バレエ大好き

2013年7月23日 (火)

「バレエの神髄」(7月13日、15日)

Photo_2いまさらながら(笑)

時間がなくてなかなか以前のようには公演の感想も書けずにいますが‥‥それでも、何としてもこればっかりはまだ記憶が鮮明なうちに書いておきたい!‥‥なんて思っていたのに、またしても機を逃してしまいました ず~っと楽しみにしていた1年半ぶりのルジ様だったのに。見た後すぐには何も書けないぐらい放心状態だったということにでもしておきましょうか。それでも見たというだけの記録は残すようにしようと思って一生懸命思い出しております5月の「マラーホフの贈り物ファイナル」も、先日遅ればせながらそっと過去記事の中に紛れ込ませたところです(笑)

昨年1月の「海賊」以来のルジマトフ来日。それもこの公演、日程が決まるのが遅くてハラハラしていました。いつもは1月のレニ国の公演中に仮チラシなどが配られたりしていたのに、日程&内容が決まったのが確かチケット売り出し直前の3月。でもその前に「ルジファンのつどい」などで大体このあたりに公演があるという情報を得ていたので、かぶりそうな「ロイヤル・バレエ」はチケットを買わず‥‥で、とうとう今回のロイヤル・バレエのほうは何も見ませんでした。

コジョカルの「白鳥」ぐらいはチケットおさえておけばよかったと思ったけれど、彼女は結局直前になって降板してしまったんですよね。あれには驚きました。今までコジョカルに振られた(代役になってしまった)ことが何回かあるので、この人はわからないぞとは思いつつ、コジョカル&コボーがそろってロイヤル退団!というショッキングなニュースを聞いた時は、ああ何で私は無理してもチケット買わなかったんだろうと後悔しきりでしたよ。最後にもう一度ロイヤルの全幕でコジョカルを見ておきたかった。とはいえ早々に完売したというプラチナチケットですから悔やんでもあとのまつり。それが‥‥。

話がそれましたが、この「神髄」はロイヤルの公演とかぶってしまい、チケット販売も苦戦?と思いきや、そんなことはなく、私が見た日は両日ともほとんど1階席は満席でした。約束にたがわず絶対来てくれる、怪我を押して舞台に立ってくれたこともある、そんなルジ様ですものね。さすがに御歳50歳になられ、この日本の猛暑はどうかななんて思ったけれど‥‥そんな心配はすぐに吹っ飛ぶような、思いっきりの健在ぶりを見せてくれました。

それでも、初日は全体的に初日モードだったようです。キエフバレエの方々も、決めでポワントが落ちちゃったり、回転がぶれたりする人がいたし、岩田さんもあれ?みたいなところが(後から思うとあの直前に怪我?)あったし、エフセーエワも表情が硬かったような。それが、3日目に見たときは、えっ?昨日何かあった??というくらいどの方も違っていました。3日間チケットを押さえていたのに、結局用事ができて残念ながら真ん中の日は手放してしまったのですが、やっぱりルジマトフの出る公演は3日あったら3日見なきゃ!何があるかわからないのですよね。

で、ルジ様はルジ様でした~

としか言いようがない!(笑)もうね、以前のように飛べないだとか何だとかそんなことは10年も前から言われ続けているのよ。でもでも、それにしても、これが50歳の肉体?と思うぐらいに鍛え上げられ、磨きあげられ、しなやかさと力強さにあふれ、わずかな動きだけでその陰影を伝えることができる腕、脚、背中、そして指先‥‥それだけで芸術品ではないのかと。ポニョポニョのマラーホフ(素敵だけど)に対して、鋼のような、いやいや、美しい野獣のような、ゴージャスなまでにエロティックなルジ様

そして、怪我でまったくジャンプができなかった2年半前の悪夢がまるで嘘のように、美しく滞空時間の長いジャンプを見せてくれました。そりゃ若い頃に比べれば高さも軽さもないかもしれないし、回転だってスピードは落ちたかもしれない。でも、ジャンプも回転も、表現する手段、物語を語る道具としては十分以上の美しさとクオリティを保っていて‥‥それだけで感動というほかはないのに、表現にもさらなる深化を見せ‥‥ああ、この人はどこまで進化するのだろう?!もう自分のことすっかりオジサン、オバサンだと思っている同世代にとっては「どうだ!」と見せつけられてしまったような‥‥彼の神々しいまでの立ち姿を見ただけで、今までとは違ったすごい感動を覚えました。

いや、どんなふうに賞賛してもへんてこりんになってしまうのですよ。大体50歳まで踊り続けるダンサー(特に男性)はほとんどいないのですから。2010年に最後に踊った全幕の「バヤデルカ」などは、全身全霊で物語の中に没入してしまう姿を「命を削るみたい」とか、「痛々しい」と言った人もいました。でも、今回のルジマトフにはそんな「痛々しさ」など全くなく、年齢も全然関係なく、ただただそこに表現者としてのルジマトフ、いやいや、極限まで磨き上げられた一人の素晴らしいダンサーがいるだけ。

超かっこいい~!

失礼しました本当にファンでよかったと思える「帝王再臨」でした。久しぶりに見ても、見ていなかったときのことを(どんなことをしていたか、何を踊っていたか)想像できるダンサー‥‥ルジのことをそんなふうに話す友人がいますが、本当にそうです。私はそれこそ40代のルジ様しか見てこなかったわけですが、40代を見れば若い頃どれだけ身体能力に優れていたかわかる。そして体力も表現力も充実した30代の円熟期にどれだけ素晴らしい舞台をつくり、どれだけ人々を感動させてきたかわかる。そして今回もまた、前回の「海賊」以来だけれど、その間に数々の舞台に出演し、ツアーにも行き、どれだけ表現の幅を増やしてきたか、そのためにどれだけ努力して踊れる身体を保ってきたか‥‥踊りを見ればわかる。いやぁもう、ボキャ貧にもほどがありすぎますが、超かっこよかったです。

では、一応順を追って。

第1部
「パキータ」より
カテリーナ・クーハリ、オレクサンドル・ストヤノフ、キエフ・バレエ

幕が開いたとたん、きれい~!斜めに並んだそろいの衣装のコールドの方たちのスタイルのよさ。クラシックバレエはこれでなくちゃね。クーハリはその中でもひときわ華奢。ストヤノフはあまり主役オーラはないし、初日はヘロヘロしてて軸が定まらないような情けない踊りをしていたと思ったら、3日目には全然違ってしなやかで軽やかな踊りを披露してくれました。

4人のヴァリエーションの順番が3日目は変わった?それぞれ特徴のあるソリストたちでしたが、プログラムにも名前が載っていないのが残念でした。幕が開いたしょっぱなから、ああ、バレエって楽しいなあ~と思えるパフォーマンスだったと思います。

「帰還」
ファルフ・ルジマトフ

明るい舞台の後、いきなり真っ暗な中現れたのは、分厚い軍用コートに身を包んだルジマトフでした。踊り始めると、コートを脱いで上半身裸のいつものルジ(笑)‥‥戦場から帰ってきた兵士が、帰ってはみたけれど以前のものは何もなく、絶望と悲しみに打ちひしがれるというような内容。

コンテンポラリーの題材として「絶望」や「苦悩」はよくあると思うし、その手の表現はお手のもの。身体全体から切々と伝わってきます。でも、見ている私たちは、そういうものを表現するにはあまりにゴージャスな(笑)ルジのボディのほうに目が行ってしまってそんな人も多かったのでは。

私は、見ながらなぜかルジ様と仁左様は似ているなんて思ってしまった‥(!)全く違う表現形態ながら、その質が、惹かれる共通の何かを持っているのかもしれません。

「海賊」よりパ・ド・ドゥ
エリザヴェータ・チェプラソワ、岩田守弘

ルジマトフの出演するガラで彼の十八番だったものを踊るというのは緊張するでしょうね。ルジがこれを踊らなくなってからもいろんな人がルジガラでこれを踊りました。彼の十八番を他の人が踊るのを見るのは、以前はファンとして複雑な気持ちでしたが、今は何だか懐かしの「海賊」という感じで、これもファンサービスかなと思えたりして(笑)

岩田さんは全く年齢を感じさせない勢いとスピード感。手足が短いのはいかんともしがたいのですが、それを補って余りある上手さと勢いでもっていきます。ただ、相手役のチェプラソワが、それほど大きいバレリーナではないと思うのですが、やっぱり岩田さんと踊ると巨大に見えてしまいます。最初予定されていた小柄なハニュコワだったらよかったのかもしれませんが‥‥そのチェプラソワをよくリフトしていました。

それが1日目、コーダのところで多分怪我があったのだと思いますが、あれ?と思った箇所がありました。そして翌日は岩田さんは踊らず、代役になったそうです。が、最終日には復活。リフトでタイミングをはずしたのか、途中で降ろしてしまう場面もありましたが、怪我をしているとは思えないパワフルな踊りはさすがでした。

チェプラソワは、昨年見たキエフ・バレエの「華麗なるクラシックバレエ・ハイライト」に出ていましたが、マリインスキーから移籍してきたバレリーナなのですよね。マリインスキーでは中堅どころの重要な役を踊ってきた人のようで、安定感、技術ともにしっかりしたものを持っている人だと思いました。

「瀕死の白鳥」
エレーナ・フィリピエワ

感動しました。去年のバレエフェスのロパートキナも素晴らしかったけれど、全然違う意味で‥‥ロパ様のときの感動は、彼女のあり得ないくらいの身体的な美しさ(長身、長い手足、長い首、弓なりにしなった甲)がまるで「神」「奇跡」を見るようでした。それが、今回のフィリピエワの「瀕死」は、波打つような腕もさることながら、死にゆく白鳥の思いが伝わってくるようで、思わず涙が出てしまいました。

バレエ見始めの頃は「瀕死」なんてつまらない演目だなあと思っていたけれど、いやいや、これこそ踊る人によって全然違う奥が深い作品だったのです。その人の歩んできた「年輪」が見える踊り。思えばこれこそ本物の「プリマ」の踊りなのですよね。ただ振りをなぞるだけならどんなバレリーナでもできる。去年の夏のキエフバレエのハイライトでは、入団したばかりの19歳の子がこれを踊っていました。それなりに美しい踊りではありました。

でも、やはりベテランダンサーが踊ると全然違うのです。その人のプロフィールを知らなくても、それを「白鳥」に重ねることができる。バレリーナは「白鳥」なのです。長い長い間この世界で踊ってきた人ならではの「踊れる喜び」、そしてやがて踊れなくなる時が来るという恐れとあきらめ、それでも燃え尽きるその時まで踊り続けたいという確固たる意志と、最後の瞬間まで失わない気品。そういうものを「弱さ」「はかなさ」の中に表現できるのは、やはり長年プリマとして踊り続けてきた人だからこそだと思いました。

アンナ・パブロワが世界中を回っていたとき、看板である彼女は毎日のように舞台に立たなければならなかった。それで、このポワントで立ち続ける短いけれど美しいこの踊りを踊ったという‥‥確かに、体力的な消耗は少ないかもしれないけれど、精神的なものはとても大きいと思うのです。一回一回燃焼しきって、そして一回一回「死んで」いるような‥‥静謐な美しさの中にもそんな激しさを秘めたフィリピエワの「瀕死」が心に残りました。

「ドン・キホーテ」よりパ・ド・ドゥ
エレーナ・エフセーエワ、セルギイ・シドルスキー

初日、エフセーエワの表情が硬いなあと思ったけれど、それは気の強い女を演じているからか、3日目も同じでした。随所に「ハッ」とか「ヤッ」とか言いながら気合を入れていて、そのとおりのキレキレのキトリ(笑)

対するシドルスキーは真逆のほのぼの系なので全然目立たないというか。でも、この人は目立たなくてもきちんと踊っている、いや技術は相当なものですが、ソフトでノーブルなイメージが勝ってしまうのですよね。手足が長くて紳士的で、優しくて暖かい存在感。悪く言えば人畜無害(笑)危険極まりないルジ様のバジルとは好対照ですね。

思えば、前半の演目は「パキータ」にしても、「海賊」にしても、そしてこの「ドンキ」にしても、かつてルジマトフが得意としてきた演目ばかり。「パキータ」の涙が出るようなカッコよさ、覚えてますよ~そして「海賊」は何をかいわんや。この人のアリを見ずして「海賊」を語ることなかれというくらいの絶品でした。(比較的新しいファンの私でもかろうじて間に合いました)「ドンキ」も、2年前にテリョーシキナを相手に見せたスペインの伊達男っぷりは記憶に新しいところ。この会場にいたルジマトフのファンにとってはかつてのルジの雄姿と重なってしまう人もいたかもしれないけれど、それぞれがまた各々ルジとは違った個性を見せることで、バラエティ豊かなプログラムとなった気がします。

第2部
「ロミオとジュリエット」
カテリーナ・クーハリ、オレクサンドル・ストヤノフ

最初の「パキータ」のペアですが、こっちのほうが合っています。見なれたラブロフスキーやマクミランの振り付けとは違うけれど、こちらも初々しさと若い疾走感があってよかった。振り付けですが、初日はロミオがコロコロ転げ回るシーンがあったと思ったのですが、3日目にはありませんでした。私の思い違い?

「ナヤン・ナヴァー」
岩田守弘

この公演のためにつくられた新作だそうです。岩田さんは現在バイカル湖のほとりのウラン・ウデというところにあるブリヤート・バレエの芸術監督をしているそうですが、その地方に伝わる民族の歴史を描いたものでしょうか。

初日は確か素朴な民族衣装のようなものを着ていたと思うのですが、3日目は上半身裸でブルーの鉢巻きをして、最後にその鉢巻きを大事そうに床に置く‥‥その鉢巻き初日はあったっけ?というような記憶の心もとなさです。異邦人の岩田さんが、赴任先の地出身の振付家の作品でその民族の悲しみを踊る。何か、岩田さんの人となりがわかる気がしました。

「白鳥の湖」より“ロシアの踊り”
エレーナ・エフセーエワ

よく見る「ルースカヤ」と、音楽は一緒でもちょっと違います。
ワシーリエフというともうすっかりイワン・ワシーリエフのことになってしまいましたが、往年のボリショイのダンサー、あのマクシモワの夫君のウラジミール・ワシーリエフ氏‥‥彼の振付の「白鳥の湖」で踊られる「白鳥の女王」の踊りなのだとか。ワシーリエフ氏の振付作品といえば例のオーケストラを舞台に上げた「ロミオとジュリエット」ぐらいしか知りませんが、かなり斬新な演出をする人なのでしょうか。プログラムによると彼の「白鳥の湖」にはオディールは登場しないとか?‥‥どんなものか見てみたい気もしますが、これはそのオディールなしの宮廷の場面で踊られるオデットの踊り?ということです。

白いレースが重ねられたようなチュチュ、肩から腕には「バヤデール」の「影」よりはもう少し幅の広いオーガンジーの袖が付いていて優雅な感じ。ミハイロフスキーにいたころよりも、ずいぶんいろんなものが削り落とされて磨かれた感のあるエフセーエワ。優雅な中にも強さと気品が感じられ、さらにかわいい‥長い踊りですが、彼女をもっと見ていたいと思いました。

「ラ・シルフィード」よりパ・ド・ドゥ
吉田都、セルギイ・シドルスキー

都さんは何て軽やかなんでしょう!?本物の妖精みたい。品があるというか、やはりそれは長年トップであり続けた人ならではのものなのでしょう。脚を高く上げるわけではないし、高く飛ぶわけでもない。だけどまるで体重が感じられない軽やかさ。何だろう‥‥いたずらっぽい演技までがすべて一つの絵の中に納まる。そして初日から完璧なプロフェッショナル。ルジマトフとはまた別のところで進化を遂げてきたベテランダンサー。フィリピエワといい、岩田さんといい、それぞれベテランならではの「華」を見せる四人四様の、まさに「バレエの神髄」を堪能しました。

「ボレロ」
ファルフ・ルジマトフ、キエフバレエ

2年前の「バレエの神髄」で急遽この作品をプログラムに入れ、東日本大震災で疲弊した私たちの心に希望の灯をともしてくれたあのアンドロソフ振付の「ボレロ」‥‥あのときはソロだったけれど、その後、もっと大編成のエキゾチックな?物語バレエ仕立てでロシアやヨーロッパの各地でツアーをしてきたことは、You Tubeなどに上がっていた映像で見ていました。それを今度はキエフバレエの6人の女性ダンサーを従えたヴァージョンで再編成して見せてくれました。

