バレエ大好き2011

2011年11月22日 (火)

「COLD SLEEP」上映会

ある日突然、「立川シネマシティ」からメールが来ました。最近映画館で映画を見ること自体あまりないし、私の見たい映画というのは特殊なもののことが多いし、近いけれどそこにはしばらく行っていなかったので、メールが来たこと自体ちょっと驚いたのですが‥‥その内容はもっとびっくり!(どうして私の好みがわかったの?・笑)

何と、一夜限りの「COLD SLEEP」上映会!

「COLD SLEEP」とは、昨年10月に新国立中劇場で上演されたヴァイオリニストの川井郁子さんと、私の愛するルジマトフ、そしてパーカッションの方々とのコラボレーションの舞台で、それがさらに映画化され、DVDにまでなりました。(昨年の舞台の感想

しかしながら、最初、この公演のことを聞いた段階から怪しげな感じがしていて、何でこんな企画に天下のルジ様が出演をOKしたのか謎だったのですが(ごめんなさい)、実際に舞台を見たら、もう設定や企画はあの人にとっては全然関係ないのですね。とにかく彼が出ているだけでどんなものでも美しい「物語」にしてしまう力量、全編を覆い尽くすような圧倒的なパワーとオーラにただただ驚いてしまった舞台でした。

それが、映画化されてことしの3月初めから公開され、私も見に行く予定だったのですが、あの震災。計画停電だの何だので予定がつかなくなり、そのうち行こうと思っていたら、途中で打ち切りになってしまったのでした DVDも買ったけれど、一度ぐらいは大きなスクリーンで見てみたかったなと思っていました。

その映画が上演されるという願ってもない機会なので、即刻チケット買いました。しかも川井郁子さんご本人のミニライブ付きのスペシャル企画だったのです。

映画館は、お洒落な雰囲気の建物の中に、大きさの違ういくつかのホールがあるというもので、会場となったところは200名ちょっと?ぐらいの、中くらいよりは小さいかなという程度の場所でした。雨の土曜日の夜、そこがほぼ満席。 生川井郁子が見られるとあって、川井ファンらしいオジサマ方がたくさんおられました。 もちろん、私のようなルジマトフのファンの方もたくさんいたでしょうね。そうでなきゃこんな映画(失礼)誰が見るの?というくらいコアな映画ですもの

川井郁子ミニライブ、最初はバッハの「ガボット」
そしてトーク。

この「COLD SLEEP」は、彼女のデビュー10周年で何か今までと違ったことをやろうという企画が持ちあがった時に、何がやりたい?と聞かれて、まず実現可能かなんて全く考えずに「ルジマトフさんとコラボをやりたい」とボロっと言ってみたのだそうです。川井さんは10年来のルジマトフファンだったとか。彼女にとってはそれが実現した10周年のご褒美のような公演だったそうです。

でも、来ているファンのおじさまたちや、ルジファンの手前もあったのか、弁解らしいこともおっしゃっていました(笑) この舞台のリハーサルが1週間ほどぶっ続けであって、それから5日間の舞台で、ずっとルジマトフと一緒だったけれど、実は挨拶ぐらいしか言葉を交わしてないんですよ、などと。でも、映像ではすごく濃厚な世界になっていて、ここまで自分から引き出してくれたことはびっくりだったとも。
この人は、ことルジマトフに対しては、アーティストとしてではなく、あくまでもファン目線なんだなあと、それはちょっとだけ可愛らしく思えました。

トークの後は、「アメイジング・グレイス」
音量的にはとても小さいのだけれど、低く野太い感じの音で、静かに祈るように、弾いてくれました。小さな会場だったのがかえっていい雰囲気でよかったです。

そして映画の上映。3月の公開時には見ることができなかったけれど、やっと映画館のスクリーンでルジ様を拝めました。しかも地元で。


DVD買ったけど、もしかして私、特典映像しか見ていなかった?と思うくらい、初めて見たような‥‥ひゃ~、こんな感じだったんだ~!私が舞台を見た日にカメラがたくさん入っていたので、まさにそのときの映像だと思うのだけれど、いや、ステージとは全く違う「映像作品」になっていました。

どアップというか、顔のアップがすごいですねあせあせ(飛び散る汗) こういう人たちは常に自分をさらけ出しているから、こんな大アップになってもへっちゃらなんですね。ルジ様も、顔はアップにしちゃうと年相応だけど、ああ、何て美しいんだろう!身にまとうものはほとんどないけれど、指先まで、筋肉の一つ一つまで、ここまで美しいダンサーを、私はほかに知りません。ここまで美しい体型、身体を持ったダンサーはいまだに現れていないと思います。そのルジマトフの身体をなめるように(笑)映しているのはやはりファン必見。でもまあ川井さんの映画なので、カメラはどちらかというとルジ様よりは川井さん中心に映しているので、それがちょっとだけ残念

見終わった感想は‥‥舞台とはまた違った視線で、とにかく「堪能しました」ってことかな。ファン以外誰が見るんだろう?という気はしますが、それでも川井さんのヒーリングミュージック的な音楽と、ルジマトフの迫真の踊りで、筋書き通り(安いゲームやアニメみたいな、なんてさんざん言っちゃったけど)のストーリーを感じさせる作品になっていたことで、一応ルジ様を知らない人が見てもそれなりの感動と見応えはあったものと思いました。

雨の中、シネマ2の面しているモノレール下の通りは、早くもクリスマスのイルミネーションで輝いていました。

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2011年8月 9日 (火)

マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ(7月15日Bプロ)

Aプロに引き続き、Bプロの大変遅い覚書です。実はこの日頭痛がしていて体調が悪く、途中も睡魔に襲われたりして、本当にざっとの印象しかないのですが一応。

「ビフォア・ナイトフォール」
ニーナ・ポラコワ&ミハイル・ソスノフスキー/ほか

Aプロで面白かった赤鬼様とお目目バチバチのシルフィード嬢の濃~いお二人‥‥ポラコワとソスノフスキーが真ん中で、バックに3組の男女が同じ動きをシンクロするようなコンテンポラリー作品でした。

後ろの右側が遅れ気味、と思ったらコケた。ハイスピードで難しい振りでしたが、やっぱり真ん中のお二人はこういうものを踊りなれているといった感じで、動きが全然違いました。Aプロの濃い印象とは全然違って、スタイリッシュでかっこよかったです。

「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
リュドミラ・コノヴァロワ&デニス・チェリェヴィチコ

Aプロで「海賊」を踊ったペアです。相変わらずコノヴァロワは安定したテクニック。チェリェヴィチコはバジルでもかわいいペット系みたいですね。

でも、ちょっと振付が違う?フィッシュダイブのところがアラベスクでプロムナードなんて、一番盛り上がるところなのに。ロン・デ・ジャンプ多用でやたら複雑な振付でもしやと思ったら、やっぱりヌレエフ版でした。同じ「ドン・キ」でも大分印象が違うものです。地味だけどゴテゴテ小技の効いた大人っぽい「ドン・キ」といったところかな?その分チェリェヴィチコくんはコーダで、DVDのルグリもやってない得意の?空中1回転半ひねりフィニッシュを決めて若さを見せてくれました。

「モペイ」 木本全優
黒のバックに黒のスパッツで上半身裸。そうそう、昨年フォーゲルが踊ったのはこれだったと思います。でも、ダンサーが違うと印象が違うのか、フォーゲルはお茶目でコミカルな感じだったと思うけど、木本さんはなかなかシャーップでカッコいい動きでした。コンテンポラリーも得意な様子。

「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト&フリーデマン・フォーゲル

マルグリットは贅沢な都会の暮らしを捨て、田舎で愛するアルマンと暮らしはじめる。その短い幸せな時間を描いた場面。3幕の、黒服を着て踊るバラード1番の通称「黒のパ・ド・ドゥ」と対をなすように「白のパ・ド・ドゥ」と言われているものです。

フォーゲルの、何と素敵な笑顔そして、アイシュヴァルトもその表情に一瞬の曇りもなく、ただただ幸せを表現する。だけどやや?ベテランのアイシュヴァルトからは、若い恋人に対しての引け目や、病気が進んでいることなどをそこはかとなく感じさせるところがあるのですね。

私は割とダンサーの表情を見たいほうなので、全体よりもひたすら顔をオペラグラスでよく見ていたりしますが(笑)本当にアイシュヴァルトの表情に暗さは全くありませんでした。そんなこの上ない幸福感の中でも、後ろから忍び寄る不幸を、表情とは裏腹に踊りで感じさせることのできるダンサーのすごさを感じたパ・ド・ドゥでした。せつない。

「クリアチュア」
上野水香&パトリック・ド・バナ

民族音楽?のような音楽に振り付けたバナの作品。上野さんは、こういった作品も違和感がありません。かなり踊りこなしている感じがしました。Aプロのバナ作品では、振りを踊るだけで必死の形相で表現どころじゃないダンサーいっぱい見ちゃったから、安心して見ていられるだけですごいと思っちゃう。しかし、この悪そうなオッサン(ド・バナ)、実によく踊る‥‥袴が好きなのでしょうか?最後は正座して上野さんに礼。内容的にはよくわからなかったけれど、何か面白かった。

「マノン」より第1幕のパ・ド・ドゥ
ニーナ・ポラコワ&マニュエル・ルグリ

Aプロと同じ場面を今度はポラコワとルグリで。え?と思うほど、全然違うじゃない!
ルグリの踊りはとても音楽的で、あの女性をブンブン振り回すような振付でも見事に音楽とシンクロしているのが目に心地よかったです。さすが、という感じでしょうか。

ポラコワはコケティッシュで、すごく表現力のあるダンサーでした。Aプロだけだったら「あのシルフィードのおばさん」で終わってしまうところでしたが、Bプロでは本当によかったです。

「サイレント・クライ」 パトリック・ド・バナ
休憩はさんで眠気が出てしまったのか、すみません、ほとんど記憶が‥。

「グラン・パ・クラシック」
リュドミラ・コノヴァロワ&ドミトリー・グダノフ
「待ってました!」というのは私だけかもしれないけれど(いえ、そんなことないよね?)‥‥Aプロのところで書いたとおり、私はこのグダーノフ目当てでこの公演を見に行きました(笑)AプロもBプロも一つずつしか踊らないし、果たしてこの演目が彼に合っているかも疑問ですが、とにかく代役でも何でもこんな時期にためらわずに日本に来てくれた彼に感謝です。

前に「徹底的にボリショイ」というドキュメンタリーが放送されたことがありました。イギリスから来た若手振付家が、いかにも伝統的な感じのするボリショイのトップダンサーたちとすったもんだしながら一つの作品を作り上げるというものです。その中で、振付家のいい加減さにへそを曲げて降板したツィスカリーゼのかわりに主役になったのがこのグダーノフ。その謙虚で誠実そうな姿にめちゃくちゃ好感持ちました。今回もそんな感じでしょうか。急遽日本に来ることになって、慣れない(ですよね?)ヌレエフ版「白鳥」を踊ることになったりしても、しっかりやるべきことをやって。この「グラン・パ・クラシック」もそれはそれはエレガントなところをちゃんと見せてくれました。

コノヴァロワは軸はぶれないしバランスも得意なんですね。そしてこの公演4回目のグランフェッテ‥‥そうですよ!今回彼女が踊ったのはガラ公演のトリを飾るような華やかな演目ばっかりです。「海賊」「黒鳥」「ドン・キ」そしてこの「グラン・パ・クラシック」‥‥よくも一人でここまでと感心してしまいます。またそれだけのものを見せられるプリマオーラのあるダンサーだと思いました。

