バレエ大好き2009後半

2009年12月29日 (火)

舞台鑑賞の記録

バレエ鑑賞も一段落。この間のレニ国の「くるみ」は予定外でしたが、それで年内はおしまい。感想を珍しく翌日に書いたかと思ったら、ひどく書き過ぎてちょっと反省です。見てすぐ書くなんて、普通ならよほどインパクトがあったから‥?と思ってしまいますがあの有様でも、レニ国は好きなので、また懲りずに見に行きます

そうこうしているうちにもう年末です。今年もいろんな舞台を見ました。数えてみたらバレエが32公演、歌舞伎が11公演、計(バレエと歌舞伎の合計なんてほとんど意味がないけど)43公演でした。昨年は確か計40公演だったと思います。すごいバレエファンの方は大体年間バレエだけで40公演~50公演見るそうですから、私は歌舞伎をバレエに置きかえればそのくらい劇場に出かけていることになって、お~すごいな、という感じになってきましたね。

あと、感想も多分バレエはこの32公演分、全部書いていると思います。時期を逃してとんちんかんなことを書いていることも多いけど、我ながらよく頑張りました。

歌舞伎のほうはあまり書けなくて‥‥結局、3月の「元禄忠臣蔵」の通し上演、4月の歌舞伎座の「伽羅先代萩」、5月の京都南座「小笠原騒動」、11月の歌舞伎座「仮名手本忠臣蔵」昼の部、そして12月の国立劇場「頼朝の死」その他の5回分は感想が書けませんでした。何か忙しいとバレエのほうが優先で、そのうちに見たことすら忘れてしまうのよね。来年は歌舞伎も感想をちゃんと書こう‥‥。

でも、バレエは、いろんな人がブログに感想を書いているけれど、比較的何を言っても寛容な世界ですよね?なんて、他の人の感想とかをそんなにあちこち巡っているわけではないのですが、皆さん結構自由に思ったことを書いているように思います。私にしても誰かが、例えば大好きなルジマトフのことをひどく書いていたとしても、まあ人それぞれだしそういう見方もあるのかな?私はそうは思わないけど‥‥という受け止め方をすると思うけれど、どうも歌舞伎というのは違うみたい。いろいろうるさ型のマニアもいそうだし、熱烈な役者さんのファンもいるし、うっかり変なことは書けない感じがします。もしかしたら素人の感想なんて甘いものを許さない世界かもしれません。だからちょっと書きにくいのです。でも、ほんの初心者の備忘録ということで許してもらいましょう。

では、今年の一番は何か‥‥というと難しいけれど、バレエではルジマトフの出演した1月の「ミハイロフスキー・ガラ」と夏の「レニングラード国立バレエとサンクトペテルブルク~の」という長い名前の公演はとりあえず別格です もう無条件降伏です。ルジマトフの出る公演ならたとえ九州でも北海道でもついて行こうと思っているくらいですから。残念ながらもう地方公演はやりそうにないですけどね。

めちゃくちゃ感動した!といえば1月と8月のスターダンサーズバレエ団の「シンデレラ」、それから11月のサンクトペテルブルク・アカデミー・バレエの「くるみ割り人形」が泣けた双璧です。ほんとに、ストーリーがよくできていてすごくよかった。何度でも見たい素敵な作品でした。

意外に満足度が高かったのが新国立劇場の「ライモンダ」「コッペリア」。新国の劇場は場所も雰囲気もよく、見やすいですしね。なにしろザハロワやロホが出るのにチケットが安い!満足度はいやがうえにも上がるというものです。(ずいぶん志の低い満足だこと‥

あと、こういう世界好きだな~と思ったのはデンマーク・ロイヤル・バレエの「ロミオとジュリエット」。ノイマイヤーの視覚による内面の描写に目からうろこ。面白かったです。チケットがすごく高いことやチラシの写真が不気味ということにひるんで、2月のハンブルク・バレエを見逃してしまったのが悔やまれます。

そして手放しで楽しかったのが「奇才コルプの世界」とNBAバレエ団の「ゴールデン・ガラ」「バレエフェスAプロ」(Aプロしか見ていませんから)などでした。

歌舞伎でことし一番の収穫は「新歌舞伎」の面白さに目覚めたこと。あの格調高い絶妙なセリフ回しの世界、いいですねえ~ ただ、難解なところもあって、こんなところにやすやすと感想が書けるようなものではありません それでも3月の真山青果の「元禄忠臣蔵」にすごく感動したし、また今月初めに見た国立劇場の真山青果作「頼朝の死」と、岡本綺堂作「修善寺物語」はどちらも味わい深い作品でした。こういう役者さんの技量によるシリアスもの、私は意外に好きだったんですね。

今まで私はこの「新歌舞伎」とは多分対極の、猿之助ワールドのほうが好きだったのですが、今年見た「獨道中五十三驛」などは面白いけれど、面白さの内容があまりに低俗で心に響くものがなかったことに愕然としました。ああいうシャカリキになってのばかばかしい早変わりなどは、やっぱり猿之助さんがやってこそのものだったのかな。右近が早変わりしたってどうというものでもなかった。。。その早変わりといえば‥‥年明けすぐに新橋演舞場で「伊達の十役」を意外にも海老蔵が演じるそうですが、海老蔵ぐらいのスターがやるなら面白いかもしれません。(が、やっぱり御曹司が舞台裏を走り回ってやるようなものだろうか‥?)澤潟ファミリーは本当に皆さん大好きなのですが、あの世界でやっていくことの難しさを感じました。

新たにときめいた人‥‥穴のあくほど見ていたい人・ダンサー編は、昨年はバーミンガム・ロイヤルのツァオ・チーとか、シュツットガルト・バレエのアリシア・アマトリアンなどがいたけれど、ことしは特に‥‥。でも、前から気になっていたカール・パケットや、大好きなコジョカル、オブラスツォーワをまた見れて幸せでした。

でもやっぱり、一点集中でまばたきするのも惜しいくらい見入ってしまう、どうしようもなく惹きつけられるダンサーというのはいまだにルジマトフだけです。それがことし10月に芸術監督を辞し、また踊りに専念すると‥‥ ということは日本でも見る機会が増えるのかな?だとしたらこんなにうれしいことはありません。年明け早々の「最後のソロル」は、本当に本当に楽しみにしています。これからまた、あきらめていた「最後のアルブレヒト」「最後のジークフリート」などがあわよくば見られますように!!

いいわ~と思う役者さん・歌舞伎編では、昨年に引き続き仁左さまでした。いまさらという感じもしますが、何をやっても決まりますねぇ。濃い演技から軽妙な演技まで変幻自在。3月の綱豊卿も、4月の細川公も、11月の由良様もめちゃめちゃ素敵でした。それにことしは時代劇専門チャンネルで、片岡孝夫時代の冷たく美しい「眠狂四郎」を見たことも気になる人になった一因。それでも「ファン」というのはおこがましいのでやめておきます。

歌舞伎では私は笑也さんと段治郎さんのファンを公言しております。(爆!)澤潟屋では、ことしは段治郎さんがあまり出演されなかったのが残念でした。笑也さんの立役がまた意外にカッコよく、新たな魅力を発見したような気がします。

4月の「伽羅先代萩」で玉三郎が演じた政岡にはびっくりしました。あ~緻密だなあと。ここまでやるかと。若君の乳母という顔と、母親の顔をあれほどの落差で演じ分ける技量。ああいうのがプロの技なんですね。玉さまといえば、「天守物語」では妖しく耽美な大人のおとぎ話の世界も堪能させてもらいました。今まで知らない世界だったけれど、さすがだなあと。これも、まったく「今さら!」の発見ですね そう考えると、歌舞伎の鑑賞では少し進歩があったかもしれません。

来年早々また「とことんルジマトフセット」から始まる舞台鑑賞。来年は息子の受験が終わるまで落ち着かない状態なので、冬シーズンに見る公演は少ないかもしれないけれど、春からはまたいろんな舞台が待っていることでしょう。また、興味の赴くまま、お金の続くまま(私ったらそういえば、ここ数年まともな洋服一つ、バッグ一つ買ってないわ。本当にしょうもないおばさんです)バレエと歌舞伎にいそしもうと思います。

この一年、私のだらだらと長い、ばかばかしい舞台の感想に、少しでもお付き合いいただいた方がいらっしゃいましたら、申しわけございません、また来年もつまらないこといっぱい書くと思います。そしてたまには、バカな話ばかり書くなと、コメント欄で一喝していただけたらと。これからも、どうぞよろしくお願いいたします

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2009年12月26日 (土)

レニ国「くるみ割り人形」(‥‥辛口御免)

マリインスキーの余韻が残る中、しばらく忙しさにかまけて更新できませんでしたが、そうこうするうちにいよいよ年末年始の風物詩、レニングラード国立バレエがやってきましたね。ことしはルジマトフの「バヤデルカ」もあるし、とても楽しみにしていました。その最初の演目が、去年は上演しなかった「くるみ割り人形」です。

前にもちらっと書いたと思うけれど、私は昔レニ国の「くるみ」を一度だけ見て、それっきり見ていませんでした。ゲストが出る演目でもないし、ほとんど覚えてないほど印象にないし、何しろトラウマがあったから。

あれは2000年の冬でした。クリスマスプレゼントと思って奮発して一家4人分のチケット買ったのに、ダンナと息子は爆睡(超もったいない)するし、一緒に行った友達はつまらないと言って怒りだすし、両家の子供たちは騒ぐし、とにかく家族同士で見に行くというのはもうあれが最初で最後、散々な思い出でした。

でも、最近ちょっと見方が変わって、なぜか「ロミジュリ」よりも「くるみ割り人形」で泣けるワタシになったので、たまにはいいかなと思ってついに9年目にして封印を破り、再びレニ国の「くるみ割り人形」を見ることになりました。

というのも、この間 wowow で放送された「草刈民代最後のジゼル」を見ていたら、あの中でペザントを踊っていたヤパーロワ&ヤフニュークが本当にキラキラして見えるくらいかわいかったのです。ちょうど優待チケットも出ていたので、この二人が出るならと急遽出かけたわけです。(あの放送、とてもよかったですよ。あとで機会があったらまた感想も書きたいと思います。)

会場のオーチャードホールは、かなり空席がありました。脇のほうや後ろのほうは仕方ないにしても、ど真ん中のいいところが櫛の歯が欠けたみたいに空席になっています。得チケなんてほんの端っこのところのちょっとしかなかったのに‥‥他のチケットは一体どこに?K社は売り方下手なんじゃないでしょうか?

その端っこのところがまた、得チケだからかもしれませんが、後ろにひどい親子がいて悩まされました。音楽が始まってもずっとしゃべっているし、何より子供がちゃんと座っていなくて、脇の空席の所をちょろちょろ行ったり来たり。だけど親は全然平気な顔!あげく、私の隣の席(空席)の背もたれにもたれかかって、人の耳元でくちゃくちゃガムをかむんですよ!マナーとして、会場でガムをかむなんて最低です。しかも一幕の間ずっとでした。思わず注意しようと思いましたが、それが原因で私のように「くるみ割り人形」がトラウマになってしまっても嫌だし‥‥。で、後ろを向いて親子を睨みつけたら‥‥少しおしゃべりが減った程度でした 

私もかつては未就学児お断りの公演に幼稚園児を連れていったりした、ルールを守れないいけない母親でしたが、少なくとも娘はおとなしく座って見ていましたよ。そうでなきゃ連れて行ったりしない。いくら一番端で空席がたくさんあっても立ち歩いたり、ましてやくちゃくちゃ音をたてたりするのは言語道断。そんな行儀の悪いガキを芸術鑑賞の場に連れてくるな!

