませんでした。マリインスキーのほうがどちらかというと親しみがあったけれど、もしかしたら私、このボリショイのパワー、大好きかも!グダーノフ王子という素敵な王子も発見できたしとにかくよかったです。‥‥もう十分、満足でした。

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2008年12月12日 (金)

ボリショイ「白鳥の湖」 2

一昨日、「明るい小川」も見てきました。ソヴィエト時代のコルホーズが舞台と聞いてかなりひいていたのだけれど、これも楽しかった~。ワシーリエフくんがやっぱりかわいかったし、既に退団し、今回ゲストとしてこの演目だけに出演したセルゲイ・フィーリンも最高!フィーリンのコミカルなバレリーナ姿、しかと脳裏に刻みました。まだまだ踊りもいけるのに、引退?なんて本当に残念です。芸術監督に就任したダンチェンコでも踊ってくれるといいんだけれど。

そして、テレビで練習風景を紹介していた岩田さんの「アコーデオン奏者」。ただすごい身体能力にまかせて華やかに飛ぶ、回るというだけではなくて、とても緻密な表現力。ばねだけではない、芯のとおった柔軟性ととぎれのない粘着性(?)のある踊り。ショスタコーヴィチの賑やかで忙しい曲にぴたっと合った音楽性の素晴らしさにも驚かされました。そんな見る者を惹きつける岩田さんの踊りは、まさにボリショイのスタイルそのもののような気がします。

今まで私はあまり見る機会がなかったボリショイバレエですが、どの演目も最高に楽しめました。なぜか全部セカンドキャストで見ましたが(だからザハロワやアレクサンドロワは見れなかった。。)それもまた私的にはよい選択だったように思います。これでボリショイ鑑賞は終わり。その「明るい小川」の感想(何か、楽しくてあっという間で、忘れるのも早そうなのですが‥)の前に、まずは前回の続きのグリゴローヴィチ版「白鳥の湖」の内容の覚書です。

≪1幕2場≫
1場から2場へのつなぎはとてもスムーズで、そのまま続いていきます。大広間での王子の成人の祝宴の後半から、王子はなぜか浮かない表情になります。そして上から不気味な垂れ幕が下りてきて‥‥この暗雲のような垂れ幕は何度か登場するのですが、王子の心の中の世界と現実の世界を分けているような使われ方をしています。

いつの間にか背後から影のようにロットバルトが現れ、不安な面持ちの王子の後ろにぴったりと寄り添うように踊ります。歌舞伎の「連理引き」みたいに、王子に魔法をかけて操るような動作で、いつしか王子は見知らぬ湖のほとりに誘い出されていたのでした。中央の垂れ幕は紗幕になり、その向こうには白鳥たちを従えた美しい姫が‥‥‥。

エカテリーナ・クリサノワのオデットは、ちょっと幼顔で淋しげな感じのオデット。踊りはいいのだけれど華がないような。終始悲しい表情で、王子との愛が感じられない。王子のドミトリー・グダーノフはかなりの演技派のように思えるけれど、熱い思いは伝わらないみたい。もしかしたらロットバルトが見せた幻影だったのかもしれないと思うぐらい、ずっと伏し目がちで、きれいだけれど、表現に物足りなさを感じてしまいました。

≪2幕1場≫
1幕と同じ城の大広間。やっぱり同じような冒険ファンタジーもののコスプレみたいな衣装の宮廷人たち。王妃が登場し、各国の姫君たちが民族舞踊団を従えて入ってきます。そして道化も踊る~。岩田さんの道化は相変わらずキレキレで小気味よくて最高!だけど、王子が不在のまま民族舞踊が始まってしまいます。

民族舞踊は花嫁候補が一緒に踊ります。これはある意味、ここで唐突に宴会の余興のように踊られるよりは現実味があるかもしれません。だけど、花嫁候補の姫が真ん中で踊るので、どれもみな女性はポワントでした。そのために民族舞踊特有の味はちょっと薄れてしまっています。衣装も、真ん中の花嫁候補は白いドレスに1幕の女性たちと同じような金・銀の模様が入っていますが、これも民族舞踊らしさがあまりない感じ。チャルダッシュ、ルースカヤ、スペイン、ナポリ、マズルカと続きますが、やっぱりブーツやヒールの靴でそれっぽく踊るほうが楽しいかな~。

王子が登場すると花嫁選びが始まります。でも、どの姫も王子の目には入りません。そこへロットバルトがオディールを連れて現れます。このあとまた(もう既に記憶が怪しいのだけれど)急に例の怪しげな垂れ幕が、覆いかぶさる暗雲のように下りてきて時間が止まり、一人になった王子をロットバルトがまた操るように踊ります。この場面はブルメイステル版の4幕に使われている悲愴な音楽で、黒鳥たちが王子のまわりを不気味に飛び回ります。何だか王子の運命を暗示しているような異様な盛り上がり方を見せ、これで王子は黒も白もわからないような状態になってしまったようです。

垂れ幕が上がり、何事もなかったように元の城の広間では王妃や廷臣たちの前で、華やかにオディールと王子のグラン・パ・ド・ドゥが繰り広げられます。アダージョとコーダはマリインスキーなどのオーソドックスなものと同じだけれど、それぞれのヴァリエーションはブルメイステル版で使われている曲が踊られます。

先に書いたように、グダーノフの王子は天下一品どちらかというと上品でおとなしめだけれど、端正で、高貴で、申し分のない王子様ぶりです。足音がしないのはもちろん、指の先、足の先まで完璧にノーブル

一方クリサノワのオディールは‥何か弱いんだよね。オデットの時と違って笑顔だけれど、ずっと同じ表情。それで王子を誘惑する気あるの?媚のある動きもコケティッシュな表情もなく、かなりのあっさりめ。というか何もしてないでしょっ!必殺仕事人オディールではなく、これもロットバルトによって映し出された幻影?なのかしら。