しかし、そのたくましい上半身とどっしりした重量感は、パートナーが線が細くて弱々しい感じのグダーノフで大丈夫か?‥‥という感じ でも、そこは天下のボリショイのプリンシパル。大変ノーブルでラブリーでよろしゅうございました。こんなに白タイツが似合う「王子」な人はいないと思います。頂点で手足が気持ちよく伸びる、滞空時間の長い優雅なジャンプに「はあ~」っと見とれてしまいました。前回のボリショイの来日公演でにわかファンになったけれど、グダ様、やっぱり今もファンです~(何を言っているんだか)

「カノン」
デニス・チェリェヴィチコ、ミハイル・ソスノフスキー、木本全優

カノンの繰り返すメロディにのせて、今まで見てきてすっかりお馴染み?になったウイーン国立バレエの3人のダンサーがかわるがわる出てきて、同じようだけど同じでない各パートを踊るという、ちょっと楽しい作品でした。一人一人身体も、雰囲気も違うダンサーが、それぞれの個性を発揮して踊っているにもかかわらず、最後に3人になったときには不思議な調和が生まれていました。赤鬼様の(勝手に言ってます)ソスノフスキーは最初の印象が悲惨だったけれど、なかなか渋カッコいい人だったんですねえ。

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
バルボラ・コホウトコヴァ&フリーデマン・フォーゲル

フォーゲル君かわいい~!(って年齢でもないと思うのだが)踊るときに自分の位置まで行くときに走っていくの。そういうはつらつとした感じがいかにも「かわいい」です。ヴァリエーションでは伸びやかでダイナミックなジャンプも見せてくれました。ただし、足音はかなりしてました。
最後、ちょっとタイミング合わなくて失敗したところもあったようだけれど、スピード感があって爽やかでよかったです。コホウトコヴァは上半身もう少し柔らかく使えればいいのに、とは思いました。

「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト&マニュエル・ルグリ

AプロBブロの最後を飾る共通演目。見る度に深みを増してくる作品。そして改めて音楽の選択と振付のすごさに驚いてしまう。人間の心の機微を余すところなく振りに写し取る力。だからそれを再現する力量のあるダンサーなら、ただ踊るだけでも十分伝わると思うのだけれど、その上にさらなる表現を幾重にも重ねていけるダンサーもいるのです。そういう超一流のダンサーでこそ、何度でも見たい演目だと思いました。

初日のAプロのときよりもさらにドラマチックになっていました。ただ、やっぱりルグリの「いい人オーラ」が‥‥でもそんなルグリの演じるひたすら一生懸命なオネーギンを見ていると、また別の見方も出てきました。

オネーギンって、ものすごく身勝手でひどい男だけれど、人妻になって垢ぬけたタチアーナを久々に見て、もしかしたら一目ぼれに近い感情だったんじゃないの?とか。昔のことなど忘れていきなり情熱的な手紙をよこすなんて、普通はできませんよ。だから、昔自分が破ったタチアーナの手紙のお返し?に、今度は自分の純情をタチアーナに破られる。もちろん、タチアーナは万感の思いを込めてでしょうけれど。

オネーギンはもしかしたら本当のロマンチスト?ニヒルな外見とは裏腹な面があるのかもなんて。あの本気で恋い焦がれているようなルグリを見たら、そんなふうにも思えてきて、それはそれで胸に迫るものがありました。

そして、やっぱりアイシュヴァルトのタチアーナに泣けた 若かりし日のあこがれ、心の痛み、失った時間、今の幸せ、そしてそれを天秤にかけてしまいたくなるほどの誘惑、それから人としてはねつけなければならないという強い意志。見ているといろんなことが頭をよぎる。アイシュヴァルトは見えている踊り以上のドラマを観客に見せてくれるダンサーなんだなあと。感動しました。

予定外で、急にチケットをとって行きましたが、見応えのある素晴らしい公演でした。ただ、やっぱり時期的なこともあって、たてつづけに見てしまったことで、楽しみにしていた「バレエの神髄」のミーハー的余韻にあまりに浸れなかったことだけがちょっと残念‥‥だったような

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2011年8月 8日 (月)

マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ(7月13日Aプロ)

Img_0001_2ほんとに、もうかなり時間がたってしまいましたが、一応の感想です。この公演もまた、震災&原発事故の影響で不参加のダンサーが続出、一時は公演そのものの開催も危ぶまれるような(ニコラのほうは中止になってしまいましたし)状態だったろうと思うのに、ルグリって本当に律儀というか、義理がたい人なんですね。こんな時期でもかわりのダンサーをかき集めて公演をやってくれた。もうそのことだけでありがたい気がしました。

で、ⅡというけれどⅠはいつだった?と思ったら意外に最近で、昨年の2月だったんですね。あのときはギエムも来て、ルテステュやオレリー・デュポンもいて、よく考えたらすご~く豪華でした。今回はそういう意味では自前?のウイーン国立バレエのダンサーが多くて地味だけれど、それなりに見応えがあっていい公演でした。カーテンコールのとき、最後にルグリが参加ダンサーの一人一人に花を配って感謝の意を表していたのにはぐっときました。本当に、こんなときに来てくれてありがとうと、こちらからもたくさんの拍手でお返ししたくて最後は立ちあがってしまいましたよ。ルグリの日本に対する愛情がすごく感じられてうれしかったです。

「ホワイト・シャドウ」
マニュエル・ルグリ、パトリック・ド・バナ/東京バレエ団

前回Ⅰのときが初演で、テレビでも放送されましたよね。でも、よくわからなかった。真ん中の吉岡さんがずっと追い詰められたような不安そうで怯えた感じで、右に西村さんとルグリ、左に上野さんとド・バナ‥‥実はちょっと寝てしまったようで記憶が‥

チョイ悪オヤジ風のバナと、真面目オヤジそうなルグリが、テレンとした袴のようなものをはき、上は黒ベストという異様な姿ながら実に楽しそうに踊っていて、何かとても不思議な作品でした。しかし、いつも思うけれど、ルグリってルジマトフより一つ下なだけなのに、何とすごい体力なんだろう?まだまだずっと現役で踊れそうです。

「海賊」よりグラン・パ・ド・ドゥ
リュドミラ・コノヴァロワ&デニス・チェリェヴィチコ

もう、舌をかみそうな名前なんだけどね、若手のチェリェヴィチコ君。この子がとってもかわいかった(笑) そもそもアリって、ルジマトフのファンの立場でいえば誰が踊ったって絶対不満。でもこれは全然別物ですね。大体色白ぽっちゃりの奴隷って逆に面白かったです。

かわいいと思っていたら、コーダで何やらわけのわからない技を2回連続で繰り出して観客唖然。いきなり斜めきりもみ風回転ジャンプ‥‥こう書いてもわけがわかりませんね。「今の何?」という技でした。意外にテクニックは強く、特に回転系が得意なようで、くるくると何回も器用に回ります。ちょっと注目してしまいました。

コノヴァロワはモスクワ出身でウイーン国立バレエのプリンシパルだそうです。ヴァリエーションはガムザッティのヴァリエーションを踊りました。ちょうど前日マツァークが踊ったものと同じです。比べるのはどうかと思うけれど、回転の軸はぶれないし、キレもスピードも断然コノヴァロワのほうがよかったです。でもこの方、パワーもプリマオーラもばっちりなんだけれど、上半身がたくましくて、胸もあるためかなり重量感と貫禄があって‥‥そういう意味ではチェリェヴィチコ君はちゃんと彼女にお仕えする「奴隷」になっていましたね(笑)

「マノン」第1幕のパ・ド・ドゥ
バルボラ・コホウトコヴァ&フリーデマン・フォーゲル

4月には来れなかったフォーゲルも今度は来てくれました。馬のシッポみたいな付け毛をつけて、羽ペン持って書きものしている姿がキュートやっぱり華があって、つい見入ってしまう。人気のほどがわかります。

「マノン」ってひどい話。こんなにこれでもかというくらい抱擁を繰り返し、幸せの絶頂にいるような二人なのに、すぐ後にマノンはお金のためにコロっと心変わりして、そしてお互い深く傷ついて、最後はボロボロになって終わる話。だからこの場面が幸せそうなら幸せそうなほど、行く末が見える観客は泣けてしまうのです。フェリで見たのが最初だけれど、結構誰が踊っても感動してしまうのは振り付けの妙があるからでしょうか。こういうドラマチックな演目があるからヨーロッパ系のガラは面白いな~。

「アレポ」
ミハイル・ソスノフスキー

ベジャールの同名作品の一部だそうです。が、これってイジメ?いや、ギャグ?ってくらい、赤のターザン風?オールインワンのレオタードで出て来たソスノフスキーを見た瞬間吹いてしまった。(ごめん!)だって、プロレスラーみたいなマッチョな雰囲気の彼にこの衣装は、手足がよけいに短く見えるし動きも変な動き。

顔はなかなか彫が深くてハンサムで、昔のハリウッドスターみたいな感じなんだけどね。(ハンサムなんて古い言葉を使うのは、つまり昔風ってこと)それなのに、何でこんなに笑えるんだろう??これを最初に見てしまったのが運の尽き。あとでこの人が何を踊ってもこれを思い出して赤鬼さんに見えてしまい、おかしくて困りました。

「ラ・シルフィード」第2幕より
ニーナ・ポラコワ&木本全優

続いてこれもちょっと笑える‥ごめんなさいシルフィードのポラコワがずっと同じ貼りついたような最大の笑顔で‥‥こんなのも初めて見たような気がします。なりきりかたがすごくて引いたというか、ニッと歯を見せて笑ってお目目くりくりのお顔。まるで男性コメディバレエみたいで笑えちゃって。でもこの人、Bプロではとてもよかったんですよ。それなのに、最初に見たときの印象ってあとを引くんですよね。あのシルフィードの‥‥というのがついてまわって。でもまあ、楽しかったです。

前日の「バレエの神髄」でも「ラ・シル」がありましたが、あちらはブルノンヴィル版で、こちらのほうは同じ「ラ・シル」でもラコット版。パリ・オペラ座の振付家ラコットが初演の頃の古い資料をもとに復元したものだそうです。場面は同じ場面のようだけれど、音楽も全然違うんですね。東京バレエ団のコールドが付いていました。

ジェームズ役はウイーン国立バレエの準ソリストという木本さん。まだ若そうだけれど、大柄なのにお顔が小さくとてもバランスがいいのです。つま先がきれいで、細かい足さばきも軽やかで見惚れました。ただ、容姿は日本人として現実的な容姿で‥もうちょっと何とかなれば‥あ、いや、よかったですよ(笑)

「白鳥の湖」より黒鳥のパ・ド・ドゥ
リュドミラ・コノヴァロワ&ドミトリー・グダノフ、ミハイル・ソスノフスキー

前日見たボリショイペアの「黒鳥」がひどかったので、お口直しにグダーノフの「これぞボリショイ!」というような超一流の王子様を拝みたいと思っていたのですが、何とヌレエフ版だったんです。ウイーン国立バレエというのはヌレエフと深いかかわりがあるようで、これをレパートリーにしているんですね。

実はこの公演、最初は「どうせルグリも来ないだろう」と思ってチケット買ってなかったのです。見ることにしたのはこのグダーノフが出演することがわかってから!何がうれしいって、来年のボリショイ来日公演のメンバーに入ってなくて、もう見られないとあきらめていたグダーノフが見られたこと。ルグリとグダーノフという結びつきはちょっと想像がつきませんでしたが、誰の代役かわからないけれど、彼を呼んでくれて感謝感激。前回のボリショイ公演で最高に素敵な王子様を見せてくれたグダーノフがまた来てくれて本当にうれしかったです。