で、まったく集中できなかったせいか、やっぱり何の感動もありませんでした。先月見たサンクトペテルブルク・アカデミー・バレエの「くるみ」は、衣装も舞台セットもチープだったし、後ろにおしゃべりなおばさん連中までいたにも関わらず内容は最高によくて、マーシャと王子の演技に涙が出るほど感動したのに。「くるみ」というお話を上演するというより、ただただ踊りを次々にこなせばいいと思っているんじゃない?というくらい平板で面白みがなくて、はっきり言って今まで見た中で一番ダサくて退屈な「くるみ割り人形」でした。日本でも「くるみ」は、この時期それこそいろんなバレエ団が毎年独自の趣向を凝らして工夫に工夫を重ね、競って上演する演目です。それを10年一日のごとく、前々芸監の置きみやげみたいなのをだらだら上演していたんですねえ。あれじゃ得チケだって高い。あのとき「一体この連中はほかのバレエ団のものを見たことがあるのか?」と友人が怒ったのも今になってわかるような気がしました。

衣装も背景もあの頃とほとんど変わっていないと思いますが、それはとてもかわいくて悪くないんですよ。キエフバレエのとんでもなく悪趣味な衣装に比べたら100倍もいい。だけど、キエフの「くるみ」は、倒れたくるみ割り人形が王子に変わったところで、たとえ前髪の後退した王子だったとしても(ごめん!)あそこで一番盛り上がって泣けたのです。それが‥‥ちっとも泣けない変身シーン。別にドロッセルマイヤーが怪しい奴でも、等身大くるみ割り人形がヘンテコでもそれはどうってことなかった。あそこでくるみ割り人形をマーシャがとても大事に思うことで奇跡が起きて、美しい王子様に変身し、夢のようなひと時がやってくる。そのことに感動するわけなんですよ。

それが‥‥なぜかマーシャのほうが倒れている間に、くるみ割り人形と王子が背中合わせになって入れ替わるだけ。何の感動もありませんでした。そのあとのパ・ド・ドゥは素敵だったけれど、雪のシーンになるところで何でまたくるみ割り人形に戻っちゃうの??雪のシーンで、マーシャとくるみ割り人形は楽しそうに遊びます。このくるみ割り人形はかわいいという前提なのかもしれないけど、それはちょっとおかしい。くるみ割り人形って、マーシャ以外の子は見向きもしない、醜い変な人形って設定でないと、マーシャが選ばれて夢の国に行く意味がわからない。つまり、著しく物語性に欠ける作品なんですね。

雪のコールドはとても美しくてよかったです。雪は降らなかったけど。あと、ネズミ軍団もタキシードを着たゴキブリみたいだったけど、赤い手袋が印象的で面白かったし、兵隊さんたちも悪くなかった。でも、やっぱりくるみ割り人形が負けそうになって、マーシャがスリッパを投げるまでの(ろうそくを投げてましたよ。危ないです!)ハラハラが頂点に達する気持ちの高まりが重要だと思うのですが‥‥それもなかったのは残念です。

2幕の民族衣装はどれも素敵でした。パストラル(葦笛)やトレパックの衣装が特にかわいかったし、踊りもよかった。だけど、あのみんなが何度もお手々つないでつながって出てくるのは幼稚園じゃあるまいし、もうよしてと言いたい。それから、花のワルツのカツラ軍団にも閉口。カツラといえば、1幕からほとんどカツラだらけ。普通「くるみ」は他のバレエに比べて新しい時代(19世紀~20世紀?)を想定しているようだけれど、これではまるで18世紀以前だわ。一番残念だったのは王子役のヤフニュークです。せっかくのイケメンが白カツラで台無しなの 何で~!?

花のワルツは見慣れたソリストの方々がたくさん出ていました。ステパノワ、プハチョフ、マスロボエフ、モロゾフ、あと一昨年から注目してたコリパエフ、去年初めて認識したカミロワ、エリマコワ。だけどみんなカツラ、カツラ!

そしてグラン・パ・ド・ドゥ。アダージョはマリインスキー(レジュニナが踊っているDVD)と似たような、王子のほかに4人の男性が出てくるヴァージョン。でも、振りは違います。反り返って両脚を頭の上にあげるシャチホコリフト!出たぁ~!そしてもう一発横一直線開脚リフト!一体どこがどういいと思ってああいう振付になっているんでしょうね?踊っているヤパーロワはとてもかわいいのに、理解に苦しみます。

金平糖のヴァリエーションはとっても可憐 途中ちょっと滑ったところがあって、そのあと少し笑顔が消えていたけれど、とても音楽的で、きれいな音がこぼれ出てくるような、丁寧で軽やかな踊りでした。これだけがこの日の収穫だったかな。そう、ヤパーロワは表情豊かでいい演技をしていたんですよ。だけどそれを見せる演出がない。ヤフニュークともとても息があって、よいパ・ド・ドゥを踊っていたのに、二人の心が通い合って、次第に高まっていくような見せ方をしていない。それがとても残念でした。

いや、あのサンクトペテルブルク・アカデミー・バレエの「くるみ」がよすぎたんですね。あんなにドラマチックな「くるみ」は見たことがなかった。あの時の感想を読み返しただけでも涙が出ちゃいます。くるみ割り人形に変えられてしまってからっぽだった心に、まるで愛がしみこんでいくように、少しずつ、少しずつ、踊りながら人間らしくなってくる王子様。あんな素敵な王子様も見たことがありません。そして心が愛で満たされたかと思った時、すぐに別れのときがやってくる。でも、最後にはちゃんと、今度は王子様ではないけれど、もっと身近な存在になって再会するのです。あれを演出したペトゥホフさん?って天才!また機会があれば何度でも見たいです。ほんと、こっちこそ毎年来てほしいですよ。

でも、あれを見たからといって他のがことさら見劣りするというわけでもなく、そのあと11月に発売されたDVDで見たサンフランシスコ・バレエの「くるみ」もよかったし、もちろん東京バレエ団のコジョカルの「くるみ」だって素晴らしかったです。私もついに(年のせいで?)たかが「くるみ」でうるうるしちゃう人になったわ(「ロミジュリ」のような大悲劇でなくてもという意味です)って思っていたけれど、このレニ国の「くるみ」はトラウマ云々を差し引いても、ちっとも泣けませんでした。

ミハイロフスキー劇場のHPを見ると、12月の後半はほとんど連日「くるみ割り人形」を上演しています。写真も出ていて「あれ?新しいヴァージョン?」と思ったけれどそうではなく、夏公演にやってきたサンクトペテルブルク・コンセルヴァトワール・バレエが、日本公演に行ったレニ国のかわりにここで「くるみ」を上演していたんですね。(あたりまえだけど他のを知らないわけじゃないんだ)ルジマトフもアンタッチャブルだったこのボヤルチコフ版「くるみ割り人形」‥‥そろそろ何とかしたほうが、この空席も埋まると思うのですが。

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2009年12月25日 (金)

今さら‥‥「イワンと仔馬」

あれからだいぶ時間が経ってしまったし、オールスターガラについて先に書いてしまったので、もう今となっては書きづらいなあ‥‥と思いながら。今さら、もう忘れかけている「イワンと仔馬」の覚書。

今回のマリインスキー公演は、最初に来日メンバーや演目、主演ペアなどが発表されたときは自分的には全く食指が動かなかったのだけれど、結局「白鳥」「眠り」「イワンと仔馬」「ガラ」と、全部一通り見てしまいました。ガラでのめちゃくちゃな配役や演目選びなど、一部う~ん?なところもあったけれど、やっぱりマリインスキーはマリインスキー。舞台の華麗さ、衣装の美しさ、そして誰が主役といってもおかしくないようなエレガントでレベルの高いダンサーたちなど、さすがと思うところもたくさんありました。終わってみればやっぱり‥‥あ~楽しかった~!!バレエってほんとにいいものですねえ。

「イワンと仔馬」はそんなマリインスキーのイメージとはまた全然違った異色の作品でした。舞台はいたって簡素で、まるで北欧のおもちゃみたいなヴィヴィッドカラーの、単純な形の舞台装置。いや、舞台装置といっても王様のお立ち台みたいな黄色の玉座?と、黄緑色の長椅子兼ベッド。背景の大きな月。そして最後に出てくる透明なアクリル板の水槽ぐらい。

そして、衣装も面白い。王様は赤いお城?を描いたサンタクロースのような衣装で、王冠のかわりにとんがり帽子をかぶったギャグ漫画調。悪役の侍従は全身黒で、胸に大きな×印と、その下には赤丸。途中出てくるジプシーたちは大きな顔をプリントしたビックTシャツを着たヒッピー風だし、海の中の人々はピタッとしたレオタードに、人の顔が逆さまにプリントされている不気味ないでたちでぎょっとしました。およそマリインスキーらしからぬ、一体これは何?

≪第1幕≫
舞台真ん中に一つだけ赤いついたてがあって、それが家を表しているのか?家の中では白髪の父親とイワン、二人の兄が何やら言い合っています。父親と兄はまるで日本の神話に出てくる白の貫頭衣みたいな服(脇にグラデーションで色が入ってはいるけれど)を着ているけれど、イワンは膝までの水泳パンツみたいなので上半身は裸。お父さんとお兄さんたちの会話にのけ者にされているし、そのあとやってきた女の子たちにも相手にされないところを見ると、イワンはまだ子供なのか、あるいはちょっと頭が弱い?のか、そんな感じ。

お父さんが麦を刈りに行くと畑が荒らされていてさあ大変。兄二人にその犯人を突きとめるよう見張りに行かせるのだけれど、兄たちは何だか嫌そう。そこでイワンが勇んで畑に出かけるのでした。畑には大きな二頭の馬と雌馬がいて‥‥イワンは雌馬を捕まえます。馬たちはまるで西部劇のカウボーイみたいな格好なのが面白い。雌馬は大きな馬と仔馬をあげるから自由にしてと頼みます。雌馬のコンダウーロワがシャープな美人でちょっとコケティッシュ。そして何と言っても仔馬役のペトロフが超かわいくてペットにしたいくらいでした。

そのあと、火の鳥たちがやってきて、イワンがそれを追いかけている間に、大きな馬はお兄さんたちに持って行かれちゃう。この火の鳥たちのエネルギッシュな踊りと、真っ赤なツンツンヘアー、ペイントした顔、白地にギザギザに赤の入った鮮やかな衣装も印象的でした。

町の広場?のようなところで緑色の縦縞のパジャマみたいな衣装の男女が踊っています。そこへコックさん?みたいな白い長い帽子の、ヒゲの長い人たちがやってきます。緑色は市民?長いヒゲは王様の家臣?そして王様は黄色の玉座に立ったままお出まし。その玉座をとんがり帽子をかぶった侍従が重そうに押しています。王様は大きな馬が気にいって手に入れようとしますが、お兄さんたちの手に負える馬ではありません。そこにイワンが現れて馬を手なずけ、王様に渡す代わりに、侍従の帽子が欲しいといいます。王様は侍従の帽子をとってあっさりイワンに渡してしまいます。