ロットバルトはずっと座ったまま。もうあれだけ強く魔法をかけておいたから安心して見てられるって?すでにこってり魔法のフルコースで前後不覚状態の王子は、もう騙されてオデットと間違えているのでも、オディールの魅力に負けたのでもなく、最初からもうこうなる運命と定まっているような感じでした。

普通は翻弄される王子の心の動きや、オディールのねちっこい手練手管が見所だったりするのだけれど、そういうやりとりは感じられずに淡々と進んでいってしまいました。せっかくの山場がちょっともったいない気もしますが、ロットバルトが王子を影のように操っているという設定にしてしまうと、こうなってしまうのでしょう。

クリサノワはバランス系が得意なようで、アダージョのとき何度か、王子がすっと手を放してもバランスを保っていました。最後も、王子が腰にまわした手を放してから何秒も静止していました。技術的には十分だけれど、やっぱり表現がオデットもオディールもあっさり。もっと派手な演技をする人もいて、そういうのが特に好きというわけでもないけれど、あまりにも何にもなさ過ぎだったような気がします。コーダのグランフェッテはオディールの魔力を示すように、4泊目?で脚を真横に伸ばし、手は上にアロンジェしてすごく華やか。ダブルも入ってたよね。

踊りが終わり、有頂天になった王子は、この人こそ花嫁にしたい人ですと王妃に告げる。ところが、誓いのポーズをしたとたんにロットバルトとオディールは正体を現します。とんでもないことをしてしまったと嘆く王子。ここで王子はジュテしたり回ったりするんだけれど、こんなところで踊らなくてもよくない?普通はここで幕ですが、この版は真ん中の垂れ幕をうまく使って、途切れなく次の場面に続いていきます。

≪2幕2場≫
この場面転換の早さが特徴の一つ。4幕仕立てのブルメイステル版などは休憩が3回もあって疲れてしまいますから、スピーディーな展開もいいものです。またいろんな踊りに見入っているとあっという間。

マリインスキーなどでは白鳥たちの中に黒いのが混じっていて、その意味がよくわからないのだけれど、ここでは黒い鳥はロットバルトの手下のようです。失意のオデットが戻ってきて、ロットバルトも登場して執拗に攻め立てるのは同じですが、王子が登場しても何だか情けないの。ロットバルトとの戦いに力尽きた王子は、降りてきた中央の垂れ幕によってオデットと引き裂かれてしまいます。紗幕の向こうに映し出されたロットバルトとオデット。オデットはロットバルトの足元にうずくまり、ついに動かなくなってしまいます。紗幕に遮られた王子はどうすることもできずに泣き崩れる‥‥だったよね?

確かヌレエフ版では王子も死んだ?と思われ、ロットバルトは本懐を遂げ?まだ少し納得(できないけど!)することもできるけど、王子が生き残るラストってどう解釈したらいいんだろう?ロットバルトは温室の中でまっすぐ育ってきた王子に、世の中そんなに甘くないということを教えたのか??これから王として国を治めていくために、苦しい試練を課したのか?

マリインスキーのように、王子が正義の味方のように現れて、ロットバルトと戦ってあっという間に翼をもぎとり、悪は滅びてめでたしめでたしではいかにもできすぎだけれど、これは何か後味が悪いなあ‥‥と思っていました。でも、その後王子は一時の感情に溺れずに冷静な判断で、立派に国を治めていきました‥‥‥。そうでも考えないと王子かわいそすぎ そう、ここでの主役ははっきり王子で、王子の成長物語だったんですね。オデットとオディールはロットバルトが見せた幻影だったのかもしれません。意外なラストに考えさせられましたが、後から思い出すとグリゴローヴィチ版もなかなか面白いなと思いました。

まとめ。
1、王子が踊る場面が多い。1幕のパ・ド・トロワも王子が踊る。ロットバルトとも踊る。素敵な王子をたくさん見たい人にはうれしい

2、ロットバルトは影のように王子につきまとい、魔法をかけて王子を操る存在。だからそのためにオデットと出会ったときの心の通い合いや、王子がオディールの魅力に陥ちていくところなどの必然性がなくて、ちょっと普通とは見どころが違う。(クリサノワがあっさりしすぎていたせい?)

3、花嫁候補は民族舞踊をひきつれた各国の姫君で(花嫁候補がみんなお揃いの衣装のところが多いけど、あれはどう考えても変だよね~)それぞれの民族舞踊の真ん中で踊る。出席者の中に姫君の両親がいて、王子に選ばれなかった姫たちはそれぞれの両親のところに行って泣くというのが芸が細かい。(でも親たちの衣装は同じ。ここまでは手が回らなかったのか?)

などというのが気付いたところです。またぜひ見てみたいと思いました。

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2008年12月10日 (水)

ボリショイ「白鳥の湖」 1

あ~、調子に乗って書いていたら、「保存」の段階で突然フリーズして消えてしまった!久々にがっくりのアクシデント。ショックもう二度と書けないよ~。でも、記録なので‥と気を取り直して。

ボリショイには今まであまり縁がなかったので、ボリショイの「白鳥の湖」は初めてでした。DVDも何種類か出ているようだけれど、ミハリチェンコとかベスメルトノワとか、見たこともない古い時代(そんなに古くはない?)のもので、ちょっと手が出なかったこともあります。マリインスキーのほうは2006年のロパートキナのDVDが出ているし、ゼレンスキー&マハリナの映像も、91年でちょっと古いけれど、まだ二人とも現役で踊っている人ですからね。もう引退した、全く知らない人の映像はあまり買う気がしなくて。でも、このグリゴローヴィチ版は前からのものだったんですね。

初めて見たボリショイの「白鳥の湖」。バレエの代表的な演目だし、ボリショイはマリインスキーと並ぶロシア2大バレエ団だから、見る前からオーソドックスなものと心の中で勝手に決めつけていたのですが、そんな目で見ていたらあれ?かなり違う!

