シネマ歌舞伎、ほか。
「忍たま乱太郎~夏休み大作戦の段」の公開も終わってしまいましたねえ。栗塚ファンとしてはずいぶん前から(去年の夏の撮影の話を聞いた時から)いつ見られるのだろうと楽しみにしていたのに、終わってしまえばあっという間でした。
その「忍たま」、私は2回見ました。1回目は連日の猛暑の疲れが出たのか、涼しい映画館に入ったとたんに寝てしまったようで、2回目に見たとき「あれ?こんなシーンあったっけ?初めて見た」‥‥そんな場面がいっぱいありました。栗塚さんが出ているところすらそんな調子で、栗様ごめんなさ~い
2回目に見たときは夏休みに入っていましたが、親子連れの数はそれほどでもなく、若い女の子のグループ(高校生ぐらい?)がやたらと目立つので何かな?と思ったら、忍術学園の6年生がおめあてなんでしょうか?なかなかカッコいい子たちが出演していました。ただ、彼らの女装は大笑い。笑いものになっていた山田先生の女装よりも私にはおかしかったです。栗塚さんは乙女チックでかわいかったですよ(爆)
2回目、よくよく目を開けて見てみたら、ギャグは別にテンポが速いわけではなく、私がついていけなかったのは単に眠気と、あまりにも他愛ないギャグだったからということがわかりました。逆にそんなことをやっている間に「ボケッとしてたらやられちまうだろっ!」という感じで、時代劇を見ている目には何ともおかしな間(ま)で、これはやっぱり時代劇というよりまるっきり2次元の漫画の世界なんだな(盛大な鼻水とか二重たんこぶとか、栗塚さんが紙になっちゃうとか)などと思ったり(笑)‥‥立ち回りのシーンは逆に時代劇の殺陣というよりもアクションといったほうがよく、普段特撮ヒーローものを撮っている監督さんならではのものだったでしょう。
いや~、2度目に見たら思ったよりもずっと面白かったです。ほんと見逃した方はDVD出るまで我慢ですが、とにかく栗塚さん大活躍で、ほとんどゲスト主役みたいでした。ヤバすぎと思った最後のオチですが、「そんなことはこの映画が始まってから一度も言ってない」なんて言っちゃって、それでみんなでキャベツの千切りを紙皿に乗せてマヨネーズかけて食べてるんだから‥‥こりゃ時代劇じゃなくってやっぱり漫画だわね(爆)
それでも困難を乗り越え、いろんなことを経験し、無事宿題の「忍たまの友」を全問終わらせることができた子供たち。あっぱれあっぱれ、めでたしめでたし‥‥でもなかったみたいですが(笑)真面目に見たらばかばかしいけど、何も考えずに見ると結構楽しく、周りを気にせず笑っちゃうような映画でした。
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映画といえば先月は何と映画館に4回も行ったのですよ。2回の「忍たま」のほかに見たのは、シネマ歌舞伎の「怪談牡丹灯籠」と、三波春夫の「歌芸~終りなき我が歌の道」。
シネマ歌舞伎のほうは、歌舞伎座新開場記念としてことしの3月から10月まで「月イチ歌舞伎」と称して、今までのシネマ歌舞伎の作品の中から8本を月に1本、全国の系列館で上演するというもの。見たいと思ってもなかなか見られなかった作品が月替わりで見られるということで、私は4月の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」と6月の「刺青奇遇」、そして7月の「怪談牡丹灯籠」を見てきました。
3本ともとてもよかったです。劇場の雰囲気はそのままに、劇場では見られない細かい動作や表情まで手に取るように見られるのですから。「ふるあめりか」は脇役にまで豪華俳優陣を揃え、内容もすごく面白かった。違う視点から見ることで、幕末に幅を利かせていた勤皇の志士とやらが実に滑稽に思えてきます。そして玉三郎丈の怒涛の演技力!美しいお顔をくちゃくちゃにして時節に翻弄された女を熱演しています。
「刺青奇遇」(いれずみちょうはん)は大衆演劇風のベタな内容ながら、やはり玉三郎、そして勘三郎の迫真の演技に泣かされました。私は勘三郎さんといえばおちゃらけたキャラのイメージが大きく、彼のここまでのシリアス芝居は考えてみればほとんど見たことがなかった気がするのです。上手い俳優さんならではの、涙、涙の感動のお芝居でした。