イワンは単に帽子をもらって喜んだだけですが、その帽子は王様の侍従の職権を表すものだったみたいで、役を下ろされてしまった侍従は大いに憤慨します。この侍従がまたいかにも悪そうで、コミカルで、演技過多で面白かったです。バイムラードフは背も高くイケメンなのにこんなおかしな役もはまるんですね。

王様がまた子供みたいでおバカ。女官たち?‥‥といっても地味なセーターとスカート姿に、マチコ巻きのように頭から顔をスカーフで覆っている女性たちに世話を焼かれ、食事はスプーンで食べさせてもらって、寝るときはお話まで読んでもらうんですよ。年寄りのようなメイクと動作だけれど、まるでお子ちゃま。王様を演じているイワーノフは小柄だけれど確か「白鳥」の道化などもやるテクニシャンでしたよね。あまり踊らない役でちょっともったいない‥。

侍従はイワンの持っている火の鳥の羽根を王様に見せます。すると不思議なことに火の鳥たちの幻影が現れ、その中に美しい姫君の姿も。王様は一目でこの姫君が気に入り、侍従に探して連れてくるように命令しますが、意地悪な侍従はそれをそのままイワンに命じます。さあ大変、そんな見たこともない姫君をどうやって探せばいいのか?でも、仔馬に大丈夫!と言われて旅に出ます。

≪第2幕≫
火の鳥の中に、おさげ髪の美しい姫君を見つけたイワン。この姫君はガキっぽいイワンが気に入った様子。かわいい仔馬ちゃんと一緒に3人で踊るところがほほえましい。テリョーシキナは姫キャラではないと思うのだけれど、こうういうお茶目で気が強そうな女の子の役ははまっていると思います。ロブーヒンもちょっと頭の弱そうな、コミカルな雰囲気があってよかったです。(でも、あとでYou Tubeの動画を見たら、同じ役をソーモワ&シャクリャローフが踊っていました。この二人のかわいらしいこと!やっぱりこのかわいさにはかなわないかな

踊りは、こういう特に見せ場という見せ場のない振付だから見た目はそんなにわからないけれど、けっこう大変な振りが随所にあって、それを演技がとどこおらないように平気な顔で踊らなきゃいけない。テリョーシキナもロブーヒンも、それがこれ見よがしでなく、ごく自然に演じられていました。また仔馬ちゃんのペトロフも、新人ということだけれど、ロブーヒンと同じ振りを踊るところなど、負けないくらいしっかりこなしていました。一緒に行った友人などは、マッチョなロブーヒンより、彼のほうが軽くて柔軟性があっていいなんて言っていましたよ

姫君は踊っている途中に眠くなって寝てしまう‥‥それを仔馬とイワンが「今だ!」とばかりに二人で重そうに抱えて運んで行くのがまたユーモラスでした。ずいぶんおおらかなお姫様なんだ。

王様の所に戻ると王様は大喜び。すぐに姫君に指輪を渡してプロポーズをしますが、姫君は海の中にあるという特別な指輪でなきゃいやだと言います。またも王様は侍従に探してくるように命じ、侍従はイワンに命令します。そんな海の中まで行けないよ‥‥「いやいや大丈夫、僕に任せて!」‥‥こんな仔馬、一家に一頭ほしいですね。

海の中は、最初に書いたような不気味なレオタード姿の男女が変な動きをしています‥‥男性も同じ長い薄物のスカートをはいて、同じように顔にペイントをしていて青ざめた?ような顔。首から下に逆さまに顔が描かれているのも不気味。ここは確かプリセツカヤの映像でも、わけわからないほど不気味だったような‥‥。群舞の人たちが一体化して、一つの大きなワカメとかイソギンチャクみたいな動きをしていたけれど、それに近い雰囲気がありました。

海の女王のコンダウーロワは本当にきれいで威厳がありました。雌馬と二役ですが、それぞれの役をうまく演じ分けていました。イワンが困っていると、海の女王が海底の人々に命じて、指輪を探してきてくれました。

お城では、王様と姫君がダンスをしています。やんちゃな姫君は王様をからかっているみたい。王様は年なのですぐに疲れてしまって、姫君は面白くなさそう。そこへイワンが帰ってきます。とたんに生き生きと楽しそうになる姫君。でも、王様は姫君と結婚するという‥‥その辺ちょっと忘れてしまいましたが、姫君が「結婚するのはもっと若い人じゃなきゃ嫌」といったので、若返るために熱湯のお風呂?‥‥‥というより、出てきたのは水槽みたいなものでしたが、それに入ろうとします。でも、やっぱり怖い。侍従は試しにイワンにやらせてみようと言います。うわぁ~また?今度こそもうダメ‥‥でも仔馬はまた「大丈夫、僕に任せて!」

イワンはボコボコと泡が出ているアクリル板の水槽に飛び込みます。すると‥‥‥。

透明な水槽の中で、イワンの生お着替えシーン!それも、汗で衣装が貼り付いているからなかなか脱ぎ着が大変。けっこう時間がかかりましたが、水槽から飛び出してきたイワンにはみんなびっくり。あのちょっと間抜けな田舎くさいガキんちょが、立派な王子様になっているではありませんか。

イワンでさえこんなに立派になったのだからと、王様も勇んで飛び込みます。だけど今度は仔馬の魔法はなし‥‥!かわいそうに、王様は水槽の中で悶えたかと思うと、壁にべたっと顔をつけたまま動かなくなってしまいました。透明な水槽の中で着替えるところが見えるという趣向はコミカルで面白かったけれど、この王様が死んじゃったところも見せて、しかもそのあと幕が閉まるまで確かずっとそのまんまだったんですよね。何かとても残酷でかわいそうでした。王様が娘のような姫君に言い寄るのは無茶だけど、ここまでやられちゃうとまた印象が違う。何でこんな死に方しなくちゃいけないの?年取ってて何が悪い!って‥‥。

だけど、これはとても明るいお話なのです。王様は死んでしまったけど‥‥イワンは立派で賢そうな王子様になったし、姫君も大喜びなので、人々はイワンを新しい王様として迎えるのでした。めでたしめでたし(!?)

ざっとこんなお話でした。昔のプリセツカヤのビデオを見ていたので、内容はとてもよくわかりましたが、こんなノーテンキなお話が「ロシアらしいお話」なのかしら?考えてみれば日本の昔話でもよくありますよね。男の三兄弟がいるとすると、末っ子が一番賢かったりして、最後はいつも末っ子がいい目を見る。それは昔は三男坊ともなると家督も継げず、財産ももらえなかったから、せめてお話では‥‥ということらしいのですが。外国のお話でも「長靴をはいた猫」なんかは、猫しか相続するものがなかった三男坊が、その猫に助けられて一番出世するんですよね。

このお話では、仔馬に助けられることも多かったけれど、姫君の存在もとても大きいと思います。ちょっと足りなくて、親からも兄弟からものけものにされ、田舎の女の子たちにさえ相手にされなかったイワンなのに、姫君は無邪気に遊ぶうち、イワンの純粋で欲のない心を見てイワンを好きになるのです。イワンも姫君のくもりのない目によってそのよさが引き出され、最後には外見まで見違えるほど磨かれて立派になっていく。煮えたぎるお風呂は、そういう象徴的なものだったのかなと思ったりしました。

いまさら‥‥という感じでしたが、備忘録として書きました。

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2009年12月17日 (木)

マリインスキー「オールスター・ガラ」(11日)その2

前回の続きです。

≪第3部「海賊」組曲≫
「海賊」のハイライト集。華やぎの園というんだっけ?3幕のパシャの夢の中だったり、ハーレムだったりする場面です。でも、この場面、華やかだけれど私は苦手で、眠くなるんですよね。今回もついうとうとしてしまいました。3人のオダリスクの踊り、メドーラとギュリナーラがコールドと一緒に踊る場面と、それに2幕のパ・ド・トロワが付いています。ことし1月のミハイロフスキーガラも、これより短かったけれどこんな感じでした。(あのときは何より、観客の度肝を抜く大サプライズがありましたねえ思い出すたびドキドキです)

何といってもうれしかったのはギュリナーラをオブラスツォーワが踊ったこと。もともとキャスティングされていたコレゴワは、一昨年レニ国のゲストで来たファニーフェイスの子でしたよね。確か手足が長くて、柔軟で、いかにも今のマリインスキー的なバレリーナだったように記憶しています。何でもご家族に不幸があったとか。今回は残念でした。そしてオブラスツォーワは、見せ場は少しだけでしたが、やはりひときわ愛らしさを振りまいていました。

メドーラはテリョーシキナ。「イワンと仔馬」で見たとおり、テクニックに強く、バランスも抜群で、きりっとした感じのバレリーナです。でも、私としてはあまりときめかないタイプかなあ。コーダでダブルを何回入れたとか、すごかったけれど忘れてしまって‥‥こうもたてつづけに見ていると、技術系ではちょっとやそっとでは驚かなくなってしまってる。まずいです

コンラッドはコルスンツェフ。ロパートキナの「白鳥」のDVDで王子を演じているおなじみの人ですが、もしかして生で見るのは初めてかもしれません。ソフトで優しそうな雰囲気で、とてもワイルドな海賊の集団を束ねているようには見えませんでしたが。コンラッドの踊りも、前に見たゴメスみたいにこれ見よがしなくらい得意げに踊ってほしかったような。首領なんだから。やっぱりこの人は基本ノーブルなんですね。どこかぬぼーっと見えるのが損なところでしょうか。前日は「シェエラザード」の金の奴隷を踊ったそうですが、ちょっと想像がつかないきっとロパ様にお仕えする番犬のような、従順な奴隷だったのでは??(勝手なこと言ってます)

そしてシャクリャローフのアリ!!もう踊り的にはみんなルジマトフを超えていると思います。だけど、役の捉え方というか、そういうものの違いはどうしょうもない。シャクリャローフくんは奴隷じゃなくてまるで「お小姓」だわ‥‥(またまた勝手なこと言ってます)笑顔が幼くてかわいすぎる。7月に見た西島アリの満面の笑みを思い出してしまいました。あそこまで「見て見て!僕ってかっこいいでしょう~!」というイケメンオーラは出していなかったけれど、何でこの踊りでニコニコうれしそうに笑うかねえ~。アリはコンラッドの奴隷。メドーラはご主人様の女。そして、アリは淡い思いを心の底に秘めながら、コンラッドに命じられるままうやうやしくメドーラに接するのが本来の姿じゃないでしょうか。パ・ド・トロワなんだから。

単独ではパ・ド・ドゥとして踊られることがほとんどで、そうなると「俺様の女」という感じで踊る人が多いですが、ルジマトフはパ・ド・ドゥでも(実は意外だけど、私はパ・ド・ドゥのほうは映像でしか見たことがないのです)感情を押し殺した「奴隷」になりきっていたのよね‥‥(いちいちすみません、バカで

どうも現代っ子ダンサーたちは「奴隷」というものがわからないように思います。「番犬」と奴隷は違うし、「お小姓」と奴隷も違うんだよ~!背中に哀愁がなきゃいけないの。そして内に秘めた炎のようなエロティシズムがなきゃ‥‥‥今回たまたまルジマトフの代表的なレパートリーである「シェエラザード」と「海賊」が入っていたことで、私もこんなに余計なことばかり書いてしまいました。ちっとも感想になっていませんね。

最後のカーテンコールは3部だけでなく今までの出演者が全員出てきて、上からおびただしい数のテープが落ちてくるわ、紙吹雪は舞うわでもうキラッキラ華やかでした。そして「2012年にまたお会いしましょう」という横断幕‥‥‥あ~もう2012年まで来ないのね なんだかんだ突っ込んでばかりいたけれど、今回のマリインスキーを十分に堪能しました。主婦が家族(受験生いるのに)をほったらかして連日の舞台鑑賞。家をあけるのもまた、作り置きの食事を用意しなくちゃいけなかったり、いろいろと段取りが大変だったけれど、大変だった分とても楽しかったです。次はいよいよレニ国ですね~!