「ドン・キホーテ」と違って、舞台美術も衣装もちょっと凝っていたし、構成もいろいろ工夫があって面白いじゃない~と思って見ていました。それが‥‥ラストでまさかのbad end!あれには愕然としてしまいました。同じ悲劇でも、二人は天国で結ばれたとか、二人の愛の力で悪魔は滅び、白鳥の娘たちは元の姿に戻ることができたとか、そんな生易しい悲劇じゃなく、オデットへの愛は通じず、ロットバルトとの戦いに力尽き、オデットは命を落とし、王子一人が残される‥‥そんな救いのないやりきれないラストでした。

DVDでしか見たことがないけれど、パリ・オペラ座のヌレエフ版もやっぱりこんなような釈然としない終わり方だったよね。オデットはロットバルトに連れ去られ、「ヤマトタケル」の宙乗りみたいに飛んで行ってしまう。あれ以上の虚しさでした。どうして~?

もともとのグリゴローヴィチ版はハッピーエンドだったけれど、2001年に改訂されて今のようになったのだとか。原点はやっぱり悲劇だそうで、ソビエト時代は悲劇はけしからんというのでハッピーエンドになっていたそうです。わざわざ戻した理由は何なんだろう‥‥まさかの結末にびっくりした人もいたと思います。

私が見たのは日曜マチネのクリサノワ&グダーノフです。動機が不純なのだけれど、去年見たときグダーノフの横顔がちょっとルジ様似だったので (よく見たら似ているのは鼻の形だけだった)だから、そんなに期待はしていなかったのですが、これが大当たり!私、グダーノフがこんなにいいとは思わなかった。私はもともと近眼ですが、最近は老眼が入ってプラスマイナスで?少しよくなっているのです。メガネ屋さんに「これじゃ強すぎて頭痛くなるでしょう?」と言われても、「舞台見るからこれでいいんです!」と言って通していたのだけれど、メガネのせいもある?久々にこめかみがキンキン痛くなるほど凝視してしまいました。え?もちろんグダーノフ王子をですよ

≪1幕1場≫
序曲の間にプロローグはなく、幕が開くといきなり重厚なお城の中の大広間のようなところ。石造りを表しているのか、横縞の模様(織物のことはよくわからないけれど、荒い織地の麻織物みたいな)の描かれた幕が下がり、全体的にグレーと金銀茶黒の色のみを使ったちよっと暗めの城の内部を表しています。そこに集う男女はまるで冒険ファンタジーもののコスプレみたいな(?)衣装。ごくオーソドックスだった「ドン・キ」に比べて、皆デザインが統一されていて、かなり凝っています。ワルツを踊る女性はオーガンジーのスカートの上部に金銀の葉っぱ?をちらしたような抽象的な模様のある衣装。男性は金銀を基調にして前が黒のV字のラインになった提灯袖の‥‥私の描写では余計わからなくなっちゃう?

王子登場!何と下手奥から斜めに居並ぶ宮廷人の中を大きく軽いグランジュテで登場です。さわやか~こんな素敵な王子登場ってあったかしら?金銀黒の軍団の中で、一人だけ上から下まで真っ白な王子がよく映えます。この版では1幕でも王子はよく踊る。グダーノフは身長もそんなにないし、顔だってちょっとオジサン入ってて美形とは言い難いのだけれど、(グダちゃんって名前もさえないし‥‥)ひとたび踊りだすと、もう周囲1メートルぐらいが光り輝いて見えるくらい「超」がつくダンスール・ノーブルでした。

フワッと浮かび上がるような軽いジャンプ。足音のほとんどしないきれいな着地。動きの軌跡が1本す~っとなめらかに描かれていてるような丁寧でぶれのない踊り。ポーズの一つ一つがうっとりするほど美しいし、ジャンプの時も放物線の頂点でさらに手足が伸びて、一瞬止まったかのよう。すばらしい~。見ながら何度も「美しい~」とつぶやいてしまいました。

ワルツの真ん中で踊っていた4組の男女の、その4人の男性はみな背が高くてかなりのハンサム揃いでした。あとでスペインを踊った4人と同じだと思いますが、思わず顔ばかり見てしまいました。でも、こんなイケメン軍団の中でも王子はひときわ際立っているのです。

王妃が登場し、王子に剣を与えます。王子が剣にキスをするのは前にもどこかで見たような‥‥成人して騎士の仲間に入ったということなのでしょうか。弓をプレゼントされて子供っぽく喜ぶよりは現実的な感じがします。剣とともに首飾りも。これは王位を継承するという責任が与えられたという意味ですね。

渡された配役表にパ・ド・トロワの男性の名前が載ってないなと思ったら、何と王子が踊りました。マリインスキー(キーロフ)の映像のゼレンスキー王子も、自らトロワを踊りますが、これはもともとゼレンスキーがトロワにキャスティングされていて、そのときの王子役(ルジ様だったという話も?)が降板したので、たまたま両方踊ったと聞いていますが、このグリゴローヴィチ版は最初から王子が踊ることになっているようです。

(話がずれちゃうけれど、マリインスキーの「白鳥の湖」の映像。このとき降板せず、ルジマトフ&マハリナの映像が残されていたらどんなによかっただろうって、ゼレちゃんには悪いけど、ちょっとルジマトフファンとしては考えてしまいます。これは現在「華麗なるバレエ」という小学館のDVD付ブックの初回として発売されています。ビデオで持ってる映像ばかりだけれど、全10巻のシリーズもさっそく予約してしまいました