さて、ヌレエフ版ではこの場面、ロットバルトとのパ・ド・トロワのようになっています。マントの陰からぬっと現れたのは何と先ほどの赤鬼様!あのイメージが残っていて、この人が真面目な顔をすればするほど笑えてしまって困りました。

グダーノフはいつもと勝手が違いそうで、初日モードでもあるのか、何となく覇気がありませんでした。最初の着地でもちょっとひやっとしてしまったし。それでも、超ノーブルな滞空時間の長いジャンプ、音のしない優雅な着地はそのままでした。予想通りの実にうるわしいスゥイートな白王子様にめちゃ萌え。(なんて臆面もなく書いている自分

ヌレエフ版って、ひ弱な王子が家庭教師(実はロットバルト)とオディールに思う存分責められまくるんですよね。けしかけられ、誘惑され、ふらふら~っとなったところでピシャっと拒絶される。そのたびにシオシオと傷つく王子。そしていつしか魔法にかかって前後の判断もできなくなる‥‥もうその姿に萌えてしまってああ、この満席の会場で彼だけを見に来た人間は私ぐらいかなあなんて(そんなことはないと思うけど)マイナーな?よろこびに浸っておりました。慣れないと思われるヌレエフ版だし、調子いまいちのようでもあったけれど、私にとっては十分チャーミングで素敵な王子様でした赤鬼様も、パワフルなコノヴァロワもよかったです。コノヴァロワはこの日二度目のグランフェッテ・アントゥールナン(笑)

「ファンシー・グッズ」
フリーデマン・フォーゲル/東京バレエ団

何が「ファンシー」なのかよくわからない。それを言ったら最初の作品も何が「ホワイト」なのか?
フォーゲルのコンテ作品は前にも見て、多分同じ振付家だと思うけど、同じように背中ばっかり見せるもので、そんなに見せたいような背中じゃないでしょう!せっかくのイケメンなのに、顔を見せなさいよって(爆)思ったことがありました。

こちらもまたカニ歩きとか、ウルトラマンシュワッチみたいなおかしな動きで、コミカルな感じもするんですが。彼の良さを現しているかといえば、よくわからないです。ただ、やっぱりかわいい。黒子隊が持つどピンクの羽の扇に隠れたりして。ファンシー・グッズって、フォーゲルくん自身かしらん。

「オネーギン」より第3幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト&マニュエル・ルグリ

本公演の目玉演目。本来ならオレリー・デュポンと最後の共演?(この演目かどうかはわからないけれど)ということになるはずでした。でも、アイシュヴァルトの出演が決まって、この演目の上演が実現したとプログラムには書いてあり、かえってよかった(!)という観客もいたのではないでしょうか。

「手紙のパ・ド・ドゥ」と呼ばれ、第1幕の「鏡のパ・ド・ドゥ」と対をなす名場面。ルグリは2005年にシュツットガルトバレエ団の来日公演のゲストとしてこの作品を全幕で踊っているようですが、その時期、ちょうど私はほとんどバレエを見てない時期だったんですよね。今思えば本当に残念。見たかったです。ルグリはパリ・オペラ座を引退する際、引退公演に「オネーギン」を選んでいるのはよほどこの演目に深い思い入れがあったからだと思います。幸い2007年のルグリガラで、ベスト・パートナーといわれたルディエールと踊った「手紙のパ・ド・ドゥ」は見ています。その頃はまだ全幕の「オネーギン」を見ていなかったから、この場面が物語の中でどういう位置を占めるのかわからなかったけれど、今回少し理解が深まったところでまた見ることが出来てよかったです。

圧巻でした。アイシュヴァルト最高!泣けました。身勝手なオネーギンに翻弄されながら、それでも抗いがたく惹かれてしまう心と、もう昔には戻れないという相反する強い気持ちが伝わってきて、振付の妙ともあいまって胸に迫りました。すごいな。

だけどルグリ‥‥ひたすら求愛モードなんだけど、この人本来の生真面目そうな「いい人オーラ」が邪魔をして、ちょっと違うんじゃない?という気もしないでもありませんでした。ルグリファンの方には申し訳ないけれど、魔性のひとかけらもないんですよ‥‥(魔性120%のお方のファンの言うことですので聞き流してくださいませ)オネーギンってある意味「魔性の男」なんじゃないでしょうか。乙女心をふみにじり、妹にちょっかいを出し、友人を決闘で殺してしまう。そんなひどい男でも、たとえうらぶれてしまっても、抗いきれないような魔性の魅力でタチアーナに迫ってくる。それでこそオネーギンだと思うのですが。私が前に見たバランキエヴィチ、あるいはもう廃番になってしまったLDの映像のフランク・オーギュスティンのように。

ルグリのオネーギンは、この場面だけでいえばひたすら純愛路線で訴え、懇願し、逃げるタチアーナに覆いかぶさろうとするうっとおしい男(笑)‥‥それでも、これはこれでいいのかな。やっぱり振付がいいんですよね。その振付をこなすダンサーもすごい。振付の中にもうすでに表現すべき感情が全部入っていて、それを身体で正確に具現しながらさらにその上にダンサー自身の+αが加わっていく妙。また音楽がここがクライマックスとばかり盛り上がっていくのもいい。確か「鏡のパ・ド・ドゥ」と同じ旋律もあったような気がします。せつない大人のドラマをベテランのダンサーで見る楽しみを堪能しました。

前日の「バレエの神髄」に来ている観客は、多分100%近くルジマトフのファンだったのでは?(ルジマトフ嫌いであの公演は見れないでしょう?)そして、ルジマトフ好き≒ミーハーで(そうない人、ごめんなさい)会場の雰囲気ももうすっかりそんな感じでした。

それがこちらは、ルグリのファンもいればフォーゲルのファンもいる、それからアイシュヴァルトのファンもいるといった具合で、会場の雰囲気はこのプロモーターが長年「バレエの祭典」や「バレエフェス」などで育ててきただろう高尚なバレエファンの方々の熱気でいっぱいでした。そして、そういう人たちにルグリは本当に愛されているんだなと感じました。派手にキャーキャーは言わないけれど、会場の拍手は本当に熱い。それに熱く応えてくれるルグリもまた素晴らしいと今さらながら思ったことでした。

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2011年8月 1日 (月)

「バレエの神髄」(7月12日)

Img11041901今年前半のサボっていた分を一応書いたので、これで次に見たのをすぐ書けるぞ~と思っていたら、またもや中断してしまいましたもうあれから3週間もたってしまったなんて早いなあ~。待望の「バレエの神髄」だったのに。

新宿文化センターの公演2回が中止となってしまったので、12日の文京シビックホールが唯一の東京公演となってしまいました。大好きなルジマトフの公演、いつもは行ける限り行っていたのに、今回は名古屋、大阪に追っかけする予定もなく、3回のつもりがたった1回見ただけということになってしまいました そのあとすぐルグリの公演を見たりしたので、あんなに待ちに待っていたせっかくの「バレエの神髄」の印象が、今となってはちょっと薄れてしまったことを残念に思います。

6月は歌舞伎に夢中だったので、何だか久しぶりのバレエ観賞みたいな気がしました。そのせいか、幕が開いてダンサーたちが出てきたときは「ああ、何て軽やかなんだろう!」って改めて感動してしまいました。バレエっていいなあ~。

≪第1部≫
「マルキタンカ」よりパ・ド・シス
エレーナ・フィリピエワ&セルギイ・シドルスキー/キエフバレエ

「コッペリア」の振付で知られるアルテュール・サン・レオンの振付、音楽は「エスメラルダ」や「パ・ド・カトル」を作曲したプーニ。「ラ・ヴィヴァンディエール」という全幕バレエ(ロシア名が「マルキタンカ」)からの抜粋というパ・ド・シス。その全幕自体はストーリーといっても何だかありきたりで、今ではこのパ・ド・シスぐらいしか上演されていないようです。4人の女性と、一組の男女で踊られる作品。

もう、皆さんスタイルがよいの。フィリピエワもかなりベテランなはずなのに、本当に可愛い~しなやかで、軽やかで、まるで小鹿のよう。小柄だけれど、現れただけでその場がぱあ~っと明るくなる。華があるんですよね。シドルスキーも長身の上に手足がすう~っと伸びて本当にノーブル高くジャンプしても足音一つしないのが不思議です。1年ぶりに見たけれど、シドさん、おぐしのほうはもうこうなったら全然気になりません(笑)

特に何もストーリー的な展開はないのですが、4人と2人が5人と1人になったり、2人ずつになったり、はたまた全体で一つのフォーメーションをつくったりと、楽しげな作品でした。

「瀕死の白鳥」 白河直子
あえて舞台サイドや正面の幕を全部取り去り、ライトや、バックのパネルなどがむき出しになった舞台に椅子が一客。最初は無音で始まります。ジャンルはコンテンポラリーなのだろうけれど、しなやかな動きの中に時折鋭く力を発するような動きがあり、まるで武術のようでもあります。きっちりと計算され統制された動きであるにもかかわらず、奔放で野生的にも見え、細くて小柄な白河さんの身体から不思議なエネルギーが発せられているようでした。

実は、先月名古屋に行ったときに、愛知県芸術劇場と同じ建物内にある愛知県文化情報センターの「アートライブラリー」というところに行って、2005年に上演された「ダンスオペラ3~UZME」という作品の映像資料を見てきたのです。ビデオには、ルジマトフと白河さんと、もう一人新上さんという3人のダンサーの踊りが入っていました。作品全体は「何じゃこれ?」なんですが、この3人の踊りだけが異次元で、神々しく、素晴らしかった。知らなかったけれど、こんなところでルジマトフと白河さんは共演していたんですね。

「ライモンダ」第2幕よりアダージョ
アンナ・アントーニチェワ&ルスラン・スクヴォルツォフ

グリゴローヴィチ版の、白いマントのジャンとライモンダの踊り。全幕では無事帰還したジャンが、留守中ライモンダに言い寄ったアブデラフマンに決闘で勝ったあとの、2幕最後の踊りです。ガラではよく見ますが、ボヤっとした音楽とスローテンポの変なリフトで眠くなってしまう演目。アントーニチェワは結構なベテランなのでしょうか。スクヴォルツォフはマントの似合う白王子系でしたが‥‥アダージョだけなのであっという間に終わってしまいました。

「ラ・シルフィード」よりパ・ド・ドゥ
カテリーナ・ハニュコワ&岩田守弘

失礼ながら岩田さんのキルト姿??と思って引いていましたが、意外と可愛く似合っていました。ブルノンヴィル版の軽やかな足さばき‥‥というよりはアスリート系?岩田さん独特のエネルギッシュな踊りになっていました。

ハニュコワは昨年キエフバレエの夏ガラで見たときも初々しくてとてもかわいかったけれど、ことしはそれ以上にキラキラと輝いて見えるくらいきれいになっていました。スター誕生って感じでしょうか。小柄で軽やかで可憐で、妖精そのもののような好きなタイプのバレリーナです。

「シャコンヌ」 ファルフ・ルジマトフ
小柄な女性ヴァイオリニストが舞台に上がり、バッハの「シャコンヌ」を弾きはじめると、舞台奥の黒いバックに黒シャツ黒パンツに身を固めたルジマトフが浮かび上がる。黒に黒なので、まるで彼の大きな語る手だけが闇に舞っているかのようです。昨年「COLD SLEEP」のときに見ているけど、それともまた違った端正な緊張感。

こう言ったらなんだけど、音が全然違うんですね。ものすごく繊細な音色。そして、踊りもそれに呼応するような、シャープで繊細で、より陰影のあるものに進化していました。ここ数年のルジマトフは、ほかの踊りも全部そうなのですが、まるで茶道などのように、繰り返し繰り返しきちんと手順を踏んだ修練を重ねることで、それが一部の隙もなく連続した一本の線上の、流れるような動きになって見るものを魅了する。すべての無駄がそぎ落とされた、気品ある軌跡をつくりだしているように思えます。派手な動きはないけれど、優雅で繊細な音色とともに、いつまでも心に残る踊りでした。

「バヤデルカ」第2幕より パ・ダクシオン
ナタリヤ・マツァーク&セルギイ・シドルスキー

幕が開くと何これ?のピンクピンクの世界。そういえば今まで見たキエフバレエって、どれも舞台美術や衣装がかなり悪趣味だったのでした。昨年の学芸会みたいな「シェヘラザード」のセットが目に浮かんでしまいましたよ。あれよりはマシ?いや、やっぱり変!