やっぱりルジマトフという人はすごい「カリスマ」なんだなあと思います。登場しただけでその場の空気を変えてしまう。ぐいぐいと自分の世界に見るものを引き込んでしまう。ああ、やっぱりこれでなきゃ!と思いましたよ。そして、一つ一つの静止ポーズがきっちり決まり、それが神々しいまでに美しい。まさに「帝王再臨」!(このキャッチコピーを目にした時は吹きましたが‥‥もう本当にその通り)

鍛え上げられた肉体がさまざまにキレのよい決めポーズを見せて、力強いリズムとともに連綿と変化していくのをただただ見て、そして感じるのは圧倒的な存在感。神、祈り、戦う勇気‥‥何でもいいけど、こんなすごい空気感を出せる人はやっぱりほかにいないのでは。バックのダンサーが単純な動きを繰り返す中、真ん中でたった一人長い踊りを踊り続け、最後の爆発で燃焼しきる、密度の濃い時間でした。

第3部
「シェヘラザード」(全1幕)
ファルフ・ルジマトフ、エレーナ・フィリピエワ、キエフ・バレエ

ルジ以外の金の奴隷なんて‥‥とか、お決まりの野暮なことはもう言いません。これは他のダンサーが踊るものとは別物なのです。これはこれで独立した「ルジマトフのシェヘラザード」の世界なのだと思うようになりました。

3年ぶりに見たけれど、3年前よりジャンプも回転もダイナミックに踊っていた気がします。ルジマトフは今どきのダンサーに比べればそれほど大きいダンサーではありません。でも、舞台ではすごく大きく見える。しなやかで野性的な金の奴隷はやはり絶品でした。

3年前にも感じたけど、マリインスキーに比べれば舞台美術もへんてこりんだし、ピンクの髪のバービーちゃんみたいな場違いなハーレム女たちやら、色白ぽっちゃりの奴隷やら、ああもう、こんなところで人間国宝級のルジ様を踊らせるなんて!と思うくらいなのだけれど、ルジマトフが登場した瞬間に、もうそんなことはどうでもよくなって‥‥そう、これはもうルジマトフの世界なのだ。

セクシーなマハリナに比べたら、どんなに高慢な感じを出してもフィリピエワは清楚でかわいい系。なのでルジもフェロモン押さえ目(あれで抑えめなの。すごいときは鼻血出そうなくらい・爆)奴隷なのに粗野な感じはなく、野性的でありながらそこにある種の高貴な雰囲気が漂っていて、見ようによってはせつない純愛物語にも映ってしまうのです。あのラストは何回見ても哀しい。

これは王弟が仕掛けた陰謀なのだわ。ゾベイダが王弟を見る目は最初から「恨み」の目だった。戦に負けた国の王族は敵国の奴隷にされ、めぼしい女たちはハーレムに送られる。ゾベイダと金の奴隷は引き裂かれた恋人たちだったのでした(勝手な解釈

ラストで、ゾベイダは王からナイフを奪って王弟に斬りかかる。金の奴隷を斬った王弟に。そして、一度は王に媚を見せるけれど、最後は金の奴隷の後を追って‥‥何かいろんな妄想に駆り立てられるじゃないですか。だって、金の奴隷は奴隷というにはあまりにも高貴で神々しいんだもの。

留守中の大乱交パーティーに王が怒って皆殺し‥‥みたいな、一般的な「シェヘラザード」とはやっぱり別物に思えてしまう。そんな舞台を3年ぶりに見ることができて本当によかった。実にドラマチックな「シェヘラザード」でした。

長い間待ったかいがあって、どれもとても心に残る素晴らしいパフォーマンスでした。やはり私の「一番」はルジマトフです。それはもう間違いがない。次はいつ何を見せてくれるのでしょう?来年のお正月も残念ながらレニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー)は来ないので、早くて来年の夏?もう待ち遠しくてたまりません。いつまでも踊っていてほしいけれどそうもいかないとなると、見られる時間は限られています。見たばかりなのにもう「次」が見たくなる‥‥いつもそうですが、そういうお人なんですねえ。

今年の春から、たまたまルグリ、マラーホフと日本で大変人気のあるベテランダンサーが相次いでガラ公演を行いました。それぞれに今まで踊ってきたもの、現在の姿、これから目指す方向などがその中に見えるような素晴らしい公演でした。そんな中で、ルジマトフはやっぱりルジマトフなんだなあという‥‥わけのわからない感想ですみません。行く末なんかわからない、今の俺を見ろ!って、そんな感じかな(笑)

「バレエの神髄」といいながら、最初は看板のルジと、それから岩田さん、都さんなど手近な有名人を集めて、あとは「夏ガラ」で来日中のキエフバレエからダンサーを引っ張ってきただけのお手軽公演みたいに思えたけれど、いえいえどうして、これがとても見ごたえのある公演だったのですよ。私がルジマトフのファンだからというだけではありません。フィリピエワ、岩田さん、都さん、それぞれ道を極めてきた人の「今」の踊りに感動できたいい公演でした。

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2013年6月 2日 (日)

「マラーホフの贈り物」ファイナル(Bプロ/5月26日)

例のごとく時間がたってしまったけれど「マラーホフの贈り物ファイナル」のBプロを見てきました。せっかく見たのだから簡単に覚書を。

「マニュエル・ルグリの新しき世界」は新しすぎて私にはついていけませんでした だから今回もそれほど期待はしていなかったけれど‥‥それが何と、今度は演目もよかったし、出演者も皆よかったし、とにかくマラーホフ自身にものすごく感動してしまいました。いい公演でした。

しかしながら、今回のマラーホフの姿は昔からのファンにはかなりのショックだったみたいです。あのしなやかで少年のように華奢だった若い頃のマラーホフを知っていたら、そりゃ隔世の感ありでしょうね。去年のバレエフェスで見たとき、何だか身体の厚みが出てきたみたいであれれ?と思ってしまって‥‥BSプレミアムでバレエフェスの一部を放送したときのマラーホフを再び見て、画面の比率(アスペクト比)が違ってるんじゃないの?と思ったくらいです。もちろん、違ってなんかいません(爆)‥‥今回はまた厚みも横幅もさらに増していました

マラーホフを初めて見たのは2000年のバレエフェスでの「ジゼル」と「コート」。「コート」にはびっくりしましたね。真っ暗やみの中でジャンプを繰り返すマラーホフと、空中にいるときだけ光るフラッシュライト。着地のときに全く音がしないので、まるで空中浮遊。すごいものを見たと思いました。 次は2002年だったか、シュツットガルトバレエ団の「ロミオとジュリエット」でマラーホフのロミオを見ました。そのときのジュリエットが誰だったか全く覚えてないくらい、天性の明るさと茶目っ気を備えたロミオに釘付けでした。思えば私はルジさまに決定的にやられる前は、マラーホフやウヴァーロフといった「白王子系」が好みだったのです。

その後、東京バレエ団のゲストで上野水香さんと「白鳥の湖」を踊ったマラーホフを見てちょっと引いてしまったことがありました。ポワントで立つと自分より背が高くなっちゃう相手と踊るのもどうかと思ったけど(その後のポリーナとのペアもそう)マラーホフの踊りが、きれいだけどあまりにも中性的でキモく見えて(ごめん)ちょうどその頃、ルジ様やゼレちゃんの男っぽさに惚れかけてた私は「一抜けた~!」っとなったわけです。

あれから約10年(爆)それでもマラーホフの踊りはたくさん見る機会がありました。でも、この公演ほど「マラーホフ、やっぱり好きだ~!」と思ったことはありませんでした。2002年のロミオ以来です!Aプロは平日なのでパスしてしまったけれど、Bプロだけでも見れて本当によかった。

鮮度が低くなってしまったけれど一応の覚書。

「シンデレラ」
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ

白ではない、淡いローズピンクの衣装のシンデレラは、マラーホフ版の「シンデレラ」。中央の部分だけ短くなっているチュチュは少し変だけど、夢見心地のサレンコを優しくサポートするマラーホフは、まさに夢の中の王子様だったのでした。

「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー

全幕では見たことないけれど、この場面は以前ルグリ&オレリーで見たことがあります。ラドメーカーもかわいくてスピード感があっていいけど、アイシュヴァルトがとにかく素晴らしかった。最初の、鏡を見て、病気でやつれ、若さも失いかけた自分を嘆くシーンから、出会ってすぐの若いアルマンを誘惑したりはねつけたりして適当にあしらいながらも、思いがけないくらいの性急な情熱にだんだんと心が傾いていくその過程を、短い中にドラマチックに見せてくれました。

「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

スミルノワはこの公演で来日中に何か賞をもらっているのですよね。それだけ期待されているダンサーなのでしょう。が、ボリショイの若手というけれど、あまりフレッシュさがなく、既に老練というか、大物感というか(笑)そんな感じがするんですよね。チュージンは相変わらずのノーブルさでした。去年のバレエフェスではロパートキナとルテステュが同じ演目を踊って全く違う世界を見せてくれたのは記憶に新しいところですが、これもまた違う味わいのある「ダイヤモンド」でした。

「レ・ブルジョワ」
ディヌ・タマズラカル

前回の「マラーホフの贈り物」でも、タマズラカルはこれを踊ってました?去年、シムキン君の生「レ・ブルジョワ」を見てしまった印象で忘れてましたが、あのときはちょっとした「スター誕生」だったのですよね。多分?3年ぶりに見たタマズラカルくん‥‥黒髪で、はにかんだ笑顔がやっぱりどことなく若い頃のルジさま似でキュンときます(笑)元気なところを見せてくれました。

「ライト・レイン」
ルシア・ラッカラ、マーロン・ディノ

初見でしたが、何と言うんだろう‥‥軟体動物系?白いレオタード姿のラッカラは色っぽいのを通り越して何か違う生物みたい。不思議な踊りでした。ディノのほうは、顔は美しく、大柄な肢体はギリシャ彫刻のよう‥‥と言いたいけど、ウドの大木感もしちゃう。ここではパートナーというよりラッカラに仕える操り人形師みたいでした。

「バレエ・インペリアル」
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ

東京バレエ団は思ったより健闘していました。退屈な演目なのですが、やはりマラーホフが登場すると俄然注目してしまいます。多少太めになっても王子様オーラは消えず。

「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー

この二人のクランコ版「ロミジュリ」も3年前にやりましたね。ラドメーカーの若々しいロミオに、アイシュヴァルトのかわいらしいジュリエット。これが先ほどのマルグリットと同じダンサー?と驚くほど。

「タランテラ」
ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

この二人にぴったりのはじけるような元気な演目。で、やっぱりタマズラカルがひそかなマイブーム スタイルのよさといい、はにかんだような笑顔といい、DVDの「ドン・キ」の頃の(30年近く前!)ルジマトフに似てる‥‥なんて言うと、ルジファンの方々には袋叩きかな?と思いきや、何人かの人が賛同してくれました(笑)ぜひぜひビッグなスターになってほしいです。(完全に余談

「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ
ルシア・ラッカラ、マーロン・ディノ

全幕を見たことないので知らないのですが、マルグリットがすべてを捨てて田舎でアルマンと暮らし始めたわずかな輝くような時間、その場面ですよね。この演目の他の場面と違って、白の衣装が二人の純粋な気持ちを表しているように、この場面は照明も背景も高原の避暑地のように明るいのです。ラッカラの表情には一点の曇りもなく、夢のように軽く、ただただ溢れる幸福感を表していながら、ほんの少しのせつなさが見る者の胸に残るのはさすが。見ごたえがありました。

「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ”
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

やっぱり、スミルノワは私の好きな可憐なタイプとは違うのですが‥‥グリゴローヴィチ版のヴァリエーションは彼女の雰囲気に合っていました。

「ヴォヤージュ」
ウラジーミル・マラーホフ

マラーホフが若い頃から折々に踊ってきた、マラーホフのためにつくられたこの踊り。本当にそのとおりの、旅から旅への人生だったでしょうね。私は、これを生で見るのは初めてだと思います。すごく若い頃のビデオ「True Prince」に収録されているのは見ていましたが、あの映像とそっくり同じ白い衣装で‥‥しかしサイズはずいぶん違うはず(爆)

会場で待ち合わせしていた20数年来のマラーホフファンという友人も、しきりに「あの腹出し衣装はショックだ」と言っていましたが‥‥私はそこにすごい感動を覚えたのです。ベルトの上におなかが乗っているのを見たらそれはショックかもしれませんが、昔のままのあの衣装で、45歳の今のありのままの姿を包み隠さず見せてくれたこと‥‥そこにはマラーホフの、日本のファンに対する信頼や感謝といった誠実な気持ちが現れているような気がして‥‥これがやっぱりこのガラの一番でした。

ダンサーとは過酷なものです。歳とればそれ相応に、表現力は伸びても身体がどんどん衰える。容姿もスタイルも美しさでは若い頃には及びもつかない。そしてまたマラーホフはもう長いことベルリン国立バレエの芸術監督として振り付けや演出といった多彩な活躍を見せているのだから‥‥ひたすら無駄なことをそぎ落として修練を重ねているであろうルジ様と比べれば、そりゃおなかも出てくるわ。それでも、若い頃からそのときそのときを写すように踊ってきただろう「ヴォヤージュ」 ‥それは彼のダンサー人生そのものかもしれません。終わることのない旅‥‥まだ旅は続くのですよね。

振りの中のちょっとおどけて手を振るポーズがかわいくて、思わず涙があふれてきてしまいました。そう、彼のキャラはまっさらな「白王子」だけでなく、相当なおふざけキャラでもありました。「海賊」のランケデム、「眠れる森の美女」のカラボス、「シンデレラ」の「甘い物好きのバレリーナ」‥‥みんなマラーホフならではの楽しい役でした。そして何より、私は一回しか見てないけれど、バレエフェスの「ファニーガラ」では毎回大活躍だったようですし。(私が見たときは確か、チュチュを着て「瀕死の白鳥」を踊ってました)‥‥そんないろんなことが一瞬のうちに去来して号泣 ヤバい、涙でマラーホフが見えないあせあせ(飛び散る汗)

とってもとっても感動しました。マラーホフが連れてきた若い男性ダンサーたちは見事にイケメンぞろいで、多分自分の系統の後継者?になるだろうという人たちです。 ラドメーカーの甘~い雰囲気、若々しい愛らしさ、チュージンの正統派王子様ぶり、端正さ、ノーブルさ、そしてタマズラカルのお茶目さ、陽気さ、明るさ。ディノ‥‥はちょっと違うかもだけど(笑) 
しかし、これだけ若いイケメンがそろっていても、やっぱり誰よりもマラーホフが一番なんですよね。 4人のいいところを全部合わせてもマラーホフにはかなわない。今後彼のようなダンサーが出るだろうか?いや、きっともう出ない‥‥彼もまたルジさまと同じように唯一無二の存在だったのです。

同時代のスターの行く末(!)として、先月見た「マニュエル・ルグリの新しき世界」と、今回のマラーホフ‥‥ルグリはあの年齢にしては(48歳)驚異的な体力だと思います。外見はオジサンになってもますますパワフルに新しいことに挑戦していくのでしょうね。芸術監督としても、振付家としても、ダンサーとしても。ま、もはや私にはついていけないと思うけど

今回の「マラーホフの贈り物」では、18年間続いてきた公演の最後として、本当に素敵な贈り物をもらった気がします。マラーホフは来年の夏までで芸術監督をやめるそうですが、そのあとどうするんでしょうね?まだダンサーとして踊ってくれるのかな?‥‥だったらうれしいけれど、昔ニーナの相手役として活躍したファジェーチェフみたいに、しばらく見ないうちにもはや誰だかわからないようなビヤダルオヤジと化してしまう‥‥ということもあるかもしれないし(爆) でも、どんな姿になっても、これだけの観客に愛され続けたマラーホフを忘れることはありません。ありがとう、マラーホフ。 これからも元気で「旅」を続けてください。

そして最後に控えしは‥‥7月の「バレエの神髄」ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい) いよいよあのお方がやってきます~! 一番ハラハラしてドキドキする、何があるかわからないあのお方が(爆) AプロBプロもない公演ですが、一回一回が全然違うあのお方。超楽しみです!