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2009年12月15日 (火)

マリインスキー「オールスター・ガラ」(11日)その1

「イワンと仔馬」の中身を途中まで書いていたのですが、こっちのガラの感想のほうを早くしないと飛んで行っちゃうと思って、こちらを先に書くことにしました。ガラ、楽しかったですよ。でも、楽しい反面、「シェエラザード」「海賊」と、ルジマトフの得意とする演目が最初と最後に来たおかげで、何だか突っ込みどころばかりになってしまったような気がします。(ルジファンは「シェエラザード」と「海賊」には厳しいのです!)

「白鳥の湖」「眠れる森の美女」と見てきて、さすがはマリインスキーという華麗で洗練された古典の世界を堪能させてもらいましたが、「イワンと仔馬」はちょっと毛色が違ってまた楽しかったです。そしてこのガラなんですが‥‥それまでの全幕物と違って、この人にこの演目?というのが余りに多くて、選択を間違えたという感じがしてしまいました。

開演前にまたもセリュツキー先生を発見。この日はずっとA席Rの最後列に陣取っていました。私はちょうど反対側だったからとてもよく見えました。セリュツキー先生と一緒に同じ舞台を楽しむ(ご本人は仕事で楽しんでない?かもしれないが)ことができてうれしかったです。

≪第1部「シェエラザード」≫
コールプ&ヴィシニョーワは相当濃かったです。不思議とこの日は子供連れが多くて、私の近くにも何人かお子様方がご観覧でした。それが‥‥私のすぐ前のガキときたら、あの「シェエラザード」をオペラグラスでずっ~と見ているの やばくない?18禁とまではいかなくても、小学生に見せる
ような演目じゃないでしょう?それとも知らなかったのかな?お母様方、焦ったのではないでしょうか?

マリインスキーの「シェエラザード」はやっぱり豪華でした。シャリアール王や王弟の宝石がたくさんついた衣装、ゾベイダを始め3人のオダリスク、侍女たちなどの衣装も、色といいデザインといいとてもエキゾチック。舞台のしつらえはDVD「キーロフバレエ・イン・パリ」のルジマトフ&ザハロワの映像と同じ。考えてみたら私は、ルジマトフがキーロフ・マリインスキーの公演で「シェエラザード」を踊るのを生で見たことがありませんでした。今まで見たのはアダージョだけとか、インペリアル・ロシア・バレエとか、ロシア国立バレエ?とかそういうところのでしたね。だから、念願のマリインスキーの「シェエラザード」だったわけです。

でも、どうでしょう?結局私はルジマトフでなきゃダメ!!ということを思い知らされただけだったような気がします。これもすでに封印すべき部類だったわけです コールプは悪くはなかったけれど、何だろう、踊り云々じゃない根本的な何かが違う。また、ヴィシニョーワのゾベイダも私はダメでした。

それに何かこの二人は、エロティックではあるけれど、今まで見た「白鳥」でも「眠り」でもみんな同じ。何だか心の通い合いというか、そんな濃密な交流が全く感じられないのです。二人とも役に入り込んで表現するタイプだから、自分の中にだけ入り込んで、相手はどうでもいいのかも。もっとドロドロの世界を想像していたのに、ちょっとがっかりしました。

二人とも個性が強い同士だから、やはりそれに合わせられる相手が必要なのです。そういう意味では多分、コールプだったらシェスタコワ(1月に「ジゼル」見ました。)がうまく彼の世界に入っていけた人だったと思います。ヴィシニョーワは下手をすると相手を食ってしまう‥‥一体相手は誰だったらいいんだろ??昔見たルジマトフとの「ジゼル」はすばらしかったあ~やっぱり私はこういう結論になってしまいますね。

ルジマトフの金の奴隷は、まるで豹かジャガーのような瞬発力を秘めた柔軟さに、触れば切れるような危うさと、刹那を生きるきらめきにも似た香気、そしてめくるめく陶酔感‥‥そういうものが全部あったんですよね。それからするとコールプってまるで爬虫類 鋭い目つきで獲物を狙い、何かをたくらんでいるような怪しい雰囲気は十分なんだけれど、この物語ってそういう物語じゃないでしょう?

退屈しきった後宮の女たちが、王の留守をいいことに逞しい奴隷たちを解放し、大乱交パーティを繰り広げる‥‥といった、ただの乱痴気騒ぎの話ならそれはそれでいいかもしれない。でも、誇り高い王の寵姫ゾベイダは最後に自害するんですよ。だからゾベイダはただ色っぽければいいというわけじゃない。王の愛妾でいながら、やはり王や囲われた生活に倦んでいたか、宝石に囲まれ豪奢に飾り立てられながらも何か満たされない想いがあったに違いないのです。

また金の奴隷も、奴隷だから粗野でいいというわけじゃない。戦に破れ、囚われの奴隷の身となってはいるけれど、もとは勇猛な戦士だったかもしれないし、高貴な一族だったかもしれない。そんな運命から一瞬解き放たれ、甘美なひとときに抑圧されていた生命の炎をせつないまでに燃やし尽くす。次の瞬間には殺されるかもしれない。これはそんな命がけの悦楽であるはずなんですよ。

コールプも王子の時はすごく抑えて王子らしく踊っていましたが、ここは地を出せる役だったからか、あの足音のしないコールプが珍しくドシン、バタンと思いきり豪快にやってました。(でも、ルジマトフはこういうときこそ抑える‥‥そして猫のように音もなく着地する。。)もう、こんな怪しい魔人を放ってどうする?ってくらい、体を低くして眼光鋭く獲物を狙う‥‥それだけで禁お子様よ~

ヴィシニョーワもすごく濃い存在感でゴージャス威圧的な女王様の風格だけど、ちょっと冷たい感じで目つきもコワイ。でも何か勘違いしている。そんな女王様が奴隷を解放して一体何をしたいのさ。あの、ルジマトフの相手役を務めたマハリナやザハロワは、妖艶というよりもまずは意外なくらいかわいらしかったんですよ。きっとこのハーレムの女主も、虚勢を張ってはいるけれど心に寂しさを抱えているかわいそうな存在なんだ‥‥と思えるような。だから限りなく甘くせつないわけですよ~。ほんとに、ルジマトフの得意演目だったものにはしょうもなくうるさいファンですみません

何と、ここ数日でタイムリーにYouTubeにルジマトフの「シェエラザード」の動画が上がっていて、これがまたとてつもなく美しいの。相手がフィリピエワなので、ことし1月のミハイロフスキー劇場のチャリティ・ガラのときのものでしょうか。もうこれを見ると、舞台セットなんかマリインスキーに比べたら学芸会みたいにちゃちなんだけれど、そんな中でも限りなく甘美で哀歓あふれる物語が紡ぎ出されているのです 奴隷って哀しい‥‥囲われ者のハーレムの女も贅沢であればあるほど哀しい‥‥それを皆殺しにしなければ心がおさまらない王はもっともっと哀しい 本来こんな物語なんだと、私は解釈しているわけで、全く始末に悪いですね。

≪第2部≫
「シェエラザード」だけで熱く語りすぎてしまいました(反省)
休憩はさんだ二幕目は小品集でした。

「シンデレラ」第2幕のパ・ド・ドゥ
(エフゲーニャ・オブラスツォーワ&ミハイル・ロブーヒン)

彼ら二人がワガノワを卒業するとき踊った演目が「シンデレラ」でしたね。ビデオ見たことがあります。でも今回はそれとは違ってラトマンスキー振り付けの、ちょっと現代的な雰囲気の「シンデレラ」でした。

幕が開くと舞台にシンデレラ一人。シンプルな白のドレス姿。手で覆っていた顔から恐る恐る手をとってみると、いつのまにか周りでは舞踏会が催されていました。すれ違う男女に声をかけようにも、誰からも相手にしてもらえそうにない、シンデレラの孤独。そして、すれ違う人に時間を訊ねている。彼女には楽しい時間は少ししかない、と思わせる。

そこへ、白のパンツとシャツ姿の王子。1組の男女と話しているけれど、この王子もまわりに溶け込めそうもない。その孤独な白の衣装の二人が出会う‥‥。最初は時間を気にしているけれど、だんだん踊りに熱中していくシンデレラ。とても楽しいけど、でもこの楽しさはそんなに長く続かないってわかっている。わかっていながらどうしようもなく夢中になってしまって、もう少し、あともう少しだけ‥‥そんな初々しい気持ちが伝わってくる素敵なパ・ド・ドゥでした。

オブラスツォーワもまた、指の先、つま先から音楽がこぼれてきそうな、ふわっとやさしい空気に包まれているような繊細な雰囲気を持ったバレリーナですよね。コジョカルといい、オブラスツォーワといい、私はこういうタイプのバレリーナが大好き。見ているだけでやさしく温かい気持ちにさせてくれる人というのはそんなにたくさんいるわけではありません。これからも頻繁に日本に来てくれるといいなあ~

「ロミオとジュリエット」バルコニーの場面
(ヴィクトリア・テリョーシキナ&エフゲニー・イワンチェンコ)

全幕では見たことがない(DVDでも見たことない)ラヴロフスキー版の「ロミオとジュリエット」ですが、見慣れないというだけではなくて、もうこれ本当に「ロミオとジュリエット」??これを初演したガリーナ・ウラノワだったかが、こんなことを言っていたと思います。「バレリーナは2種類しかいない。それはジュリエットか、ジュリエットじゃないかよ。」‥‥それからすればテリョーシキナって明らかに「ジュリエットじゃない」バレリーナの部類だと思うのですが

イワンチェンコにしたって絶望的にロミオじゃないタイプ!!いかにも分別ありそうで、このあとの若さゆえの悲劇なんてとても起こりそうにないわ。この演目をこの二人に躍らせるって、一体誰が思いついたのか?この「ロミオとジュリエット」は本当に自然体で踊らなければならないものだと思うのですが。これはやっぱりオブラスツォーワとシャクリャローフに等身大で踊ってほしかった。いくらこれは「ロミオとジュリエット」なんだと思おうとしても無理‥‥ごめんなさい。