「牡丹灯籠」は仁左衛門&玉三郎の息のあったコンビで、人間の心の深淵に潜む欲望というか情念というか、幽霊よりも恐ろしいものを見せてもらった気がします。一昨年(2011年)の5月に明治座で見た染五郎&七之助のものと、内容&演出はほとんど同じでした。ただ、染&七のときは新三郎&お露もこの二人が二役で演じていましたが。
先に見たほうが印象が強いのは仕方ないのですが、染五郎の小者っぽい軽さ、七之助の女のかわいらしさや浅はかさが見える感じがよかったなあと改めて思ったりしました。大好きな仁左様ですが、小心者を演じていてもどこか大物感がぬぐえなくて(笑)‥‥一方玉三郎のほうもすごすぎて、一言‥‥コワイ‥‥まあそれは、舞台で見るのと違って顔アップがあったり細かいところが見えたりということもあるのでしょうけどね。
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先月見た映画でもう一本、三波春夫の「歌芸~終りなき我が歌の道」‥‥その前の6月初め、パリ・オペラ座ライブビューイングを友人と見に行ったとき、偶然この映画の予告編を見たんですよね。三波春夫といえば「お客様は神様です」とか「こんにちは~こんにちは~」の万博ソングぐらいしか知らない人が多いと思うけれど、実は私はごくごく幼少期に、多分幼稚園入る前だと思うけれど、祖父が毎日聞いていたレコードで「かっぱ~からげて三度笠~」とか「利根の川風よしきりの~」とかいう歌を知っていたんですよ。予告編に出てくる「ときは元禄15年‥」から始まる長ゼリフを聞いた瞬間、うわ~これだ!と思ってしまいました。もしかして私が今、歌舞伎や大衆演劇が好きだったりする原点はここにあったのかな?と。それを友人(バレエの映画に一緒に行ったのだから、もちろんバレエファンの友人です)に言ったら大笑いされてしまいました。
これも「シネマ歌舞伎」と同じで一週間しかやっていないので時間のやりくりが少々きつかったのですが、映画館で見てきましたよ。内容は、新たに発見された1976年のステージ映像と、1994年の歌舞伎座公演の二つをあわせただけの、ただただず~っと三波春夫さんが歌い続けるという、何のひねりもないそのまんまの映画です。ところが、これがすごく感動しちゃって、最初から号泣(笑)‥‥記憶の中の「かっぱからげて」は「雪の渡り鳥」、「利根の~」は「大利根無情」という題名だというのをこの映画で初めて知りました。でもなぜかあまりに昔の記憶過ぎて、ほとんど覚えていないというか、懐かしいという感情が全然ないのには驚きました。
物心つく前、祖父の聴いているレコードプレーヤーの周りを盆踊りみたいにして踊りながらぐるぐる回っていたという私ですが(爆)、少し大きくなってからはキンキラの豪華衣装に「お客様は神様です」なんていかにも成金っぽくてダサい‥‥ぐらいにしか思ってなかったんですよ。それが‥‥意外ですが、今見ると実にカッコいい
ではないですか。特に、私もちょっと覚えている「止めてくださるな妙心どの、落ちぶれ果てても?は武士じゃ、男の引き際は心得ており申す、行かねばならぬ、行かねばならぬのだ~!」というセリフ!いや~しびれました(笑)
76年のステージは張りのある明るい歌声に満面の笑顔。演歌は「暗い」というイメージがあったけれど、そんなことは全くありません。そして会場に押し掛けたお客様たちは老若男女、和服姿も多く、この日のために皆晴れやかに着飾って実にいいお顔をされています。まさに「お客様は神様」ってこういうことだったんですね。いい時代だったんだなあ~。
そして94年の映像は、もう70代になられていたと思うけれど、あの歌舞伎座の舞台にフルバンドを乗せて歌うわ歌うわ。そして圧巻が長編浪曲歌謡「平家物語」です。和楽器奏者に加え、何とボディペインティングをした大太鼓の兄ちゃんと、白い獅子の毛みたいなのをかぶったパンクっぽいパーカッションの兄ちゃんがひな壇の一番上で大暴れに近い大熱演。壇ノ浦の合戦シーンを表しているのか、特にパンク兄ちゃんは獅子の毛を振りながらひしゃげたドラム缶を叩きまくり、最後にはグラインダーで火花を散らしてドラム缶を削り始めるという‥‥何という斬新な舞台でしょう!
