歌舞伎マンガも好き(笑)
大人になってからはそれほど漫画を読んでいませんでしたが、子どもが小学生ぐらいになったとき、そういえば私は漫画に育てられたようなものだった(知らない世界のことはみんな漫画に教わった)と思い、漫画を読まなきゃ人生損だわなんて思って、自分の子どもにも読ませようと、漫画の古典ともういうべきものを図書館で借りてきたり、自分で懐かしがって買ったりしました。それは私が昔読んだ「巨人の星」や「ブラックジャック」、はたまた「ベルサイユのばら」だったり「サイボーグ009」だったり、まあいろいろ。「漫画ばっかり読んでないで勉強しなさい」というべきところを、「社会勉強になるから読みなさい」なんて、私もよほど変な母親だったなあと思います。おかげで今、子どもは二人とも「部屋は漫画本でいっぱい」な奴らになってしまいました
私もその頃からまた少しずつ新しいものを読むようになりました。その中でもバレエを扱った作品が面白かったので、以前「バレエマンガも好き」というタイトルでここでもいくつかご紹介したことがありました。見てみたらそれは1~5まで続き、2009年で途絶えています。そのとき取り上げた作品はその後も続巻が出ているので、今度また久々にバレエマンガについても書いてみようかな~。
というわけで、久々に新規カテゴリー「漫画も好き」を追加しました(笑)バックナンバーもこのあと追々このカテゴリーに入れていくつもりです。まあ、そんなことはどうでもいいですね。で、バレエに次いで興味のある歌舞伎。そう、歌舞伎を題材にした漫画もあったんです。
漫画に登場する歌舞伎役者といえば、昔大好きだった「野球狂の詩」に出てくる国立玉一郎。歌舞伎界の御曹司で野球選手という「スラッガー藤娘」がいましたね。守れば「蝶が舞い蜂が刺す」華麗なる守備、打てば四番打者で、打席に入ればその姿の美しさだけで「国立屋!」と大向こうがかかる。野球で培ったたくましさで、見事女形から転身?して「勧進帳」の弁慶を堂々と演じるような立派な役者に成長したんでしたっけ。
で、今回は人気の歌舞伎マンガ?「ぴんとこな」を読んでみました。2011年の「小学館漫画賞」の少女向け部門に選ばれた作品ということで、前から興味があったんですよね。このお正月休みに現在出ている1巻~8巻を大人買いして(爆)一気に読みました。最初はもろ少女漫画という感じでかなり引くところもあったのですが、これがだんだん面白くなってきて
ぴんとこな‥‥とは、辞書によると「歌舞伎の役柄の一。二枚目の和事役のうち、多少きりりとした性格をもつもの。『伊勢音頭恋寝刃』の福岡貢など。」とあります。(デジタル大辞泉)ネットで検索すると「文化デジタルライブラリー」の「歌舞伎事典」にいきつきますが、それにも「やわらかな色気を持ちながら『つっころばし』のように女性的にならず」云々と書いてあります。(こちら)
上方和事の二枚目といえば「つっころばし」という、女や金にだらしない大店のボンボンとか、吹けば飛ぶような頼りない奴ばっかりなんですよね。勘当されて紙衣をまとっていても育ちの良さは一目瞭然。どこまでも浮世離れしててお上品。「色男 金と力はなかりけり」って、それが一種上方の「美学」のようですが‥‥そういうんじゃない現代風なイケメン‥‥ということなのか。しかし、「伊勢音頭」の福岡貢以外の「ぴんとこな」を私は知りません(爆)
そんな題名なので「ぴんとこない」方もいるかもしれませんが、歌舞伎大好きな女の子を中心にした青春ドラマで、これが実によくできてるというか‥‥いや、最初はこの作者、「鏡獅子」ぐらいしか見たことないんじゃないの?と思ったくらい突込みどころ満載だったのですが‥‥その後どんどん面白くなっていきました。以下~~~内はネタばれ注意です。別に、ざっと内容を紹介するだけだからいいと思うんだけど、一応。
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中心になるのは三人、あやめ、一弥、そして恭之助。その三人それぞれのいろんなからみがありますが、誰が主人公っていえば基本はあやめでしょうね。あやめは小学4年生まではすごいお金持ちのお嬢様だったようです。大体小学校の新入生歓迎会の出し物で歌舞伎やるってすごくない?‥‥衣装はパパがポンと用意してくれるってどんだけよ‥‥まあマンガですからね。日舞初めてという小学生がちょこっと教わったくらいで「鏡獅子」ができるとも思えないけど、これもマンガですからね。‥‥とかいうのはもうよしにして(笑)
その小学生の時の「鏡獅子」をきっかけに、あやめに「歌舞伎役者になって」と言われ、後に師匠に弟子入りして歌舞伎の世界に入っていくことになる一弥。一方あやめは父親の会社が倒産し、一転して超貧乏になり、一弥の前から姿を消したのでした。
一弥とは離れ離れのまま月日が過ぎ、あやめは歌舞伎界の御曹司も通うような私立高校の特待生になっているのだけれど、生活のためバイトに明け暮れる毎日。勉強している場面なんかほとんど(1か所あった?)見たことないのに特待生やってられるってこの子超頭いい?あるいは相当なバカ学校なの?(ごめん)