ここは全幕でも一番ゴージャスな場面なのに、コールドがショボすぎます。特に脇の二人の男がひどくて、両脇を支えてジャンプのところはタイミングが合わないわ、二人で脚を支えたリフトのときはぐらつくわでいいところなし。

マツァークは何回か見ているけれど、独特な雰囲気を持ったバレリーナです。大人っぽい美人というか、エキゾチックというか。どちらかというとガムザッティよりニキヤのほうが似合うタイプかも。この日は調子がよくなかったのか、極度のX脚ということもあるのか、軸がぐらぐらで、イタフェはいいけどフェッテは安定感なくてダメダメでした。

シドルスキーも、何を踊ってもきれいだけれど、ソロルというには優雅で王子な感じになっちゃって何か違うんだよね‥‥そう、人がよさそうでダメ男らしくないところ。やっぱりソロルはルジマトフよ(笑)

「扉」 イーゴリ・コルプ
バックに流れる白黒の映像。扉を開けて街に繰り出すけれど、それはいつの時代か、早回しのような、かなりレトロな映像です。コールプは‥‥というと下手のかなり端っこのほうから現れて、何かよく見えなかったけれど、幕の中にいる誰かに支えられてポーズをとったりしていたような。

そして、ベージュのパンツ一丁のコールプは、遠目にはほとんど全裸!という感じに見えます。でも、いつもの泥棒メイクと違って、ナチュラルメイクで若々しく見えました。いつもこうすればいいのに。そして踊り出すのですが、バックの映像に気を取られて‥‥と思ったら、実はこれ、コールプ自身とスクリーンに映ったシルエットの、二つのシンクロした動きを見せる趣向ではなかったでしょうか。最後は上手でばったり倒れて、幕の中の人に引きずられて終わり。いかにもコールプらしい変わった、面白い作品でした。

「白鳥の湖」より 黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ
アンナ・アントニーチェワ&ルスラン・スクヴォルツォフ

ボリショイの二人による、グリゴローヴィチ版の「白鳥の湖」ですが‥‥こんなにニコニコ楽しそうなオディールって初めて見ました。二人でピクニックにでも行くのか?踊りもガチャガチャしてて落ち着かないし。そして、最初の演目で危惧したとおり、ホントにこの人たち天下のボリショイのプリンシパルなの?って疑っちゃう。少なくとも「バレエの神髄」なんて大仰なタイトルの公演に出すようなものじゃない。あまりキエフバレエ色が強くなっても‥‥という感じでもう一枚看板を加えてみただけのような気がします。もちろん、そのあとの公演でよくなっているかもしれませんが、東京公演では残念な感じでした。

「ボレロ」 ファルフ・ルジマトフ
この公演のために新たに制作し、急遽持ってきてくれた新演目。舞台上には二つのかがり火。上半身裸で、下は何か黒の袴のような?太いテレっとしたパンツのような衣装。ムム、これじゃせっかくの見事な脚の筋肉が見えないじゃないですかって‥‥振付は、岩田さんではありませんが、「阿修羅」や「COLD SLEEP」と似たような路線で、リズムの取り方もベジャールの「ボレロ」の呪縛から脱しておらず、特に目新しい作品ではないようでした。

‥‥が、この「ボレロ」が一番感動的だったのです。ある意味期待の「カルメン」よりも。一つの旋律が繰り返され、次第に盛り上がっていく20分弱もあろうかという長い曲の間、たった一人で観客の目を釘付けにしてしまうルジマトフのすごさ。ほんの一瞬もよそ見など出来ないくらい、その気迫に圧倒されました。

この人って、やっぱり踊ることに命をかけているんですよね。1月には怪我で走ることもままならなかった彼が、この長い踊りの中、飛んで、回って‥‥しっかりあの時のリベンジをしてくれた。そして何より、彼の「祈り」が伝わってきたのです。遥か昔、日本に伝わってきた西方の神々。阿修羅も、帝釈天もこんなふうだったかなと遠く思いをはせ、思わず涙してしまいました。

多少、まだ海のものとも山のものとものうさん臭さはあったけれど、多分大阪、名古屋と回を重ねるごとによくなっていく作品だったと思います。その深化の過程を見られた方がうらやましい!

「カルメン組曲」
エレーナ・フィリピエワ、ファルフ・ルジマトフ、イーゴリ・コルプ、セルギイ・シドルスキーほか

以前、ザハロワ&ウヴァーロフや東京バレエ団などで何回か見ていますが、そのどれとも違う「カルメン組曲」でした。

感動よりは、何かツボにはまったというか‥‥もう意外や意外!以前フラメンコで見せてくれたセクシーなホセとはかなり違っていました。何とあのルジマトフがとってもかわいかったのですよ()ファンになってこのかた、素敵だとか超カッコいいとか素晴らしいとか思ったことは何回もあったけれど、よもや彼が「萌え」だったり「かわい」かったりするなんて思ってもいませんでした。

最初の、上官に服従しているようなカクカクした動き。それが真面目で忠実な部下としてのホセの性格を現しています。しかし、カルメンと出会ってから、だんだんと彼女の魅力に抗えなくなって、ついに殻を破ってしまうのです。軍服から赤の衣装に変わってからは、人が変わったようにせつなくてかわいいどうしようもなく惹かれてしまうのに、自由なカルメンの心を自分だけのものにすることはできない‥‥そのせつなげな表情!かなりヤバいと思いました。48歳にして胸キュン路線に転換か!(?)

フィリピエワのカルメンは、カルメンにしちゃ線が細いような気がするのだけれど、十分妖艶で蠱惑的なカルメンでした。肩をくりくりっと動かすしぐさがとてもかわいい。コールプのエスカミーリョは‥‥妖しい腰の動きといい、何か花形闘牛士(つまりスカッとしたスポーツマン)というよりは、もっと怪しげな変な人のような感じなんだけど(どんな変な人?)本人ノリノリでやってくれたのが、さらにコワイ人になっていました。。。

アロンソ版のホセは何と、かのルジマトフでも初役。本人もずっと踊りたかった役だそうです。彼ほどのスターでも長年の夢がかなったという思いがあったのか、ルベランスの最後に他の出演者に向かって深々と頭を下げ、感謝の意を表していたのにはちょっと感動してしまいました。

そしてまた、恒例の熱烈ファンからの花束贈呈。あとからあとから豪華な花束が贈られるあの「花束隊」がことしも健在で、ああ、まだまだ日本も大丈夫だ‥‥なんて何の根拠もないのに無性にうれしくなってしまいました。ルジマトフのちょっとはにかんだ顔、おばさま方の幸せそうなお顔が拝見できて、私もとても幸せでしたありがとう。ルジマトフも、ルジマトフのファンの方々も、みんなみんな大好きです

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2011年6月20日 (月)

2011年前半観賞記録(バレエ編その2)

前回の続きで、ことし上半期に見たバレエのおくればせながらの記録です。

Img_0003 5月は待望のイリーナ・コレスニコヴァを見ることができました。延期になっていたサンクトペテルブルグ・バレエ・シアターの「白鳥の湖」(5月8日)です。これもどうせなら2回ぐらい見たかったけれど、ちょうど5月の栗さまイベントの最中だったので、1日だけでした。

ところが、もう一目見て彼女(コレスニコヴァ)が大好きになってしまいました。そのくらい魅力のあるバレリーナだったのです。第一このチラシのオディール‥‥とっても悪そうな表情ですが、これ見ただけでもうゾクゾクしますよね。本当にこのとおりの、久々にゾワッとくる魅惑の舞台でした。

プロフィールを見ると、イリーナ・コレスニコヴァは98年ワガノワ卒なんですね。98年組というと、レニングラード国立バレエではペレン、シヴァコフ、プハチョフ、ステパノワなど、まだまだいると思いますが、かなりの主要メンバーがみんな同級生なんですよ。マリインスキーでは誰がいるのかわかりませんが(イリーナ・ゴールプ?)この年はすごい年だったんですね。

チケットの先行販売特典でもらったDVD(中身は販促・宣伝映像でした)によると、サンクトペテルブルグ・バレエ・シアターは、ロシアでは唯一の民間のバレエ団ということです。設立者でオーナーのタッチキン氏は実業家で、バレエ畑の人ではなかったというのも驚きでした。ロシアの伝統として伝わるクラシックバレエ、それをそのまま海外に持って行けばうまい興行になると思いついたようです。

そして最も驚きなのは、このバレエ団の看板はイリーナ・コレスニコヴァただ一人。このイリーナを「発見」したのが一番の収穫とタッチキン氏が自ら言うように、彼女は逸材には違いないと思います。ただ、毎回毎回主役を踊り、2007年などは看板の彼女が妊娠で踊れなくなったために来日公演自体が中止‥‥これには驚きましたね。でもそうやって絶賛される彼女のオデット&オディールをようやく見ることができてよかったです。

何たって、彼女は「白鳥の湖」を700回以上踊っているというのです。途中まで数えていたけど、もう数えられなくなったと言っていますが、これは絶対ギネスブックものでしょう。何かの映像の中でプリセツカヤが、政府の高官や外国の要人の前で「白鳥の湖」を何百回も踊らされたと言っていたのが印象的でしたが、それは否定的な意味で、同じ作品をそんなに踊るのはもううんざり、新しい作品を踊りたくて仕方がなかったという話でした。ところがイリーナは、何度踊っても新しい発見があり、飽きることはないと言っています。そのとおり、まだ30そこそこだと思うのに、彼女の踊りはもう「自在の境地」なんですよね。驚きました。

これは素人受けのする古典作品しか上演しない民間のバレエ団だからこそでしょう。マリインスキーなどにいたらとてもありえません。第一層の厚さが全然違うし、現代作品など、いろんな作品を上演しているから、たとえロパートキナだって一人でそんなに白鳥を踊ることはできませんよね。

一方で、多分イリーナの体型からいって、どんなにテクニックが優れていてもマリインスキーではプリマにはなれなかったんじゃないかなという気もします。マリインスキーでは、ロパートキナ、移籍したザハロワ、テリョーシキナ、ソーモワなどのように、長身でありえないくらいすらっとした姿態と、長い首と手足のラインが要求されると思うのです。イリーナが体型的に劣っているというわけでは全くありませんが、そういうタイプではないということ。どちらかというと彼女の濃い演技力からいって、マリインスキーに入っていたらキャラクターダンサーになってしまうところだったんじゃないでしょうか。

彼女の踊りは、見るほうも物語の中に深く浸ってしまって、言葉では言い表せません。こんなオデットも、こんなオディールも見たことない!って感じ。ただ、腕の可動域が恐ろしく大きく、背中が柔らかく、腕は骨がないと思うくらいクネクネ。自在に身体で語ることができるのです。これには絶対好き嫌いがあるでしょうが、本当に「ヤバいっ」てほど。多分クラシックバレエの規範から外れるぎりぎりのところまでいっている表現なのでしょう。オデットは清楚なのに恐ろしく官能的。一人で立っているのもやっとなくらい王子にしなだれかかり、離れるときはもうそのまま息絶えそうなくらい。観客は完全に感情移入してしまい、身を切られるようなせつなさを味わうことになります。