知らなかったけれど、こんなことをやった歌手がいたんですね。そして、幼い頃聞いた祖父のレコードは、歌舞伎好きが高じて農村歌舞伎にまで首を突っ込んでいる、そんな今の私に通じる原点だったんだなと改めて思いました。一緒に「歌芸」の予告編を見たバレエファンの友人にこれを本当に見に行ったと言ったら、また大笑いするでしょうけどね
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映画の話ついでに、その友人と見た「パリ・オペラ座ライブビューイング」の「ドン・キホーテ」ですが、こちらもよかったです。何せバジル役が大好きなカール・パケットですから
ヌレエフ版の「ドン・キ」は、ロシアバレエの「ドン・キホーテ」とは全く別物と思ったほうがいいかもしれません。「ドン・キ」に不可欠なスピード感も、お祭り騒ぎの楽しさも、豊かな民族色もほとんどありません。ストーリー性を重視して再構築した舞台構成、これはある程度説得力があります。ただ必要以上に豪華な衣装と背景、そしてあのめちゃくちゃ難度の高い、意味わからないほど複雑怪奇な振付(ヌレエフ得意のロンデ・ジャンプほか細かい脚技多用等)あの振りをこなすにはオペラ座のエトワールをもってしても音楽は相当ゆっくりめでないと不可能です。まるで違う音楽?と思うくらい。衣装も豪華すぎて重そうだし(笑)だから通常の「ドン・キ」とはかなり違った印象なのですよね。それでも、「ドン・キ」本来のスピード感を犠牲にしても、その複雑な振付をものともせずにさらっとこなす極上の優雅さというか、それがまさにパリ・オペラ座の真骨頂なのかと。
カール様は素敵でした 大柄なカール様があのやたら細かいステップをきっちりこなしているのは素晴らしい。10年前のDVDのルグリほど「鬼のように正確」ではないと思いますが、ルグリと違うのはそのうっとりするほど甘~い雰囲気。いいですね~。キトリ役のドロテ・ジルベールも、元気な町娘というよりは優雅なお姫様のようで、騎士道を極めんとする(?)ドン・キホーテがドルシネア姫と見まごうのもわかります。気の強そうなDVDのオーレリとはまた違ったよさがあるので、これもDVD化されないかな~と期待しているのですが。
ちょうどことしの5月、パリ・オペラ座バレエ団が来日して「天井桟敷の人々」を上演していましたが、私も友人も金欠及び新作・コンテ苦手症のために行きません(行けません・笑)でした。そのかわりこの「ドン・キホーテ」が見れてよかったです。
パリオペラ座ライブビューイングとはいえ、そのラインナップを見ると全8作中バレエは3作であとはオペラ。それも他のはノイマイヤーの「マーラー交響曲第3番」と、10年近く前(2004年)のマチュー・ガニオとオレリー・デュポンの「ラ・シルフィード」(もしかしてDVDと同じ?)なので、見に行くとしたらこの「ドン・キ」しかなかったのですが、これも短期間で終わってしまいました。
舞台の映像をそのまま見せるライブビューイングは英ロイヤルバレエでも、ボリショイでも(去年だったか、アレクサンドロワの「白鳥」とルンキナの「ジゼル」は見ました)、ことしはマリインスキーでもやりましたが(コンダウーロワの「白鳥」)いかんせん1日限りとか、期間が短いとかでなかなか見に行くことができません。シネマ歌舞伎もそうですよね。映画館で手軽に見られるのはいいことだから‥‥もうちょっとチャンスを増やしてほしいなあと思うのですが、そうもいかないのかな?
ともあれ、ここのところ結構映画館にも行っている‥‥という近況でした。
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