出合ったばかりなのに、さっき別れたばかりなのに、またすぐに会いたくなって、バルコニーに出てみたら、相手も同じ気持ちで私を待っていた!そんな天にも昇るような初々しい気持ちのかけらも、残念ながら感じられませんでした。

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
(アリーナ・ソーモワ&レオニード・サラファーノフ)

この中で一番どうでもいい演目だったけれど、意外によかったです。ソーモワは3年前に見たときは気持ちが悪くなるくらいぐにゃぐにゃで、音に合ってなくて、首もぐらぐらしててもう結構‥‥って思ったけれど、さすがにプリマになって体に芯が通るようになったみたいです。長い手足をたおやかにしならせ、スピード感もあるし、なかなかよいのではないでしょうか‥‥‥という程度なんですけど。

サラファーノフくんは、なぜかとても若々しく見えました。この踊りにはぴったり。だけど、踊りとは関係ないけど、彼っておでこが広いのね。それなのに、顔は小顔で、下の方にちょこちょこっとまとまってるから童顔でやんちゃな感じがするんですね。今のままならいいけど、ベテランになってからの顔が想像できないなんてことを思いながら見ていました。超よけいなお世話でしたねでも、彼の踊りはエネルギッシュなのに折り目正しくて、私は好きです。

「瀕死の白鳥」(ディアナ・ヴィシニョーワ)
こんなに死にそうにない白鳥は初めてかもしれません。確かにプリマの風格はありました。でも、あでやかでつややかで、生命力にあふれ、殺したって容易に死にそうにない。
前にユリア・マハリナの「瀕死の白鳥」を見たことがあって、あんなにピュアで健康的な白鳥もないもんだと思ったけれど、それでも死への恐れや死にゆく哀しさというのはありました。ほんと、何これ‥‥ところがどっこい、やはりヴィシニョーワは濃い演技派なんですね。そのとても死にそうにない立派な白鳥が、毒でも盛られたのか突然痙攣を始め、毒が全身に回り、痺れ、もがき苦しんで動かなくなるさまを見せられたような‥‥そんな後味でした。(超ごめんなさい!)凄みがありました。

「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」
(ウリヤーナ・ロパートキナ&イーゴリ・コールプ)

ことしの「奇才コルプの世界」でも見せてくれたこの演目。今度は天下の筆頭プリマ(そんな言い方ある?)ロパートキナを相手に、コールプはまたノリノリで本当に楽しそうに踊っていました。

これはやはりプリマが踊るから崩れたところが面白いのでしょう。だから、ロパートキナのような国宝級のお方ならなおさらかなと思っていたけれど、遠慮してるのかコールプの突込みが甘いというか、そんなにげらげら笑うほどではありませんでした。いつぞや、アリシア・アマトリアンとロバート・テューズリーが踊ったのを見たときは、本当におかしくて笑い転げていたのに。アマトリアンとジェイソン・レイリーのDVDも出ていますが、あれもすごく面白くて大笑い。でも、今回はクスッとは笑えたけどげらげらは笑えませんでしたね。

ロパ様はこんな踊りでも崩れることなくとてもエレガントで、いちいちため息が出るほど美しい。それが災いしてか、かなりお上品な笑いにしかなりませんでした。ご本人はカーテンコールでも例の赤いバッグを持って、オーケストラピットにまで紙ふぶきを振りまいてご満悦の様子でしたが‥‥。これこそヴィシ様がやったらよかったんじゃないの?

コールプもコールプで、もっとはっちゃけてくれたら面白いのに、意外や意外、彼はまじめな人なんですよね。それはレニ国のゲストで「ドン・キ」を踊ったときも、「海賊」を踊ったときも、ゲストなんだからもっと派手にかませばいいのにと思っちゃったくらい、実にまじめに役をこなしていましたから。(もっともルジ芸監の手前でたらめはできないか)それにしてもこういう演目ですからレイリーぐらいにすっとぼけてほしかったような。

あと、まだ第3部の「海賊」組曲がありますが、とりあえず今回はここまでにしておきます。突込みが多すぎたようでどうもすみません

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2009年12月10日 (木)

「イワンと仔馬」

マリインスキーの「イワンと仔馬」を見てきました。結局「せむしの仔馬」のお話でしょう?‥‥と思ったのは、この来日公演の演目が発表されたときでした。「せむし」というのは差別用語だから?そんなの気にしてたら昔の時代劇なんて見られない!‥‥でも、これはラトマンスキーが振り付けて、ことし3月に初演されたばかりのいわば新作なので、それでいいのですね。

「せむしの仔馬」のお話は幼少のみぎり、子供向けの着ぐるみ人形劇で見たことがあります。私の世代では木馬座といったら懐かしいよねえ。「木馬座アワー」というテレビ番組もありました。「ケロヨン」「バハハ~イ」という言葉、知っている人がいたらそれは私と同年代か、少し上のおばさんに違いない 私の舞台好きも、ごく小さい頃にこの木馬座の生舞台を毎年見に連れて行ってもらったことからきているのかなと思うことがあります。この楽しい記憶があったから、自分の子供にも劇団飛行船とか、銀河鉄道とか、ピッカリ座とか、そういうのを見せていたのかもしれません。

木馬座の「せむしの仔馬」は、最後のクライマックスで熱湯と氷と牛乳の三つのお風呂に入るんだよね。イワンは仔馬に助けられ勇気を出して次々と入り、三つ目の牛乳のお風呂から出てきたときにはあ~ら不思議、立派な王子様になっていましたというお話。王様は最初の熱湯のお風呂で大やけどをして若返るのをあきらめてしまった‥‥のではなかったっけ?ともあれ、このお話はロシアでは民話として誰でも知っているお話のようです。

バレエ「せむしの仔馬」は、1959年制作(1967年公開の映画?)のプリセツカヤの映像があって、友人から借りて見たことがあります。ナレーション入りの劇映画?で、内容はかなり微妙でした 発表会などでよく踊られる「海と真珠」のパ・ド・トロワが見たかったのですが‥‥何とそれは入っていなかった! それで調べてみたら、実は一口に「せむしの仔馬」といってもちょっとした歴史があったのです。

初演は何とチャイコフスキーやプティパの時代よりも古い1864年、プーニの音楽にサン・レオンという人が振り付けたものでした。これをのちにプティパが改訂したときに、ドリゴの音楽で「海と真珠」を振付して挿入したのだとか。その「海と真珠」だけが有名になってしまって、もとの全幕が上演されなくなったのは何とも皮肉です。

そして、DVDが出ているプリセツカヤ主演の「せむしの仔馬」は、当時新進気鋭の作曲家だったシチェドリンが曲をつくり、ラドゥンスキーという人が振り付けたもの。これが縁でシチェドリンとプリセツカヤは結婚したというお話もありますね。このシチェドリンの曲に、ラトマンスキーが新しい作品として振り付けたのが、今回の「イワンと仔馬」ということになります。

ラトマンスキーという人は、去年見たボリショイの「明るい小川」といい、見たことはありませんがDVDが出ている「ボルト」といい、それから「パリの炎」もそうですか?既に上演されなくなった古い作品に新風を吹き込むというか、現代作品としてリニューアルさせることが得意というか、そういうことに取り組んでいる人なのでしょうか。何かとても興味深い活動だと思います。

でも、どうでしょう?楽しかったけれど、私は「明るい小川」の舞台の美しさ、ストーリーの面白さには負けたなあと思いました。全体的にコミカルで面白いのですが、どこか笑いにくいシニカルなところもあって。あと、舞台美術がう~ん‥‥で、まあこんなのもあり?という程度。「明るい小川」のちょっとレトロでカントリーなかわいさ満載の世界と比べると、簡素でポップで現代作品なんだなあという感じ。ストーリーは「せむしの仔馬」と同じで、映像を見ていたおかげでよくわかりました。

配役のほうは絶妙でしたね。ロブーヒンは何となくビデオの若き日のワシーリエフを彷彿させるぼーっとした気のいいお兄ちゃん風で、テリョーシキナがまた、近寄りがたい神々しさもあるけれど、実はおちゃめなお姫様という、そんなビデオのプリセツカヤとぴったりのイメージだったのには驚きました。それから仔馬役のイリヤ・ペトロフがもうかわいくてかわいくて。去年入団したばかりだそうで、大抜擢ですね~。それから雌馬と海の女王の二役を演じたコンダウーロワがシャープで、きれいで、独特の存在感がありました。あと、侍従役のバイムラードフが三枚目風悪役で、この間の悪カッコいいカラボスとはまだ別の、味のあるところを見せていました。

全体的には面白い舞台でしたが、もう一度見たいかと聞かれるとちょっと微妙。「明るい小川」ならまた見たいと思うけれど、これはどうかなあ~。公演の内容はまた次回に。明日はマリインスキー公演最終日のオールスターガラです

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2009年12月 9日 (水)

マリインスキー「眠れる森の美女」その2

前回一旦終わりにしてまたすぐ続きを書こうとしましたが、いろいろあって遅れてしまいました。明日はもう「イワンと仔馬」だわ!早く書かなくちゃ‥‥ということで、思い出しながら続きです。

≪第2幕≫
いよいよ王子登場です。場面は全体がオレンジの紅葉の森。プログラムには帽子をかぶったコールプの写真が出ていましたが、コールプ王子は帽子なしで登場しました。ここは簡略化されているようで、貴族たちの踊りも、村人たちの踊りもなくて、的当て遊びの後すぐに王子のヴァリエーションになりました。これはレジュニナ&ルジマトフのビデオにもあるとおりです。あれはカナダでの公演で、テレビ放送
することになっていたので、時間制限があって簡略化していたそうですが、今回の日本公演も2幕は大体これと同じ構成になっていました。

コールプの踊りはかなり抑え目だったかも。それが王子らしいと言えばすごく王子らしい。抑えて抑えて、正確なところにひらりとおりてくる。ただ技がすごいとか美しいとかいうだけじゃなくて、こういうことができる人が真にダンスール・ノーブルなのでしょうね。(お顔は別として)実に軽々踊っているように見えるけど、あれは体の統制が効いて抑えに抑えたところの軽さ、伸びやかさ、上品さなんだろうなあと思いました。

王子の踊りのあと、貴族たちは女性は矢、男性は槍を手に「さあ、もう一度狩にまいりましょう」と誘うのだけれど、(手槍、投げ矢なんて、そんな原始的な狩ってある?)王子はその場に残るのです。そして、一人憂いに沈んでいると、そこに妖精たちとリラの精が現れる。そしてリラの精は王子にオーロラの幻影を見せるのです。

このオーロラが、1幕の元気なオーロラとはガラリと変わって、伏し目がちでにこりともしない。だけどその雰囲気たるや実に濃厚で‥‥これオーロラ?そしてなぜかそれを見つめるコールプ王子の視線がとても熱い‥‥というよりまるでストーカー系の怪しさ。(それがワタシ的には久々にツボでした。コールプ様はこれでなくちゃ。「白鳥」の時はおとなしすぎました)ここでは王子がオーロラの幻影に惹かれて近づこうとして、リラの精にちょっと待って、と制される場面だと思うのだけれど、妖精たちのコールド越しに追いかけるコールプ王子はかなり怪しかったです。