そしてオディールの何という妖艶さ!毒を持ったものの絶品の味とでもいうのでしょうか。王子だけでなく、ぐいぐいと観客の心まで引きずり込んでいく自信に満ちた表情。テクニックもまたすごくて、特にグランフェッテは全盛期のニーナ以上の超高速で、しかもフィギュアスケートでよくやる、回転しながら手を上にひらひらっと上げていくような技も見せ(そんなことしても低速では全く意味がありません‥)完全にオディールの魔力のとりこになってしまいました。

それほど知名度はないかもしれないけど、ロシアの民間バレエ団にこんな素晴らしいプリマがいるなんて、本当にすごいと思いました。才能ももちろんですが、その環境によって育てられた奇跡のプリマ。願わくはタッチキン氏、連日彼女ばかり酷使してダンサー生命を縮めないように、それだけは切にお願いします。

私が見に行った日、サイン会がありましたが、さっきまで舞台で踊っていたイリーナが、そこに並んだ200人あまりの一人一人に、DVDとプログラムの両方にサインをして、握手をして、一緒に写真まで撮っての大サービスをしていたんですよ。私も1時間以上並びましたが、もうかわいそうになっちゃって、DVDも買ったけれどサインはプログラムだけにして、握手や写真のかわりに一言「ありがとう」というのがやっとでした。舞台上では妖艶だけれど、素顔はとても気さくでかわいらしいイリーナ、大好きです

作品自体はマリインスキー版に近い、ごくごくオーソドックスなものでした。王子役のオレグ・ヤロムキンは若くてとってもかわいい子なのに、立派にイリーナとわたりあっていたし、このときはロットバルトで顔はわかりませんでしたが、DVDでは王子役を踊っているドミトリー・アクリ―ニンも素晴らしい美形。二人とも、もっと違う演目でも見てみたいと思ったほど素敵なダンサーでした。パ・ド・トロワを踊ったのが元レニ国にいたルダチェンコだったのにはびっくり。相変わらずな雰囲気ではありましたが、彼も頑張っているんだなとほほえましかったです。(DVDでは逆にレニ国に移籍したヤパーロワとヤフニュークがトロワを踊っていて、これも儲けものでした。)

公演が延期になって、連休中になってしまったこともあり、残念ながらキャンセルした人も多かったのではないでしょうか。私も2回見る予定が1回になってしまったし。それで空席も目立っていましたが、これに懲りずにぜひまた日本に来てほしいと思いました。

Img_0004そしてバーミンガム・ロイヤル・バレエの「眠れる森の美女」(5月21日)。実はこれ、震災の影響等もあるし、本当に日本に来るかわからないからチケット買ってなかったんです。前回の来日の時の「美女と野獣」で、最後の最後に着ぐるみから出てきて素足で踊る王子あれ一発で魅了されてしまったツァオ・チーがようやくまた見られるというのに、何だか触手が動かなかったんですよね。

そうしたら渡りに船というか、○+の特別企画のご案内メールがきて、このツァオ・チー主演の公演と、彼の出演する映画「小さな村の小さなダンサー」の上映会+トークショー付きという割引セット企画があるとのこと。思わず飛び付きました。そして、今までこういう限定企画に応募しても当たったことがなかったのに、めでたく抽選に当たりました

映画は昨年の公開時に見ていたのですが、バレエファンの友人と行ってツッコミながら「バレエの映画」として見てしまったので、舞踊シーンなどちょっと不満なところもありました。でも、今回の上映会では、ツァオ・チー本人のトークの後に、純粋に映画として物語そのものを見ることができ、改めて感動してしまいました。どちらかといえば主人公より、彼を育てたお母さんや先生に泣けるのです。いい映画です。これは7月にDVDも出るんですよね。バレエの公演会場で先行販売として売っていましたが、ブルーレイのほうに特典映像(ツァオ・チーと、自叙伝を書いたリー・ツンシンのインタビューなど)が入るということだったので、ブルーレイが出るまで私は待ちます(笑)

公演のほうはA席といいながら、例の1階左右の三角の端の見切れるような場所でしたが、割引だから我慢できました。ピーターライト版の「眠れる森の美女」は、DVDが出ているオランダ国立バレエのものと衣装や舞台美術がほぼ同じで、金色を基調としたとても豪華なものでした。

プロローグのあと休憩が入り、そのあと1幕と2幕の間に休憩はなく、3幕の前のオーロラが目覚めるところまでぶっ通しの構成。全体的にはとてもオーソドックスでしたが、他の版と違っていいなと思ったのは、オーロラが目覚めたあとに周りの人々が全部いなくなって、二人だけのパ・ド・ドゥが入るところです。音楽は普通(カットされることも多いけど)2幕の終わりの場面転換に使われる間奏曲‥‥あのせつないヴァイオリンの音色にのって、目覚めさせてくれた王子とだんだんに心を通わせていくのがわかる素敵なパ・ド・ドゥでした。他の版だと、まあこれはおとぎ話だからしょうがないとは思うけれど、目覚めてすぐに結婚式でめでたしめでたしっていうのはあまりに唐突ですよね。その部分はとてもよかったと思います。

ただ、オーロラ役の佐久間奈緒さんの表情が気になりました。テクニックは十分で、バランスも優れているのだけれど、1幕の登場の瞬間、嫁に行き遅れたようなオーロラって‥‥ふつう1幕のオーロラ姫といったら、もうはじけんばかりの若さと無邪気さ、いかにも大事に育てられてきた姫のおおらかさと、この王国全部を包むようなあふれる幸福感が必要なんじゃないの?と思うけれど、このお姫様ときたら、4人の王子の中から結婚相手を選びなさいと言われた途端、不機嫌な顔に。ローズアダージョはいろんな人のを見たけれど、あんなに嫌そうなローズアダージョって初めて見たというくらい変わっていました。

途中でもらった花を王妃に渡す場面では、「お母様、結婚なんて私、嫌だわ!」と言っているように首を横に振っていましたから。このあとカラボスが出てこなかったら、オーロラは4人の王子の誰かと無理やり結婚させられてたのね。気の進まない結婚を避け、理想の相手が現れるまでリラの精が眠らせてくれたってこと?‥‥何だか違う話になってしまいそうです。

王子役のツァオ・チーはとてもシャープな踊りで素敵でした ちょっと振付が地味で王子の見せ場はあまりなかった感じですが、3年越しでいいなと思っていたダンサーが見られてよかったです。トークショーでも素顔を間近で見られましたしね。

しかしながら作品としては、全体的にとても豪華な舞台だったのに、「こんなもんか」と思う程度で感動がうすかったのはなぜだろう‥‥思うに「眠り」という演目は、何よりも主役ダンサーの華が大事な演目だったんじゃないでしょうか。オーロラほどダンサーの資質が問われる役はないと思います。テクニックとか表現とかはあとまわしで、やはりこの豪華な舞台美術、きらびやかな衣装に負けないような主役オーラが不可欠なんですよ。

だから主役が辛気臭い表情をするなんてもってのほか。コジョカルみたいな、ニーナみたいな、もうそこにいるだけで会場のすべての人が幸せになっちゃうくらいのバレリーナが踊ってくれないと。観客はあの甘美なメロディとともに、あふれんばかりの幸福感を見たいのです。前に見たコジョカルなんか、あのマラーホフ版の悲惨な衣装、コンパクトな振付の中でさえ、最初の登場シーンからアポテオーズまで、途切れることなく観客に「愛」を振りまいて輝いていたんですよね。

別の日のキャストだったタマラ・ロホは、はなっからオーロラなんて似合わない(?)と決めつけていましたが、意外にも、見た友人の話ではすご~くよかったと言っていました。ことさら若さやはつらつとした雰囲気を出さなくても、テクニックを前面に出してひけらかさなくても、やはりいるだけで「オーロラ姫」を感じさせるものがある。これが重要だったんですね。

~◇~◇~◇~

このあとバレエを見る予定は7月の「バレエの神髄」までありません。楽しみにしているその「バレエの神髄」は、会場の一つだった新宿文化センターが、震災後の点検で改修が必要になったということで使えなくなり、結局、代替の会場が見つからないまま中止となってしまいました。あれだけいいダンサーが集まるのに、東京では文京シビックホールの1公演のみで、あとは名古屋、大阪の計3公演だけなんてもったいなさすぎです。私も最高の席がとれていたのに本当に残念 払い戻してもらったお金で何か見ようかなと思っても、いまのところ考えつきません。ロベルト・ボッレもニコラ・ル・リッシュも来なかったのが軽くショック。ABTは1公演だけ見る予定です。

そんなこんなで次は「バレエの神髄」の東京1回に全面期待ということで、上半期のバレエ編のまとめでした。

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2011年6月19日 (日)

2011年前半観賞記録(バレエ編その1)

早いもので、ことしももう半分が過ぎようとしています。舞台の観賞記録ですが、今まではその都度書いていたのに、今年に入ってから忙しいこともあったりしてそのままになってしまっていました。もう時間もたって記憶も薄れてきているのですが、ちょっとだけでも記録として書いておこうと思います。

1月はレニングラード国立バレエのルジマトフの舞台のうち、大宮、仙台、名古屋を除く5公演を見ました。東京で「白鳥の湖」を2回、「ドン・キホーテ」を2回、そして最終日の西宮で計5公演。これは昨年12月の「ジゼル」2回とともに、忘れられない舞台になりました。だからかな?かなりあとになってもちゃんと感想を書いていますね 

Img 同じ時期にベルリン国立バレエのマラーホフ版「シンデレラ」(1月15日)を見ています。これは全く新しい設定の現代版「シンデレラ」でした。バレエ団の中で、プリマを夢見る新人バレリーナと、古株の、男性が演じる「甘いモノ好きのバレリーナ」と「アル中のバレリーナ」、そして彼女らをえこひいきする芸術監督という図式なのですが‥‥。ポリーナちゃん演じるシンデレラは素敵だったけれど、どうも彼女のたくましさと、意地悪お姉さんに匹敵する二人のおふざけが目立ってしまって、あまり「シンデレラ」のお話とは思えなかったというのが本音でした。

シンデレラとはもっといじめられ、虐げられるかわいそうな存在なんですよね。それがポリーナちゃんは全然かわいそうじゃないのよ。最初からどう見ても一番きれいで、立派で、気も強そうで(笑)そしてマラーホフがいうには、現代のシンデレラは自分で夢をつかむからガラスの靴はいらないんだということだったけれど、魔法とガラスの靴があるからこその「シンデレラ」のお話なんじゃない?‥‥まあこれはこれで楽しめましたけどね。

「甘いモノ好きのバレリーナ」を演じたマラーホフのはじけっぷりは爆笑ものでした。舞台上でアイスモナカほどの大きさの、ブラウニーにマシュマロをはさんだような超甘そうなお菓子を2個も頬張っていました。「アル中のバレリーナ」を演じたフェデリコ・スパリッタは、胸の詰め物がずれているのが気になって でも、お二人ともとても美しくてセクシーで(見ようによっては怪獣みたい)ポワントワークもお見事でした。

けれど、私はちょうど同じ時期にあのルジマトフを見ていたんですよ。ペレンとルジマトフ、それからテリョーシキナとルジマトフの究極ともいうべき美しいライン。二人のつくりだす完璧なアンサンブルに、これこそロシアバレエの美!これこそクラシックバレエの醍醐味なんだと実感していた最中だったので、こちらはかなり分が悪かったような感じです。特に主役のポリーナ・セミオノワとゲストダンサー(王子)役のミハイル・カニスキンの二人の、何とアンバランスなこと‥

ポリーナちゃんは長身で顔が極端に小さい割に、身体は筋肉質でがっちりしているんですよね。一方カニスキンはキラキラ笑顔のイケメンだけど、多分日本人の中に入っていても同化してしまうようなずんぐり体型。だからポリーナちゃんと並ぶと、顔が大きくて手足が短かく見えてしまうのです。こんな二人を組ませちゃダメだ‥とってもバランスの悪いペアでした。

先輩バレリーナたちに意地悪されて、お稽古場に閉じ込められてしまったシンデレラが、王子様と会って踊る夢を見る。そして翌日、ゲストダンサーが到着し、相手役に選ばれ、その夢が正夢になるというお話。確か同じパ・ド・ドゥを2回踊るんですよね。1回目は夢のように淡いあこがれとして。そして2回目は夢がかなった現実として。最後、応援してくれた元プリマ(仙女)やバレエ・マスター(父?)に祝福され、花束を受け取って一人幸せに浸り(相手役はもうどうでもいいのか‥?)明るい未来に向かって力強く歩き始めるシンデレラにちょっとだけほろっときたけれど、やっぱりこれ、「シンデレラ」のお話とはちょっと違うような気がしたのは私だけだったのかな?