パ・ド・トロワは普通筋とは関係なく、「ジゼル」のペザントみたいに1幕の見せ場になっているけれど、これを王子が踊るのも何となくつながりとしてはいいような。それもお城の中で王妃様や廷臣たちの見守る中で、「王子の友人」という女性二人と踊ります。王子の何一つ屈託のないさわやかな笑顔。この王子は何の悩みもなく、王位継承者として立派に育てられてきたのでしょう。ようやく成人し、明日はいよいよ花嫁選びの日という、晴れがましい王子の姿でした。

王妃が出ていってもしばらく楽しげな踊りが続きますが、突然王子は何かに取りつかれたような憂鬱な表情になります。あんなに笑顔で踊っていたのに、この辺がちょっと唐突なんだけれど。浮かない顔の王子を元気づけるような道化の踊り。この道化が岩田守弘さん。ちょうど昨日のNHKの「プロフェッショナル」に登場していました。

あれを見ると全く謙虚な努力の人なんですね。でも舞台では本当に見る者を楽しませてくれる「プロフェッショナル」そのものでした。超高速回転、高くて軽いジャンプ。やわらかい着地。38歳とはとても思えない身体のキレはあのボリショイの中でもピカ一。動きの一つ一つがきっちり統制がとれていて、決めのポーズの指先の反り具合まで完璧です!超一流というのはこういうことを言うんだな~とただただ感動していたけれど、テレビでは不安や悔しさをひたすら努力で克服する、壮絶な舞台裏を映していました。岩田さんは舞台に立つとその人の丸裸の中身が全部見えてしまうと言っています。だから日々自分を磨いて磨いて、そうやって世界一の舞台に立っている岩田さんに、改めて感動してしまいました。

何か、久々に簡潔に書けたと思っていたのに、一度消えてしまったらどんどん尾ひれがついてしまって、長くなったので一旦終了します。

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2008年12月 7日 (日)

ボリショイ「ドン・キホーテ」

ボリショイの「ドン・キホーテ」を見てきました。

娘が小さいころ、娘のバレエ教室の発表会で「ドン・キホーテ」をやることになり、私と、大人バレエをやっていた友人とで1幕の後ろに立っているだけの役で出演しました。そのとき参考に見て研究していたのがテレビ放送を録画したボリショイの「ドン・キ」のビデオだったのです。ステパネンコのキトリ、ウヴァーロフのバジル。今その友達とは付き合いがないので、そのビデオ、もう見られません。あれはNHKだったのかな?ステパネンコの「ドン・キ」なんて、DVD出ていませんよね?あのときはバックで演技している人ばかり見ていて、肝心のステパネンコもウヴァーロフもよく見ていなかったのでできることならもう一度あのビデオが見たい~!

そんなわけで、ボリショイの「ドン・キホーテ」は結構思い入れがありました。ボリショイの生の舞台は昔、ニーナの「眠れる森の美女」で一度だけ見ましたが、バレエ初心者の頃はとても見方が偏っていて、オペラグラスの中のニーナしか見ていなくて、残念ながら他はほとんど覚えていないのです。だから今回は初めて見るようなものでした。

私が見たのは二日目のナターリヤ・オシポワとイワン・ワシーリエフ。去年のマリインスキー&ボリショイガラのプログラムには「オシーポワ」と書いてあり、今年のプログラムには「オーシポワ」と書いてあります!一体どっちなんじゃ!去年のガラのAプロ、このペアが踊った「パリの炎」は驚異的なスゴ技でとても盛り上がりましたよね~。とにかく二人ともジャンプが高い!たまたま娘が発表会で「パリの炎」を踊ったので、NHKで放送されたこの録画を何度も見ていました。それで、うちではいつしか「オシポワちゃん」と呼んでいたのです。だから私は「オシポワ」と書くことにします

初日のアレクサンドロワも見たかったので、どっちか一つを選ぶのは迷いました。でもフィーリンが出ないとなった時点でオシポワちゃんを見てみようということに!私はどちらかというとベテランが好きなのですが、たまにはフレッシュな元気ペアもいいよね~。

そのとおり二人とも登場の瞬間からとっても豪快に跳ねまくってました!席が遠かったのですが、小柄な二人が舞台狭しと跳ねまわっていたのがよくわかりました。でも、もっと近い席ならきっとその高さにも感動したでしょうね。私はどちらかというとダンサーの表情をよく見たいのです。でも、最近は舞台全体の雰囲気とか、脇で行われている小芝居とかも見逃したくない。ということはやっぱりいい席を取れということか~‥‥お金もかかるけれど、今回のように迷って出遅れていたのでは無理ですね。遠い席ではオペラグラスを上げ下げしているうちにどんどん先へ進んでしまいます。またものすごくテンポが速いから、今回、もたもたしているうちにいろんなこと(主にガマーシュやサンチョパンサのお芝居)を見逃してしまいました。残念

テンポが速いというのは、もう指揮者がタクトを下ろした瞬間から何?この早さ!それは幕が上がっても同じでした。去年のミラノスカラ座の、あの超間延びした「ドン・キ」は何だったんだ‥(あれと比べなくても十分速いけど)そのスピードにダンサーもよくついていって、みんな回転したまま吹っ飛びそうな勢いでした。

1幕は豪快で、スピード感あふれて面白かった。ちょっとしたジャンプも、この二人が飛ぶと「おおっ!」っと声を上げたくなってしまいます。踊るたびにいちいち「おおっ!」ですから、息つく暇もありません。とにかくワシーリエフ君がすごい。飛ぶ回るだけじゃなく、顔もとてもかわいいの ほんとにやんちゃで、とぼけてて、好感度抜群のバジルでした。くりんくりんの巻毛に負けん気の強そうな顔。だけど街の女にモテモテ‥‥というような色気はなくて、健康優良児的な、青春ドラマっぽいさわやかな感じとでもいうのかな。