そして‥‥リラの精に導かれ、ゴンドラに乗ってオーロラの眠る城へ。一旦幕が閉まり、間奏曲がありました。ここをカットせずに、1幕最初の編み物の場面や、2幕の貴族の踊りなどをカットしたのはとてもいい選択でした。やはりここはそれなりに長い時間がかかったことを思わせる演出が必要なのだと思います。何しろ100年眠っている姫のお城に行くのですから、すぐ着いてしまったら面白みがないでしょう。ヴァイオリンの美しい音色を聞いて、うっとりしたところで、さあ城に到着というのがいいですよね。

紗幕の向こうに王子が現れ、怪物たちと戦っているようです。そのあとすぐ幕前に出てきて、剣を持ってジャンプしたりする、この場面はカッコいいですよね~。そして幕が開き、眠るオーロラにキスをすると、モノクロの世界に色が戻ってくるように、すべてが再び目覚めるのでした。

≪第3幕≫
王子とオーロラの結婚式。オーロラは長く裾を引いたウエディングドレス姿。そのあとを可愛いお小姓が二人、裾を持って歩きます。所定の位置に立った時、その小さい子たちもぐるっと円を描いて後ろに回り、丁寧に裾を広げて置く‥‥きっといっぱいリハーサルしたのね。それを王子とオーロラが振り返って微笑みかけていたのが印象的でした。

王様とお妃様はまた同じ格好ですが(笑)今度はマントがえんじ色に。こういうさりげない変化というのがいいですね。

いろいろな童話の主人公がお祝いにやってきます。赤ずきんちゃんとか、長靴をはいた猫とか、定番の踊る人たちはわかるけれど、他はあまりよくわかりません。青髭とその妻たち‥‥ってかなり恐い話じゃありませんでしたか?それから大きなお面をかぶった人食い鬼?普通は子供たちがあとについてくると思うのですが、子供たちはいませんでした。あとは3組くらいの男女。皆、二人にあいさつをしていき、そして二人が引っこんで踊りの場面になります。

金、銀、サファイヤ、ダイヤモンドの精の踊り。ダイヤモンドのマルトゥイニュクは細かいステップがきれいでした。長靴をはいた猫は獲物のウサギを持ってくるのだけれど、それがやけにリアル。。。顔は着ぐるみから目を出しているのか特殊メイクなのかよくわからなかったけれど、とても猫にはみえない恐ろしげな顔でした。白い猫は輿に乗ってやってきました。猫のヤナ・セーリナはプロローグの勇気の精、「白鳥」ではパ・ド・トロワを踊っていた人です。

フロリナ王女はオブラスツォーワ。やっぱりかわいい彼女は日本ではとても人気があると思うのに東京では主演なしで、「白鳥」のトロワと「眠り」のフロリナを踊っただけのようです。そしてガラでも私がチケットをとった11日のほうは名前がなくて「あ~はずれた~」と残念に思っていました。ところが先日キャスト&演目変更になって、11日もオブラスツォーワが見られるようになったんですよね。ラッキーもうこれ以上は変更はないことを祈ります。

フロリナの衣装は薄い水色で、チュチュの部分は白で真ん中へいくほど水色が濃くなってくるグラデーションになっていて、その淡い色がとてもよく似合って素敵でした。なぜか、彼女が舞台上でコケたのを2回ほど見ているので、アダージョはちょっとハラハラしましたが、どうして私こんなに保護者モードなんだろう? とにかく彼女の踊りは音楽的で、見る人を幸せな気持ちにさせてくれますよね。オーロラ姫もどんなに可憐だったことでしょう。できればびわ湖に行きたかったなあ~。

でも、さすがにヴィシニョーワが出てくると、そのスターオーラにおいてオブラスツォーワはまだまだという気になってしまいます。やはりひときわ華やかですよね。いるだけでゴージャスというか、濃い存在感というか、やはり違いは歴然とありました。オーロラの衣装はボディとチュチュの正面が白で、左右には銀色の細かい刺繍が施されているか、あるいは柄レースを重ねているのか。それが青みがかった銀色なので、遠目にはグレーっぽく見えてしまいますが、多分ビデオのレジュニナと同じ衣装のように思いました。

グラン・パ・ド・ドゥは、何度も踊り慣れたペアらしく、とても息が合っていました。サポートしてのピルエットなど、超高速で一体何回回っていたのか。ブラボーでした。もう踊りがどうこうではなくてその音楽の盛り上がり方や、全体の華麗さにただただ感動でした。

コールプは、最初のほうこそドン、と着地で足音がしていましたが、中盤からは足音も少なく軽く伸びやかでした。ここでまた脱線するかもしれませんが、あれからまたルジマトフのビデオ、89年の「眠り」をちらっと見てみたんですよ。そしたら何と、コールプのほうが踊りはうまいじゃない‥‥が~ん!コールプはやはり抑え目だけれど、最後までパワーが落ちず、そのエレガントな王子の雰囲気を保っていました。マネージュで振り上げる脚が高いし、着地も正確で美しかったです。

ルジマトフは王子向きでないと言われていたという、その理由が何となくわかりました。あのビデオのデジレ王子はもう力いっぱい踊っちゃって‥‥力の配分なんか考えてなくて最後のほうのシェネなんてバランバラン。でも決めるところは目線から指の先までびしっと決める。確かに一般的な「王子様」の踊りではないです。だけどそれがまた何ともカッコいいの あんなにエネルギッシュで疾風怒濤のようなデジレ王子は多分もう現れないでしょうね。あ~私もあと10年早くバレエを見ていたら‥‥‥なんて、今そんなことを言っても仕方ないですね。

最後、アポテオーズは今までの登場人物が次々に短いパを披露し、全員揃ったところで、リラの精に祝福されて大団円。バックには噴水があがり、なんて華やか~。とにかくマリインスキーは舞台美術といい衣装といい、そういうものが総合的にすばらしくて、美しい世界を堪能することができました。終了は10時半になってしまいましたね~。長かった。でもそれがちっとも長く感じられないほど充実の舞台でした。

あ、もうきょう「イワンと仔馬」当日になってしまいました。昨日のゲルギエフ指揮のはどうだったんでしょう?きょうはテリョーシキナとロブーヒン。楽しみです。

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2009年12月 5日 (土)

マリインスキー「眠れる森の美女」(3日)その1

なぜか‥‥「白鳥」も「眠り」もコールプの日なんて、私ったらまるでコールプファン?!今回はただ予定とにらめっこして消去法でこの日になっちゃっただけなんですけど。コールプは今年に入ってからもレニ国の「ジゼル」「海賊」、そして「奇才コルプの世界」、それからこのマリインスキーと5回も見ているんですよね。もしかして今年一番見たダンサーなんじゃないでしょうか?あと、来週の「オールスター・ガラ」も結局コールプが「シェヘラザード」を踊る日にしてしまったので、私ってやっぱりはた目にはコールプファン?‥みたいですね。

でもそのファンの風上にも置けないくらい、今まで「悪魔顔」とか「指名手配犯」とか、いろいろ勝手なことを言って遊ばせてもらってましたけど、彼が自分のキャラも自覚した上で、誰よりもまじめで誰よりも踊りに対して真剣な人だというのはわかっているつもりです。雑誌のインタビューとか、ことし放送された草刈民代さんの引退関連の番組を見れば一目瞭然。一流の人が持つ素直さや謙虚さも十分備わっていて、またその踊りは意外なほど端正で美しい。いかんせん顔ですねえ。

このマリインスキー公演の新聞広告で、コールプとヴィシニョーワの「白鳥」の写真が載ったことがありますが、そのコールプの顔ったら、まるで白鳥を捕まえていたぶっている変質者‥‥わぁ~これじゃ広告も逆効果じゃない?なんて思っちゃいましたよ。超ごめん!せめてあのメイクだけでもどうにかすれば何とかなるのに。お願いだから目のまわり黒くしないでほしいんだけど。(まだ言っています

ということで「眠れる森の美女」もコールプ様で見てきました。マリインスキーの「眠り」は、ルジマトフ主演のビデオがあるから映像では何回も見ているのに、生で見るのはこれが初めてです。だからこそぜひ好きなダンサーで見たかったのだけれど、オブラスツォーワ&シャクリャローフ主演の公演はびわ湖ホールのみ。それだけなら絶対びわ湖まで行ってしまうところですが、ほかにも見たい公演があったので、今回は涙をのんであきらめました。

ヴィシニョーワも、この間の「白鳥」でちょっと苦手かも?と思ってしまいましたが、こちらもまた非常に濃いオーロラで‥‥演目がら今度はそんなに相手役を食ったりしなかったけれど、実にゴージャスでアクティブなオーロラでした。コールプ王子は金髪に青い目で、遠目にはロックスターみたいで(?)なかなか素敵でしたね。2幕ではオーロラを追っかける怪しいストーカーのようなところも楽しめて(本物のコールプファンには叱られてしまいそう)久々にツボに入ってしまったところもありました。

それから、「白鳥」でヴィシニョーワはほとんどコールプと目を合わせなかったことを奇異に感じていたのですが(だって見つめあわなきゃ好きになりようがないもの)もしかしてヴィシはコールプのことが嫌いなのかな?と思ったり、顔見たら幻滅するから?と思ったり。私もずいぶん失礼な奴ですねえ。それが、「眠り」では、2幕は幻影だから目を合わせないのは当然だけど、3幕のグラン・パでねっとりと視線を交わして微笑み合う二人を見たら‥‥二人ともめちゃくちゃ濃くてかえって怖かったです

勝手なことを言い始めると止まりません‥‥コールプ様、本当にごめんなさい。

≪プロローグ≫
キエフバレエの「眠り」では、オーロラのゆりかごはベビーバスぐらいに小さくて、それを一人で持ってあちこち移動させていたので、おいおいと思いましたが、ここでは幕が開いても最初オーロラはそこにはいなくて、あとから侍女が二人がかりで抱いて(象徴的にレースの布だけだと思うけれど)さらにレースの長い産着のすそまで持つ従者がいましたね。やっぱりそれくらいでないと。待望のお姫様なのだもの。あと、面白かったのは、赤ちゃんオーロラの登場を待つ間、乳母二人がゆりかごのそばで編み物をしていたんですよね。運命的な編み針を持って‥‥芸が細かいです。

背景と衣装はほとんどビデオ通りのようでした。したがって、多少古臭い感じもしないではありませんが、青と金で統一された室内、王様の濃紺のマント。そして貴族たちの衣装も青を基調とした色味。キエフのようにキンキラキンでなく、落ち着いていて、西洋絵画から抜け出したような美しさでした。

妖精の中では何といってもリラの精のコンダウーロワが、手足が長く凛とした存在感でとてもよかったです。何だかユリア・マハリナのリラの精を彷彿とさせるような。この人もワガノワ生え抜きの人ですよね。元気の精のラヴリネンコは(3幕では金の精)ちょっと日本人的な親しみのもてる容貌で目を引きました。

カラボスはショッカーの手下(by仮面ライダー)のような軍団を連れて手引き車でやってきます。これがなかなかの美形じゃない!と思ったら、「白鳥」でスペインを踊っていたバイムラードフでした。何か、せっかくのお顔がすごいメイクでもったいない。顔のない不気味なコウモリ(それとも蛾?)軍団も暴れまわりますが、リラの精に魔力を弱められて去っていきます。