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2013年5月17日 (金)

マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅲ(Bプロ/4月20日)

最近すっかり歌舞伎づいてしまってバレエはちょっと離れ気味ですが、一応先月もルグリガラを見ていたのでした。もうすぐマラーホフのガラもあるので、何か感想というか、見た証拠みたいなのを残せればいいのですが、どうもこれがあまり覚えてないというか‥‥実はすっかり撃沈してしまったのですよ。恥ずかしながらほとんど寝ていたというか、起きていられませんでした(爆)こんなことは初めてで我ながら情けない

まず、一昨年の「マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ」がすごく面白かったという記憶があったので疑いもせずチケットを買いました。昨年はルグリ自身が芸術監督を務めるウイーン国立バレエの来日公演がありましたが、私は見られなかったので2年ぶりのルグリ。それにホールバーグも見られるし、と思って楽しみにしていました。しかしその後、ホールバーグが来ないことになり、いつの間にかプログラムも入れ替わって‥‥‥AプロならまだよかったのでしょうかBプロの何と地味だったこと

私は別にコンテンポラリーは嫌いじゃないのです。理解力があまりないからそれほど楽しめないかもしれないけど、見れば面白いものもあるのはわかります。プログラムの半分、いやたとえ7割だって楽しく見れるかもしれませんが、プログラムのほとんど全部コンテンポラリー系だったら‥‥つらいかも(笑) 今回は一つだけ、バランシンの「テーマとヴァリエーション」が入っていて、これはほっとするほどクラシック・バレエ的でしたが、物語性がなくて長いので‥‥結局撃沈だったんですよ。これはかなりショックでした。自称バレエファンの端くれのようなことを言っていながら、ほとんど全部寝てるか頭がぼーっとしているかの状態だったなんて!

コンテ9割って、考えてみたら初めてではありませんでした。去年の「グルジア国立バレエ」のガラもそんな感じだったけれど、後半のニーナの「マルグリットとアルマン」はとてもとても感動できたので、前半の退屈はまあニーナも自分のバレエ団の「今」を見せたかったのねということで納得できました。しかし、こんなに爆睡してしまった公演も初めてというか、周りでも結構寝ている人がいたんですけど‥‥それって大枚はたいて見にきたにしてはひどいじゃないですか。はっきり言いましょう‥‥つまらなかったからよね!(爆)それなのに会場はほぼ満席のお客さん、特にルグリへの拍手喝采はすごかった。皆さん理解できたの?NBS系の公演は高尚なバレエファンも多いことだから、やっぱり大半の方は楽しめたのでしょうか?(だとしたら尊敬に値します

思えば3月に見た「チャリティ・ガラ」のときは、あ~見てよかったハート達(複数ハート)バレエファンでよかった~ハート達(複数ハート)というくらい幸せな、夢のような時間を過ごすことができたのです。あれは逆に9割がおなじみのクラシックバレエでした。もうこれからは内容をよく吟味して行かないといけないかも、と思うくらい、こちらは超地味でマニアックなプログラムだったんです。

が、これからマラーホフも見る予定だし、7月にはルジ様も来るし、長年のバレエ界の大スターたちがそれぞれどのようになっていくのかということは興味のあることです。一応覚えている限りのことを見た後でメモしていたので、遅ればせながら記録として残してみることにします。

「クリアチュア」より
秋山珠子/ディモ・キリ-ロフ・ミレル
この作品は確か一昨年のルグリガラで見ました。あのとき踊っていたのは振付者のパトリック・ド・バナと上野水香でした。今回はスペイン国立ダンスカンパニーで活躍中という秋山さん。プログラムに書いてある彼女のレパートリーにはナチョ・ドゥアト、キリアン、マッツエック、フォーサイスなどの現代振付家の名前が目白押し。ショートカットのヘアスタイルからすると、ほとんどクラシックは踊らない方のようです。キリ-ロフ・ミレルのほうはスキンヘッドのごついダンサー。それなりに迫力はありました。

「ノクターン」
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ

舞台上にピアノ。 生ピアノがショパンのノクターンを次々に演奏する中、白の衣装のアッツォーニが何だかとてもかわいらしかったです。男女のすれ違いのようなことを描いているようなのですが‥‥よくわからず。

「アルルの女」
マリア・ヤコヴレワ/キリル・クルラーエフ

やっぱりこれも男女のすれ違いですが、もっと切実な感じ。振り向いてくれない男を一生懸命愛する女のけなげな姿。最後はガウンを脱ぎ棄てて迫ります。男は自分の中の幻影?に翻弄されて、とうとう気がふれて命を絶つ。とにかく、ラストの激しく踊りまくるクルラーエフがすごかったです。 最後は舞台正面奥にジャンプしたとたんにライトが落ちて終わります。

「ファクタム」
ヘレナ・マーティン/パトリック・ド・バナ

マーティンは最初男かと思った‥(すみません)たくましい体型からしてフラメンコの人ですね。ド・バナは「新しき世界」シリーズが始まって以来のルグリのお気に入りなのか、見るのはこれで三度目です。上半身裸(肩に唐草模様?の刺青あり)に黒の袴。二つの椅子を使っていた、ヤクザ風オヤジと迫力あるオバサンの踊り‥‥そのくらいしか覚えておりませぬ。

「ル・パルク」
オレリー・デュポン/マニュエル・ルグリ

去年のバレエフェスでヴィシニョーワとマラーホフが踊ったこの演目ですが、全然違っていました。あのときはあまりのおどろおどろしさに釘づけになりましたがたらーっ(汗)‥‥何か普通にさらっと見れてしまいました。
DVDになっているのはローラン・イレールとイザベル・ゲランで、マラーホフを見た後で見てみたら、あまりに官能的で何これ!?と仰天したものでしたが(マラーホフみたいに生贄になった男の話じゃなかった・爆)こちらはまたそれとも違っていたようです。オレリーの、しなやかで官能的ではあるけれど下品にならない、あくまでも端正な感じが、ルグリの生真面目な感じと一体になって人畜無害っぽくなってしまったのかも‥‥と、ぼ~っとした頭で考えました。

「エイムレス」
秋山珠子/ディモ・キリ-ロフ・ミレル

休憩挟んで新たな気分で見られるかと思いきや、何か全く記憶がとんでいます。秋山さんの衣装が黄色と赤?茶系?で、少年ぽくてかわいいなと思ったけれど、踊りはどんなだったかさえ思い出せないあせあせ(飛び散る汗)

「テーマとヴァリエーション」
リュドミラ・コノヴァロワ/デニス・チェリェヴィチコ

東京バレエ団
唯一のクラシック系バレエで一瞬ほっとしましたが眠気はさめず。中心となるダンサーがもう少し頑張ってくれたらね‥‥これがホールバーグだったらと思わずにはいられませんでした。それでもコノヴァロワはきちんとしてかつ華のあるダンサー。チェリェヴィチコはノーブルではあるけれどほんわかおっとり系で、バックの東京バレエ団とも違和感ない感じ‥‥というか、溶け込んじゃダメなのよ。真ん中は頭一つ以上秀でてなければ。やっぱりホールバーグのようなキラッキラな王子様で見たかったわ。

一昨年のルグリガラではこの二人が「海賊」を踊って鮮烈な印象を残しましたが、今回はうとうとしたまま‥‥たらーっ(汗) しかし、東京バレエ団は速くて難しいステップの群舞をなかなか頑張っていました。フレーズ倍取りみたいな速い振り付け、しかもジャンプも多い男性ダンサーの踊りをそろえるのはかなり難しいと思うのですが、健闘していたと思います。

「ノット・ウィズアウト・マイ・ヘッド」
シルヴィア・アッツォーニ/アレクサンドル・リアブコ

最初からすごい叫び声にびっくり。何だかわからないことを叫んでる‥‥何これ?と思って一瞬目が覚めたと思いましたが、踊りはやっぱり覚えてませんあせあせ(飛び散る汗)アッツォーニの衣装が、赤いローウエストのダランとしたシャーリングの入ったような生地で、、、でもリアブコはどんなだったか、やっぱり記憶がすっ飛んでます。ただ叫び声だけが印象に残ってました。

「モシュコフスキー・ワルツ」
マリア・ヤコヴレワ/キリル・クルラーエフ

今までの中で一番よかったと思えた演目かも。クラシックバレエ的な美しさが随所にあり、適度なスピード感とこれでもかと繰り返されるアクロバティックなリフト技。それから、まるで「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」のような初々しい男女の出会いみたいな物語性もあって爽やかでした。

あと、キリル・クルラーエフは何だかとっても私好みということに気がつきました(爆) 顔はタランダさん(今や知る人ぞ知るになってしまったみたいですが)みたいなごっつい顔してるんですが、何となくかわいいんですよ。そしてダイナミックで力持ち(笑)そういえば「アルルの女」で見せた狂気の様相も私好みだった ウイーン国立バレエのダンサーで、去年の来日公演に来ていたみたいだけれど、私は見なかったのでわかりませんでした。確かルグリガラでは初お目見えだと思います。この演目とそれから「アルルの女」で彼の踊りが見られたことがこのガラの唯一の収穫だった気がします。今後、彼に注目していよう

「シルヴィア」
オレリー・デュポン、マニュエル・ルグリ

ぼ~っとしたままとうとう最後の演目になってしまいました。私の知っている「シルヴィア」はアシュトン版で、ノイマイヤー版の「シルヴィア」は以前テレビ録画したものを持っていたけれど、実は一度も見ていませんでした(爆) あれを見ていればもっと楽しく見れたかもしれませんが。

ノイマイヤーの作品はやっぱり全幕で見ないと、ガラではよくわからない。あのシルヴィアのヴァリエーションの愛らしいピチカートの曲や、パ・ド・ドゥの壮大な音楽で踊られる踊りを、違う場面?で、しかも現代的な衣装で現代的な振りになってしまうとどうしても違和感があり、申し訳ないけど何の場面だろう?で終わってしまいました。せっかくのオレリーとルグリの共演‥‥もう二度と見れないかもしれないのに、何となくという感じで「見た」という実感もないまま終わってしまったなんてもったいない。

そして「フィナーレ」
あ~とうとうずっと眠ったような感じで終わってしまったわ。一つも集中して見ることができずに帰ってきてしまいました。演目的に好みじゃないものが多かったのが残念でした。

あちゃ~、今読み返しても全然思い入れのない文章(爆)せっかく見に行ったのにこんな悲惨な状態だったんですねえ。それでも貴重なルグリ&オレリーの共演をぼーっとしながらでも「見た」というだけの価値はあったのかな。唯一、キリル・クルラーエフが素敵でしたマリア・ヤコヴレワとの「アルルの女」「モシュコフスキー・ワルツ」のどちらもよかった。私はこういう物語性のあるような演目が好きなのかもしれません。

ルグリは、もともと端正できっちりとしていて、ヌレエフ版の鬼のような超絶小技もものともせずに、鬼のように正確にやってのけるタイプのダンサーなんですよね。だから超ベテランになってもとても紳士的で軌道を逸することなど全くない。それが、毎回毎回一体何が起きるかわからないようなお方の大ファンである私のような者にはどうしても物足りなく人畜無害に見えてしまうんだなと、今改めて知ったような気がします。

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2013年3月30日 (土)

「グラン・ガラ・コンサート」(3月20日)

またまた遅い覚書ですが‥‥‥東日本大震災復興祈念チャリティ・バレエと銘打ったガラ・コンサートに行ってきました。いつも前置きばかり長くなるので今回は前置きなし(笑)
とにかくバレエが好きでよかった~と思える、夢のような至福の時間でした。

「コッペリア」第三幕より スワニルダとフランツのパ・ド・ドゥ
エカテリーナ・マルコフスカヤ/アレクサンドル・ザイツェフ

登場した二人を見て思わず「かわいい~」 マルコフスカヤは初見ですが、彼女の持つ雰囲気も衣装もとってもかわいい。白のボディに薄い水色のサテンのリボンが斜めに交差していて、スカートはふわっとした白の綿レースの二段重ね。そしてザイツェフの衣装も白に刺繍の入った爽やか系。舞台の上は何もないんだけどお芝居も入り、まるで青春ドラマを見ているよう。ザイツェフの笑顔がとにかく素敵で‥‥彼を初めて見た5年前、この笑顔にやられたのでしたっけ。踊りも風のように軽くてさわやかでした。(何か、顔しか見てなかったみたい)バレエってこの「うっとり感」が大事なんだわ~と、しばらく忘れていたような感覚を改めて思い出したりしました。

「ジゼル」第二幕より ジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥ
田北志のぶ/ヤン・ワーニャ

舞台下手にジゼルの墓。その墓の前でアルブレヒトを守るポーズから始まるパ・ド・ドゥ。一転して静かな幽玄の世界になりました。

ヤン・ワーニャ(ヴァーニャ)は前に見たことがあったっけ?ここ何年か舞台の感想など書いていないのでわからないけど‥‥と思ったら、昨年末に見たキエフバレエの「ジゼル」で森番ハンスの役をやっていました。去年の夏ガラには出ていなかったと思います。長身で細身のシルエット、とても手足の長いダンサーです。

田北さんのジゼルは丁寧な踊りで、ふわっと舞うロマンティックチュチュの残像が美しく、ただただぼ~っと見入ってしまいました。そういえば、去年のフィリピエワのジゼルはすごくいい死にっぷりというか(笑)一切感情を殺したようなちょっと鬼気迫るジゼルだったと記憶していますが、田北さんはもっと人間に近いというか‥でも必死でアルブレヒトを守るというよりも、もっと大きな何かに向かって祈るような、そんな「魂」を感じるジゼルでした。

「海賊」より メドーラとアリのパ・ド・ドゥ
エカテリーナ・ハニュコーワ/ブルックリン・マック

こんなに最初からもりあがっちゃっていいの?というくらいの盛り上がりようでした。ブルックリン・マックという人は初見でしたが、彼のボリューム感(笑)と豪快さにびっくり。回転では徐々にスピードダウンしていってメリハリを見せる余裕、また滞空時間が長く一瞬止まったように見えるパ・ド・シゾ―など、見せる、見せる。ただ、見せることを重視して音楽を無視しがち(笑)‥これってルジマトフも若い頃同じようなことを言われていたという話を聞いたことがあります。音に遅れたっていいからもっとやっちゃえという、そんな勢いのある力強い踊りに圧倒されました。

久しぶりに見たハニュコワは、かわいい女学生のようなイメージからずいぶん大人っぽくなっていました。チュチュのスカートが短いのが気になったけど(笑)グランフェッテで方向を90度ずつ変えていく地味だけど難しい技も披露し、余裕の笑顔でした。

「ライモンダ」より ライモンダとジャン・ド・ブリエンヌのパ・ド・ドゥ
マリア・アラシュ/アレクサンドル・ヴォロチコフ

昨年のボリショイ公演では、まさにこの二人の「ライモンダ」を見たのですよ。あのときのアラシュはひたすら強そうでちっともかわいくないな(笑)と思ったけれど、何か今回はとても素敵でした。さすが貫禄の二人。

「タリスマン」より パ・ド・ドゥ
エレーナ・エフセエワ/イーゴリ・コルプ

この踊りとても好きなんです。音楽も好き。そして、この二人の個性によく合っている演目で、よくぞこれを踊ってくれましたという感じ。

コールプは王子様のとき(極力抑えてお行儀よくしてました)と違ってパワーも全開に近く、キレもスピード感もあのときよりずっとよかった。そしていつも思うけど、空中でのポーズがすごくきれいなのです。でも衣装が‥‥普通はこの演目、薄い水色の衣装ですよね。それがまさかの紫。よほど紫系が好きなのでしょうか(笑)先日見た「眠り」の王子では全く「妖しい系」を卒業したように思えたけれど、いやいや、紫の薄衣(シースルー)をまとったコールプ様はまるで「バラの精」のように妖しかったです(笑)