小柄だけれどなぜかリフトはすごく高く見えるのです。かなりの力持ち?リフトしたまま舞台奥から手前に歩いてきて、何とルルベしたまま片足を45度ぐらいアラベスクしたんですよ。ひゃ~っと思わず声が出てしまいました。ウヴァちゃん(ウヴァーロフ)もリフトしたまま歩いてきたりしますが、長身のウヴァちゃんでなく、小柄でかわいい顔したワシーリエフくんが軽々やってしまうことに何だか感動。

オシポワちゃんも負けてはいません。カスタネットを持ったヴァリエーションもすごい勢いでした。小柄で、見た目の華やかさはそんなにない(顔はかわいい)けれど、とにかくそのキレのある動き、高いジャンプで何回りも大きく見せるタイプの人なんですね。キトリはとても合っていると思います。ブラボーでした

忘れてたけどエスパーダがかっこよかった!シュピレフスキーはうっとりするような長身・美形。でもあれが闘牛士かといえば??なのですが、闘牛士の踊りにしてはキメが甘くて、牛どころか街の踊り子やメルセデスなどの百戦錬磨の濃~いお姉さま方にも到底太刀打ちできないだろう!って、そんな線の細いエスパーダはミスキャストかも?でした。去年のガラではベートーベンの交響曲第7番をバックにモダンを踊って、お顔がとても美しかったので、あ~この人、パートナーを支えているだけじゃもったいない。ソロも見てみたいと思っていたけれど、踊りは、まあ普通にかっこよくマントをさばいていました。でもやっぱり牛にはかなわなそう‥ところどころスカ(決めのところをはずす)があって悲しかった。

1幕は楽しくてあっという間に過ぎたのですが、2幕がちょっと退屈してしまいました。普通は駆け落ちしてジプシーの野営地に逃げ込み、そこでドン・キホーテが風車に突っ込んで失神して夢の場になり、最後に酒場の場面で連れ戻されそうになり、自殺のふりしてハッピーエンド‥‥という展開だと思うけれど、まず酒場のシーンになって、早々と狂言自殺になるのでおやおや‥‥という感じ。酒場のシーンもちょっと退屈した。ずっと速いテンポで来たのにメルセデスの軟体のけぞりが長い~。主役たちはあっちを向いて酒を飲んで談笑中のまま延々と続くまったりとした踊り。。悪くないけれど、次のジプシーのところにも同じようなキャラクターダンスがあったしね。ボリショイはこういうの好きなのかしら。

先にバジルとキトリの結婚が許されちゃったので、このあとジプシーの芝居に興奮してドン・キホーテが風車に突っ込んでいくというのが唐突になって、何かどこにもつながらない感じ。ジプシーの場面にはバジルもキトリも出てこなくて、大体どうしてここにやってきたのかが不明。次の夢の場に持っていくだけの、取ってつけたような場面でした。

夢の場は1幕で興奮しすぎたのか、少し眠くなりました。そんな目で改めて冷静に見ると、このセットは幕だけ。それも骨董品か?というような古色蒼然としたもの。3幕も幕ばっかりのかなりチープな宮殿でした。そういえば1幕は見るのが忙しかったからよく見なかったけど、ごく簡単なつくりで、そんなにきれいじゃなかったと思います。そこいくと去年のミラノスカラ座は1幕のセットだけでもすごかったよね。舞台が狭くなるほどの豪華さの上、ほんとの街の雑踏みたいに乗りきれないほどのエキストラであふれかえっていたんだっけ。それからすればほとんど何もないぐらいの簡素さでした。(だけど、幕に描かれた街は古ぼけて重厚な味を出していた?)

ボリショイといえば豪華なイメージがしたけれど、セットや衣装はちっとも豪華じゃなく、何かソビエト時代を彷彿させるような感じで、あの色彩のマジックのような素晴らしいシュツットガルトの舞台美術を堪能した直後では、何とも言えない悲しさではありました。これでは「白鳥」のほうも思いやられる‥‥?でもその分速いテンポで踊りのスピード感、ダンサーたちの華やかさで見せているわけです。

森の女王はエカテリーナ・シプーリナ、キューピットはアナスタシア・スタシケーヴィチ。そしてオシポワちゃんのドルシネアと、3人並んだところはさすがに華やかでした。森の女王のヴァリはイタフェのないもの。アラベスクの繰り返しが映える、手足が長くて美しい人でした。キューピットはイメージ通りのかわいらしい子。小柄なダンサーが踊る役だけど、オシポワと身長が変わらないので、オシポワもかなり小柄なのでしょうね。姫としては、どうだろう。。ちょっと緊張がゆるんで、ぼーっとしか見ていなかったのか、よく覚えてないけど、 最後のグランジュテで横切るところはさすが!お見事でした。

2幕の終わりに、内側の幕が閉まってから、幕外で倒れているドン・キホーテのところに、サンチョパンサが貴族たちを連れてきて、ドン・キホーテを介抱し、館へ伴っていきます。

3幕はその貴族の館で、ドン・キホーテ一行が客として招かれ、キトリとバジルの結婚式が執り行われるのです。どうして?と思うけど、細かいこと突っ込まないで踊りを楽しむべしってことかな。ストーリーの流れなんてそんなに重要に扱われていないのです。

ヴァリエーションの二人がよかった。第1のクリサノワは勢いがあって元気な踊り、第2のコバヒーゼはなぜか強そうなバレリーナばかりのボリショイの中で、線が細くて優雅な雰囲気があってとても目立っています。顔もかわいい~。

そして、グラン・パは期待通り、すごいものを見せてくれました。アダージョは片手リフトが2回決まり!キトリのヴァリエーションは超高速の音楽にぴたりと合った超高速足技(あのエシャペとパッセを繰り返すところです)にびっくり!それからコーダも最初からやたらテンポが速い演奏なのですが、グランフェッテになってからさらにアクセル全開に!まるで全盛期のニーナのような超高速回転。それもダブルを入れるなんていうものじゃなく、ダブル入りっぱなしというか、もうぐるぐる回っててよくわからない。(だから手拍子なんてこれじゃ入れられないです)びっくりしました。