≪第1幕≫
プロローグと1幕の間に休憩があり、都合3回も休憩がありました。幕が開くとすぐにワルツが始まって、例の編み物おばさんの場面はありませんでした。長いので省略したのでしょうが、別になくてもいいですよね。1幕は全体が薄いグリーンとピンクの淡い色合いで、いかにもこの世の春を思わせる美しさ。王様と王妃様の衣装は同じようなものだけれど、マントがグリーンになっていました。

ワルツはエキストラの子供たちも入ってとても華やか。キエフのときにも子供は出ていましたが、その子たちより小さい子たちで、小学校中学年ぐらいかな?それなのに、一人前にしっかりと踊っているのです。どこの生徒さんかなと思ったら、八王子のシャンブルウエスト(川口ゆり子バレエスクール)の子供たちでした。これが、ワルツはよくわからなかったけれど、ローズアダージョの時にバイオリンを持っていた子たちは多分男の子でしょうね。あのお教室にはボーイズクラスがあって、前から男の子が多いと聞いていましたが、これだけ背の高さまで一緒の子を集められるというのはさすがです。何と、この子たちは「オーロラのお友達」の踊りの前半部分もバイオリンを持って踊っていました。日本人の子に金髪のカツラは激しく似合わないけど、それでも一生懸命踊る姿はかわいかったです。いいなあ~天下のマリインスキーの舞台で踊れるなんて一生の思い出ですよね~。

オーロラの登場。う~ん、随分妖艶なオーロラ。。16歳には見えん。それでも四人の王子たちに囲まれると、急にはにかんだ様子でお母様のところへ逃げてきて‥‥そして踊りなさいと言われて、今度は堂々と踊り始めます。アティチュードで立ったまま四人の王子が入れ替わるところでは1回1回アン・オーにしていました。そして、プロムナードで回るところもまた1回1回アン・オーまでもっていき、強靭なバランスを見せてくれました。ブラボーでした。

本当にこのオーロラ姫はそれまで一点の曇りもなく輝きながら育ってきたのだという、そういう周囲の庇護と、身につけてきた教養や美しさからくるゆるぎない自信にあふれていました。そして、そのオーロラを中心にして、この王国をわたる風も、生い茂る木々も、みんな光に満ち満ちて輝いているのです。そんな完璧な美の世界を見るようで、ヴァリエーション、コーダとずっとうっとりと感動して見入ってしまいました。

しかし‥‥世の中は美しいものばかりではありません。突然一人の老女が現れ、オーロラに花束を渡します。オーロラは喜んで花を持って踊り、王様も王妃様も、このマリインスキーの版は心配そうな顔なんかしてなくて、ただただ暖かく微笑んで見守っているのですね。悲劇は突然起こります。花束の中の何かがチクッと手にささり、驚いて花束を投げ捨てるオーロラ姫。

思うに、誕生のときに、優しさ、元気、鷹揚さ、勇気、のんき、そしてリラの精はそのすべての「善なるもの」の象徴ですよね。そういうものだけを招き入れて、カラボスに象徴される悪、闇、老、醜、死、という、表裏一体のものがあるにもかかわらず、それを忘れていた。ここではカラボスがなかなかカッコいいので説得力ないんだけど、やはり人生そんなもんじゃないよという、これはそういうおとぎ話なんだなと、ふと思ったりしました。

カラボスが去って、リラの精は皆を眠りにつかせます。オーロラの後に続いて奥に下がる人々の列は、そのまま動きが止まり、そして城には蔦が生い茂り、すべてが眠りにつくのでした。

幕間にロビーに出ようとしたら、通路のすぐ前をヴィシニョーワの恩師コワリョワ先生と、昔のビデオ(’82年のコルパコワ主演と、’89年のレジュニナ主演の両方)で名カタラビュット(式典長)を演じていたセリュツキー先生(ルジマトフの恩師)が歩いていました。そして、楽屋口に入ったとたんに二人で「やった!」とばかり肩を抱き合っていましたよ。何かすごくほほえましかったです。

長くなりそうなのでまた一旦終わりにします。

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2009年12月 4日 (金)

「白鳥の湖」その2(覚え書き)

何か、調子に乗って自分の中の物語を一気に書いてしまったら、公演については何も書いていませんでしたね。いや、細かいことなんていらないほど面白かったと言えばいいのか。ヴィシニョーワはグランフェッテで2回に1回ダブルを入れてたとか、コールプのジャンプしてアラセゴンで回るその脚が、舞台ときっちり並行になって空中できれいな円を描いてたとか、いろいろあったけれど、もうそんなことどうでもよくなってしまうような特異なパフォーマンスでした。

でも‥‥やっぱり3年前のルジマトフのあのジークフリート王子が忘れられない‥‥。ことあるごとにそう思ってしまう私は多分病気ですね。1幕ではクールな大人の王子。そしてオデットに出会うや、まるでガラス細工に触るような繊細さで、だけど惹かれる一心の性急さで、「待って」「逃げないで」「貴方は誰?」と、こちらまで一緒になって飛びかからんばかりに追いかけていったような気にさせられた、あのドキドキする「感じ」って一体何だったんだろう。それから、もう切ないほど愛にあふれていたグランアダージョ。見ているだけで心がしめつけられ、涙があふれてきたのはなぜ?

‥‥あれがあったから私は今までバレエを見てきたようなものです。でもあれ以来、あんなジークフリートには一度も会っていない。そして多分もう会えないと思うとすごく悲しい 40男の白タイツなんて‥‥と半分オブラートをかけて見ようとしていたあの頃。見る前には思いもしなかったことだったけれど、あの出会いがあって本当によかった。いまだに私のベスト白鳥王子はルジマトフなのです。

超脱線!

30日の公演で、ちょっとだけ気がついたことを備忘録として。
1幕のパ・ド・トロワの男性、マクシム・ジュージンがなかなかよかったです。端正な顔立ちもさることながら、ふわっと浮かび上がるようなジャンプと手足の伸びやかさで、ノーブルな雰囲気もありました。それから第2ヴァリエーションを踊った女性(どっちかわからないけどプログラムの順番的にはマルトゥイニュクのほう?)ジャンプが高く軽やかで、容姿も切れ長の目が素敵な人でした。

1幕2場の白鳥たちのコールドはさすがにマリインスキーというべきか。皆すごい長身でスタイルが良くて、粒ぞろいで、それがまたよく揃っていて「この世のものとも思えない」というのはこういうことかと思うくらい。ただ、どうしてあんなにバタバタとポワント音がするんだろう。キエフは、ダンサーは粒ぞろいとは言えなかったけれど、ポワント音は全く気にならなかったのですけどね。会場の違いもあるのかな?それでも、あのハイレベルなコールドの中に入ったら、それこそよほどのオーラがない限り、主役は見分けがつかないでしょう。そこにピンで入ることの恐ろしさ!

それが、ヴィシニョーワという人はあの中では小さく見えてしまうのに堂々と主役の輝きを放ち、良いのか悪いのか王子まで食ってしまった。さすがだけれど、やっぱり私はコジョカルみたいな可憐なバレリーナのほうが好きだなあ~。それを言ったらみもふたもないですね。また、そんなヴィシニョーワを相手にしてもかすまない、マラーホフやルジマトフのすごさを改めて感じました。

2幕のキャラクターダンスでは、スペインの黒いほうの男性(バイムラードフ?)が長身で超かっこよかった踊りは赤いほう(ヨアンニシアン?)のほうがずっと堂にいっていたけれど。ナポリのプレブトフという人もなかなかの美形でした。私ったら一体何を見ているんでしょうね?
(訂正)ジャパン・アーツさんの「バレエ・ブログ」を見たら、この日の写真が載っていました。それによると黒いほうがヨアンニシアンで、赤いほうがバイムラードフだそうです。どうもすみません。ヨアンニシアンはプログラム写真よりずっとカッコいいですね。
(あと、ロットバルトの化粧すごすぎ!他の日のロットバルトはこんなすごいメイクではありません。これはこの方のオリジナルなんでしょうか‥?青い目のコールプ王子の写真はこれだけ見るとなかなかクール。ほんと、もう少し切れ長にアイライン描けばいいのに‥余計なお世話?)

3幕では、BS-1で以前放送したバレエ学校のドキュメンタリーに出ていたオクサーナ・スコリクがいるというので注目していたのですが、よくわかりませんでした。ロットバルトは超でかくて踊りもダイナミックでしたが、あまりにあっけなくやられちゃいましたね‥。

全体的には、やはりさすがはマリインスキーと言うべきでしょうか。若手を多く連れてきているようだけれど、それでも伝統ある優美な雰囲気は同じ。比べてしまったらかわいそうですが、舞台セットも衣装もキエフよりずっとよかった。

ただ、やっぱり世の中不況なんでしょうね‥‥去年のボリショイなんか平日でも隅から隅までぎっちり満員だったのに。1階でもサイドの見切れそうな場所や後ろのほうは空席が目立ちました。下からちょっと見ても3階以上はぽつぽつという感じだったかな。天下のマリインスキーなのに何だか悲しい感じもするけれど、バレエ好きにとってはチケット争奪戦もなく、直前でもチケットが買えて、見たいときに見たいものが見られるからいいと言えなくもない。

チケットが高すぎるということもあると思います。ほんとに見たいという人はどうやっても見るけれど、ちょっと外国のバレエでも見てみようかしらという人はなかなか来れない。そこいくとこの間のキエフは、中高年のお友達同士とかがたくさんいらっしゃって楽しんでいましたから、またそういう雰囲気もいいかなと思ったりしたものです。思うに、バレエは上階の席でも値段高すぎるのです。歌舞伎座なんか1階は16,000円するけれど3階は前方が4,200円、後方とサイドは2,500円ですよ。見え方が違うんだからそれくらい(4分の1~6分の1)の格差があってもいいはずなんです。それが、3階サイドだって(多分BかC)14,000~10,000円するのですから!