「タリスマン」というお話は、もちろん全幕で見たことはありませんが、舞台はインドだから「バヤデール」みたいな雰囲気かと思うし、お話は、婚約者がいるのに天から降りてきた妖精?(女神の娘)を好きになってしまうという「ラ・シルフィード」みたいな話のようだし、彼女が落とした「タリスマン」(お守り)を返さないと天に帰れないという「天の羽衣」みたいな設定でもあります。(最後はハッピーエンドみたいですが)つまり、女性は人間ではない女神の娘、男性は人間のはずなんですけど‥‥コールプのほうが妖精(魔物)みたい(爆)

エフセーエワはこういう演目だと本当に生き生きとしてかわいい。ちょっと体操っぽくなっちゃうところも「白鳥」ではNGでもこれなら気になりません。存分に身体能力のあるところを見せていました。

「エスメラルダ」より パ・ド・ドゥ
田北志のぶ/ヤン・ワーニャ

有名な、脚でタンバリンをたたくあの「エスメラルダ」のグランではなく、全幕の「エスメラルダ」の一部で、2幕の街の広場のシーン。一緒に踊っているのはエスメラルダに助けられた「詩人」です。

エスメラルダはしきりに舞台下手側を気にしているのですが、ここには彼女が愛するフェビス隊長(フェブとも)がいるという設定です。フェビスは貴族の娘と婚約していて、今まさに婚約者&その父親と談笑しているところ。そこで祝いの踊りを踊らなければならないジプシーの踊り子エスメラルダ‥‥何かどこかで聞いたような話じゃありません?「バヤデール」みたいですよねえ。実際は「バヤデール」よりもっとずっとひどい話ですが。

愛するフェビスが婚約者と仲睦まじくしているのを見てエスメラルダはとても正気ではいられません。そんな気持ちでは踊れっこない‥‥絶望するエスメラルダを気遣い、慰める詩人。彼に励まされながらも、ときどき悲しみで乱れ、止まってしまう踊り。どんなに好きでも貴族とジプシーは住む世界が違うのです。ただ、今は思いを踊りに託すしかない。そんな場面を田北さんが情感たっぷりに踊っていました。

「On the way」
ブルックリン・マック

白の伸縮性のあるスカートのようなものをはき、上半身裸。最近はコンテンポラリー系をあまり見てないのでわからないのですが、何かに抗い苦しむような、そこから救いを見出すようなありきたりのテーマのように思えるけど、彼の持つ豪快な雰囲気からは少し離れて、繊細な面も見せてくれたように思います。

「ラ・シルフィード」第二幕より シルフィードとジェームスのパ・ド・ドゥ
エカテリーナ・マルコフスカヤ/アレクサンドル・ザイツェフ

またまた「かわいい~!」マルコフスカヤだけでなく、ザイツェフも。演目がそうなのでしょうが、徹底的に爽やか系ですよねえ。つかまえようとしてもつかまえられない軽い軽いシルフィード。花を摘んだり水をすくったり蝶をつかまえたりして戯れる二人。その純粋な雰囲気がいいなあ~。

ザイツェフの踊りは何だか力任せに頑張っている感じで、「コッペリア」のときの軽やかさはどこへやら。確かに複雑なステップで大変な踊りではありますが‥‥でもかわいい 好きですこの方(笑)二人とも結構なベテランのはずなのに、このかわいさ、爽やかさはもう持ち味と思うしかありません。素敵でした

「グラン・パ・クラシック」より パ・ド・ドゥ
エレーナ・エフセエワ/イーゴリ・コルプ

コールプの衣装がまた面白い。黒の衣装と白タイツ。袖が二段に絞ってあって、前面に細かくシャーリングが施してあります。エレガントというか、でもちょっと風変わりなコールプテイストで(笑)とってもお洒落。エフセーエワは青のクラシックチュチュ。こちらもよく似合っていました。

高度な技をきっちりと見せ、限りなくクールにエレガントにというこの演目。この二人が踊ると何だかとっても熱い(笑)そういう意味ではなかなか変わった「グランパ・クラシック」でした。

「スパルタクス」より エギナとクラッススのパ・ド・ドゥ
マリア・アラシュ/アレクサンドル・ヴォロチコフ

たった二人だけなのに、このボリショイのプリンシパル同士のペアは、まるで全幕の一部を見るように壮大なグリゴローヴィチの世界、古代ローマ貴族の大乱痴気騒ぎを目の前に繰り広げて見せてくれました。

「スパルタクス」の中でも、敵役に当たる貴族の将軍クラッススとその愛妾のエギナのパ・ド・ドゥですが、アクロバティックなリフト技の連続、スピード感あふれる踊り、もう息をもつかせぬというのはこういうことかと思うくらい堪能しました。

今、ボリショイは大揺れですが‥‥そんな下世話な報道はどうでもよくなるほど、ボリショイにはこんなすごい世界があることを思い知らされます。一日も早くもとのボリショイに戻りますように。そして「スパルタクス」の全幕もまたぜひ見たいです。

「瀕死の白鳥」
田北志のぶ

舞台上手にチェロ奏者とハープ奏者が登場し、生演奏で踊る「瀕死の白鳥」は素晴らしかった。繊細なパ・ド・プレ、美しいポール・ド・ブラ。そして何より命燃え尽きる最後の瞬間まで「祈り」が感じられる白鳥。涙が出ました。何もない暗いステージですが、背後にいろんな情景が浮かびました。

「ドン・キホーテ」より
エカテリーナ・ハニュコーワ/ブルックリン・マック

トリは定番の「ドン・キ」ですが、「海賊」のほうが盛り上がったかな?「ドン・キ」はやはり二人の技の応酬が見どころですが、ハニュコワはおとなしい雰囲気だし、マックのほうはおおらかな感じでいまいち「ドン・キ」らしいキメというか、ピリッとした緊張感というか、キレキレなところががなく。それにこのお二人、カップルに見えないんですよねえ。でもそれなりに素晴らしかったです。盛り上がりも「海賊」に比べたらということで。

フィナーレ「花は咲く」
「花は咲く」が静かに流れる中、一組ずつ登場して今まで上演した演目の一部を踊り、全員そろったところで何と、左右の階段からダンサーたちがガーベラの花を持って客席通路まで降りてきました。その花を一輪ずつ客席へ投げたり、通路側の人に手渡したり。こういう演出(出演者が客席に降りてくる)ってバレエでは初めて見ましたが、いいなあ。客席と一体になって、とてもあたたかいものを感じたフィナーレ。夢のような公演でした。

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さて、いつもは長~くなる前置きを入れずに書いてみました。時間がたっているので、ほとんど踊りの内容ではなく印象にすぎませんが、一応一通り。だからこの後は別になくてもいいのですが、私の「感慨」ということで

この同じオーチャードホールで5年前‥‥キエフバレエの「ライモンダ」がありました。ライモンダ役はフィリピエワでしたが、会場に着くと突然アナウンスがあって、フィリピエワはリハーサル中の怪我で本日の公演は出演しませんとのこと。代役は田北志のぶさんです‥‥?!と言われても、その当時は田北さんの存在すら知りませんでした。え~っ?そんなあ。。何だか力が抜けてしまって‥‥でも、もともと私はゲストのコールプを見に来たんだっけ(爆)と思い直して席に着きました。

田北さんのライモンダは、華やかさや豪華さはないけれど、可憐でけなげで一生懸命な感じに好感が持てました。あのとき、前日のチケットを買っていたけれど保護者会か何かがあって行けなくなり、娘のバレエの先生に行ってもらったんだっけ。かわりにmixiのコミュ経由で翌日のチケットを譲っていただいて、偶然にも田北さんのライモンダを見ることになったのです。そのチケット譲ってくれた人とは、メールのやり取りをするうちに意気投合。今でも友達です(笑)どうでもいいことだけど、芋づる式にいろんな記憶がよみがえりますね~。

あの時、急な代役を重圧に耐えて一生懸命踊っていた田北志のぶさんが今回のチャリティガラをプロデュースしてくれたのです。仙台にある「東京エレクトロンホール宮城」(震災で被災し、修復に1年以上かかったそうです)と、それからこのオーチャードホールの2回だけの公演ですが、出演者はごらんのとおりとても豪華。そして、それぞれのダンサーの個性にぴったり合った演目になっているんですよね。田北さんのおかげで本当にいい公演を見ることができました。感謝です!ありがとう~!

私のお目当ての出演者、コールプとエフセーエワのことはもう前に書きました。で、もう一人のお目当ては、アレクサンドル・ザイツェフ。同じく2008年(私のバレエ好きはこのあたりでピークを迎えていた・笑)シュツットガルト・バレエ団の公演で来日し、マリシア・ハイデ版「眠れる森の美女」の宝石の踊り(アリババ?)でその鮮烈な姿に「何者?」と思ったのが最初。そのあと「オネーギン」のレンスキー役で現れたときは本当に素敵で、思わずファン(爆)になってしまいました。でも、シュツットガルト・バレエ団なんて、次にいつ来るかわかったものではありません。案の定、昨年6月、やっとまたシュツットガルトバレエがやってきたのですが、そのときはザイツェフは来日メンバーに入っていませんでした。

しかし、何があるかわかりませんね~。昨年9月、東京バレエ団の「オネーギン」が上演されたとき、当初予定されていたレンスキー役のマライン・ラドメーカーにかわって、何と何と、このザイツェフがやってきたのです。あのときは行く予定はなかったのだけれど急遽チケット調達して見てきました。以前の通りのとても魅力的なレンスキーを再び見ることができて感激でした。

で、このガラでまた彼が見られる!本当に楽しみでした。何しろ、「眠り」の宝石の踊りと「オネーギン」のレンスキーしか見ていないのですから。結構ベテランだと思うし、濃い演技派と思っていましたが、意外にもこの方は「爽やか系」の人だったんですね。「コッペリア」のフランツも、「シルフィード」のジェームスも本当によく合って爽やか、そして笑顔がとっても素敵でした。笑顔と踊りは関係ないって?そうですけど(爆)私は笑顔の素敵な人が好き。例えばロイヤルのヨハン・コボーとか、あとはもうしばらく見ていないけど、ABTのマクシム・べロツェルコフスキーとか。(!)

バレエを見始めてもう10数年たちました。私が見始める前、90年代というのは多分日本におけるバレエ人気の絶頂期だったのだと思われます。ソ連が崩壊して、ロシアのバレエ団が頻繁に来日できるようになったこともあり、またこれが一番大きいと思うけれど、私の好きなルジマトフやニーナ・アナニアシヴィリを初めとして、ギエム、ルグリ、マラーホフなどの綺羅星のごときビッグスターが次々に登場してきたこと。私がバレエを見るようになったのは2000年頃からですが、奇しくもぎりぎりその一端を垣間見ることができたのでした。昨年のキエフバレエの「ジゼル」以来、しばらく見ていなかったバレエですが、今回たてつづけに三つの公演を見て、何か私自身のバレエファン歴(そんなたいそうなものじゃないけど)を振り返るような感慨がありました。バレエってやっぱりいいなあ。夢の世界ですよねえ。

ことしは7月までにルグリ、マラーホフ、そしてルジマトフがそれぞれガラ公演を行います。マラーホフのように「これが最後」とうたっているものもありますが(マラーホフが一番若いのに)ルグリも、ルジマトフもそれに近いのではないでしょうか。もうこういうビッグスターは現れないのかなという意味で、この三つはすべて貴重な公演になると思います。またそれらもじっくりと見届けたいと思います。

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2013年3月21日 (木)

エフセーエワ&シヴァコフ「白鳥の湖」(3月15日)

何と、このブログの記事がこれで700件目だそうです。びっくり 中には「下書き」のままお蔵入りしてしまった非公開記事もあるので、実際アップされている記事は700よりも少ないですが、この7年半の間にそれだけ書いたということがちょっと驚き。とぎれとぎれながらもよく続いているものです。

さてその記念すべき700件目には、やはり大好きなバレエへの「愛」を書かなくてはね(笑) 最近では歌舞伎も面白くなってきてバレエ熱は一頃よりなくなった気がしていましたが、そんなことはありませんでした。先々週のコールプに続いて、大好きなエフセーエワとシヴァコフが出演したバレエ協会の「白鳥の湖」の初日も本当に楽しかったです。バレエってやっぱり美しい夢の世界ですよね~。特に好きなダンサーの主演で見る舞台は格別。

毎年今頃行われるバレエ協会の「都民芸術フェスティバル」参加公演ですが、私は今まで二度ぐらいしか見たことがなかったと思います。それも、娘のバレエの先生の弟さんが出るとか、発表会のゲストに来た○○先生が出るとかで、チケットは縁故購買でした。今では誰も知っている人がいないので普通にチケットを買いましたが、ダンサーの世代交代の様子を見ると隔世の感ありですね。

3日間行われる公演の初日、オデット/オディールを踊ったエレーナ・エフセーエワは元レニングラード国立バレエにいたとても好きなバレリーナでした。日本デビューは2003年?あの衝撃は忘れられません。顔はまんまるではじけんばかり。手足も太くて短いし、何といっても金髪で超色白。愛嬌たっぷりでかわいいっちゃかわいいけど、子犬のようにコロコロしたオーロラ姫にはびっくりでした。ザハロワを見た衝撃(手足長くあばらが見えるくらい細く、そしてすごいX脚と足の甲)とは正反対の意味での衝撃でしたね(爆)

ワガノワ時代の彼女の映像がありますが(「ワガノワ・ヴァリエーション・レッスンⅢ」)ちっとも太っていません。なのにあのデビュー時は別人‥‥思えば見るたびに太ったり痩せたり(それでも一般人の「太る」とは全く違いますけど)を繰り返していたような気がします。そんな彼女、レニ国では「くるみ割り人形」や「眠れる森の美女」などの主役を踊っていたのに、なぜか2008年にマリインスキーに移籍してしまったのでした。それまで毎年のように見ていたのが、移籍後は2009年のマリインスキー公演時に来日せず、昨年のマリインスキー公演でも最初名前はありませんでした。オスモールキナの代役として急遽来日することになったときはうれしかったな~。

昨年11月、久々に見た「バヤデール」のガムザッティは、いい意味でも悪い意味でも変わっていませんでした。踊りの美しさが中心でお芝居のほうはもの足りないくらい淡白な印象のマリインスキー。その中に入ると、彼女の演技の濃さはちょっと浮いていたような感じもしないでもありませんでしたが、まるで少女マンガのような高慢ちきお嬢(でもちょっと小心者)のガムザッティを見たら「これだよ!」って感じ。これこそマールイ(レニ国)の芝居!(笑)小柄でかわいいタイプの彼女には長身でスタイル抜群超美人のコンダウーロワの敵役は荷が重かったでしょうが、マリインスキーの中でもマールイの色を失わない彼女を見て何だかとても懐かしかったです。

もう一人、ミハイル・シヴァコフはレニ国はえぬきのプリンシパル・ダンサーですが、私は全幕物ではとにかくゲストの日(ルジマトフ)ばかり見ていたので、今まで全幕主役で彼を見たことはなかったと思います。夏ガラではよくバジルやアリを踊っていましたよね。この4月に「草刈民也最後のジゼル」(2009年)というDVDが出るようですが、あの映像でアルブレヒトを踊っているのがシヴァコフです。当時wowowで放送されたのを録画したのですが、画質が悪いのでDVD出たら買おうかと思うくらいシヴァちゃんアルブレヒトが素敵でした。

当時はルジマトフが芸術監督で、シヴァコフもルジマトフにいろいろ教わったのか、雰囲気がルジ様酷似(ルジファンの方は「え~?」というかもしれないけど)くりんくりんした長めの黒髪も遠目にはルジ様に見えて激萌え(バカです)なんですよね。そしてペザントは大好きなヤパーロワ&ヤフニューク、ミルタ役にシェスタコワ、うしろにもちらちらとおなじみのダンサーの姿が見えたりと、レニ国ファンには持っていて損はないDVDでしょう(笑)

思わずDVDの宣伝をしてしまいましたが、ついでに「サンクトペテルブルク・オシポワ・バレエ」のDVD「ドン・キホーテ」にはこのエフセーエワ&シヴァコフのペアが出ています。発表会チックで多少安っぽいですが、二人がリラックスして楽しそうに踊っているいい映像だと思います。