その同じ学校に通う御曹司の恭之助は顔よし家柄よし、ファンもいいお役もついているのだけれど、なぜかやる気は全然なし。あるときあやめに手痛い指摘をされた恭之助は、逆にあやめに一目ぼれ。彼女のためなら何でもやるけなげな男に変身してしまったのでした。しかし、それほどまでにあやめに夢中になるって‥‥一体どこがそんなにいいのか?肝心のヒロインの魅力が全然わからないのですよ。まるで「残菊物語」みたい‥‥ちやほやされてばかりで芸に身が入らない名門の跡取りが、子守女に率直な指摘をされたことから身分違いの恋におちていくというのと似ているような。
そうそう、横道にそれますが去年、映画「残菊物語」を見る機会があったんです。多分3回ほど映画化されているのですが、見たのは先代猿之助の若い頃のもの。決してイケメンではないですが、一途なところがかわいい非常にレアな映画だったと思います。最後の船乗り込みのシーンは思わず泣いてしまいましたよ。
で、その先代猿之助のお弟子さんたちのファンである私の立場(?)としてはもう当然、門閥外ながら努力と才能で頭角を現してくる一弥を応援したいところなのですが、こいつがまた曲者なの!(笑)まだ中学生のころから、師匠の娘と結婚して婿養子になれば師匠の名跡も継げるしいいお役がつく‥‥とかそんなことを考える奴で。事実お嬢さんには好意以上のものを持たれ、師匠にも期待されて全くの据え膳状態なんだけど、芸のためとか打算とかで簡単に関係をもっちゃうアンタ、一体何なの!それでいて、本心はいつまでも小学生の頃好きだったあやめのことを思っているなんて。
一方、そういう家柄だから仕方なく歌舞伎をやっていたような恭之助ですが、一弥とのライバル意識もあって次第に芸に身を入れ始め、歌舞伎の面白さに目覚めてくるのですよ。そう、読んでいくうちにだんだんとこの子がすごくけなげでかわいいと思えるようになってきて‥‥第一好きな女の子のためとはいえ、バイトをかわってあげたりしますか?ライバルが舞台で失敗して歌舞伎をやめそうになったとき、家におしかけて世話をやいたり、お掃除してあげちゃったりしますか?もうかわいさ満開の胸キュンキャラです
一弥も、恭之助も、あやめのことが好きでずっとこの三角関係は続くのかと思いきや、あやめは一弥の将来を思って身を引き、一弥もこの世界で名を上げるためには「家」と後ろ盾が不可欠と観念し、師匠の婿養子になると決意してあやめのことは諦めようとする‥‥その頃から、一弥と恭之助は恋のライバルから一転してお互いをなくてはならない存在として意識する間柄になっていくのでした。
一方であまりの貧乏生活をみかねて恭之助の家に無理やり連れて行かれ、居候となったあやめですが、クールなあやめが少しずつ「女の子」に変化していく?いや、最新刊ではどうもあやめを抜きにして二人の芸道バトルにスイッチしていきそうな予感。大人の読者からすれば、ラブコメよりそのほうが断然いいですけどね。しかし、それがちょっといきすぎて一弥は恭之助を夢中にさせているあやめを疎ましく思い始め‥‥何て勝手な野郎なんだ!?
家柄、天性の華‥‥何もかも最初から揃っている恭之助は、ただやる気になりさえすればいい。しかし、門閥外の人間はいくら努力しても、どんなに実力があっても御曹司にはかなわない世界。そこを一弥が今後どうやって切り開いていくのか。
しかし‥‥一弥の付き人になった山本(こんなへらへらした奴即刻クビだと思うんだけど)とか、今までも何かとたくらみの多い研修所出身?の梢六とか、いろいろ一弥の足を引っ張りそうなキャラも登場してきてとても一筋縄ではいかなそう。そして「お嬢さん」の女の子らしい愚かさ(イライラするんだけど
)を見ると、このまま大丈夫なはずはないよねえ‥‥恭之助のお父様の健康状態も心配、というか‥‥御曹司といえども後ろ盾をなくしたらどうなるのか。いやいや、これからますますスリリングになる気がします。次巻発売が待ち遠しい漫画の一つになりました。
肝心の歌舞伎シーンですが、6~7巻の「野崎村」は芝居の役柄と実際の登場人物の心情がオーバーラップして圧巻!‥‥ここが最初の山場になっていると思います。
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というわけで、一気読みできるほど面白かったです。絵もきれい。でも高校生という設定にちょっと無理があり(いくら御曹司でも高校生でそんな役つかないだろうって突っ込みが随所に)前半は恋愛中心で、歌舞伎のことよりも学校や家でのことのほうが多くて何だかな~という感じ。そういうところが少女漫画なのか‥‥って、いや、これって少女漫画だよねえ? 最近の少女漫画ってこんなにラブシーン多いの?
どう考えても不必要な描写まで(爆)‥‥という「ぴんとこな」でした。
もう一つ、歌舞伎漫画で忘れてはいけないのは「かぶく者」です。こちらはもう連載終了してしまい、続編も出ないようなので残念‥‥主人公のその後がぜひとも知りたいのですが。これは一昨年だったか、やはりコミックを全巻大人買いして一気読みしました。少年漫画らしくスポ根ものに近い感じですが、息もつかせぬ超絶芸道バトルの連続で非常に面白かったです。これも機会があればまた読み返してご紹介したいと思っています。
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