ワシーリエフくんも負けずに高速回転。ジュテで回るところはひねりが入ったあと、空中でぱっと手足が伸びる(何のこっちゃ?)のがもうすごくて!滞空時間が相当長くないとこんなことはできません。ホントにウルトラC(古っ!)の応酬に見るほうも興奮して熱くなりました。わ~、もう終わっちゃったの、というくらいすごく楽しかったです。

背景は古臭く、セットはボロボロ。ストーリー性も何もないんだけれど、何だか主役二人の金メダル級の技を堪能して満足でした。すごい技というのは、場を盛りあげ、気分を高揚させるものなんですね。カビ臭い舞台美術でも、話の意味わかんなくても全然関係ない!だけど‥一晩寝て起きると、何も残ってないような。シュツットガルトの「オネーギン」があれほど心に残り、そのあと何日も妄想をふくらませて2度おいしいどころか10倍ぐらい楽しんだのに比べると、まあそれだけって、そんなものでした。

ワシーリエフくんは2006年にバレエ学校卒業と書いてあるから、たぶん二十歳そこそこじゃないでしょうか?体型は熊川哲也似‥‥ということは体操選手並みに筋肉付いちゃってスタイルはそんなによくないんだけれど、驚異的な身体能力を見せるにはやっぱりああいう体型になっちゃうんだろうな‥。でも、笑顔がとってもチャーミング。持っている雰囲気がさわやか体育会系だよね~。カーテンコールには黄色い声援がいっぱい飛んでいました。既に親衛隊がいる?バレエ公演でこういうのは私は初めてでした。スター誕生ってところでしょうか。

帰りの楽屋口にもいつになく人が集まっていて‥‥ちょっと野次馬根性が動いたけれど、やっぱり‥‥ワシーリエフくんもオシポワちゃんも、うちの息子とそんなに歳が変わらないのよね。何か先ほど黄色い声援を上げていた子たちの親の年代で、出待ちなんてもう気恥かしくてできないかも。やっぱりニーナやルジマトフみたいな同年代だけにしておこうっと。そう思ったらちょっと淋しくなりました。

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2008年12月 4日 (木)

「オネーギン」というバレエ(続き)

またきょうの○+のご案内メールに笑わせてもらいました。「ザ・カブキ」の得チケのネーミングが「討入りペアシート」というのです その感覚、ある意味すごい。さて、ちょっと友人から指摘を受けたことでお詫びをしなくてはなりません。前に書いたこの「ザ・カブキ」について、私の暴言に東京バレエ団並びにベジャールファンの方が気を悪くされたのではないかと思います。見てもいないくせに申しわけありませんでした。

宣伝文句に「歌舞伎好きの皆様にぜひご覧いただきたい」とあったので、単純に「え~っ?」と思ったのです。ミュージカルやオペラなど洋ものを見る人は免疫があるでしょうが、私の知っている歌舞伎好きの方などは、バレエの男性の写真を見せただけで、「何これ?タイツだけで下半身何もはいてないの?お尻丸出し?見るに堪えない~!」とおっしゃいました。バレエファンが「美しいわ~」と感じるものも、免疫がない方にすれば「討入り」のストーリー以前のことじゃないのかなと。なので、「歌舞伎好きの皆様」が見るにはどうかな~と思っただけなのです。ごめんなさい。

で、その後なぜか食わず嫌いな私もなりゆきで「ザ・カブキ」を見に行くことになりました。12月14日はちょうど「討入り」の日だし、あの長ーい「忠臣蔵」を2時間でやるって、どんなんだろう~?楽しみ!?

では、やっと本題の「オネーギン」に‥‥

1幕(ラーリナ夫人邸の庭)
幕が開くと中央にテーブルがあって、そこで母のラーリナ夫人と乳母、妹のオリガがパーティドレスを仕上げています。タチアーナは寝ころんで本に夢中。ドレスのことなんか見向きもしません。夢見がちな文学少女というところでしょうか。そこにレンスキーがオネーギンを連れてやってきます。鏡をのぞきこんで、そこに写った人が運命の人。オリガを写す鏡の中に婚約者のレンスキーが現れ、二人は最初からもうラブラブ。この世の幸せを一身に謳歌しているような二人なのでした。

タチアーナが覗き込んだ鏡に写ったのは、何と黒づくめのオネーギン。びっくりして母のもとに走って行く内気なタチアーナ。でも、村の青年たちとは違う、この洗練された都会の男に一目で心を奪われてしまいます。オネーギンは幸せいっぱいのレンスキーとは逆に、何か深い悩みを抱えている様子。都会の暮らしに倦んで、親友の住む田舎に気晴らしにやってきたのに、退屈な田舎の雰囲気にもなじめないのです。いい女でもいるかと思って来たのに、くだらない小説を読むガキしかいない。早くも帰りたくなったよってな感じ。タチアーナの本を手にとって、一瞥して返すしぐさ一つでも、何とも高慢な奴なのです。

そうそう、この場面、踊りがとてもよかった。ちょっとコサックダンス風の元気な青年たちの踊り。それから連続してグランジュテする娘たちを支えながら、ペアで1列になって舞台を斜めに横切って走っていくのがとても盛り上がりました。レンスキーとオリガのパ・ド・ドゥはまるで幸せに酔っているかのよう。でも、音楽は哀愁を帯びていて、幸福の絶頂の中に潜む危うさを表していて何だかせつない。オネーギンもタチアーナと踊るのだけれど、儀礼的なちょっと距離のあるパ・ド・ドゥ。タチアーナは十分夢見心地なのだけれど、ふとオネーギンの心がここにはないという現実に戻され、戸惑って立ちつくしてしまう。何かこれだけで、すごくよくできているなあと感動してしまいます。振付と音楽が一体となって心が手に取るようにわかるのです。クランコすごい~!