シヴァコフは去年は来なくて、一昨年、怪我をしたルジマトフのかわりに「ドン・キ」のバジルのヴァリエーションを「バジルの友人」として踊ったのを見たのが最後です。あのときは何だかちょっとメタボがかってしまって別人?と思うくらいでした。向こうの人って太った痩せたがすぐ顔に出るんでしょうかねえ?今回はまた身体を絞って、すっきりと美しいジークフリート王子でしたよ髪は短めになっていましたが、やっぱりくりんくりんでした(笑)

またダラダラと前置きばかり長くなりましたが、公演の感想。本当によかったです。ゴルスキー版ということでしたが、ほとんど一般的な「白鳥の湖」でした。バレエ協会というと、先生も教室もレッスン環境も全部違う人たちの寄せ集めのように思うけれど、ダンサーのレベルは先日の牧より高い気がします。コールドは1幕も2幕もあまり揃ってなく、大きい三羽も小さい四羽もアンサンブル的にはいまいちでしたが、トロワや民舞の主要なソリストが上手くて見ごたえがあり、眠くなるようなところは一つもありませんでした。

ソリストは毎日日替わりなんですよね。私が見た日は特に1幕のパ・ド・トロワが素晴らしかったです。第一ヴァリエーションの方だったでしょうか、音楽をたっぷり使ってぎりぎりまで美しいポーズを見せ、腕の使い方も上半身の使い方も美しく、何より、これは3人ともですが、とても音楽的でした。いつもはストーリーと直接関係ないので退屈だったりするのですが、ああ、バレエを見ていて幸せ~っていうようないい見せ場をつくっていました。

2幕の民族舞踊も真ん中で踊る方々は皆さんお上手。特にロットバルトの手下として現れるスペインの4名は圧巻でした。男性二人がイケメンの上、まるで「大衆演劇か」と突っ込みたくなるくらい見事にカブいていて、濃厚に悪の手下を演じているのが超ツボこういうの大好きです。道化もうまかったけれどインパクトは少し薄かったかな。ロットバルトは多分きれいなお顔の方だと思うけれど、顔に筋?を何本も描いてモンスターぶりを強調。でも、オディールを連れてお城に乗り込んで来たロットバルト男爵?はすごくかっこよかったです。サニー(エフセーエワ)とシヴァを見に行ったのに、意外にもいろんなところで楽しめました。

エフセーエワですが、まず小柄な彼女は日本人の中に入っても全然違和感がありませんでした。そこかよって感じですが、この間のコレゴワなんかは全く周囲とかけ離れて「異星人」でしたからね(笑)‥‥違和感がないのはいいのですが、小粒というか、主役オーラがあまり感じられない。シヴァコフのほうがそれはすごくあるのです。これはやっぱりいつも真ん中で踊り慣れているというのもあるのでしょうね。エフセーエワはマリインスキーではセカンドソリスト。仕方ないですけどね。

エフセーエワのオデットを見るのは多分(全幕でなくても)これが初めて。とても丁寧に踊っている感じで、最初の場面の人間への恐れ、驚きなどうまく表現していました。で、びっくりしたのはその演技の濃さ。彼女もとうとうイリーナ・コレスニコヴァ(タッチキン・バレエ)のような女優バレリーナになったかと思いましたよ。グラン・アダージョは濃厚で思い入れたっぷりでした。オディールのほうはキュートな小悪魔風でしたが、もっと悪そうにやってくれるかと思いきや、こちらはコレスニコヴァなみというわけにはいきませんでした。

そうそう、当のイリーナ・コレスニコヴァは昨年の「ダニールシムキンのすべて~インテンシオ」に出ていましたね。ギネスブック級に「白鳥の湖」を踊っているバレリーナですが、このときも白鳥と黒鳥のそれぞれのグランを踊っていました。こんなときぐらい違うものを見たいなと思いましたが‥‥そうじゃないんでしょうか?もちろん、相手役がどんなだったか思い出せないくらい濃厚なパフォーマンスでしたよ。私は彼女も大好きです。

また脱線、エフセーエワでしたね。意外にもかわいい~オディールでしたが、正体をばらした後の笑いっぷりはまさしく悪魔の娘でした。時折悪そうなところを見せるのだけれど、王子を誘惑するにも何するにも、何よりこの踊りをエフセーエワ自身が心から楽しんでいるように思え、見ていてとても幸せな気分になりました。

ヴァリエーションはオデットもオディールも、このバレエ協会のダンサーたちみたいにもうちょっと「タメ」があればいいのになと思ったりしました。身体能力がすごくあるのはわかるし、多分コンテンポラリーなども得意だと思うけれど、時折体操的に見えるときがなきにしもあらず。

それと、彼女には「白鳥」のラインはない‥‥「白鳥」のラインを持っているバレリーナ(ロパートキナとか)だったら、ことさらに演技などしなくてもおのずと「白鳥」なのですよ。彼女は演技力でそれをカバーしているのでしょう。でも、そんなこんなあっても好き。それはやっぱりデビュー当時から親しみを持って見てきているからでしょうねえ

一方、シヴァコフのほうはヴィジュアルがとにかく素敵な王子様で、もう王子はそれだけでいいって感じ(爆)踊りはちょっと重たい感じがするところもあり、もしかするとバレエ協会の若手にはもっときれいに踊れる子がいるかもしれないけれど、「白鳥」の王子はこれでなくちゃいけないという「ツボ」はしっかり押さえていました。1幕の、皆と楽しく過ごしながらもどこか孤独感がただよう雰囲気。湖でオデットに出会ったときのいきなりの心奪われっぷり。そして、オディールにだまされたあとに泣きながら王妃に抱きつくところなど、みごとな「萌え系」王子というか(笑)素敵な王子様でした。

ラストは、王子がロットバルトの羽をもぎとって勝利するハッピーエンド。人間に戻れてうれしそうなオデット‥‥わかっちゃいるけど泣けました。よかったです。

バレエは何でも好きだけど、とりわけ好きなダンサーで見るバレエはいいなあ。それぞれに好きなエフセーエワとシヴァコフでしたが、二人になるともっと楽しく幸せな気分。これを機に日本でもいっぱい踊ってほしいと思います。

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2013年3月19日 (火)

コールプ最後の?「眠れる森の美女」(3月9日)

もう先々週のことですが、行ってきました。とても楽しかったです。しかし最近、というかここ数年、バレエの感想って全然書いていませんねえ。たまには書くか‥‥というより書けるかしら(笑)

マリインスキー・バレエのイーゴリ・コールプが牧阿佐美バレエ団に客演?何か珍しい(というかあまり合わない?)組み合わせのように思えたけどこれが最初ではないのかな?新国立劇場に客演したことがあるのは知っていたけれど、牧阿佐美バレエ団というのはどうなのでしょう?

牧阿佐美バレエ団といえば日本ではメジャーなバレエ団なのに、私は10年ぐらい前の「四大バレエ団の競演」というのと、まだ上野水香さんがいた頃に「ロミオとジュリエット」を見たくらい‥‥つまり今までほとんど見たことがありませんでした。

そしてコールプ様‥‥初めて見たのは2000年のキーロフ「白鳥の湖」のテレビ放送で王子を踊っていました。そのあと2003年の来日時には確か同じペアを東京文化会館の5階の天井桟敷から見たことがあったっけ。あの頃はコールプもまだ若くて純粋な王子様だったんですよね~

その後、「ルジマトフのすべて」で「薔薇の精」を踊っているのを見てあれ?‥‥それから見るたびに個性的な雰囲気をまとっていって、お顔がどんどん「王子様」から遠ざかり(爆)2007年のキエフバレエの「ライモンダ」あたりから面白い(変な)人になってきて‥‥。その年にルジマトフがマリインスキーを引退し、レニ国(ミハイロフスキー)の芸術監督になってしまったので、2008年1月のレニ国来日公演はルジマトフにかわってコールプがゲストで大活躍。「白鳥の湖」「バヤデルカ」「ドン・キホーテ」と踊りまくりましたねえ。翌年にもゲストで「ジゼル」や「海賊」を踊りました。極めつけはその2009年1月にあったガラ、「奇才コルプの世界」だったでしょうか。あれは面白かったなあ。特にコールプが踊った演目がやたらインパクトが強いやつばっかりで。またやらないしら。

それから、その2009年秋にはマリインスキーでも来日しました。あのとき私は「眠り」と「白鳥」、そしてガラの「シェヘラザード」まで全部コールプ(&ヴィシニョーワ)で見たんですよね でも、もうそれでいいかなという気になってしまい、昨年のマリインスキーではとうとう一度も彼を見ませんでした。(というか、昨年は「アンナ・カレーニナ」と「バヤデール」を一度ずつしか見ていないので‥‥)そんなコールプ様が何と全幕の「眠り」で最後の王子役を踊るというではありませんか。これは見ないといけないということでチケットをとって楽しみにしていました。前置きの昔話ばかりですみません一人のダンサーを長く見続けるというのは面白いことですよね。

牧阿佐美バレエ団のHPには「主演イーゴリ・コルプからのメッセージ」として、最後の「眠り」の王子を日本で踊り納めることについてコールプらしいご挨拶が掲載されていました。1997年に初めてマリインスキー劇場でこの役を踊り、それから世界中で踊ったけれど、最後は想い出のいっぱいある日本で‥‥ということでした。

1月に「ルジファンのつどい」というのがあって参加してきたのですが、そこでの雑談の中で聞いた話では、マリインスキー劇場でのコールプの主役デビューのあと、拍手をしながら近づいてきた人物がいたそうです。それが何と当時スターダンサーだったルジマトフ。彼ほどの人が新人ダンサーに「よかった」と声をかけてくれたなんて‥‥以来コールプはルジマトフに深く傾倒するようになったというお話でした。

コールプ様、でも何でこれが最後なの?全幕での王子役はしんどいって年でもまだないだろうに‥‥というより、彼はこれからのバレエ人生、もっと彼らしいエキセントリックなことをやりたいんだろうな(笑)

久々に見たコールプ王子は、まるでクラシックバレエのお手本のような王子様でした。きっちりと入った五番ポジション、美しいポールド・ブラ、優雅な立ち居振る舞い。前にも感じたことがあったけれど、王子というのはいくら身体能力があっても力いっぱい踊ってしまったらだめで、それを抑えに抑えたところに優雅さや気品が出てくるもののようです。だから若い頃のきれいなヴィジュアルの王子様もいいけれど、ある程度ベテランになってから、クラシックバレエの神髄が身体の隅々まで行きわたった頃に演じる王子というのはまた格別なものがあると思うのです。ルジマトフが一昨年に見せてくれたのがまさにその「究極の王子」だったと。

コールプもその境地に間違いなく達するだろうと思うのに、何でこれが最後なのかなあ。以前は「悪人顔」とか「妖しい」とかコールプのことをいろいろ好き勝手に言って面白がっていたけれど、今回の王子様は本当に意外なほど素敵な王子様だったのですよ

2幕で登場してきたコールプは、エンジ色の長めの上着を着ていました。これはマリインスキーの「原典版」の「眠り」の衣装ですね。(お帽子はかぶってませんでした)「原典版」では2幕の王子は踊らないようですが、牧版では出てきてすぐに上着を脱いで、エンジの半袖のベスト?からフリフリのお袖が出ている衣装になりました。この場面で踊ったヴァリエーションは、曲は同じでもマリインスキー(セルゲイエフ版)のものとは違って地味な振付だったような。

今回プログラムを買っていないので詳しいことはわからないのですが、牧版は「英国ロイヤルバレエのテリー・ウエストモーランドの演出振付によるもの」と都民芸術フェスティバルのHPの解説にありました。マイムが多いのが特徴のようです。そのとおり、コールプ王子も楽しそうにマイムをやっていましたねえ。貴族たちとのお芝居での笑顔も素敵~

さて、オーロラ役のアナスタシア・コレゴワですが、彼女の日本デビューを私は見ております(笑)また昔話ですが、2008年のレニングラード国立バレエのゲストとしてコールプとともに来日しました。しかし、当時のレニ国ファンにはとても不評(笑)‥‥折しもレニ国にはペレン、シェスタコワという人気プリマと、ステパノワ、エフセーエワ、コシェレワ、コチュビラ、ロマンチェンコワ(ミリツェワはこの年来ていなかった?)など、主役を張れそうなソリストが目白押しだったのに、彼女たちにチャンスを与えずに、なぜマリインスキーというだけで海のものとも山のものともわからない新人をゲストにするんだろう?と。

その年のプログラムが手元にありますが、本当に恐ろしい写真が満載です(爆)ドングリまなこでファニーフェイスのマンガみたいなコレゴワ嬢と、無精ヒゲに口半開きの妖しいコールプ様おお、私はこんな恐ろしいものを見たのかしら(笑)でも、なぜかコレゴワの踊りはほとんど印象に残っていないのです。脚は高く上がるし身体能力も優れていたようだけれど、何よりお芝居が重要な「バヤ」と「ドン・キ」で演技が全くダメという主役は、相手のコールプがいくら頑張ろうが何しようがダメじゃん‥‥ということだったかな。

5年ぶりに見たコレゴワは、田舎のお姉ちゃんから見事に洗練された美しいバレリーナになっていました。しかし、お芝居という意味では、いくらお芝居より踊りが重要な「眠り」でも淡白なのがわかってしまいます。やっぱり、ヴィシニョーワみたいに100年眠った妖怪姫のような濃厚なオーラを帯びるのは並大抵のことではないわね‥‥

技術は確かに5年前から光るものを持っていたと思うのです。今回はさらに安定感が増して、ローズアダージョのバランス、全くぶれない回転軸など本当に素晴らしい。だけどそれが心に響くかというとどうかなあ。日本のバレエ団に入ると飛びぬけて長身でスタイルも抜群、見栄えはするし、顔もかわいいんだけど、何かもう一つ。例えば2幕の、うっとりと眠ったままのようなヴァリエーションはきれいだったけれど、そのあとの「目覚め」のパ・ド・ドゥも同じように伏し目がちな感じで、もうちょっと「目覚め」てくれればよかったのにとか。

そう、この版には王子のキスで目覚めたあとにパ・ド・ドゥがあったのです。本来はリラの精とともにオーロラの眠る城へ行くまでの「パノラマ」のあと、一旦幕が閉まってから演奏される「間奏曲」ですが、この曲で王子とオーロラのパ・ド・ドゥが踊られました。これは確かピーターライト版の「眠れる森の美女」にもありましたね。美しいヴァイオリンソロ‥‥100年の眠りから覚めた姫の喜び、そして短い間にもお互いがうちとけ、愛をはぐくむような‥‥バーミンガムロイヤルバレエで見た「目覚め」はそんな感じだったけれど、何か、普通に、パ・ド・ドゥでしたわ(笑)

でも、コールプとコレゴワが同じ振りをユニゾンで踊るところなど、二人のシルエットがぴったりと合って美しかったですね~。踊るタイミングから手の角度、上げた脚の角度まで寸分の違いもなくびしっとあわせるのがマリインスキー流。一昨年のルジマトフとテリョーシキナの「ドン・キ」がまさにそうでした。この美しさはダンサーのスタイルの美しさでもあるし、またその組み合わせによるアンサンブルの美しさでもあって、見ていて思わずためいきが出てしまいます。なかなかこうはいかないでしょう。

牧阿佐美バレエ団ですが、妖精たちのお付きにそれぞれ男性一人、子役一人をつけたり、まわりの貴族も全部男女ペアだったり、その人数、衣装や背景などがとてもゴージャスでした。ただ、妖精の衣装はどれも色がはっきりしない感じで、個々のソリストも印象に残ってないのですが‥‥そう考えると衣装の色って大事なんだなと思います。

男性ダンサーでは、このバレエ団の主役級を踊ってきた逸見さんや菊池さんなどが妖精のお付きに回り(森田さんは王様!)かわりにブルーバードや宝石の踊り(ピーターライト版みたいに男女4人で踊る)を踊った若手がみなうまくて、しかもなかなかイケメンで、世代交代は着々と進んでいるのかなという印象でした。びっくりしたのはカラボス役の保坂アントン慶さんが美しくてすごい存在感(笑)でした。