Img_0001 次に見たバレエは、3月31日と4月10日のスターダンサーズバレエ団の「シンデレラ」でした。私はこの鈴木版シンデレラが大好きで楽しみにしていましたが、震災の影響でさまざまな舞台興行の中止が相次ぐ中、この公演も行われるのかどうか直前まで心配でした。

ゲストは吉田都さんと英国ロイヤルバレエのヴァレリー・ヒリストフ。都さんは震災直後から日本の惨状に心を痛め、ロンドンでチャリティ・ガラなどの活動をしていたと聞きましたが、原発事故の影響などを憂慮して、ヒリストフのほうは本当に来るのかしら?‥‥と思ったら、ちゃんと予定通り来てくれましたね。もうそれだけで、この時期どんなに救われたかわかりません。また、ちょうど計画停電も終わった頃でしたが、まだまだ世情が落ち着かない中で、中止にせず予定通り公演を開催してくれたスターダンサーズバレエ団にも、感謝の気持ちでいっぱいでした。

都さんの踊りは丁寧で、演技も細かいところまで自然で納得のいくものでした。いつも踊っているのはカクカクした?アシュトン版だと思うのに、まるでずっと以前からこの版を踊っていたように溶け込んでいました。ヒリストフの王子も、心優しくて知的な雰囲気で本当に素敵な王子様でした。踊りはちょとへろへろな感じ?もしたけど、もうこんなときに日本に来てくれたというだけで超ブラボー!でしたよ。

鈴木版のよさは何といってもそのストーリーです。バレエに出てくる王子って、バカ王子ばっかりじゃないですか。特に「シンデレラ」なんて、好きになった女の子の顔も覚えてないのか!ってツッコミたいです。魔法で美しくなった姿しか見えてないから、現実に残された靴が唯一その手がかりになるわけですが、そんなものは落としたら割れちゃうような、ほんのもろい絆です。それが、鈴木版の王子様は、プロローグのときにお忍びで行った市場で、転んでしまったおばあさんを優しく助け起こすシンデレラを見ていて、あとですれ違った時にも振り返って「さっきの子だ‥」と、ちゃんと記憶しているんですよね。

そして、ここが一番感動的なのですが、最後のシーン。王子との再会の喜びもつかの間、シンデレラはふとみすぼらしい自分の姿に気が付いて恥ずかしくなり、お城には行けないといいます。そのとき妖精がまた魔法をかけようとするのですが‥‥王子はそれを止めて、このままのあなたが好きだからもう魔法はいらないよ、というのです。今回もまた、この場面で号泣!

どんな状況でも心の明るさを失わず、弱いもの、小さいものにも優しく接するシンデレラ。つらさに耐えて頑張っている姿は、まわりの人にはわからなくても、見える人にはちゃんと見えていて、最後には成功に導いてくれる‥‥そんな姿は、ずっと外国で一人頑張ってきた都さん自身とも重なって、何か強いメッセージを受け取ったような気がしました。

Img_00024月のサンクトペテルブルグ・バレエ・シアター(タッチキンバレエ)の「白鳥の湖」は、震災の影響から5月に延期になってしまいました。そのかわりといっては何ですが、同時期に重なっていた東京バレエ団の「ラ・バヤデール」を見に行くことにしました。というのも、ゲストに予定されていたレオニード・サラファーノフのかわりに、何とイーゴリ・ゼレンスキーが来るというではないですか! 2006年に見て以来のゼレンスキーがまた見られる!ということで、急遽チケットをとりました。彼はもうマリインスキーの日本公演にも参加しないだろうし、ノヴォシビルスク・バレエ団の芸術監督になってしまったこともあり、もう見れないだろうと思っていたので、今回ゲストで来てくれたことが本当にうれしかったです。

ゼレちゃんも40過ぎてしまったというのは、ちょっと思うものがありましたが、ベテランらしい安定感と大物オーラ、そして後ろの脚がピッと跳ね上がって一直線になるような体育会系の豪快なジャンプは健在でした。何より、彼が踊ると舞台が狭い!ベテランで、決して軽そうな体型ではないのに、その身体がまるで上から吊られてでもいるかのように、足音もなく軽々と舞い上がるのは奇跡を見るような思いでした。

東京バレエ団のマカロワ版「ラ・バヤデール」は初演の時に見ていますが、やはりソロルのスケールの大きさからいって、ずっとずっと見応えがありました。それで結局、ゼレンスキーの日を2回(4月14日、17日)見てしまいました。2回目はさらによかったです。惜しむらくはゼレちゃんに見合うような相手役がほしかった‥ということかな。

マカロワ版に関しては、いかにも女性が考えそうな現実的な感じがします。他の版と一番違うのは、婚約式の場面でニキヤが毒蛇に噛まれて死ぬ場面‥‥この場面でソロルは、一瞬駆け寄ろうとしますがラジャに止められ、瀕死のニキヤを見捨ててガムザッティとともにその場を去っていくのです。ひどい男!でも、この場ではそうせざるを得ないだろうなと納得できるのです。

そして、ニキヤに駆け寄って消え入らんばかりに嘆くのは、ソロルじゃなくて何と大僧正!これも「えっ?」と思うけれど、妙にしっくりくるのですよね。大僧正もまたどうしようもなくニキヤに恋し、その地位も立場も忘れるほど煩悩の炎に焼かれていたのです。この場面、2回目に見た木村さんの大僧正が真に迫ってすごい迫力でした。

ソロルが阿片から覚めると間もなく、結婚式のための衣装が届けられ、ラジャとガムザッティが迎えにくるところはまったく情け容赦ありません。いきなり現実に引き戻されたソロルのおびえっぷりはちょっとすごい。不実な男はどこまでも追い詰められていくのです。

続く結婚式の場面、ここからはまるで怪談です。白いベールをまとって現れたニキヤの亡霊の恐ろしいこと!恨みの花かごまで現れ、ガムザッティを死ぬほど怖がらせる場面は「もうやめて~~!」という感じ。死んでまで、恋仇の結婚式に現れて祟るなんて何て恐ろしい女なの!レニ国版でもニキヤの亡霊は現れますが、ソロルが捧げた花を奪うぐらいで、ここまで恐ろしくはありません。そして一度「影の王国」で癒されたソロルの精神も、再び狂わんばかりに壊れていく。すごいです。

宮殿崩壊の場面は、図らずも水素爆発で吹っ飛んだ原子炉建屋を連想してしまい、欲と歓楽におぼれた人間へのすさまじい神の怒り‥というのが心に重く響きました。最後の場面、ここはちょっと納得できないところなのですが、あれだけ祟ったニキヤの亡霊が、瓦礫の中からソロルを救い出し、一緒に天に昇る?というところ‥‥何で~!?ここだけは同じ女性の演出ですが、新国立劇場の牧版のほうが納得できます。新国版では、ソロルはニキヤに導かれて坂を登ろうとするけれど、力尽きて白いベールを放して、坂の途中で倒れてしまうんですよね‥‥何て情けないソロル。。。でも、当然の報いというか。このほうがしっくりくるなんて、女って残酷だわ(笑)これに比べたら「影の王国」で赦されたまま美しい夢のように終わるマリインスキー版やヌレエフ版は、男性には都合のいい終わり方といえるかもしれません。

思いがけず楽しめた「ラ・バヤデール」。東京文化会館に行くのも久々だったので、沈んでいた心がうきうきと華やいだ気分になりました。そして、何といってもこんな大変な時期に急遽日本に来て踊ってくれたゼレンスキーの男気に、とても励まされた気がします。今度いつ見られるかわからないけれど、ゼレちゃんに、ただただありがとう‥‥と。(2へ続く)

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2011年2月12日 (土)

観劇旅行 1

この1ヵ月以上、心の中を支配し続けたルジマトフの公演、その余韻にまだひたっています‥‥ともあれ、それをようやく書くことができてほっとしたのはいいけれど、ほっとしすぎてまたかなり間があいてしまいました‥で、次はその西宮での最終日の公演を見るために出かけた旅行のことを少し書いておこうと思います。

思えば4年前にルジマトフのファンになったといっても、5年続いているこのブログの最初のほうを見てみると、あら、もうとっくにファンだったんじゃない‥‥って拍子抜けするくらいなんです。だって「ラスプーチン」なんて、ファンでなければ絶対行かない公演よね そんなものまで見に行って、どうして自覚がなかったんでしょうね~?思うに、あの当時は生活自体が子どもと家庭中心で、夜出かけることも、バレエを見ることにお金をかけるのも、自分には無理と決めつけていたと思うのです。だからそれほどのめりこむこともできなかった。それが、そんな状態を一気に通り越してぶっ飛んじゃったのが4年前だったわけです。 

2007年の1月に、ルジマトフの「白鳥の湖」をどうしても、どうしてももう1度見たくて神戸に行ったことは、本当に私にとっては大事件でした。当時息子は中3で娘は中1。まだまだ朝起こしてご飯食べさせてという手のかかる時期だったにもかかわらず、突然「神戸へ行ってくる!」と宣言した母 当時の周囲の反応は一様に「子どもも家もほったらかしてバレエダンサーの追っかけ!?気でもおかしくなった?」という感じでしたね。そんな中で大人バレエの先輩母たちだけが「普段家族のために頑張ってるんだから、そのくらいしたって罰は当たらないわよ!」と暖かく背中を押してくれたのでした。

あれから子どもも大きくなり、すでに去年ぐらいから好きなもの見るなら泊りがけでもというモードになってきました。昨年5月は栗塚さんのイベントに、7月は松竹座に出演している段治郎さんを見に、そして9月は新歌舞伎座の二十一世紀歌舞伎組の公演にと、3回も京都・大阪方面へ出かけてしまいました。こうなるともう周りも驚かなくなって、今回も「明日ルジさま見てくるからね~」「あ、そう、行ってらっしゃい」ってな感じでしたよ。教育費が重くのしかかってくる時期でもあり、まだとても外国までは行けませんが、国内なら行こうと思えば(1、2泊ぐらいは)行ける状態になったことにまずは感謝です。