場面転換は内側の幕と、表の紗幕の二つの間でまた一芝居行われていて、流れるような飽きない構成になってます。帰って行く村の男女。また明日、と離れがたいレンスキーとオリガ。紗幕の外側ではそこに溶け込めないオネーギンの孤独な姿。

(タチアーナの寝室)
再び幕が開くと天井から大きなレースの布がかけられていて、田舎ながら瀟洒な感じの部屋。そうだよね~眠れないよね。小説の中であこがれていた恋、それが突然リアルな姿で現れたのです。机に向かってオネーギンに手紙を書こうとしますが、どう書いていいかわからない。いつしかまどろむタチアーナ。上手奥に大きな鏡があり、その前に立つと自分の姿が写ります。ところが、ふとそこにオネーギンの姿が!

夢の中で鏡の中から現れた愛しい人と踊る、まるで「薔薇の精」みたいですね。ただ、飛び出してきたのは中性的な美しい薔薇の精ではなくて、何か妖しい笑みをたたえた黒づくめの危険なオジサン!(爆)でも、それがまさしく少女のあこがれそのものというか、そういうのわかるような気がします。

夢の中のオネーギンには、昼間のよそよそしい態度はありません。少女の願い通り耳元に何度も優しい言葉をささやきかけ、激しく、情熱的に迫ってきます。それを恥らうこともなく全身で受け止め、舞い上がるような勢いで大胆に彼の腕に飛び込んでいくタチアーナ。何度も繰り返されるスピード感あふれるリフトが、思いがかなった幸福感を余すところなく表現しているのです。このこれでもかというようなパ・ド・ドゥは圧巻でした。(鏡の中へ消えるときのバランキ様の怪しい悪魔的な表情もすごかった!)そんなめくるめくような一瞬から目覚めたあと、タチアーナは一気に手紙を書き上げます。

これが、役作りが面白くて、アマトリアンのタチアーナは本当にうぶな田舎の少女で、多分オネーギンが見たら一瞬で眉をしかめるような(「あたしゎ~めっちゃ好きぃ」みたいな?)稚拙な手紙を書いているんだろうな~?という感じ。それに対してアイシュヴァルトのほうはいかにも賢い文学少女らしい、しっかりした文章を書いているような‥偏見?私は最初に見たアマトリアンの羽が生えたような軽さ、柔らかさ、かわいらしさに感動してしまいました。ほんとに、人生最高の夢だったよね~って。アイシュヴァルトはブレがないかわりに、器械体操みたいな感じ?がしないでもなくて、美しかったけれど、アマトリアンのほうが感情がのっていて好みでした。

2幕(タチアーナの誕生日)
踊る老若男女。その中にはレンスキーもいます。相変わらずオリガにべったり。いいな~狭い田舎のことだから、多分タチアーナがオネーギンにラブレターを書いたことはたちまち知れ渡っているでしょうね。オネーギンにしたら、つまらない手紙をもらって暇な田舎の奴らに話の種にされるなんて我慢がならない。だけど、人々の好奇の目には勝てず、一応儀礼的にタチアーナの手をとって踊ります。でも、人がいなくなると、タチアーナに手紙を突き返し、自分にはその気はないと伝えるのです。

お願い、どうかそんなことはしないで。と泣きそうな目で訴えるタチアーナ。それすらウザいガキとしか思えないのに、またどやどやと人々が入ってくる。再び作り笑いを浮かべて踊るオネーギン。この辺の芝居が本当に見ごたえがありました。誰もいなくなったのを見計らって、オネーギンは言ってもわからんガキんちょに、わざわざ手紙をびりびりと破いてその手に握らせます。なんてひどい男なんだ!

だけど、初日にオネーギンを踊ったイェリネクの解釈では(プログラムによると)オネーギンはちっともひどい男じゃない。むしろ常識的で、30前後の大人が10代の少女と恋愛関係を成就させるのはどう考えても無理。だから理性的にそれをわからせようとしたのだとのこと。うわ~ホント?日本のロリコンオヤジどもに聞かせてやりたい言葉だわ。そのとおりイェリネクのオネーギンは傲慢な態度の反面、ちょっと保護者的になだめるようなところもあったのでした。一方バランキ様(バランキエヴィッチと打つのは大変なので‥)は垢ぬけた都会のプレイボーイ風で、いいか、お前みたいな田舎娘相手にしないんだ、覚えとけ!みたいな、かなり冷やかな視線を浴びせかけていました。

人々の輪に入らず、一人でカードを始めるオネーギン。タチアーナは誕生日を祝う人たちの前でソロを踊りますが、踊っているうちに悲しみに耐えきれなくなってだんだん踊りが乱れて、最後はめちゃめちゃになってきて、オネーギンと目が合った瞬間、いらついたオネーギンがテーブルをばんっ!と叩くのです。一瞬の注目。踊りが終わらないうちに泣きながら消え入るように走り去るタチアーナ。かわいそう~

この辺からどんどんドラマチックに展開していき、もうどこを見ていいかわからない状態に(2回目は、ザイツェフのレンスキーだけしか見ていませんでしたが‥!)キレたオネーギンはあろうことか親友のレンスキーをからかい始めます。きっとあまりにも幸せそうで腹がたったんでしょうね。オリガにちょっかいを出し、一緒に踊り始めます。オリガもよせばいいのにって、オリガだってほんの戯れのつもりだったんでしょう。姉と違って快活でお茶目なオリガは、遊び慣れたオネーギンのエスコートで踊るのが誇らしかったかもしれないし、本気で人々の間を縫って追いかけてくるレンスキーを見るのも楽しかったのかも。