構成は、3幕との間に休憩はなく(プロローグの後に1回、1幕の後に1回)2幕からぶっ通しだったので少し疲れましたが、やはり休憩3回というのも時間がかかりすぎるので、どこかで長くやらなきゃいけないでしょうね。今回、会場でバレエ友達の方々とお会いすることができました。一人で行くと休憩時間は暇ですが、おしゃべりをしているとあっという間。20分ではあわただしく、もう一回ぐらい休憩があってもよかったと思うくらい休憩時間も楽しかったです。

コールプ王子に戻ると、3幕では紫色の衣装を着ていました。あれは牧阿佐美バレエ団のものではなくてやはり自前だったそうですが‥‥そういえば2幕で着ていたエンジ色の衣装と色違いだったかも。自身のアクの強さを極力抑えて(笑)優雅な王子に徹していたような今回のコールプでしたが、こんなところで個性を発揮していたんですね~。2008年のときも「バヤデルカ」のソロルの衣装は見たこともない黄色の衣装だったし、「ドン・キホーテ」のバジルの衣装もすごく変わってたと思います。(この方は「普通」じゃイヤなの・笑)

最後なんていわずに、もっとクラシックの王子を踊ってほしいですが(まだジークフリート王子もあるし、アルブレヒトもあるし)彼が言うようにやはり「すべてに始まりと終わりがあります」ということなのでしょう。ルジマトフに絶賛されて始まったという彼のデジレ王子は、日本の暖かい観衆の前で最高に素敵な終わり方を見せてくれました。全幕ではもうデジレ王子は踊らないというけれど、これからのコールプももっと注目していたいです。はにかんだような笑顔のカーテンコールは王子への別れではなくて、今までの感謝とともに新しいコールプを「ヨ・ロ・シ・ク」って‥そんな感じでした(笑)

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2013年3月10日 (日)

釈然としない‥

一般の方にはあまり馴染みがないと思いますが、今バレエ界、世界中のバレエファンを震撼させるような事件がモスクワで起きています。

1月にボリショイ・バレエの芸術監督が何者かに襲撃されました。それも、顔に硫酸をかけられるという残忍な事件。被害者のセルゲイ・フィーリンは、命には別状ないものの、一時は失明も危ぶまれたような状態だったそうです。それにしても、彼のハンサムなお顔が‥‥!とてもショッキングな事件でした。

そして、今週になってそれが急展開。何と、容疑者の一人として身柄を拘束されたと伝えられたのは同じボリショイのダンサーだった‥‥それがまたさらにショックでした。

襲撃されたセルゲイ・フィーリンは、ちょっと前のバレエファンなら誰でも知っているイケメンの王子様。残念ながら全幕映像(発売されているDVD)は「ファラオの娘」しかないと思いますが、あの複雑な振付の中で見せる美しい脚さばきは永遠に残るものですね。

私がフィーリンを見た最後の舞台は2008年の来日公演での「明るい小川」。あのときはもうすでに引退すると伝えられていたんでしたっけ?いや、既に引退したけれど、日本公演だけ特別に出演したのでしたよね。終演後の楽屋口で、いつまでも帰らない出待ちファンのために臨時のサイン会が開かれたとき、10歳?のかわいらしい息子さんも一緒にサイン会のテーブルに並んでいて、お二人の素敵な笑顔を間近で見させてもらったのがいい思い出です。それからフィーリンはモスクワ音楽劇場バレエの芸術監督を経てボリショイの芸術監督に。

一方、容疑者の一人として報道されたパーヴェル・ドミトリチェンコですが、この名前を聞いて本当にびっくりしました。一度聞いたら忘れられない(変な?)名前だったから。何年か前の私なら見た舞台の感想は大体このブログに書いていましたが、ここのところそれもできなくて何も記録に残ってないのだけれど、実は、昨年2月に来日したボリショイの公演で、彼が踊る「スパルタクス」を見ているのですよ。

ボリショイといえばグリゴローヴィチの一連の作品群。その中でも「スパルタクス」はボリショイを代表する演目です。で、ボリショイを見るのに今一番旬のイワン・ワシーリエフの「スパルタクス」を見ずに一体何を見るのか?と言われましたが(笑)私は例のごとくチケットを買いそびれて、気づいた時にはワシーリエフの日はもうほとんど残っていなかったんです(涙)それで、まだいい席があるセカンドキャストの日に行ったのです。そのときの主役、スパルタクス役を踊ったのがまさにこのドミトリチェンコでした。

「スパルタクス」は珍しく何回も映像化されていて、DVDもウラジミール・ワシーリエフ(68年・77年)イレク・ムハメドフ(84年・90年)カルロス・アコスタ(08年)といろんなのが出ています。でも、映像で見ても何だかぱっとしない作品だったんですよね。画面が暗いし、出てくるのは汗臭そうなマッチョばっかりだし、音楽はドンチャカうるさいハチャトゥリアンだし(笑)

それが、生で見たら全然違ったのでした。圧倒される男性群舞やアクロバティックなリフトの連続など、もうすごすぎ!肉体の躍動感、爆発するようなエネルギーにただただ圧倒されました。そして、その中でもひときわ光っていたドミトリチェンコのスパルタクス。

でも、最初彼が出てきたときは一目でがっくりきたんです。だって、金髪の奴隷ってありえん(爆)そして、腕には大きなタトゥー‥‥あの、やる気ありますか?そしてさらに、容姿は決して美形とは言えず、まだ若いのにかなりワイルドに崩れた感じ。こちらはミーハーですからね、奴隷の親玉だって美形でなきゃ嫌なんです(笑)

それが、だんだん舞台が進むに従って彼のただならぬ吸引力を感じたんですよ。彼が舞台に登場すると一気に温度がぐわ~っと上がるような存在感。これは一体何なの?カリスマ?そして最後の場面まで、息をもつかせぬスピード感。結果的に、とても素晴らしい舞台でした。感動しました。私はボリショイのこのエネルギッシュな躍動感が好きだ~!そう思ったのがまだ去年の2月。

あのときのスパルタクスが‥‥。嘘でしょう。どう考えても信じられません。人にあれだけの感動を与えられるダンサーがそんなことをするなんて。少なくとも私は信じたくありません。

また、この襲撃事件は当初から芸術監督の利権をめぐった大きな闇を思わせる事件でした。それなのに、こんな下世話なスキャンダルに仕立てて、それで終息させたいというのが見えているような気がします。人身御供というか、彼のダンサー生命がこれで終わってしまうかと思うととても悔しいです。

ニュースを見ると、彼(ドミトリチェンコ)の恋人といわれるバレリーナがからんでいるとか。彼女がコンクール(08年、ペルミ)で優勝した時、当時モスクワ音楽劇場バレエの芸術監督をしていたフィーリンが入団を誘うも、彼女はそれを蹴ってボリショイへ。やがてボリショイの芸術監督になって帰ってきたフィーリンはその時の恨みを忘れていなくて、彼女をいろんな配役からはずしたりした。。。こんな安物ドラマまがいのばかばかしいことまで言われています。特に、ボリショイに入ってから彼女が師事したのが、フィーリンと敵対関係にあると言われるニコライ・ツィスカリーゼ。彼はボリショイの体制に批判的だったため、襲撃事件のあった1月当初から事情聴取を受けていて、ある意味疑われていたのですよね。ツィスカリーゼはいかにも「俺様」だけど、もちろんそんな卑劣なことをするわけがありません。それが‥‥報道では(どこまで本当なのかわかりませんが)フィーリンが件のバレリーナに、ツィスカリーゼのもとを離れるならいい役をやってもいいと言ったとか言わないとか。彼女はそれを拒否、そして役を干されたとも。

さらにひどいのは、昨年末彼女がフィーリンのところへ行き、「白鳥の湖」の主役を踊りたいと相談した時に、フィーリンは「鏡を見ろ、どこが白鳥だ?」と言ったそうです。いや~まるでドラマですねえ。それも昔のバレエマンガ(ライバルのトウシューズに画鋲を入れたりするとかいう)みたいなレベルです。でも、そういう叱咤激励の仕方もこういう世界では割とあるような気もするし‥‥もし本当だったとしても、別にフィーリンの人間性を疑うような話でもなく、それに対して深い恨みを抱いて、侮辱された恋人の復習のためにドミトリチェンコが事件を指示‥‥なんてことはさらに考えられないです。

こんなばかばかしい作り話で、バレエっていう世界はこんな奴らがやっているくだらない世界だと世間に印象付けたいのか、マスコミが報道するドミトリチェンコの写真に犯罪者チックなのを選んでいるのがいかにも意図的でひどいと思います。これを見た何も知らない人は「さも悪そうな奴」と思ってしまうだろうし、彼がどんなに素晴らしいダンサーかというのは全く関係ない話になってしまうでしょう。それが何とも悔しい。

ダンサーは本当にストイックな生活をしているのですよ。毎日毎日レッスンに時間を費やし、ぎりぎりまで身体を酷使して、それであの素晴らしい踊りができるのです。ボリショイのような世界最高のバレエ団で準トップダンサーといえば、一般人には計り知れない努力の道を歩んできた、それはある意味「神」に近付く行為(でないと超一流の舞台の主役で人を感動させることなんかできっこない)だと思うのです。ダンサーとは崇高な人たちですよ!

一方、件の「どこが白鳥だ?」と言われたバレリーナ、アンジェリーナ・ヴォロンツォーワですが、昨年の来日公演のパンフレットを見ると、何とコールドバレエなのに写真付きでプロフィールを紹介しています。一体どこが「冷遇」なの?

私が見た日の「ライモンダ」(マリア・アラシュ&アレクサンドル・ヴォルチコフ)では、アンナ・ニクーリナ(ファースト・ソリスト)とともに「ライモンダの友人」役をやっていました。彼女(ヴォロンツォーワ)の踊り自体は全く覚えていないけれど、ニクーリナがとてもきれいで、もう一人の子がかわいそうなくらい輝いてるな~と思ったくらいなので、多分まだまだ天下のボリショイで主役なんて踊るような子じゃないというか、「どこが白鳥だ?」と言われても文句は言えないというか、ましてやそれを恨んで事件を計画するといったような強い動機にはならないはず。

何か、知りもしないのに長々と書いてしまいましたが、この事件にはもっと黒幕がいる、でもこれで片付けようとしている意図を感じる‥‥だからいちバレエファンとして、ただただドミトリチェンコの無罪を信じたい。彼が再び舞台に立つことができると信じたい。

‥‥引っ張り出してきた去年のボリショイのプログラムには、感動して、帰りがたくて出待ちして、いろんなダンサーにいただいたサインがあります。アレクサンドロワ、アラシュ、バラーノフ、ヴォルチコフ‥‥そしてドミトリチェンコのサインも。素顔は気さくでフレンドリーないいお兄ちゃんでしたよねえ。(いくら私がミーハーでも家が遠いから出待ちなんてそんなにしません。本当に感動したときその余韻を楽しみたいから何となくというのは時々‥‥ボリショイのときはそうでした。去年11月のマリインスキーのときは出待ちなんかしませんでしたよ。って、言い訳?

たった1年前のことなのに‥‥楽しくてうれしくて、昨日のことのように思えるボリショイ公演だったのに‥‥残念な事件です。

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2013年1月 5日 (土)

ことしの舞台鑑賞

タイトルは「ことしの」ですが、まずは昨年の記録から。

【1月】
レニングラード国立バレエ「新春特別バレエ」
レニングラード国立バレエ「海賊」×3
レニングラード国立バレエ「白鳥の湖」
ル・テアトル銀座 坂東玉三郎初春特別公演「妹背山婦女庭訓」
松竹座 壽初春大歌舞伎 昼の部
松竹座 壽初春大歌舞伎 夜の部
浅草公会堂 新春浅草歌舞伎 夜の部「敵討天下茶屋聚」

【2月】
ボリショイ・バレエ「スパルタクス」
ボリショイ・バレエ「ライモンダ」
アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト Aプロ
アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト Bプロ

【3月】
南座 秀山祭三月大歌舞伎 昼の部

【4月】
新橋演舞場 四月花形歌舞伎 昼の部「仮名手本忠臣蔵」序幕~四段目
新橋演舞場 四月花形歌舞伎 夜の部「仮名手本忠臣蔵」五段~十一段

【5月】
新橋演舞場 五月花形歌舞伎 夜の部「椿説弓張月」
さくらホール 市川月乃助「土御門大路」


【6月】
シュツットガルト・バレエ「白鳥の湖」
グルジア国立バレエ「白鳥の湖」
新橋演舞場 猿之助襲名披露公演 昼の部
新橋演舞場 猿之助襲名披露公演 夜の部「ヤマトタケル」

【7月】 
グルジア国立バレエ「特別プログラム」
キエフ・バレエ「華麗なるクラシックバレエ・ハイライト」
新橋演舞場 猿之助襲名披露公演 昼の部「ヤマトタケル」
新橋演舞場 猿之助襲名披露公演 夜の部

【8月】
世界バレエフェスティバル Aプロ
世界バレエフェスティバル Bプロ
新橋演舞場 昼の部「桜姫東文章」×2
新橋演舞場 夜の部「伊達の十役」
国立劇場 稚魚の会・歌舞伎会合同公演

【9月】
東京バレエ団「オネーギン」
松竹大歌舞伎(巡業)×2
紀尾井ホール 市川月乃助「武士の尾」

【10月】
三越劇場 新派公演「葛西橋」

【11月】
マリインスキー・バレエ「アンナ・カレーニナ」
マリインスキー・バレエ「ラ・バヤデール」
ダニールシムキンのすべて「インテンシオ」
明治座 花形歌舞伎 昼の部×2
明治座 花形歌舞伎 夜の部「天竺徳兵衛新噺」×2

【12月】
スターダンサーズバレエ団「くるみ割り人形」
キエフ・バレエ「ジゼル」
新橋演舞場 十二月大歌舞伎 昼の部

バレエ 21公演  歌舞伎 23公演  その他 3公演
合計  47公演

何と、昨年はとうとうバレエより歌舞伎のほうが多くなってしまいました。バレエ・歌舞伎以外は月乃助さんの公演‥‥月乃助さん、早く歌舞伎に帰ってきてくださ~い!