今回の旅行は1日目に西宮で「白鳥の湖」を見て、それから2日目は大阪街歩き+松竹座の寿初春大歌舞伎夜の部鑑賞、3日目は山科・伏見のロケ地巡りと、とても充実した3日間でした。Rimg0465

その1日目、最初に神戸の南京町に行って4年ぶりの豚まんを食べ、元町商店街を三宮方面に向かって歩き、それから生田神社に詣でてから公演の会場のある西宮に向かいました。

写真1枚目は南京町の入口。寒かったけれど日曜日ということもあって結構な人出でした。お店の外でも食べられるようになっているところが多いのだけれど、この寒いのに‥‥と思っているのは私だけのようで、お昼時はどこも繁盛していました。Rimg0469

2枚目は生田神社です。祭神は稚日女尊(わかひるめのみこと)で、神功皇后の遠征の際に祀られたというからとても古い神社です。裏の「生田の森」は、源平や南北朝の古戦場としても有名ですが、行ってみるとビルに囲まれていて意外に狭かった。昔はこのあたり一帯が全部「生田の森」だったのでしょうけどね。

Rimg0472 ここには樹齢数百年というクスノキが何本かありました。神戸大空襲や阪神大震災にも生き残ったという強い生命力を感じます。常緑のクスノキは真冬でもうっそうと葉を茂らせています。クスノキって関西ではよく見かけるけれど、関東ではそれほどないような気がします。個人の家の庭になんてもっと珍しいと思うけれど、以前うちの庭には何とこれがあったんですよね。案の定どんどん大きくなって隣の家にまで侵入を始めたので、切らざるを得なくなってしまったのですが、一年を通して趣のある木影をつくってくれていました。

三宮は4年前の初遠征で「白鳥の湖」を見た場所。ルジマトフに、なぜあんなに惹かれたのか‥その答えが天から舞い降りてきたような一生心に残る素晴らしい舞台でした。神戸国際会館はきれいないいホールでしたね。あのとき開放感いっぱいで歩きまわった駅周辺の地下街や、入ったレストランなどもそのままで懐かしい‥‥って、ついこの間なんですけど。でも、そのときは本当に久しぶりの一人旅だったのです。想い出の場所を歩きまわってあの日の高揚した気分がよみがえってきたところで、気持ちも新たに西宮に向かいました。

西宮の兵庫県立芸術文化センターは、あとで知ったのですが「薄井憲二バレエ・コレクション」という個人のコレクションを、常設展と企画展という形で年間を通して見ることができるそうです。知らなかった~。

現日本バレエ協会会長の薄井憲二さんは、数々のコンクールの審査員を務めるとともに西欧舞踊史研究の第一人者として知られている方だそうです。何年か前に「バレエ・リュス~踊る歓び、生きる歓び」という映画がありましたが、そのパンフレットを華やかに彩っていたのはこの方のコレクションである写真や絵画、ポスターなどの貴重な資料の数々でした。せっかくそれが見られる場所に行ったのに、知らなくて残念。

ここの兵庫県立芸術文化センターのホールも、また三宮の神戸国際会館のホールも、どちらもまだ新しくて、ウッディな内装が居心地よく、前方でも座席に段差をつけてあってとても見やすいいい劇場でした。まっ平らで見づらいことこの上ない東京国際フォーラムホールAや、足元見えないオーチャードホールの前方席などでいつも見ていたので、この見やすさは感涙ものでした。もちろん、そこで行われたお目当ての公演も、前述のとおりわざわざ見に行ったかいがあった、心に残るいい公演でした。

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2011年1月31日 (月)

1月16日「白鳥の湖」

東京での「ルジマトフ・ゴールドセット」(先行予約セット券)の6公演はドキドキのうちにあっという間に終わってしまいました。怪我というアクシデントがありながら、またさらなる魅力を見せてくれて、もうそれで満足なはずなのですが‥‥最後の西宮の公演は早い時期から相手役がシェスタコワと発表されていたので、行けるかどうかもわからないのにとにかく先にチケットを買ってしまっていたのでした。それで、どうせ交通費を使って行くのならと、大阪方面に2泊3日の旅行を計画して行ってきました。

実はその前日、ベルリン国立バレエのマラーホフ版の「シンデレラ」を見たんですね。マラーホフが「甘いモノ好きのバレリーナ」役をノリノリでやっていました。あれじゃあ主役のポリーナちゃんがすっ飛んじゃうじゃない! ポワントワークも素晴らしくて、すぐにでも男性コメディバレエの世界でやっていけそう それを見て、ああこの人はこの人で面白い方向にいっているんだな~と、何だか感無量になりました。もちろん、彼の本気は翌週の「チャイコフスキー」のほうであって、こちらはほんのファンサービスのようなものだったと思いますが、クラシックをひたすら極め尽くす方向に向かっているルジマトフに対し、多彩な方向性を持った同時代のベテランスターの存在がまた興味深かったです。

新幹線は雪で50分も遅れましたが、私は早めに出ていたので大丈夫でした。4年ぶりの懐かしい神戸では老祥記の豚まんを食し、元町商店街でぶらぶらとショッピングを楽しみ、すごく寒かったけれど生田神社に詣でてから西宮に向かいました。

最終日の「白鳥の湖」は、東京での2回の「白鳥」とはまた全然違っていました!同じバレエ団の同じ版の同じ演出の「白鳥の湖」をどうしてここまで違って見せられるのか!‥謎です

東京ではずっと髪を後ろでピンを何本も使ってとめていましたが、10日の仙台公演からそのピンがなくなったそうで、兵庫県立芸術文化センターの舞台に現れたジークフリート王子は、長めの自然なウエーブヘアで、何だか93年のビデオの姿も彷彿させるような若々しい王子様でした ま、オペラグラスとかで顔をアップで見てしまったら、マラーホフやニーナもそうだけど、それは年相応ということになってしまいますが。そんなことより、そのスタイルの美しさが全く変わってないどころか、ますます磨きがかかっているというのが驚異的です。(前日、マラーホフは体型的にずいぶん変化が‥‥と思ってしまったからなおさら

しかしながら、場所は兵庫県、演目が「白鳥の湖」、そして相手役がシェスタコワときたら思うことはただ一つ。もう「4年前の奇跡よもう一度!」ただそれだけですね。ルジさまだってそうそう奇跡ばっかり期待されてしまうのは迷惑千番だと思うのですが、会場に入ったとたん、ほぼ満席の会場からはいつにない熱気が伝わってきました。

実際、予想にたがわず素晴らしい舞台でしたが、予想以上とまではいかなかったというか、どうしても比べてしまいますが、4年前の神戸の「白鳥」は、やはり特別なものとして心の中に大切にしまっておくことにしましょう。あれ以上のものは後にも先にもそうそうないと思うから。今回の怪我については本人が一番不本意で残念だったに違いありませんが、この日の舞台はそれはそれで半ば確信犯的?に、はるばる見に行く価値があったと思わせるような心に残るものを見せてくれました。

今回の来日公演で、私が見た3回の「白鳥の湖」をそれぞれ一言で表すとしたら、痛みを押して舞台に上がってくれた4日の国際フォーラムは「魂」、ペレンとのパ・ド・ドゥの美しさが際立った9日は「美」、そしてこの16日の西宮は間違いなく「愛」!今までの涙が出るような硬質な美しさとはうってかわって、最初からラブラブだったよ、おいおい。。。

1幕はまた素敵な笑顔。脚の調子も大分よくなったようで、相変わらずジャンプはないけれど走っていたのでまずはよかったよかった。周りの人たちも千秋楽モードなのか、今までの緊張感がほどけ、リラックスした雰囲気で楽しそうです。パ・ド・トロワでは大好きなヤパーロワとチーカ、そしてヤフニュークが見られたのがすごくうれしかった。ヤフニュークの踊りはとってもノーブルで、彼なら臣下やお小姓じゃなくて王子の親族かご学友でいけるよねっ ヴァリエーションもよろしくね‥‥みたいな。いいんですよ、もう。この特別ヴァージョンにも慣れました(笑) ヤパーロワはしっとりと落ち着いた雰囲気もあるのに、なぜかキュンとなるぐらいかわいいよね~。超好きなタイプです。今季はジュリエットと、ペザントと、このトロワで見ることができました。来年もまた来てね

シェスタコワが相手だと、「ジゼル」のときもそうでしたが、何だかとても情熱的な物語を感じさせられます。「あなたは誰?なぜここにいるのです?」‥‥「僕がきっと救い出してあげるから!」え?何これ?ペレンちゃんのときはこんな台詞は聞こえてきませんでした。(もちろんバレエに台詞などありませんが‥)そして、ペレンのときにはその美しさに心が震えるほど感動したアダージョですが、シェスタコワにはあそこまで研ぎ澄まされた身体のラインはなかったというか‥‥なんですね。そのかわり、今度は物語の中に深く入り込んですごく濃密な二人の世界をつくりだしていました。

王子の肩に頭をもたせかけて寄り添うオデット‥‥後ろから腕を回して重ねる王子。哀しみも、愛も、ただ寄り添うことで二人の心が一つに溶け合う。静かな、熱い思いだけが流れていくひととき。不謹慎ではありますが、下手な濡れ場よりずっと濃厚というか‥‥そんな気がしてしまいました。あのチャイコフスキーの哀切なメロディもなぜかすごく艶っぽく聞こえて‥‥ルジマトフの見せる世界は1回1回違っていて、こんな世界もあったんだという驚きがいつもついて回りますが、この日はまた一段と気持ちが入っていました。

シェスタコワもとても情動を感じるバレリーナですね。表現力という前に、まずその表現の質が哀調を帯びていて、悲劇的なヒロインがよく似合い、相手役を「本気」にさせてしまう‥‥だから「没我型」のルジマトフとの相性もよいのだと思います。4年前に私が舞台で受けた感動も、パートナーのシェスタコワによるところが大きかったのだと改めて思いました。

2幕、オディールとのパ・ド・ドゥのときもいつになく濃い演技をしていました。演技というより自然に出てくるものでしょうが、ルジマトフはあまりオディールにだまされる演技はしないほうだと思うのです。今シーズンは多少していましたが、若い頃のビデオなんて全然という感じでしたもの。4年前も完全に魔法にかけられた?かのように、むしろ堂々として見えるくらいでした。それがこの日、オディールがどこかオデットとは違うとわかりながらも、どうしようもなく惹かれてしまう王子の迷いと心の弱さが伝わってきたのです。東京では気になっていた「誓う」のところの音楽も、今回はぴったり合いました。(ほっ)走れるようになった分、迫力も出ていました。

3幕ではごく軽くという感じでしたが、アントラッセを3回連続で跳んでいました。最後になっちゃったけれど、ちゃんと回復しつつある姿を見せてくれてファンはうれしい。そして、何だか中途半端に見えたハッピーエンド変更ヴァージョンでしたが、この日はとてもしっくりくる終わり方に思え、見るほうも熱い気持ちのままのハッピーエンドになりました。

ただ、やっぱり状態がよくなればよくなったで、今まで抑えていた思いが頭をもたげてしまって‥‥いいけど、本当はまだまだこんなもんじゃないよね!怪我がなきゃもっと美しい踊りが見られたんだよね!なんて‥‥西宮まで追っかけて行って罪深くも複雑な心境を味わってしまいました。