でもとうとう、純粋なレンスキーに限界がきちゃった。姉妹が止めるのもきかずに、オネーギンに手袋を叩きつけてしまったのです。何て冗談が通じない奴なんだ!最初はレンスキーをなだめていたオネーギンもとうとう怒りだし(こういうところでくるくる回るパが効果的!)ついに決闘を受けることに。また二重の幕が閉まり、紗幕の内側は早いフォックストロット?で通り過ぎる何組もの男女。一瞬頭に血が上って決闘を受けてしまい、後悔の念に駆られるオネーギンはうなだれながら紗幕の外を歩いていきます。

(決闘の場)
人気のない淋しい郊外。柔らかな色の衣装から一転して、モスグリーンのような暗い色のマントに身を包んだタチアーナとオリガ。レンスキーを必死で止めようとするのだけれど、一度言いだしてしまったものは引っ込められない。そのくらいプライドの高い理想家肌の青年を傷つけてしまったのです。この場面のちょっと長いレンスキーのソロは、せつせつと後悔の念を表現して泣ける~膝をついて背中を反らせたまま、「ジゼル」のアルブレヒトのようにばたっと倒れちゃうところが痛々しかったです。

そして舞台奥でシルエットの決闘シーン。オネーギンのピストルが火を噴き、倒れるレンスキー。幸福から一転して悲劇のどん底に落ちてしまったのです。幕が閉まる前、動転したオネーギンを見つめるタチアーナの、今までと違った毅然とした強い目が印象的でした。

3幕(サンクトペテルブルク)
時は流れ、放浪の旅から帰ったオネーギンは、グレーミン侯爵邸の舞踏会に現れます。そこで侯爵夫人として美しく時を重ねたタチアーナと再会します。何ということでしょう、今度はオネーギンが恋におちるのです。キューピットは残酷ないたずらをする。

侯爵役は初日のダミアーノ・ペテネッラはあまり印象に残っていない(というか、そこまでよく見る余裕がなかった)けれど、最終日の侯爵はずいぶん老けているな~と思ったらジェイソン・レイリーではないですか。「眠り」で妖艶なカラボスを踊り、私は見ていないけれど別の日に王子もオネーギンも踊り、そして今度はかなり年のいった(50過ぎぐらいの?つくり)侯爵ときた!まるで歌舞伎役者のような変幻自在ぶりにびっくりです。

タチアーナは侯爵とゆったりとした曲で踊りますが、今までの年月、強い恋愛感情はなかったけれど望まれて結婚し、少しずつお互いの理解と愛情を深めあってきたというのがよくわかる静かな幸せに包まれたパ・ド・ドゥでした。ひときわ華やかなサーモンピンクのドレスは、侯爵夫人として内面から磨かれてきたタチアーナをよく表しています。穏やかな包容力のあるレイリーの侯爵もよかった。でも何であそこまで老け役にするのかなあ‥?

(タチアーナの部屋)
思いがけず再会したオネーギンから熱烈なラブレターをもらい、困惑するタチアーナ。ここの場面「手紙のパ・ド・ドゥ」は、去年ルグリ&ルディエールの黄金ペアで情感たっぷりに見せてもらいました。でも、全幕を知らなかったので「こんなものか」だったのですけど、全幕ではオネーギンが来る前に侯爵が来るんですよね。この場面があったので、とてもよく心情が理解できました。

侯爵は何かの任務につくのか、重厚な軍服のような衣装を着ています。出かける前に妻の部屋へ来たのでしょう。でも、突然タチアーナは不安になり「お願い、行かないで。一人にしないで」と言っているよう。侯爵は行きかけたのをまた戻って、優しくタチアーナをなだめるようにしばし愛情こめて踊ります。この侯爵の包容力。こんなシーンがあったから、次に続くというのがよくわかりました。悲しい事件を乗り越え、年月をかけて築き上げてきた今の暖かい暮らし。侯爵夫人としての地位よりもずっと大切なものがそこにあったことがよくわかります。

侯爵が去った後、悲痛な形相でオネーギンが登場します。オネーギンは今までのことをわび、激しく愛を訴えます。最初は拒んでいたタチアーナも、少女の頃の甘い思い出がよみがえり、心が揺れてしまいます。アマトリアンのタチアーナは、ここでまた一瞬少女のような顔になってしまうのよね~。この人もレイリー同様変幻自在な人!もう、昔憧れていた人にこんなに激しく迫られたらグラグラになっちゃうわ。それを必死で押さえて踊る、本当に何というパ・ド・ドゥ!あ~、これを見てからルグリ&ルディエールを見たかった!

理性もプライドもかなぐり捨てて追いすがるオネーギン。(ある意味この人は自分に正直な人だったのかな?ホントにレンスキーと対称的になっていたんだ)それを背中で引きずるように、重い足取りで振り切ろうとするところや、床に崩れ落ちた姿勢からいきなり背中をそらしたジャンプをするところなど、タチアーナの引き裂かれるような苦しい心情が余すところなく表現されていて、圧巻でした。

タチアーナはオネーギンの手紙を、かつて自分の手紙をビリビリと破かれたように破り、出て行って!と弱々しくドアを指差します。なおもすがりつくオネーギンを振り払い、2度目はきっぱりと力強く。絶望とともに走り去るオネーギン。タチアーナはすぐにあとを追ってドアのところまで走るけれど、外までは追えず、しばらく行きつ戻りつして、最後は泣きながら立ち尽くすのでした。ここまでが息をつく間もないほどドラマチックに展開して、最後はもう口を開けたまま、すごいもの見ちゃったという感じでした。2回目も同じでした。踊りが感情を表現する、いや、それ以上のものをダンサーの身体に語らせてしまうのにただただ感動してしまいました。

予定外だったけれど、3回のうち2回を見ることができて本当によかったです。次に見られるのはいつかわからないけれど、また絶対見たい演目になりました。

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