バレエでは、ボリショイとマリインスキーの両方がやってきた昨年、とにかくボリショイの圧倒的な迫力にやられました。2つの演目を一回ずつしか見なかったけれど、もっと見ておけばよかったと後悔するくらい。特に「スパルクス」は圧巻でした。マリインスキーも、コールドの隅々まで超バレリーナ体型のダンサーを並べて、それはそれは美しかったけれど、心を突き動かされるという面でやっぱり私はボリショイが好きかな~と思った今年の来日公演でした。ガラでは「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」が本当にキュートで洗練されていて、素敵な公演でした。

歌舞伎は、猿之助襲名披露公演の熱狂が今もずっと続いている感じです。でも、澤瀉屋以外も結構見ました。

通し狂言の好きな私ですが、演目的に面白かったのはやはり「椿説弓張月」。歌舞伎のいろんな要素が詰まっていて、ドラマチックで見ごたえがあって、もっと上演されていい演目ではないでしょうか。4月の忠臣蔵の昼夜通しは今までにないフレッシュな顔ぶれで楽しめました。8月の「桜姫東文章」も面白かった。

贔屓の澤瀉屋は‥‥昨年上演された猿之助四十八選の「敵討天下茶屋聚」と「天竺徳兵衛新噺」は悪人が主人公のためか、うわべは面白くても後味が悪くいまいちのれませんでした。例えば「獨道中五十三驛」などものれない通し狂言ですが(笑)‥‥ばかばかしいくらいの早替わりも、パロディも、数々のケレンも、宙乗りも本水も、先代がやればこそだったと思います。これからはそんなに「奮闘」しなくてもお芝居の中身、特に四代目は器用なので、泣かせる芝居、ドラマチックな芝居‥‥一昨年の「當世流小栗判官」みたいに根底に「愛」があるようなお芝居をやってほしいなあ。スーパー歌舞伎ももっと見たいです

4月からは新しい歌舞伎座の開場もあり、6月までは東西の名優による有名古典演目がずらっと並びますが‥‥3部形式で時間が短いにもかかわらずチケット代がバカ高い!そして私の愛する澤瀉屋は蚊帳の外のようで

そう、澤瀉屋ファンは、ことしは遠征ばっかりで大変ですよねえ。それでも、4月のこんぴら歌舞伎は澤瀉屋一門としては初めて?だと思うので本当に楽しみです。6月は博多‥‥もうわき目もふらず遠征します。私が新しい歌舞伎座に行けるのはいつになることやら(笑)

バレエでは、今のところチケットを買っているのは3月の日本バレエ協会の「白鳥の湖」。元レニングラード国立バレエにいた大好きなバレリーナ、エレーナ・エフセーエワがオデット/オディールを踊ります。昨年11月のマリインスキーの来日公演では、オスモールキナの代役で急遽ガムザッティ役を踊るというので、あわててチケットを買って見に行きました。もう何年見ていないんだろう‥‥と思ったけれど、彼女はいい意味でも悪い意味でもあまり変わっていなくて、でも、私は好きだった彼女が見られて幸せでした。そのエフセーエワが今度は「白鳥」、しかも去年来なかったシヴァコフとなのでとても楽しみです。

もう一つ、3月に行われるチャリティ・バレエ「グラン・ガラ・コンサート」にもエフセーエワが出演するのですね。しかもパートナーはコールプ。これも楽しみ これにはほかにキエフ・バレエのハニュコワ、それからシュツットガルト・バレエのアレクサンドル・ザイツェフも出演するそうです。ハニュコワは2010年の夏ガラで見たことがある、とてもかわいらしいバレリーナ。それからザイツェフは2008年のシュツットガルト・バレエ来日公演で見て一目ぼれ(笑)するも、その後全然見る機会がなかったのですが、昨年9月の東京バレエ団の「オネーギン」で、ラドメーカーの代役としてレンスキー役を踊ったのが見れてうれしかった。そのザイツェフがまたやってきます。

でも、チケット買ってあるのはこれだけ。ことしは「マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅲ」や「マラーホフの贈り物・ファイナル」があるけれど‥‥例によって歌舞伎の遠征があるので見れるかどうかわかりません。まだ詳細はわからないけれど7月には久々の「ルジマトフのすべて」もあるようですし。

ええ、ルジマトフ!これだけは絶対、何があっても見ますよ!今でも私の一番の王子様です 去年あんなに素敵なコンラッドを見せておいて、夏に来なかったなんて!‥‥苦節何年じゃないけど、1年何ヵ月も見れなかったこの「ルジ枯れ」感は相当なものですから(笑)ルジさまにも覚悟して来日してほしいです。

話は変わりますが、昨年末の中村勘三郎さんのご逝去‥‥まだ50代で、あまりに早すぎて信じられない、すごいショックでした。芝居の神はかほどにこの役者を寵愛し、そばに置きたくて地上の観客から奪ったのか‥‥いや、芝居の神がいるとしたら、この世での依り代をそう簡単になくするはずはない。今までのご活躍もさることながら、これからの歌舞伎界を中心になって牽引していくべき人だったのに。ご本人が一番悔しい思いでしょう‥謹んでご冥福をお祈りいたします。

私が最後に見たのは一昨年の12月、平成中村座の舞台でした。5月までのロングランで毎月大役を務め、特に5月は「め組の喧嘩」「髪結新三」と昼夜にわたる大活躍。でも、私はwowowで見られるからいいやなんて思って見ていなかったんです‥‥それから半年足らず。まだまだこれから、いつでも見られる人だと思っていました。

自分もこれから同じような年代に入っていくにつれ、やはり明日はわからないかもしれない。いや、病気だけでなく、日々気をつけて穏やかに暮らしていても、いつ大地震が起こるか、いつトンネルが崩れるか、わからない世の中じゃないですか。私の同年代の知人には「もうこれからは見たいと思ったら見れるうちに我慢しないで見ることにした」という人もいました。私は、あまり我慢してないように見えるみたいだけど(爆)舞台はやはりその時限りの一期一会。これからも一つ一つを大切に見ていきたいと思います。

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2012年2月19日 (日)

レニングラード国立バレエ「白鳥の湖」(1月8日マチネ)

今さら感が強いですが(笑)1月に見た舞台のことなどを思い出しながら。

ちょっと前までは、古めかしい古典を延々とやっている感じがしていたレニングラード国立バレエでしたが、今では劇場も新しくなって、新体制になって、日本公演以外の中身はずいぶん変わってきているのかなあと思うようになりました。ことしは「海賊」も「白鳥の湖」もともに「新版」で、その変化の片鱗を見せてくれたように思います。残念なことに公演数がだいぶ減ってしまい、さらに来年はまだ来るかどうかもわかりません。毎年冬になれば当然のように見られると思っていたのに。そうなると急に「昔はよかった」的な思いが頭をもたげてくるもので、ファンとはまったく勝手なものです

作品も、今思うと「眠れる森の美女」も「白鳥の湖」も(「くるみ」以外は)なかなかよくできていたなあと思います。 暮れに、新芸術監督のナチョ・ドゥアトが手掛けた「眠れる森の美女」の新版をネット配信で見る機会がありましたが、スピーディな展開ではあるけれど、簡素な舞台美術や中抜きだらけの構成を見ると、やはり古典(クラシックバレエ)を楽しむにはあの旧版の重厚長大な豪華さもいいものだなと思いました。ボヤルチコフ版(旧版)の「白鳥の湖」も、最初見たときはひどく地味な演出だと思ったけれど、ルジマトフが踊るのを見るようになってからは、あの悲劇の結末がしっくりくるようになっていたのです。

今回の新版(メッセレル版)「白鳥の湖」は2009年、ルジマトフが芸術監督のときに首席バレエマスターであるミハイル・メッセレルが改訂したということで、どんなふうに新しくなったのかとても楽しみにしていましたが、ちょっと見たところかなり微妙な印象でした。なぜ改めてこれをつくらなければならなかったのか?と思うくらい。

確かに、旧版はないないづくし。私の友達が見に行ってがっかりしたと言っていたことがあるけれど、「白鳥の湖」といえばこれ!という日本のバレエ団や発表会の演出などでなくてはならないお決まりのアイテムが旧版にはなかったのです。まず、舞台狭しと飛びまわって大活躍する「道化」がいない。1幕で王子は誕生日に「弓」をもらわない。3幕でオディールが正体を現した時に花をぶちまけない(笑) おまけに最後は何だかわからないうちに主役の二人は舞台の奥の見えにくいところで黒い波にのまれて‥‥死んじゃったの?とすっきりしない。ゴンドラとかの大仕掛けが出てきたりすることさえあるのに(爆)

それが今度の新版には、ゴンドラはともかく、道化もいれば弓もある。そして王子が勇敢に戦ってロットバルトをやっつける納得のハッピーエンド。1幕と2幕のつなぎに、バックの湖を泳いでいく白鳥のつくりものまです~っと移動していったのには笑ってしまいました。つまり、一般的によくあるような演出に変えたかっただけのような気もするのです。ともあれ、一般受けしやすくなったのは事実でしょう。

プログラムの文章によるとゴルスキー版という、主にモスクワで行われていたスタイルを取り入れたとのことでしたが、読んでいるとどうも、新しくなったというよりは古い別のスタイルを復活させたような感じでした。

【第1幕】
王子役はマラト・シェミウノフ、もしかして彼の王子は初めて見たかもしれません。身長195センチ、とてもハンサムでスタイルも抜群の素敵なダンサーですが、今まで見た彼の役というのは、全幕では一番いいのが「ライモンダ」のジャン。ほかは、まともに踊るのはロットバルトかドロッセルマイヤーぐらいで、「眠り」の王様、ドン・キホーテ、「バヤデルカ」の大僧正、「ロミジュリ」のパリス、それから今年は「海賊」のパシャ(そういえばコンラッドを踊ったのも前に見た)などなど、すごく役の幅が広いといったらなんですが、せっかくの超高身長が裏目になっているようなお役ばっかりで。今回初めて「白鳥」の王子を見ました。

1幕から王子がやたら頑張って踊ります。(旧版の1幕は、王子はいるだけで踊らない)トロワの女の子の一人とペアになって4人で踊るのは、東京バレエ団も(もとは同じゴルスキー版だそうです)そんな感じだったように記憶していますが、みんなの輪に入って踊る気さくな王子様という印象。そして、チャイコフスキー・パ・ド・ドゥに使われている曲でヴァリエーションも踊っちゃう。巨体のシェミウノフが踊るにしては、あまりに舞台が狭そうでしたが

それから、4人の騎士みたいな感じで王子の友達4人が前面に出てきます。私が見た日はモロゾフ・マスロボエフ・コリパエフ・プロームだったと思うけど、これがまた眼福 そして道化がみんなの間を走りまわって大活躍。アレクセイ・グズネツォフは「海賊」でも奴隷の踊りで素晴らしい活躍を見せてくれた人です。その道化に加え、4人の騎士やトロワなどにおなじみのソリストの顔が揃って華やかではあります。

でも、旧版を知っていると、あの椅子やリボンを使ったかわいい農民の踊りも、貴族たちが出てくる乾杯の踊りも好きだったなあなんて、ちょっと感慨にひたってしまいました。何しろ、ルジマトフの専売特許の「憂愁の王子」や「孤高の王子」はこの版ではもう無理です。王子はみんなと踊ったりして終始機嫌よくにこにこしていなけりゃいけませんから。それが、終わりのほうで突然憂鬱な顔になり、狩りに行こうという道化やお友達をおいて、確か一人で出かけていったような。(お友達は一緒だったかどうか、もう記憶がさだかではありません・笑)

1幕と2幕の間のこの場面、旧版で一番好きなところだったんですよね。それが普通に幕を閉めてしまった‥‥今までは幕を閉めずに、木のシルエットを描いた紗幕が下りてきて、その幕前を王子が一人で踊るのは結構時間も長く、とにかく近くで見れてとてもおいしい場面だったんですよ。そして白鳥たちが湖に降りてくるのを、コールドのダンサーが紗幕の裏を横切ることで表していました。それがそっくりなくなって、幕が開くとどこぞも同じ白鳥の作り物が移動するという幼稚な演出になってしまったのは、旧版を知る者としてはちょっとがっかりでした。

【第2幕】
2幕は、「新春スペシャル・ガラ」で見たとおりです。オデットが出てくる前にコールドが現れたり、アダージョの後ろでガチャガチャ動いたり。でも、今回はそれが全然気にならないほどオデット役のエカテリーナ・ボルチェンコ(カーチャ)がよかった!もうそれに尽きます。「海賊」のメドーラ役を降板したのでどうしたのかなと心配したけれど、それは「白鳥」を完璧に踊るため?とまで思ったくらいに素晴らしかったです。登場の瞬間から研ぎ澄まされたような、彼女を取り巻く空気に圧倒されました。

以前見たときは踊りはともかく役づくりが全然ダメで、オデットでもオディールでもなくて、一体この子何年やってるのよ!なんて、このブログにも過去にそんなことを書いてしまったことがありました今でも時折「カーチャ」というキーワードで以前書いた記事を検索で見にこられる方があるようで、申し訳ないこと書いちゃったなと思っています。ごめんなさいほんとはこんなに遅くなっての感想なんて、もう忘れたことも多いし、あきらめて書かないのだけれど、一言彼女が素晴らしく成長したことを書きたくて、頑張って書いております。

カーチャは一昨年だったか、リラの精で見たときにすごく洗練されてきたなあと感じましたが、今では押しも押されぬプリマになったというか、まるで人が変わったような豊かな身体の表情にまず驚いてしまいました。身体をかなり絞ってきていて、今までは上半身がたくましいポリーナ・セミオノワのような体育会系の感じだったのだけれど、その健康優良児っぽいところがそぎ落とされてシャープなラインに。ちょっと見まるでロパートキナのよう。白鳥たちを従えた気高く気品あふれる姿、それでいて全身に哀しみをまとったようなオデットを見て、何だか最初からうるうるきてしまって、もう最後までカーチャが何かするたびにうるうるしっぱなし(まるで保護者)あ~すごいなと思ったことでした。

オデットのヴァリエーションは、最近では脚を頭近くまで上げる人がほとんどになりましたが、カーチャはそこまで上げません。でも、美しい。以前見たときはどこまでも優等生な感じだったけれど、カーチャはまさに「オデット」として舞台の上で息づいていました。

【第3幕】
今までは民族舞踊が、ロットバルトとオディールが出てきてからおもむろに始まったのだけれど、先に道化と女の子が踊って、すぐにチャルダッシュ、マズルカ、ナポリと続き、それでやっと王子と花嫁候補が出てきます。そう、ここまでずっと王子不在で王妃だけ。何で?今まではキャラクターダンスの方々は全員ロットバルトの手下みたいだったけれど、ロットバルトが連れてきたのはスペインだけ。だからいつも一番目がスペインだったのが、最後になりました。つまりオディールの登場からグラン・パ・ド・ドゥまでがあまり時間がないのです。でも、キャラクターダンスはどれもさすがレニ国という濃くて楽しい踊りでした。

オディールは、オデットとは全然違う濃さ。立派な悪魔の娘というか、必殺仕事人ですね。ぼ~っとした王子なんてイチコロでしょう。とても妖艶なのだけれど下品にならない。エレガントでかわいくさえあります。何か企んでいるその目力はすごいのだけれど、王子に向ける顔はただただ優しい姫。今までの、大柄な割にちょっと縮こまったような感じ(素顔のカーチャはとてもシャイなんだとか)は全然なく、豊かな物語性と伸びやかな踊りを見せてくれました。

王子役のシェミウノフですが、大きい割に影が薄いというか。カーチャのような大柄なバレリーナを軽々とリフトしたり、美しく踊らせたりすることにかけては素晴らしく、必要不可欠な人材というのはよくわかるけれど、相変わらず手先足先まで神経が行き届かないような踊り(ごめん)‥‥もちろん踊りはダイナミックで舞台が狭く感じるくらいなのだけれど、まわりを包む空気が、王子の周辺だけほんわかしてて時間がゆるゆると過ぎていく(!)このまったり感はどういうわけか‥あれだけ大きなダンサーに、シムキン君なみに敏捷に動けというのは無理な話だけど、美形でスタイルもいいのにこの周囲とのギャップはもったいない気がします。でも、「白鳥の湖」の王子なら、お話上さもあらんといういいキャラクターでしょうね 「海賊」のパシャは面白かったけれど、王子役も精進してほしいです。

【第4幕】
序曲から聞き慣れないものだったような‥‥4幕というのは音楽の使い方も版によってさまざまなので特に違いがどうというのも、もう忘れていたりするのですが、結局最後は王子がロットバルトの翼をもぎ取り、ロットバルト(プログラムや配役表には単に「悪魔」と書かれている)がのたうちまわって絶命し、オデットや娘たちは白鳥に戻ることもなくなってめでたしめでたし。

思えばあのルジ様の王子で何回も見た旧版の地味~なラストが懐かしいけれど、朝日の中で幸せそうにたたずむ二人を見ると、これはこれでよいのかなという気になりました。ある意味オーソドックスな「新版」でした。新旧の違いはともあれ、私にとってはプリマとしてゆるぎないものを手に入れたカーチャことエカテリーナ・ボルチェンコに、感動の涙と手が痛くなるほどの拍手を捧げたい公演でした。

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2012年2月 9日 (木)

レニングラード国立バレエ「海賊」(1月5日・6日)

まるで澤潟屋の「三つのS」みたいな「海賊」でした。「三つのS」?そんなこと言ったってバレエ見る人には何のこっちゃですよね(笑) 猿之助歌舞伎が提唱するスピード、スペクタクル、ストーリーの「三つのS」です。

ルジマトフが芸術監督をしていた時に、自身で演出を手掛け、長年踊り慣れた「海賊」の冗長なところをカットし、展開をスピーディにしたという「新版」なのですが、最初タイムテーブルを見たときには、正味1時間半? ということでびっくりしましたよ。ただでさえ「海賊」は短めなのに、それでもの足りなく感じないかなとちょっと心配でした。ところが、次から次へとたたみかけるような見せ場の連続で、眠くなるところなんて全然ないし、もちろんもの足りないと思うこともありませんでした。