こうして半年以上前から待ちに待っていたルジマトフの日本公演は幕を閉じました。今後また「白鳥の湖」を踊ってくれる機会があるのでしょうか?昨年の「バヤデルカ」のときは「最後のソロル」と銘打っていたけれど、今回はどこにも「最後のジークフリート」「最後のアルブレヒト」「最後のバジル」なんてことは書いてなかったから、またいつか今回のリベンジをしてくれるのかもしれません。それをファンはまた楽しみに待つとともに‥‥もし万が一これが最後のジークフリートだったとしても、それがこの日の会場いっぱいの観客の、それこそ割れんばかりの拍手とスタンディングオペ―ションで終わったのを見届けることができて本当によかった。いつもノリにのった時はいっちゃったまま帰ってこないようなカーテンコールなのだけれど、最後に怪我を押して出演し通したルジマトフの満面の笑みを見ることが出来て本当によかった。Rimg0479

写真は会場の兵庫県立芸術文化センター。3時から始まった公演も、帰るころにはその感動の気持ちにぴったりの美しいイルミネーションに彩られていました。この日、めちゃくちゃ寒かったのですが、心はとても暖かいまま会場をあとにしました。

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2011年1月28日 (金)

1月9日「白鳥の湖」

4日はルジマトフが怪我を押して出演しているということがわかっていたので、それ相応の覚悟で見ていたのですが、9日の「白鳥の湖」は「ドン・キ」で素晴らしい舞台を見せてくれたあとだったから、やっぱり期待は高まりました。そのとおり、「ドン・キ」のときの一体感がそのまま残っていて、なおかつ4日のようなピリピリとした緊張感が抜けて、さらに磨きのかかった美しい舞台になりました。

この日は王子が最初から笑顔で‥‥4日の3倍の笑顔!4年前にニコリともしない陰鬱な王子を演じて私をびっくりさせたルジマトフが、4年後に同じ国際フォーラムで、こんなに素敵に微笑む王子になっているなんて!‥‥成人を前にした王子の憂鬱はわかるけれど、やっぱり笑顔がいいわハート達(複数ハート)

パ・ド・トロワはシヴァコフ&ステパノワ、ザパスニコワ。シヴァコフはものすごく緊張した感じでしたね。やっぱり、2幕のヴァリエーションはシヴァコフが踊るのかしら まあ、もうこうなったらどうでもいいやと思って、美しく優雅なポール・ド・ブラを見せながら歩き回るジークフリート王子をうっとり眺めておりました。

そう観念して見ると、ルジマトフだけがこの中から浮かび上がって違う動きをしているように見えて、何かもう私ときたら、昨年末から目が曇りっぱなしであらぬものが見えているのかしらと思っちゃうほど。彼の周りだけ時間軸が違うみたいに、スローモーションで切り取ったような、その一瞬一瞬のどこをとっても美しい‥‥こんなのありえない

そしてこの日最大のスペシャル、一番感動したのが2幕のグランアダージョでした。もうあまりの美しさに涙が流れてきました。こんなことは初めてです。私は、全幕バレエはその中を流れる物語や登場人物の感情、心の動きなどがいかに表現されるかといった観点から見るものと思っていました。でも、これは全然違う。この美しさの前には表現力も演技力もへったくれもなく、人物の感情なども全部通り越してしまっていたのです。あるのはもっと崇高なもの。ただただその美しさに涙が出ました。

ペレンはもともと美しいラインを持ったバレリーナですが、そのペレンを本当に美しく踊らせ、またそれに重なるルジマトフの手足のラインもそれはそれは美しくて‥‥クラシックバレエの美しさ、ワガノワの流れをくんだロシアバレエの美しさってこういうものだったのか‥‥。

今までバレエを見てきて、こういう「美」を目の当たりに感じたことがあったでしょうか?私にしてもやはり跳ぶ回るのテクニックや、技の正確さ、安定性などを見て上手いとか下手だとか判断していたような気がします。あとは表現力とか、物語をよりドラマチックに見せることが大事だと思っていましたが、それも一つの楽しみ方だけれど、これはそうじゃない。この二人がつくりだしたラインの美しさって、ただ見ているだけで涙が出てきちゃうような、心が震えるような美しさだったんですよ。この先こういうものを見せてくれるダンサーが出てくるでしょうか???それを思うとこの日のこの踊りが見られただけで、もうその感動がすべてでした。

1幕の最後に、4日にはやっていなかった、ひざまずいた太ももの上にオデットを乗せるポーズをやっていました。よく写真などで見るし、多分レニ国の振付もこれがデフォルトになっているのだと思うけれど、私はルジマトフがこれをやるのは初めて見ました。(そのあとの仙台・名古屋は知りませんが、西宮ではやりませんでした)あれはめちゃくちゃ無理なポーズだとは思うのですが、ただもう「美しい」それだけ。今回のペレンとのペアでは美の追求‥‥それがテーマだったのかなと思いました。

2幕は、王子と一緒にシヴァコフが登場して、王妃の横に待機。そのまま例のヴァリエーションを踊りました。めちゃくちゃ緊張していて表情も硬く、動きも重そうでどうした?頑張れ!って思わず声をかけたくなっちゃいましたよ。シヴァちゃんの一昨年あたりの髪型は黒髪巻き毛の、まったく昔のルジマトフのコピーという感じで、あのままだったら誰が見ても萌え系の弟王子だったのになと、今の髪型がちょっと残念(爆)うるわしい兄弟王子の並びも見ておきたかったような 

ルジマトフという人は不思議なダンサーです。普通は若い頃にまず王子をやり、そこから役柄を広げていくものでしょう?そしてベテランになったらもう王子は卒業して、モダンとかもっと演技力が必要な役にシフトしていく。それが、全くコースが逆なのですから!

若い頃は「海賊」のアリに代表されるような野性的な役柄を得意とし、王子というタイプではなかったようだけれど、あの歳になってあり得ないくらいノーブルで美しい王子を極めたのです。クラシックバレエを踊って踊って、そして最後にあの立っているだけで美しい、内面から輝くような王子に行き着いた。「白鳥の湖」というクラシックバレエの最高峰といえる作品の中の、このジークフリート王子は彼の一つの到達点だったのだと思いました。

確か昔のインタビューで「白鳥の湖」はあまり踊りたくないとか、自分に合ってないとか、今まで踊った回数も一番少ないとか言っていたと思います。それなのに今回、どうしてこんなに「白鳥の湖」が多いの?とちょっと不思議だったんですよね。それがこのときはっきり、彼が見せたかったのはまさにこの「王子」だったんだなと理解しました。

私はちょっとばかり歌舞伎などの伝統芸能をかじっていながら、舞踊系は苦手でとんとわからないのが今すごく残念なのですが、能や日舞の世界では、若くて身体がよく動くときが最上というわけではないのですよね。身体が動かなくなっても、長年精進を積んできた者はその動きが身体の中に叩き込まれていて、ほんの少しの所作にもおのずと香り立ってくるものがあるのだといいます。それこそが本物の「芸」であり「粋」なのだと。能ではそれを「まことの花」というのでしょう。ちょっとの動きでも、その内面からキラキラとこぼれ出てくるものがある‥‥そんな境地がクラシックバレエにもあるとするならば、ここで見せたルジマトフの踊りともマイムともつかない舞台姿はまさにそれだったんじゃないかなと。

ちょっとした立ち姿、身体の角度、差し伸べる手や指の表情、歩み始めるときの足先まで、身体の全部にクラシックバレエの動きがしみついていて、そこに豊かな情感がこもり、見る者に瞬きするのも惜しいほどの余韻を感じさせる。

多分これはテクニックを存分に見せられるうちはまだ出てこない。バレエの世界は身体能力がものをいうから、ほとんどのダンサーがそこに到達する前に引退してしまいます。ルジマトフはクラシックバレエにおいてそういう境地に至った、本当に数少ない表現者なのだと確信しました。ルジマトフが今まで踊ってくれていて本当によかった。私も、彼のファンでいてよかった。何度でも言っちゃうけど、この日の舞台が見られて本当によかった‥‥‥(涙)

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2011年1月27日 (木)

1月7日「ドン・キホーテ」

レニングラード国立バレエ「ドン・キホーテ」2日目。Img
1日目は最初、あのゲートルのようなルジマトフの脚のテーピングにビビって、ヒヤヒヤもので見始めたのですが、2日目は前日の跳ばずとも素晴らしいパフォーマンスにすっかり安心して見ることができました。

テリョーシキナも2日目はレニ国のダンサーの中に自然に溶け込んで、大人な雰囲気の中にもきりっとした元気なキトリになって、あ~楽しかった!っていうくらい盛り上がりました。ルジマトフも、また少し調子を取り戻したのか、垂直方向に軽く数回跳んでいましたね。そんなことしなくてもそりゃもうカッコいいバジルだけど

前日は一人でキメオーラ出しまくりでしたが、2日目は表情がやわらいで笑顔も10割増。あんなに楽しそうに踊るルジマトフって‥‥もう見ていて涙まで出てきちゃったくらいで、「ドン・キ」見て泣きながら笑っている世にもおかしな観客となっていました。正月の2日からずっとハラハラして見守ってきたファンはみんなそうだったのではないでしょうか。

1日目は一人一人のダンサーが、一種すごい緊張感を持って一生懸命盛りたててくれていましたが、2日目はそれぞれが楽しくはじけて賑やかなお祭り騒ぎみたいな舞台となりました。特に男性ダンサーがみんなルジ効果でめちゃくちゃ気合が入っているのが伝わってきて、それはそれはすごかったです。闘牛士たち、ジプシーたち、ファンダンゴ、みんなみんな光っていました。まさにマジックですね 

多分あんな脚の状態では、普通なら(他の外国のバレエ団なら)即代役というところでしょう。それを押して舞台に立つことについてはいろいろと批判もあると思うのですが、やっぱり出るからにはそれなりのものを見せる人なのです。舞台にルジマトフがいるだけで周りの雰囲気ががらりと変わり、本人がすること以上に素晴らしい舞台にしてしまう。そしてまたそれが観客まで巻き込んで大きな渦となっていく。まさにそんなルジ・マジックが出現した日でした!

ドン・キホーテ、サンチョ・パンサなどの主なキャラクターの配役は変わりませんが、エスパーダがヴェンシコフ、踊り子がステパノワ。ヴェンシコフは大柄でいかにも街の色男という感じがよい~。ステパノワも押しの強い、粋でカッコいいお姉さんでした。キトリのお友達はヤパーロワとチーカ。サビーナかわいい~ 闘牛士との小芝居も面白くて見入ってしまいました。

2幕のジプシーはオスマノワとアルジャエフ。森の女王はミリツェワ。ミリツェワの踊りは同じヴァリエーションでもちょっと違って見えました。脚を横に高く上げた後の横っ跳びで、思いっきり高く跳んで、しかも180度開脚でびっくり‥‥足音もかなりだし、荒っぽいけど何か心意気が伝わってきました。

3幕のファンダンゴは前日ジプシーだったノヴォショーロワさんと、エスパーダ役のヴェンシコフが踊りました。ヴァリエーションは2日ともステパノワとクテポワ。グラン・パも前日と同じお祭りヴァージョンで、シヴァちゃんもプハさんも素敵でした。もちろん、ファンにはルジさまが一番素敵だけれどね。そしてテリョーシキナ。彼女でなくては今回の緊急事態をのりきることができたか心もとない。素晴らしいマリインスキーのスターに感謝です。もちろん彼女の踊りを見ることができて本当によかった。

いつも際限ないのに、何か、これ以上言うことがなくなっちゃいましたね~。とにかく楽しかったのです。ルジマトフ本人的には、今回の「ドン・キ」は久々で気合も入っていただろうに、怪我はとても残念だったと思います。ファンも欲を言えばというか、怪我がなければさぞかしという気持ちもあったりするけれど。でも、これはこれですごく素敵だった。いつまた踊ってくれるかわからないし、これが最後になってしまうかもしれないけれど、あのチャーミングな笑顔とともに、この舞台を見ることができた幸せを心に刻みました。

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