歌舞伎座の3階前方でこの間初めて見ましたが、中央通路よりうしろ17列~18列ぐらいの上に2階以上がのっかっているので、オケボックスのある東京文化会館でいえば15列目ぐらいの上方で見ている感じになり、本当に近く感じました。これで4200円。歌舞伎では花道が重要な要素なので、花道が見られないから安くなっていることもあるでしょうけど。新橋演舞場は花道を写すプロジェクターが付いているので3階は5,000円‥‥なのかな?いずれにしてもバレエのチケット、上階部分は見え方に対して高すぎると思います。

また脱線してしまいましたが、まだマリインスキー公演は続きます。実は昨日またヴィシニョーワ&コールプの「眠れる森の美女」を見てきたところです。本当にマリインスキーの舞台は衣装などちょっと古臭い感じもしなくもないけれど、色合いがそろっていて絵のように美しいし、とにかく洗練されています。あと、ダンサーが容姿といいスタイルといいみんなきれい。そして優雅で音楽的。チケット高いけれど、満足度も高いなあと実感しました。

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2009年12月 3日 (木)

マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」(30日)その1

S マリインスキーが3年ぶりに来日中ですね。この日、私は出かけるときちょっとドキドキしていました。思えば私にとっては、3年前のマリインスキー公演からすべてが始まったような気がするのです。あの頃、バレエは好きだったけれどそれほどはまってはいなかったし、しばらく全く見ていないという時期さえありました。もちろん今のように頻繁に公演を見ることもありませんでした。それが‥‥バレエにのめりこんだきっかけは、多分このマリインスキーの「白鳥の湖」です。

あのとき、バレエが好きと公言するなら、一度は「国宝級」と言われるロパートキナを見ておきたい。そんなつもりで私にしてはかなり以前からチケットを買っていたのです。確かにロパートキナは素晴らしかった。でも、なぜか私は王子役だったゼレンスキーに目が行っちゃったんですね。その直前に、ひょんなことから舞い込んだチケットで「海賊」を見ていました。そのときのアリがゼレンスキー。これが若手ばかりの中にあって、ものすごく渋くてかっこよかったんですよ そして、この「白鳥」‥‥ゼレちゃんは腰を痛めたとか?で、リフトを幾つか省略していたようでした。

この一見何の脈絡もないところに、なぜかピピッとつながるものがあったんですね。それは、何と「ルジさま」。このときのマリインスキー公演には、ルジマトフは参加していなかったのに。

私は同じ年にあった「ラスプーチン」や、そのあとの「シェヘラザード」をAプロ、Bプロと見ているような、ルジマトフの一応のファンではありました。でも、どういうわけか彼の「白鳥の湖」も、十八番と言われていた「海賊」も見たことはない、ひどく偏ったファンだったのです。それがなぜか彼の出ていないマリインスキーを見て、ゼレちゃんももう次いつ見られるかわからない(どうやらそのとおりになってしまったようです)だからルジマトフも、そろそろ全幕を見ておいたほうがいいんじゃないか‥‥‥ふとそんなふうに思ったんですね。

それから年が明けて一気にルジマトフの魅力を再発見し、今のバレエ大好きな私があります。話が長くなりましたが、あのとき少々くたびれていてくれたゼレンスキーにはとっても感謝しています。(何のこっちゃ!?)

そういうわけで、記念すべきマリインスキーの「白鳥の湖」、今回は行ける日の中で消去法で選んだらヴィシニョーワ&コールプという、何だかあまり新鮮味のない組み合わせになっちゃったのですが、これがまた今までに見たこともないとんでもない「白鳥の湖」を見せてくれることになりました。

≪第1幕・1場≫
今回のオケは東京ニューシティ管弦楽団。コジョカルの時と同じ?やはり1ヵ所、ど素人でもわかる音はずし。どうしてオディールの登場のファンファーレで音はずすかね?ちょっとびっくりでした。指揮者は劇場付きの方でしたが、この方の手を見ると、キエフの時の指揮者さんとは全く対局で、実に細かく繊細なタクトさばき。音もまたそんな感じの、デリケートな音のようでした。

コールプ王子の衣装は、白タイツに黒のピタッとした上着で、ビーズだかスパンコールだかの光る模様のついている地味~なものでした。そして相変わらず目の周り真っ黒。どうしてあんなに悪魔の目玉みたいに丸く黒々とやってしまうんでしょうねえ??キエフの人たちはみんな下にすっと長いアイラインを引いて、きれ長に描いていたのに‥‥まあ、あれも個性のうち。しょうがないか

でもさすがにマリインスキーですね。衣装も背景も色味が統一されていて、豪華な中にもすっきり洗練された感じがあります。コールドの男女のお袖のふんわりした衣装も素敵。それから、皆さんとても背が高くてスタイルがよくきれいな人ばかり。男性も皆長身でイケメン率高し。驚くことに、コールプが小さく見えちゃうくらいなんですよ。

そのコールプ王子ですが、皆と踊ったり祝い酒を酌み交わすところなど一見楽しそうにしているのですが、どこか浮かない様子。王妃から弓をもらって、子供のようにはしゃいで見せたりする一方で、女性たちと踊ってもすぐに孤独を感じてしまうような、ちょっと影のある王子様でした。ワルツの時、皆の中に入ってソロを踊るのですが、コールプが入ったとたん急に音楽が極端に遅いテンポになって‥‥その分周囲のざわめきから浮き上がったような感じになって、王子の孤独がひしひしと伝わってくるようでした。

王妃様は、よくあるように「あなたは成人したのだからゆくゆくは王になるのよ」とか、「明日の舞踏会で妃を選びなさい」とか、そういったプレッシャーをかけているわけではありせん。王子のほうは、花の冠を頭に乗せて女の子たちと遊んでいるのを王妃に見られてばつの悪そうな顔をしたり、家庭教師と本の中身についてちょっとおどけたように議論していたり、そういう普通の青年らしいふるまいをしています。でもその裏に、なぜか何をやっても淋しくてやりきれない、そういう二面性の見える王子様なんですね。

≪第1幕・2場≫
そして‥皆が去り、王子は何かに憑かれたように湖へ。相変わらず、顔はともかく踊りはとても美しいコールプ王子。そこへ、白鳥たちが現れます。弓を向けようとしたところにオデットが‥‥王子は一目でその気高さと美しさの虜に。

ヴィシニョーワのオデット。これが、何と言ったらいいか。しなやかな動きは少しも淀みなくなめらかに連綿と続くように見えます。その動きはたおやかな白鳥そのもののようでもあるけれど、やはりその中に生々しく妖艶な「女」が見え隠れして、何だかちょっとミステリアス。

ヴィシニョーワは、もともと役に深く入り込む憑依性をもったバレリーナだと思っていました。それが、見落としがなければ、オデットは最初に出会った時だけしか王子と目を合わせていません。身の上を語るときも、それからアダージョのときも、白鳥に変えられて以来、人間との心の交流ができなくなってしまったかのように、オデットはまるっきり自分の世界に入り込んでしまっていて、王子と視線を交わすことがないのです。それなのに、息苦しいまでの濃厚さ、思いもつかない無防備さで一方的に悲劇の身の上を王子の前にさらしてくる。王子にとってはこれほどの衝撃はないでしょう。孤独な魂が、さらに孤独な異界の存在に出会ってしまった、とでも言ったらいいのでしょうか。

夜明けが近づき、ロットバルトの魔法で、オデットはまた白鳥に戻らなければならない。その場面は身をちぎられるような別れと思っていつも見ているのに、心を通わせていないから、オデットはそのまますう~っともとの白鳥に戻っていくのでした。わあ~今のは何だったんだ?

コールプ王子はもう完全に食われてしまっていました。だって、視線を交わさないのですから、いくら彼が熱くオデットを見つめても、オデットがいる世界とは交流ができない。このもどかしさは何なんでしょう。まるで罠のように、さらなる悲劇が彼を襲うことを予見しているように‥‥‥。

≪第2幕≫
王子が花嫁を選ばなくてはならない舞踏会。王子は貴族の子女たちにはまるで興味を示しません。そこへロットバルトがオディールを伴ってやってくる。このロットバルトって、まるで歌舞伎の「黒塚」みたい。。。いや、この間見た高師直(忠臣蔵)そっくりのヒヒ爺メイク!これじゃ怖すぎて舞踏会に入ってくるどころか門前払いだろうに

そのデーモン様があのお美しい王妃様の横にするっと滑り込みます。あの王座はベンチシートみたいで狭いの お二人が電車の座席みたいにきつきつに膝をくっつけあっているのはちょっと‥‥でしたね。

オディールのほうはもう、これはヴィシニョーワの独壇場。王子なんかかすんじゃってかわいそうなくらいでした。あの濃~いコールプがすっかり毒気を抜かれて、借りてきた猫状態の添え物「白王子」様になっちゃうなんて。ヴィシニョーワ恐るべしです。

ところが、グラン・パの最初のほうで黒鳥が滑って転んじゃうアクシデント。大丈夫かな?と思ったけど、そのあとの巻き返しがまたすごかった。きびきびした強い踊りで、オデットとオディールをきっぱりと踊り分けていました。しかしここまでアグレッシブだともちろん好き嫌いもはっきり分かれてしまうと思います。

私は、どちらかというとオディールはことさら騙そうとせず素のままのように踊る人が好き。ニーナみたいに、そのまんまの愛らしさで観客も王子もいっぺんに魅了されてしまうような。今回ロパートキナを見た友人が、黒鳥のほうはちょっと物足りなかったと言っていましたが、想像するにロパートキナはもう既にそこにある十分な威厳、オーラ、優雅さ、高貴さで黒を白と言わせてしまうような、そんな感じじゃなかったのかなと。

それが‥‥ヴィシニョーワのオディールは、もうほんまもんの「悪魔の娘」でした。オデットの時ほとんど視線を向けてもらえなかった王子を、とろけるような優しい視線で圧倒する。そして王子がぼーっとなったところで、今度は観客のほうをキッと振り返り、「見たわね」と、ぞっとするような邪悪な笑いを見せるのです。こんな息の詰まるほど不敵な黒鳥は見たことがありませんでした。

ガラでこういうことをやる人はいると思います。でも、全幕でこれをやってしまうと‥‥あとから思い出して、あの視線を合せなかったオデットはやっぱり計算ずくだったのかとか、実はオディールよりもオデットのほうが、王子の運命を狂わせようとするロットバルトの仕組んだ最大の罠だったんじゃなかろうかとか‥‥いや、勝手な想像ですけど。どっちにしても、見た者にあとあとまでそういう想像力を広げさせてくれるというのは、本当に素晴らしいダンサーのなせる技だったかもしれません。

かわいそうなコールプ王子。幸福の絶頂でうきうきと花束を渡して、喜び勇んで誓いのポーズをすると‥‥とたんに悪魔は本性を現し(それまでも十分悪魔なんだけど)窓の外の哀れなオデットの姿を見せつける。花束を王子に投げつけて高笑いするオディール。その花を、王子は怒りとともに思いきりまきちらし‥‥(確か、ジゼルでもこの人、最後に百合の花を放り投げたんだよね。こういうパフォーマンスがまたよく似合うんですね)一目散に城を出て行くのでした。

≪第3幕≫
打ちのめされた王子は、オデットのいる湖に戻ってきます。必死に詫びる王子は痛々しいけれど、ここでもオデットは決して王子に視線を向けることがないのです。そしてロットバルトとの戦い。これが、結構あっけなくて、なんだ~という感じなんだけれど。悪が消えて人間の姿に戻れたオデットは、まず自分の腕や指先を見て人間に戻ったことを実感してから、ほんとの最後の最後で、自分の指先の延長線上をたどって初めて王子の熱い視線に行きつく。二人が見つめ合ったのはこれが最初じゃないでしょうか?久方ぶりに人間の心が戻ってきたオデットが初めて王子の存在に気付いたような。

あら、あんたいたの?ここはどこ?私は?‥‥‥じゃないでしょう~それともオデットにとって王子は、人間に戻るための手段でしかなかったのか。ドラマチックではあったけれど、オデットに翻弄されつくした王子が、何だかすごく可哀想になってしまいました。これから幸せになれるといいけど。ハッピーエンドでよかったのか悪かったのか。

というわけで、特にすごい「感動!」というのではないけれど、ヴィシニョーワ&コールプという超個性派ダンサーが紡ぎ出した、珍しくも面白い「白鳥の湖」の世界でした。つい、二人だけを中心に勝手に自分が感じた世界を語ってしまいましたね。その他の覚書きはまた後ほど。

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