今まで「海賊」といえば、見どころは花形ダンサーが踊る「アリ」でしたが、実際のところアリの出番はそれほどありません。それでずいぶんもどかしい思いもしていたんですね。せっかくのルジマトフの「アリ」なのに、ちょっとしか踊らない、なかなか出てこない、出てもすぐ引っ込んじゃう~って(Kバレエの「海賊」ではアリはいっぱい踊るそうですが)一方で、本来のストーリーからすれば海賊の首領であるコンラッドが主人公のはずなのに、今まで何だかずいぶん影が薄かったような気がします。もっといえば、あんな頼りない首領でよく海賊集団がまとめられてたよねという感じ。その分奴隷のアリがしっかり首領を守ってくれていたのかもしれませんけど(笑)

ところが、この「海賊」は違いました。何たって当のルジマトフ本人が主役のコンラッド!本当に、本当にかっこいい首領でしたよ~ああ「海賊」って本来こういうお話だったのね、と改めて思いました。そして、結構純愛物語なんですよ(笑)ルジマトフがアリを踊らないのは残念だけれど、かつての看板演目をこんな新しい魅力満載の物語につくりかえて戻ってきてくれた。それも今度は堂々と海賊の首領役で、恋と、冒険と、陰謀の海に漕ぎ出した!そんな感じでとても楽しめた2日間でした。

多分、踊りはほとんど(一つも?)削ってないと思うのです。じゃあどこを削ったんだといえば、お芝居のもたもたした部分?場面転換のところなどでしょうか。例えば、1幕(本来なら2幕の部分)の、眠り薬を振りかけた花で見張りの兵卒をコロンとかいう、ちょっと間抜けな部分などがカットされていました。場面転換がとにかくスムーズ。つなぎに真ん中の幕を閉めて、幕前をいろんな人物が通り過ぎる間に次の場面が準備されるというふうに、流れが止まらない。そして踊りも、いちいちルベランスなしで間髪を入れずに次の曲がドンジャンドンジャンと始まる、そのスピード感がたまらなく心地よかったです。

また、コンラッド、メドーラ、アリの3人に加え、パシャやランケデム、ギュリナーラ、ビルバントなどの登場人物のキャラ立ち加減がすごくて、あ~これだからレニ国大好きって改めて思いました。

【第1幕】
最初、紗幕のむこうに揺れる海賊船、嵐にもまれる3人の影が見える。幕が開き、倒れている海賊たち。何と、コンラッドは上半身裸。これって反則でしょ裸のコンラッドなんて聞いたことないわよ!嵐で上着が流されてしまったのでしょうか?引き締まった美しい筋肉が見れてうれしかったけど(爆)

アリ、ビルバントに支えられて岩陰に隠れると、そこへメドーラたちがやってくる。メドーラ役はペレン。もうすっかり名実ともにプリマですね。2日目のボルチェンコが「劇場の都合」(?)で降板になって2日ともメドーラ役を務めましたが、このあとすぐ「白鳥の湖」もあったので、何と主役4連投という、タッチキンのイリーナ・コレスニコヴァ並みのすごいことになりました。 ペレンとコレスニコヴァはワガノワの同級生だったような。そして同じイリーナという名前。 イリーナさんは二人とも働き者ね!

メドーラやギュリナーラたちが一通り踊り終わってから岩陰に潜む海賊たちを発見するのですが、そこでいきなりじ~っと見つめ合っちゃうコンラッドとメドーラ(笑)そして、ここは危ないからと彼らを逃がすも、メドーラ達はへんてこなトルコ兵を従えたビルバントらにつかまってしまいます。

真ん中の幕が閉まり、幕前の場面は奴隷市場へ向かう人々。つながれた男女の奴隷たちが通り過ぎるさまは、次の展開を期待させる効果大。幕が開くと、玉ねぎみたいなターバンをかぶった金持ち連中が値踏みの最中。ひときわ立派なパシャ(シェミウノフ)が現れ、奴隷たちの踊りが始まります。この中で目新しいのは男の奴隷たちの踊り。これが圧巻でした。「バヤデルカ」の太鼓(インド?)の踊りを思い起こさせる激しくダイナミックな男性群舞に圧倒されました。

そしてランケデムとギュリナーラが踊る「奴隷のパ・ド・ドゥ」ですが、これも単なる踊りではなく物語の中の一場面となっているのが楽しい。周りの見物人たちが踊りに合わせてあっちに行ったりこっちに行ったり、みんなギュリナーラに注目している様子で盛り上がります。

ギュリナーラ、1日目は大好きなヤパーロワでした。相変わらずかわいかった~ただ、この場面は嫌な顔して踊らなきゃいけないのに、つい笑顔になっちゃうの。ほんとに踊るのが楽しそうで、キラキラしてて、超らぶり~ だから、ま、いいか。2日目はミリツェワ。彼女を見たのは久しぶりな気がしますが、とても上手なのですね。そして美人ですごく華があって主役を食っちゃいそうな勢いです。ミリツェワはこの場面、しっかりイヤイヤっていうお芝居をしていました。むしろ死にそうに嫌そう(笑)

ランケデムは、1日目はオマールで2日目はモロゾフ。眼帯してるし、ヒゲ付けてるしで顔が全然わからないんだけど、オマールのほうがちょっと大柄だったかな。踊りはオマールのほうがよかったけれど、キャラが濃くて面白かったのはモロゾフ。それぞれに持ち味があって楽しかったです。

次にメドーラが連れ出され、パシャはメドーラをいたく気に入りますが、メドーラは当然嫌がります。でも、そこに入ってきた連中がコンラッドたちだとわかると、急ににこにこ顔に。ルジマトフのコンラッドは想像以上に似合っていてあのヒゲメイクといい、若い連中を従えて踊りまくるところといい、5~6年前の「ラスプーチン」を思い出しましたよ。今までのぼ~っとして影の薄かったコンラッドではなく、実力で海賊を束ねている、頼れるキレ者の首領ですね。見る者をくぎ付けにする存在感はアリだったときのままでした。そして本当に楽しそうに踊っていて、ファンとしてこの上ない幸せ。

だってだって、一昨年の「最後のバヤデルカ」のときは、ソロルのヴァリエーション省略だった。昨年は怪我をする前の「ジゼル」でもリフトは一部省略してたし、何しろそのあとの怪我で一切ジャンプをしない「白鳥」や「ドンキ」を見た者にとっては、この人がここまで復活するとは思ってもいなかったでしょう。確かに、身体のキレやスピード感はYouTubeに上がっているプハチョフのコンラッドに比べるとそりゃちょっと‥‥でしょうが、リフトもしっかりやって、あんなに楽しそうに踊りまくって、やっぱりすごい。だって、このために筋トレしたりしてたそうじゃないですか。そして自分の改定した新版を引っ提げて日本へやってきて、自分でしっかり主役を踊って見せてくれた。ファンには最高のプレゼントでした。あ~今までファンでいて本当によかった。

てなことで、2幕というところなのですが、ここが新版では休憩なしでつながって一つの幕になっています。また間の幕が下りて、幕前では市場で奪った奴隷たちと財宝をわんさかと隠れ家へ運ぶ海賊たち。そして、ラブラブのメドーラとコンラッドも(笑)

海賊たちの踊りはルジ・コンラッドを中心にしてカッコいいことこのうえなし。そうそう、ツァルのビルバントもすごくかっこよかったですね。身長があるし、イケメンだし、何より華がある。悪い海賊にしておくのはもったいない(笑)踊りもダイナミックで迫力ある踊りを見せてくれました。

サラファーノフのアリを加えたパ・ド・トロワは至福今までこの踊りは真ん中でメドーラとコンラッドが踊っていても、端でじっと控えているアリばかり見ていたんですよね。踊らないときも一瞬も気を抜かずに、ずっと「奴隷」に徹していたルジマトフを そんなわけで、初めてしっかり見たようなパ・ド・トロワ(笑)は、ああ、これってコンラッドとメドーラの愛の踊りだったんだなあ~って今さらながらわかりました。美しい曲に涙が出てきてしまって‥彼の改訂した「海賊」を彼の主役で見れるなんて、こんな日が来るとは思ってもいませんでした。

というのも、初めルジマトフがコンラッドを踊ると聞いた時点で、もうアリは踊らないんだなという淋しさと、それからあ~とうとうルジマトフもコンラッドになっちまったかという、ちょっとがっかりな気持ちもあったんですよね。ところが、そんなのは見た途端に吹っ飛びました。「海賊」はやっぱりコンラッドが主人公で、彼は長年の奴隷役からついに海賊の首領に成り上がったのですよ。そりゃ楽しいでしょうね~、ご本人も(笑)

サラファーノフのアリは、しなやかで、軽やかで、素晴らしかった。ルジマトフファンばかりの前でアリを踊るのは‥なんてプレッシャーは、もはや世代的にないのかもしれないけど(笑)彼の場合は観客のほうも全然問題なかったですね。誰も文句のつけようがない踊りでした。あのインディアンみたいな衣装もとてもよく似合っていてかわいかったです。ただ、やっぱりこのワイルドな海賊集団の中では浮いてしまったかな

ルジマトフは自分の改訂版で「アリを奴隷から解放した」と言っていましたが、いや、おっしゃるような「コンラッドの友人」にはとても見えず、何と言うんでしょう、「バットマン」のロビン少年?(誰もわからないたとえ)かわいいアシスタントって感じ?でも、逆にいえばルジマトフのファンを「アリ」という呪縛から解き放ってくれたような気がします。今まで誰のどんなアリを見ても満足がいかなかったのが、まあこれもいいじゃんと思えるようになったというか。アリというキャラの持つ獣のようなしなやかさ、野生的なセクシーさ、奴隷としての抑えられた情感とか影、せつなさみたいなものは、あれは全くルジマトフだけのものだったと納得しました。

サラ・アリの一番の萌えポイントはこの幕の最後、ルジ・コンラッドを真ん中に、左にビルバント、右にコンラッドの脚にすがりつくようなポーズのアリという構図が、私的には超ツボでしたハート達(複数ハート)(一体何で?YouTubeの映像ではそんなんじゃないのに)ルジマトフは長年自分が踊ってきたアリを「奴隷」ではなく、結局自分のお小姓にしちゃったわけね。

飛びましたが、トロワのあと、メドーラに友達を解放してほしいと懇願され、コンラッドはいいよ~ってな感じで女の子たちを自由にして、奪って来た財宝もホイホイと彼女たちに与え始めました。すると黙っていないのはビルバントです。ビルバント一味はこれに反対して財宝をまた奪い返し‥‥そんな仲間割れの最中でも、肝心の首領はメドーラといちゃいちゃ。おい、大丈夫か(笑)

力ではかなわないと思ったビルバントは、ひそかに反乱を企てます。捕まえてあったランケデムを引き出し、酒に眠り薬を入れさせて隠れる。そして再び出てきたメドーラとコンラッドの熱々のパ・ド・ドゥ。メドーラに酒をすすめられて平気でぐいぐい飲むコンラッド(おいおい‥)毒の廻る演技がまたセクシー いや、これってちょっと間抜けだよね そしてコンラッドが酩酊した隙にビルバントらが現れ、メドーラをさらっていってしまう。コンラッド危うし!

今までならここですぐに頼れるアリが飛び出してきて守るのだけれど‥‥遅いよ!ビルバントは気が付いたコンラッドに襲いかかろうとはせずに、アリの手前何もなかったふりをして、メドーラがランケデムにさらわれたことを告げます。一大事!ビルバントの離反を知らぬまま、コンラッドはアリ、ビルバントを従えてまたメドーラ奪回に向けて出発します。 

【第2幕】
1幕2幕を続けて上演したので、これは今までの3幕です。パシャのハーレムでは、先に買われたギュリナーラが一番の寵愛を受け、贅沢に暮らしています。どっちかというと手玉にとって小馬鹿にしてるって感じかな。パシャはメロメロ。1日目のヤパーロワも2日目のミリツェワも
満面の笑みでパシャにべったり侍っちゃって、3人のオダリスクが踊っているのに、そんな小芝居に目が離せなくなっちゃいましたあせあせ(飛び散る汗) あんなにイヤイヤしてたのに、ちゃっかりパシャのお気に入りに収まってるじゃん。二人のちょっとオカマっぽいお付きもツボでしたね。

そのあと、海賊の仲間割れに乗じてメドーラをさらってきたランケデムがやってきて、再び値段交渉を始めるという抜け目なさ。メドーラとギュリナーラは再会を喜びます。そして、このあとがちょっと唐突なのだけれど、マントで身を隠した怪しい一団がぞろぞろとやってきます。これはもちろん、コンラッドたちが修行者に化けて乗り込んで来たのです。彼らは神に祈るようなふりをしてパシャをまるめこみ?ますが‥‥一度全員引っ込み、ここから花園の場面へ。

ABTの「海賊」では、はっきりパシャのお昼寝中の夢の中ということになっていますが、これははっきりしないけど、きっとそんな夢の世界でしょう。とてもとても美しくゴージャスな世界 舞台美術も衣装も統一感があって、センスがよくてかわいくて、適度にエキゾチックで、時代&地域不詳だけど(笑)これこそおとぎの国ですねえ。そして衣装をクラシックチュチュに着替えたメドーラとギュリナーラ。華やかで美しくて、何だかうるうるきてしまいました。好きなバレエ団の好きな演目を好きなダンサーで見れる幸せ。涙ものです。

「花園」の踊りが終わると、また現実に戻って修行者たちが出てきますが、ランケデムはこれを見破ってパシャに耳打ち。その中には裏切りもののビルバントもいて、密かにランケデムと意を通じていたのか‥‥どうかはわかりませんが、一斉に被っていた布をとって正体を現すと同時にチャンチャンバラバラが始まります。ところが、なぜかこれはすぐに紗幕が下りてきて、紗幕の向こうの出来事に。あとはご想像にお任せしますということでしょうか?

ここ、すごくかっこいいんですけどね。スピード感ある立ち廻りもそうだけど、海賊たちが一列になってウエーブをつくるところなんかかっこよすぎて感涙もの。その団結の中心にルジ・コンラッドがいるんですから。ファンにはそれこそ紗幕のむこうの夢でしょうが(笑)ここは紗幕なんかかけないで、それでもっと長くやってほしかったような。そんな中、混乱に乗じてコンラッドはメドーラ、アリはギュリナーラをリフトしたまま舞台袖に走り込んでいく。ちゃんちゃんちゃん‥‥ か~っこいい~ 再び船は冒険の海へ漕ぎ出し、怒涛のように駆け抜けた「海賊」のお話は終わります。

ということで、「海賊」の東京公演は2回で終わってしまいました。本当にスピーディーでエネルギーにあふれ、楽しかった~exclamation ×2 観たばかりなのにもっと観たい!と思うのは何なんでしょうね。ルジマトフは演出家として他の古典バレエも「三つのS」で手掛けてほしい気がしますがどうでしょうか。

現振付を極力残したままで展開をスムーズに、よりドラマチックなものにしているし、お芝居を省いたところはあってもコミカルな場面はちゃんと残しているのです。 そしてやっぱりストーリーの根幹は、船が難破して浜にうちあげられたコンラッドが偶然メドーラに助けられて恋に落ちるという、そこのところだったと再認識することができます。だから奪い奪われのドタバタ劇という感じはしない。内部抗争の最中でも、肝心の首領が心ここにあらずでいちゃいちゃしたりして、もうそんな場合じゃないだろう!とあせる場面もあるにはあるけど(爆)ああこれはラブストーリーだったんだよねと納得できます。

そうそう、ルジマトフの髪型ですが、映像でプハチョフが付けていたようなロン毛のカツラはなし。2幕の最後で、1日目は金髪に染めた髪がライオンのように広がっていたけれど、2日目は高い位置で一つに結わえていました。こんなところもファンには注目ポイントではなかったかと(笑) もっともっと細かく思い出してはほくそ笑んでいたのですが(変態っぽいファン)いかんせん余韻に浸っているうちに時間がたちすぎてしまいました。でも、これだけ覚えていたというのは私の中では快挙かも?このあと西宮に遠征してその印象を再び焼き付けることができたのも大きいですね。あ~、もう一回見たい、もっともっと見たい、と思うレニングラード国立バレエの新版(ルジマトフ改訂演出)の「海賊」でした。

(関連映像リンク パ・ド・トロワ 1幕ラスト コンラッドはプハチョフ)

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